Retail AIがスマートショッピングカートの次世代モデルを発表、店内UX向上と月額サブスクリプションプラン導入で国内外で拡大目指す
2022.04.12
2021.06.11
トライアルホールディングスのグループ会社であるRetail AIは、スマートショッピングカートの次世代モデルを発表した。同モデルの主な新規性は「商品のスキャン漏れ時に発出する自動検知アラーム実装」「270億件のID-POSデータに基づく完全AI化したレコメンデーションアルゴリズム搭載」「導入のハードルを下げる月額サブリクションモデルでの提供」となる。
同社は、セルフレジ機能付きタブレットをショッピングカートに掲載したタイプのスマートショッピングカートを開発。
「テクノロジーによって新時代の買物体験を生み出し、流通の仕組みを改革することを目的」に開発されたもので、2018年2月から実店舗での正式運用を開始している。
「一番のお客さまにご支持をいただいているところは、レジ待ち無しで会計し、そのままお店を出られること。特に昨今のコロナのところで言うと、非接触で買物を終えられるというお客さまにとって特別な価値を生み出している」(田中晃弘・Retail AI執行役員COO)
非常に好評で、2021年6月現在、全国で38店舗に3640台の導入まで拡大している。年内に63店舗に6500台まで増加する計画になっている。現在の月間利用者数は65万人となっており、「台数とお客さまの利用者数は世界ナンバーワンと考えている。かなりメディアとしても、デバイスとしてもそれなりの存在感が出てきている」(田中COO)。
導入1号店となるトライアルのスーパーセンターアイランドシティ店(福岡市東区)でのカート利用率は41.2%に達し(2019年6月3日~9日における利用者数÷9~21時の来店者数)、レジの人時数削減に貢献している他、利便性の高さから来店頻度が13.8%向上するなど効果が出ている。
「カートが便利だから月にもう1回、その店に行こうというお客さまの行動になってきている。特筆すべきは50歳以上の利用者の方が半数以上を占めること。本当に使う方を選ばない、シンプルで使いやすいプロダクトになっている」(田中COO)
また、20年にはグループ内企業のみならずリテールパートナーズ傘下の丸久も導入するなど他企業への導入も積極的に進めている。
今回のスマートショッピングカート次世代モデルは、海外市場への展開も視野に入れて開発。小柄の人、高齢の人も含むさまざまな利用者のUX(使用者の体験)向上を目指し、「軽い」「画面が見やすい」、かつ「商品を入れやすい」設計とした。ネットリテラシーが低い人でも容易に操作ができるようなUI(使用者との接点)設計としている他、チュートリアル(操作方法などの説明)やガイド機能を充実させている。
また、 商品のスキャン漏れを防止する自動検知アラーム装置やお客の属性や購買履歴などのデータを活用して、1人1人に最適な商品をAI(人工知能)が選択し、タブレット上でお勧めするレコメンド機能も搭載されている。
これまでトライアルグループで蓄積した270億件のID-POSデータを情報化し、社内で完全AI化したレコメンデーションアルゴリズムを開発。個人ごとリアルタイムのレコメンドが提示される。さらに定期的な学習によって季節性や商品の移り変わりも考慮可能なレコメンドモデルになっているという。
「クラウド上にAIレコメンドエンジンを持っていて、お客さまの属性や購買履歴に合わせてクーポンや商品のレコメンドができる。他社がEC(電子商取引)でやられていることを実際のリアルの店舗で、タブレット上で実現していることになる」(田中COO)
さらに今回、導入が進みやすいようにハードウエアを含めて月額サブスクリプションの方式を新設した。導入する企業にとっては導入費用が高い売り切りと比べ初期費用が抑えられ、導入へのハードルを下げることができる。さらにメンテナンスの面でも、最大20台接続して充電が可能な設計とした。
また、小売側にとって関心の高いロスの問題については、今回は収納部にセンサーを設置し、スキャンせずに商品を入れると自動検知してアラームが発動する仕組みにし、さらにそのデータがサーバにも上がるようになっている。
今年8月をめどにトライアルの店舗にテスト導入後、まずは国内企業での本格導入を開始し、22年以降、海外市場での展開を目指す