TOUCH TO GOとは?無人決済店舗の仕組みや最新の動向を解説
2022.04.12
2020.08.07
新型コロナウイルスの蔓延により、様々なシーンにおいて、ソーシャルディスタンスの確保や三密回避が求められている。このような社会的要請もあり、2020年以降、実店舗を省人化し、不必要な接触を回避するため、会計を自動化するセルフレジの導入が一気に加速した。
その中で、ウォークスルー型の完全キャッシュレス店舗「TOUCH TO GO(タッチトゥゴー)」がその店舗数を増やしてきている。
本記事では、そんな「TOUCH TO GO」とは何か、その仕組みや最新の動向まで解説していく。
TOUCH TO GOとは?
TOUCH TO GOとは、株式会社TOUCH TO GO(タッチトゥゴー、TTG)が、開発提供するウォークスルー型の完全キャッシュレス店舗。
ウォークスルー決済とは、レジを通り過ぎる(ウォークスルー)だけ」で決済が完了する仕組み。セルフレジでは、商品のスキャン自体は、お客やレジスタッフが担当するが、ウォークスルー決済の場合は、スキャンの手間を省くことができるので、セルフレジのさらに先をゆく決済システムといえる。
株式会社TOUCH TO GOは、東日本旅客鉄道(JR東日本)100%子会社のJR東日本スタートアップと、金融向けシステムコンサルティングやAIを活用した製品・サービスの開発・販売を手掛けるサインポストが共同出資し、昨年7月1日に設立された。
TOUCH TO GOの無人決済の仕組みとは
TOUCH TO GOは、天井に設置されたカメラの情報や陳列棚に設置された重量センサーなどが入店したお客と手に取った商品をリアルタイムに認識。
商品を持ったお客が決済エリアに立つとタッチパネルに商品と購入金額が表示され、お客は表示内容を確認して支払いをすることで買物が完結する仕組みになっている。
TOUCH TO GOのメリットは、従来の店と比べて、①商品スキャンが不要、②対面無人で商品の識別と決済が可能、さらに③お客の対応を遠隔のコールセンターで一括対応する点などが挙げられる。
TOUCH TO GOの最近の動向
JR高輪ゲートウェイ駅内に第1号店がオープン
無人AI(人工知能)決済店舗の第1号店として、2020年3月23日に、JR高輪ゲートウェイ駅の2階に、TOUCH TO GOがオープンした。
高輪ゲートウェイ駅のTOUCH TO GOは、JR東日本が2017年11月から大宮駅(さいたま市)、18年10月から赤羽駅(東京・北)で実証実験を行った決済無人化の取り組みの第3弾ともいえるものだ。
以下では、実際の店舗の写真と決済までの流れを解説していく。
約50台のセンサーカメラと重量センサーなどで人と物の動きを捉える。
タッチトゥゴーの買物の流れは次のようなものとなる。まず、入店。今回のタッチトゥゴーは入店時に個人認証をせず、入店後に天井のカメラなどの情報によってお客と、お客が棚から手に取った商品をリアルタイムに認識する。
ゲートは1カ所。入ると天井のセンサーカメラが、人が入ったことを認識
入店時に個人の認証はしない。その後、約50台のカメラが人と物の動きを補足していく。お客と店員の区別については、「バックヤードから出てきた人は店員」として認識する
入店後は、買いたい商品を手に取る。商品は手持ちのバッグに入れてもよい。
必要な商品を取り終えたお客が商品を持ったまま決済エリアに立つとタッチパネルに商品と購入金額が表示され、お客はその表示内容を確認して支払いをするという流れとなる。
決済は完全キャッシュレスとして、当初は交通系電子マネーのみに対応していたが、順次クレジットカード、その他電子マネーなどにも拡大した。
決済エリアは2レーンある。決済エリアに商品を持ったまま入る。
決済エリアに入ると、持っている商品の明細がタッチパネルに表示される。それを確認後、必要に応じてタッチパネル上の「お支払い」「お支払い(レシートあり)」「商品修正」の選択肢をタッチ。
交通系電子マネーで決済をする。現金は回収費用などがあるため、導入の予定はなく、完全キャッシュレスを採用。
決済終了。
タッチトゥゴーは、アマゾンゴーのように商品を持ってそのまま店を出るだけの「ジャストウオークアウト」ではなく、明細を見ながら決済をする方式を採用した。アマゾンゴーのようにアプリをインストールし、自分のコードをかざして入るという行為が日本で普及するかは未知数で、それよりも入店のしやすさを重視した結果だという
今回の店は店舗面積約60㎡(約18坪)、展開アイテム数は600の小型店で、入口は1カ所、決済エリアは2レーンある。人や商品の動きは、天井に設置された約50台のセンサーカメラと棚に設置された重量センサー、さらにカメラなどから発する赤外線センサーなど、さまざまに組み合わせたセンサーによって捉える。
取扱アイテム数は約600。弁当、惣菜、調理パン、パン、菓子、カップ麺、飲料、日用品などコンビニで取り扱うような商品に特化。菓子からスタートし、折り返しでゴンドラ側にパン、カップ麺など加工食品と日用品、壁面側に飲料、惣菜系が並ぶ。
惣菜系の商品は調理パンや弁当などを品揃え。バーコードをスキャンしないため、消費期限、賞味期限のチェックは人間が行う。値引き販売も将来的には行う予定もあるが、当初は行わない。
なお、技術的にはさらに広く、多数のアイテムを取り扱う店でも展開可能。商品の動きについても、重量センサーだけでなく画像などで多角的に捉えているため、非常に軽い商品でも取り扱いが可能となっている。
また、当初は多数のお客が来店することが予想されるため、当面は同時に7~10人程度の運営としていくが、将来的には技術的にも改善を重ねながら人数制限をなくしていきたいという。
店舗運営は「無人」というわけではなく、必ず従業員を最低1人はバックヤードなどに配置する他、一括でお客への対応を行う遠隔コールセンターも設置している。同店では酒も販売するが、酒を購入する場合、決済の際に年齢認証が表示され、それをバックヤードで待機する従業員が確認する流れとなる。その確認をしないと出口のゲートが開かない仕組みになっている。
また、商品をもともとあった場所と違う場所に置いたり、店内で商品を手渡したりするとエラーとなってしまう。こうしたときに修正作業をするのも従業員の役割となる。
システムをサブスクリプションで外部に提供
今回の一連のシステムは全て株式会社TOUCH TO GOが自前で作り上げた。同社は今後、無人AI 決済システムを小売業や飲食業に対して省人化ソリューションとして提供していく意向で、今回のタッチトゥゴーで用いられている一連の技術も、イニシャルコストなしのサブスクリプションのサービスとして外部に提供。
今回の高輪ゲートウェイの店のパターンの場合、月額80万円程度を想定する。これは今後、株式会社TOUCH TO GOとしてもさらなるコストダウンをしていくという前提の価格設定。特にカメラやゲートなどハード面のコストが大きいため、カメラの台数を減らしていきたいという。
レジや接客などが不要であるため、通常よりも大幅に少ない数人程度の人件費相当で店舗運営が可能という強みを武器に、普及を図る。
「通常、このぐらいの店だとバックヤードで作業する人とレジを打つ人で3人ぐらい必要だが、それを1人にする。その削減した2人分の中から導入費用をお支払いいただくということでやっていく」(阿久津智紀・株式会社TOUCH TO GO社長)。ゴンドラの棚の重量センサーなどのセンサー類も、什器など既存の設備に後付けで設置可能だ。今回の高輪ゲートウェイ駅の店は、そのためのショールームの位置づけも担う。
無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」
所在地/JR高輪ゲートウェイ駅2階改札内
オープン日/2020 年3月23日
営業時間/6時~24時場 所:
店舗面積/約60㎡
取扱商品/600種類
決済方法/交通系IC(クレジットカード、その他電子マネーなどにも順次対応)
無人決済システムの外部導入第1号店として、KINOKUNIYA Sutto目白駅店がオープン
2020年10月16日には、株式会社TOUCH TO GOが開発した無人決済システムの外部導入第1号店として、KINOKUNIYA Sutto(キノクニヤスット)目白駅店をJR山手線の目白駅改札外にオープン。
同じ場所で展開していたKINOKUNIYA entrée(キノクニヤアントレ) 目白駅店をリニューアルする形でオープン。紀ノ国屋としは初の無人決済小型スーパーマーケットの展開となっている。
TOUCH TO GOの無人決済システムを導入したことで、リニューアル前は2、3人で運営していたんが、1人で運営できるようになり、省人化に成功している。
こうしたオペレーション面での負荷低減もあって、紀ノ國屋の堤口貴子社長は「いままで出店してこられなかったところ、お断りさせていただいたところもあるので、そういうところにも出店できるようになるかもしれない」との認識を示している。
ファミリーマートがTOUCH TO GOの無人決済システムを採用した店舗の出店開始
ファミリーマートと株式会社TOUCH TO GOは2020年11月、ファミリーマートの既存店の省人化やマイクロマーケットへの事業領域拡大を実現することを目指し業務提携を発表、21年2月26日には資本業務提携契約を締結するなど、協業関係を築いてきた。
そして、2021年3月31日に、TOUCH TO GOが開発した無人決済システムを活用した実用化店舗として「ファミマ!!サピアタワー/S店(東京・千代田)」をオープンしている。
TOUCH TO GOの仕組みとして、天井に設置したカメラによる人の追跡や、商品棚に付けたセンサーによる商品の動きの認識、無人での決済といった技術を活用すした、店舗運営コストの削減に大きな期待がかかっている。
駅ナカ・コンビニ「トモニー」が無人決済システムを導入
2021年4月から、西武鉄道とファミリーマートが共同展開している西武線の駅ナカ・コンビニ「トモニー」が株式会社TOUCH TO GOが開発した無人決済システムの導入を開始している。
2021年夏ごろに西武新宿線中井駅に隣接するトモニー中井駅店(東京・新宿)への導入を予定している。
ガソリンスタンドにおける【無人コンビニ】事業で、三菱商事エネルギー、タツノと業務提携
2021年7月には、三菱商事エネルギー株式会社、株式会社タツノと、全国のサービスステーション内に、無人決済店舗を設置することを目的とした業務提携契約を締結している。
2021年9月には、、千葉県千葉市の大型トラック向けの大規模サービスステーションに、実証実験店舗の1号店のオープンを予定している。
次世代無人オーダー決済端末「TTG-MONSTAR」の運用を開始
株式会社TOUCH TO GOは、決済システムだけではなく、無人のオーダーシステムの開発・運用も開始している。
2020年11月25日に、自社開発した無人オーダー決済端末「TTG-MONSTAR」をハンバーガーショップの「R・ベッカーズ田町店」に、2020年12月12日にはガーラ湯沢が運営する「GALA湯沢スキー場」にも導入されたようだ。
TTG-MONSTARの導入によって、商品の注文から決済まで、お客と従業員が対面することなく無人で済ませることができるようになる。スキー場では、スキー用品のレンタル時の申し込みから決済までを非対面・非接触で実現することができるようになる。
株式会社TOUCH TO GOの阿久津社長いわく、TTG-MONSTARの取り組みは、これまで同社が展開してきた店舗の「無人決済システムのレジ部分だけを取り出したようなもの」という。
「券売機は1台200万円ぐらいかかり、さらにメニューの改変が大変、またウェブにつながらないというデメリットがあるが、それを改修したシステム」(阿久津社長)