店の価値を最大化するために、立地のポテンシャルに火をつける イオンフードスタイル 平田 炎社長
2026.08.07

目次
統合と改革を多数経験し、首都圏の統合作業に着手
2026年3月1日、マックスバリュ関東を母体に、ダイエーの関東事業とイオンマーケットが統合してイオンフードスタイルが発足した。首都圏を展開エリアとし、全店の約半数を東京都23区内に置く、立地価値の高い店舗網を持つ。イオングループにおける首都圏スーパーマーケット(SM)の中核を担うU.S.M.Hグループの一角でもある。
新組織は「うれしいが、あたらしい。」をスローガンに、基本理念として「豊かで健康的な食生活への貢献」を掲げ、昨年マックスバリュ関東社長に就任した平田 炎(ひらた・あつし)氏が引き続き率いる。長崎県佐世保市を地盤とするSM企業のますやに入社し、その後の西九州ウエルマートへの商号変更、さらにマックスバリュ九州(現・イオン九州)との合併を経て、イオンのSM 事業戦略チームへ。その後はマックスバリュ北海道(現・イオン北海道)を経て関西の光洋(26年3月ダイエーに吸収合併)社長に就任。そして昨年5月にマックスバリュ関東社長に転じ、統合を経て現在に至る。
地方、都市部の多様な地域での事業を経験し、その中では統合や立て直しも幾度も重ねてきたSM一筋の経営者である平田氏に今回、まさにSM統合を進めるイオンフードスタイル社長就任の白羽の矢が立ったのは必然とも思える。平田社長に経営戦略を聞いた。
統合会社のかじ取りを担うことになったとき、率直にどう受け止めたのだろうか。
「例えばダイエーとの統合という話は、光洋社長のころからずっとやってきたわけです。ピーコックストアについても光洋のとき、2016年に統合していますし、ダイエーも一時期は非常勤取締役で入っていましたから(22年5月~)、ある程度は分かっていたんですよ。
ただ、分かっていたからこそ、その厳しさも十分に理解していました。実際、それに携わるようになったときは、なかなか厳しいだろうという思いは確かにありました。特にピーコックストアの場合は、老朽化の問題や、これまで手を入れてこなかった問題が根強くあった。それにはそこそこの資金も必要ですし、資金を用意するには、それなりの実績を残していかないといけない。だから気持ちを引き締めて、自分を奮い立たせて臨んだところはありましたね」
光洋とピーコックストアの統合では、どんな立て直しをしたのか。
「関西で16年に光洋がピーコックストアを統合したので、そのときのイメージがありました。当時、光洋は57店舗あって、23店舗のピーコックストアが加わりました。だから全社の3分の1弱。しかも、23店舗のほとんどが赤字の店舗でしたから相当厳しかったです。ただ、統合後の1、2年のピーコックストアの伸び率は一番高かった。当然、荒療治もやりましたけどね。そういった経験が生きている部分があります。
これはダイエーもそうですが、ピーコックストアについても、どちらかというと効率というものに走りすぎていました。いかに効率良くお店を回すか。その効率というのは、言葉としては良いんですけど、要はいかに人を減らして作業負荷を下げるか、というところだったんです。企業としては良かったかもしれないけれど、お客さまから見てどうだったかというとことについては、疑問があったんです。
統合に際しては、基本的には光洋のスタッフをピーコックストアに入れて、ピーコックストアの方から光洋に入れるといった形で、『血の入れ替え』のようなことをやりました。結果、ピーコックストアは伸びましたけど、やはり光洋の店舗の落ち込みはあった。それは覚悟の上でやりました。
特に水産は技術の差が出ましたね。畜産の場合は、ピーコックストアでもある程度はインストア(加工)を残していましたが、水産はコンセ(ッショナリ)に委ねていた店が多かった。しかも、水産は人がなかなか育ちにくいし、育てるのに時間がかかりますので、その意味では改善に時間がかかりましたね」
九州や北海道でも、統合と立て直しを重ねてきた。
「マックスバリュ九州の統合でも改革を経験したし、マックスバリュ北海道でもそうでした。例えば、私が行ったころのマックスバリュ北海道は、それまで北海道ジャスコと札幌フードセンターが合併したところにジョイが加わって、業績的にはかなり厳しい状況だった。あのときは北海道で初めて『ザ・ビッグ』、つまりディスカウントの業態を導入して、それが起爆剤になって伸びたみたいなところがありました。統合や立て直しのやり方はそれぞれで違います。ただ、考え方や方向性はそんなに大きくは変わらないと思いますね」
その後、マックスバリュ北海道から関西を地盤とする光洋の社長に就任する。ここで都市部のSMの経営を経験し、関東のマックスバリュ関東、さらにイオンフードスタイルへ。同じ都市部立地だが、関西と関東で違いはあるのか。
「やはり、イオンフードスタイルの方が立地は断然良い。ただ、私の感覚では、関東は立地が良くても商圏が広がらない。街中を見ていても、生活の範囲が狭いのではないかと思うわけです。車をあまり使わないし、徒歩や自転車で動ける距離で済ませる。だから、小商圏でも密度感があるので、まいばすけっとのような業態がぴったりくるのかなと思います。
大阪は坂もあまりないですし、どちらかというと自転車での移動も多いのかなと思います。その点、関東の場合は坂も多いので行動範囲も狭くなりがちで、小型の業態もうまくいくんだろうなと。加えて、密度感があるから成立するということはあると思います」
イオンフードスタイルでは「豊かで健康的な食生活の価値提案型のスーパーマーケット」をつくり上げることをビジョンとし、目下、今回新たに開発した「フードスタイル」フォーマットへの改装を通じた転換を急ピッチで進めている。新フォーマットの考え方は、密度感があって商圏が広がりにくいという関東の都市部の性質を踏まえたものなのか。
「そうです。いま改装を進めていますが、数字で言うと1号店の三田店(3月7日オープン、東京・港)が売上規模の単純比較で1.6倍から1.7倍、2号店の代官山店(4月17日オープン、東京・渋谷)は200坪タイプで1.4倍ぐらい、3号店の石川台店(5月15日オープン、東京・大田)も1.7倍ぐらいといった状況で、手応えが出ています。
それで、三田店などデータで見ていくと、エリアの商圏はあまり広がっていないんですよ。当然、商圏を広げて広範囲からお客さまを呼ぶことも考えはします。ただ、商圏はあまり広がらずに、シェア率が高まっている。だから足元の徒歩、自転車商圏です。特に三田店は坂の上にありますから(笑い)。
改装に当たって、(商圏を広げようと)この辺も強化しよう、この辺も強化しようと考えていたのですが、若干は広がったのですが、極端に広がって円が大きくなったという感覚はないです。
お客さまの声も、『奇麗になった』とか『良くなった』が多い。それは『知っていたけれど来ていなかった』人が多いということになります。『こんなところにあったのか』『知らなかった』という人はあまりいません。だから、都市部の商圏にフィットした業態になり得たんだと思います」

買上点数が高い、お客にとっての「メインの店」になる
新フォーマットを見ると、マーチャンダイジング(MD)の方向性として、①SKU数の絞り込みと②価格強化の2つを強力に進めている感が強い。絞り込みについては平田社長自身が実験を重ねる中で「アイテムを2割削減しても売上が変わらない、あるいはむしろ上がる」といった結果を踏まえたもので、それが新フォーマットにも反映している格好だ。ただ、都市部は多様な人がいることから、高級なものも含めて商品の種類が多い方が良いという考え方もある。
「最初から絶対にそれはさせたくなかったんです。当然のことながら正直な話、高級な商品は売れますよ。例えばワインでも、5000円、1万円のワインも置けば売れると思う。しかしながら、それを置いてしまうと、それが売れるような店づくりにしてしまう。
まずは足元の商圏のシェア率をいかに高めるか、足元の人たちにいかに来てもらうかを考えたときに、アッパーな商品を品揃えするとか目立たせるのではなくて、どちらかと言うとポピュラーな、ベーシックな商品からやろうと。
それである程度落ち着いた段階で、次の手を打てば良いと思っています。都市部の立地のお店は、改装したからといって次の改装が5年後、10年後といった話ではなくて、例えば2年後、3年後にもう1回見直すといったことをする価値のあるお店です。だから、そのときに新しい価値観を付け加えてまた1段、2段と階段を上げていくという形のブラッシュアップをしていくと良いのではないかと思っています。
だから、当初、三田店ではピーコックストア時代にあった高単価のワインのエンド什器を残していたのですが、撤去させました。『まずここからやるな』と。5000円のワインを1本売るんだったら500円のワインを10本売ろうと。そこから挑戦したかったんです」
一方で、価格強化については、特に不動産費が高い都市部では難しいのではないかとも考えられるが、この辺りの意図はどのようなものか。
「価格を出すのはなかなか厳しいし、当初、考えていたよりは粗利が厳しかった。だいぶ落ち着いてきましたが、ちょっとやりすぎた感もあったんです(笑い)」
価格を打ち出しながら粗利を確保するためには、1つは売上を高めることで「額」を確保することがある。その意味では売上が伸びているのは好材料だ。客数と客単価の内訳はどうなっているのだろうか。
「客数(の伸び)が売上の伸びに並んでいるのかといえばそうではなくて、客数は1.3倍から1.4倍ぐらいです。買上点数が上がっているんです。傾向としてはいいと思いますよ。
以前は、『メインの店』ではなくて、時間がないときに『あそこにあるから』ととりあえず寄る店だった。マヨネーズがなくなったからマヨネーズだけ、しょうゆが足りないからしょうゆだけ、という買われ方です。それがいまは、生鮮の伸びが大きい。生鮮を中心に買っていただけている。昔はグロサリー、ステープル中心の店だったんだろうなと思っています」
メインではない店であったものを、そこでワンストップショッピングをするメインの店になることができている実感があるということだろう。それは意図したものだったのか。
「意図していました。伸び率が一番高いのは水産と畜産ですから。農産も結構伸びていますが、相場によって単価が動きますから(売上の伸びの実態を把握しづらい)。極端に伸びているのは水産と畜産です」
水産は例えば売場面積が約335坪の三田店でも、対面販売的な売場を設け、丸物の氷上販売なども実施する他、海鮮丼を含む寿司、焼き、揚げなどの温惣菜、さらに天丼などの米飯まで店内加工で展開する力の入れようで、売場規模と展開レベルのギャップに驚く。
「水産の対面は、あの規模の割にはやっていますが、むしろ抑えているんです。まだできないんですよ。もっとやりたい。正直な話、光洋でやっていましたから、それに比べるとかなり控え目です」
作業の負荷やロスがあるため、水産の対面や店内加工は特に小型店では効率面を考えて、導入しないケースが多い。その辺りは気にならないのか。
「気にならないですね。丸魚が目立って見えますが、どちらかというと見せ筋で、鮮度感を出す部分。実際に売れているのは寿司であったり、切り身であったり。ただ、丸魚が見えないと鮮度感を感じてもらえないところもあるんですよ」
新フォーマットのフードスタイルでは多種多様な揚げ物、焼き物や弁当など、水産のデリカの展開を大幅に強化しているのが特徴だ。デリカ部門とのバランス問題にも影響しそうだだが、関係性をどう考えるのか。
「水産のデリカは、『何かおもしろいことをやろう』と言って生まれたものです(笑い)。素材を追求しておいしさを追求すると、生鮮のデリカがそうなってくる。いまフードスタイルの店舗ではあまりやっていないのですが、去年、マックスバリュ関東では畜産の惣菜も強化していたんですね。
だから畜産の惣菜や水産の惣菜を強化し始めると、デリカ部門の商品が見劣りしたりするんですけど、それはそれで構わない。位置づけとポジショニングの考え方の問題ですから、『それではデリカはどこに特化するのですか』と。だから、若干、デリカのお弁当などの数字が少し落ちていますが、逆に今回始めたインストアベーカリーは極端に伸びていますから」
水産の惣菜は米飯の展開がかなり際立つ。デリカの弁当の数字が落ちるのもやむを得ないと思えるが、特に種類も豊富な海鮮丼は圧巻の展開となっている。
「定期的に見に行っている九州の小さなSMがあって、そこがやっていた企画を、光洋で実験的に展開したんです。それがうまくいったので、こちらでもやろうかと。1パック598円(本体価格)、2パック1000円(同)というような企画で、私の持ち込み企画です(笑い)。握り寿司よりは手間もかからないですし、生産性も高いです」
一方で、水産売場では握り寿司もかなりの規模で展開している。デリカの寿司はどうなっていくのか。役割分担をどう考えるのか。
「別にデリカの寿司を減らすつもりはありません。手軽に食べられる寿司と、本格的に食べる寿司は、やはり若干違ってくる。回転寿司レベルのものをデリカで作って、それ以上のものを水産で作る。イメージでそう捉えています」

畜産の惣菜はどの時点で導入する予定なのか。
「もう少し落ち着いてからですね。作業場の問題もあります。いまは無理やり広げて作業場を造ったりしているところもあります。都市部のピーコックストアの店舗はどちらかというと後方比率が高いですが、作業場を造るにはダクトを引いたりしなければいけないといったこともあります。
デリカの作業場でまとめてやることも難しく、その辺りはダイエー、一部ピーコックストアでいま活用しているマイクロプロセスセンター(MPC)の考え方を広げていきながら、ある程度のアウトパック、半加工などを強化していけば良いのではないかと思っています」
生鮮、デリカ強化の中でも、インストア加工一辺倒ではなく、アウト化できるものはアウト化を進めていくという方針だ。
「だいぶ変わってきました。同じ商品が並んでいても、三田店で作っていたものとその後の改装店で作っているものでは、加工度がだいぶ変わってきているものもあるんです。例えば唐揚げは、三田店では肉をカットして漬け込んで、混ぜて、それで揚げていた。その工程をセンターでできるようになったので、同じ工程ではありつつも店では揚げるだけとか。
いなり寿司も、三田店のときは店内で米を炊いて具材を入れて、混ぜ合わせて、冷まして、成形して巻いてというところを、センターで加工できるようになったので、店では皮を巻くだけの状態まで持っていける。これが2、3カ月でできるようになった。そういうものが幾つかあるんです。そういう意味で言うと生産性を高める上においては少しずつ強化しています。
三田店のオープンときは社員を多めに入れました。あれを全店でやろうとすると人が足りない。だから後ろの効率面も考えながら、順番に進めているということです。だからこそ突飛なものはまだ作れない。
まずはベーシックなところから押さえていって、表向き、見栄えはそれほど変わらないけれど、いままでよりおいしくなった、簡単になったというものから走っているんです。その考え方は最初からぶれていません」
一方で、デリカのフィッシュアンドチップスのような、尖った商品もある。
「あれは突然、『作ってみよう』と言ったものです(笑い)。何のおもしろみもないのもどうかと思って、オープンの2、3カ月前に、私の思い付きで(笑い)。三田店で始めて全店に展開始めましたが、結構売れています」
売り方という面では、フードスタイルで展開されるカットフルーツのバイキングはダイエーのMDの成功事例として水平展開されている。
「カットフルーツのバイキングは(25年3月にダイエーと光洋の強みを融合させた活性化を行った)ダイエーグルメシティ住道店(大阪府大東市)で始めたものです。私が光洋社長のとき、関西のダイエーの店舗を、プロジェクトを組んで再生させようということで光洋のMDを入れたりしました。
海外のカットフルーツ売場の写真を農産の担当者に見せて、議論しながら企画を作ってもらったものです。それがうまくいって、その後、ダイエーの社内でも成功事例として広がっていきました。だから、今回も入っているということです」
こう見てくると、価格を強化する半面、生鮮、デリカを含めメインに使ってもらえる店を目指すことで生鮮、デリカの売上高構成比を上げながら、同時に付加価値の高い商品を開発していき、かつ次第にその製造における生産性を高めることで粗利を確保していくという流れが見えてくる。

U.S.M.Hにとどまらず、イオングループでも連携
新生イオンフードスタイル誕生に際し、改めて「MD」軸と「セールス」軸で3つの層を作る考え方を体系化した。これの背景はどのようなものか。
「光洋のころから少し言っていましたが、ロジカルな話として定着させたレベルではなかった。言い始めたのが24年の後半ぐらいからですね。それで今回の統合でU.S.M.Hとの商品統合の議論をしていく中で、体系的に整理してみようとなりました。これはイオンフードスタイル単独の考え方ではなく、U.S.M.Hもこの体系で行く方向です。似たような考え方があったので、それを合わせたという意味合いもあります。
例えば、MD軸の「Main(主力商品)」「Derivative(派生商品)」「Challenge(チャレンジ商品)」みたいな考え方は、実はそれぞれの会社の中にあったんです。みんなが違う言葉で言っていたものを明文化したら、ああいう形になった。私が作ったというより、みんなのものを整理した形です。
その上で、まずはMD軸では「Main(主力商品)」、セールス軸では「Basic(重点商品)」から手を付けることにしている。
「そうしないと、みんな一番上のChallenge(チャレンジ商品)からやりたがるんですよ。例えば展示会に行って『こんな商品があった』とか、どこかのオープンを見て『おもしろい』とか、すぐそれをやりたがる。『それをやるな』と。なぜなら、突発的にそれだけを展開しても長続きしない。
そうではなくて、長年続く名物商品、お客さまのニーズの高い商品。これをブラッシュアップし続けることが重要なんです。焼き鳥や唐揚げ、カツ丼など。焼き鳥はブラッシュアップしましたが、相当売れています。三田店や代官山店では1日で1000本近い本数が売れていますからね」
グロサリーやデイリーはイオングループの規模をさらに生かしていく。
「それはそうですね。イオングループはイオン商品調達の機能が大きい。特にグロサリーはイオン商品調達関連の仕入れが6割ぐらいあって、トップバリュが2割ぐらいあります。そうすると8割方がイオン系の商品企画になってくる。加えてU.S.M.HはU.S.M.Hで統合しようというところもあります。
だからこそ、残された部分でどう差別化するかを、もっと真剣に考えないといけない。ナショナルブランド(NB)とプライベートブランド(PB)だけで企画が終わってしまったらおもしろくない。そうではなくて、ストアブランド(SB)であったり、企画力を強化したりしていかないと、どこのSMに行っても同じものが並んでいる、ということになる。
昔、良く言っていたのですが、例えば冬場になるとどの店にも同じ鍋スープばかり、ではだめで、そうではない状態をいかに作るか。もちろん、イオングループだから(売場)全体的なものにはできませんが、個社として何かの違いを主張できるような品揃えをもっと考えていく」
商品と物流の統合は、どこまで進んでいるのか。
「物流の体系や原料調達が絡むので、以前の物流体制を全部は変えられていないんです。この商品はピーコックストアの店舗には入るけれど、マックスバリュの店舗にはまだ配送できない、というものが幾つかある。これは物流の問題で、物流の体制を整備できればセンターや帳合が統合できます。
26年上期をめどに進めていて、めどはだいたい付いてきています。早めにできるものは、すでに動いています。例えばU.S.M.Hで扱っている商品が、いままでピーコックストアの店舗には入れられなかったのが、この時点から入れられるようになる、というように随時、つないでいます。センターのキャパシティの問題、組み替えをしなければいけないといった問題もあって、これは個社だけの話でなくU.S.M.H全体の話になりますから、イオンリテールも含めた物流のタスクが立ち上がっていま動いています」
レジについてはU.S.M.Hは独自にScan&Go ignica(スキャン&ゴーイグニカ)を開発し、実装している。イオンとの連携を深める中、これについては今後、どのような方向か。
「レジは基本的に、イオンのレジシステムに統一していく方向で考えています。セルフレジもセミセルフレジもそうです。いま使っているスキャン&ゴーを継続するのか、イオンリテールが導入しているレジゴーを導入するのかは今後の検討です。そこについてはシステムの問題と契約期間の問題もあるので、優先順位を付けながら対応していきます」
ネットチャネルの位置づけについてはどうか。
「現状、イオンフードスタイルとして個社で展開していますが、これについてはグループとしてどう考えるかも重要だと思います。三田店の商圏を調べると、(イオングループのネットスーパー専業企業のイオンネクストが展開する)グリーンビーンズをよく使っているという声が結構ある。
だからグリーンビーンズでカバーできるところは、グリーンビーンズがネット機能としてグループの機能を補完するという考え方もある。ネット機能は基本的にグリーンビーンズに全部渡すという考え方もあってもいいし、個社の店舗を受け取りのハブとして使う考え方もある。『首都圏としてどう考えるか』というものの考え方で、グループとしての今後の方向性を定めていかないといけないと思いますね」
『ライフスタイル』から『マインドスタイル』へ
インフレ傾向に転じ、物価高もあって節約志向が高まっていると言われているが、その影響は感じられるのだろうか。
「節約志向というよりも、消費が丁寧になっているんだろうと思うんです。不必要なものは買わないことを『節約』と言うのかどうか。自分に必要なものはしっかり買うんです。いままで考えられていたような『マス』の考え方はもうない。消費の多様化、顧客ニーズの多様化などといわれる状況になっています。
だから、これまでは『ライフスタイル』という言葉で一括りにしてマーケティングを考えていたけれども、これからは基本的に『マインドスタイル』ではないかと思います。マインドは個人ごとに違うじゃないですか。
その個人個人のスタイルにどんなものがあるかを考えて、提供していかなければいけない。それがぴったりとはまれば、しっかりと消費をしてくれる。マーケティングの捉え方や概念を変えることで、消費の鈍化傾向を変えることができるのではないかと思うんです。
やはり、昔と違って細かく対応しないといけない。昔のように『積んでおけば売れる』という時代はもうない。だからいかに商品の良さや、お勧めのポイントを伝える努力を惜しまずにやれるか。例えばローカルSMが強いところは、総じて商品の価値をしっかり伝えていることにあると思います。同じ商品でも伝え方が違う。『高くてもここで買う安心感』ですよね。その手間ひまをかけられるかどうか。
いまはお客さまの方が商品に詳しいですから。スマホ1つで何でも調べられます。それでも、お客さまが知らないことを提供して喜んでもらえたときのうれしさをいかに感じられるか。そうしたことも仕事のおもしろみの1つと考えてくれるといいなと思いますね。
だからこそ、会社のヘッドに入れている言葉が『うれしいが、あたらしい。』なんです。これは『新しいからうれしい』のではなく、『うれしいと思ってふと考えると、いままでになかったものだと気づく』。そういうもの1つ1つが、また行ってみようという次の行動につながっていく。そういう好循環に持っていきたいと思います。リピート率については真剣に考えないといけないですね」
平田社長が小売業経営で最も重視している数値は何かを聞いてみた。
「坪当たり売上高です。そこの場所が、いかにお客さまから支持されているか、ということですから。坪当たり売上高が高い店は客数も多いんですよ。坪当たり売上高が高ければ、その『1坪の価値』が高いということですから。客数は、その次についてくるものだと思っています。
人は楽しいところに集まるじゃないですか。おもしろいところに行きたがるわけです。そういう場所になりたいなと。人を集めるには、まず人が集まりたいと思う場所をいかにつくるかということの方が重要です。だから、坪当たり売上高が一番、という考え方です。
結局、『改装で店舗の売上が伸びた』というのはどうでもよくて、あくまで坪当たり売上高が重要です。しかも、それは店舗全体ではなくて、農産の売場はどうなのか、水産の売場はどうなのか、畜産の売場はどうなのか。それで例えば農産の売場が坪当たり売上高の伸び率が一番高いと。それでは農産の売場はお客さまが一番喜ぶ売場という話になるわけです。
何しろ家賃が高いですから。やはり、都市部の一等地にありながら、その立地のポテンシャルを生かし切れていなかったというのはあったと思うんですよ。だから、そこに火をつけてあげるようなものです。当然、SMは『売場』と『売り方』と『商品』ですから。つくる感性、売る感性、見せる感性。こういったところをいかに磨き上げていくか。そこが重要なんだろうなと思いますね」
人口減少局面に入った日本において、最もその影響を受けにくいであろうといわれる首都圏の都市部。有望なマーケットだからこそいま、西友を買収したトライアル、出店を開始したバローといった新規参入組を含め、多くのプレーヤーの熱い視線が注がれている。
その点、イオンフードスタイルには店舗という「資産」を数多く持つというアドバンテージがある。『その立地のポテンシャルを生かし切れていなかった』と語る平田社長が多くの改革の経験をベースとしながら、どのようにどのポテンシャルに火をつけ、店の価値を高めていくのか。個社として、U.S.M.Hグループとしての両面で注目である。










