イトーヨーカドーが「ポッポ」ブランドのラインロビングで成果、自社ブランドのIP活用で売上げ、顧客獲得に成功

2026.08.19

イトーヨーカドーが自社店舗のフードコートで展開している軽食店の「ポッポ」のブランドをラインロビングさせた形の商品開発で手応えを得ている。自前のフードコートで50年以上、支持されてきたブランドをIP(Intellectual Property、知的財産)として活用する動きとして注目される。

課題を抱える「冷凍軽食」強化の鍵が「ポッポ」にあった

今年4月、フードコートブランド「ポッポ」から冷凍食品11品目をイトーヨーカドー、ヨークフーズ、ヨークマート、ヨークプライスの計196店舗で順次発売したもので、6月には新商品「ポッポのフライドチキン」を追加、7月には15アイテム目として「ポッポのお好み焼(2枚入)」を投入した。内部資源を使った品揃え強化策が、わずか4カ月で同社の冷凍食品売場を代表するシリーズに育っている。

今年4月にシリーズとしての展開が始まった冷凍食品のラインアップ

発売から約2カ月でシリーズの累計販売数は50万食を突破。発売20日の時点で既に30万食に達しており、現在でも当初計画比約200%という高水準の売上げは続いているという。

ポッポは1975年の誕生。名称はイトーヨーカドーのシンボルマークである鳩の鳴き声を親しみやすく表現したものだという。イトーヨーカドーの退店やスーパーマーケット化によって店数は減少を続けてきたが、現在は首都圏を中心に24店を展開、年間来店者数では約220万人の存在感を放つ。長らくセブン&アイ・フードシステムズ(現・デニーズジャパン)が運営してきたが、2022年にイトーヨーカドーが事業を承継し、現在は同社の自社ブランドとなっている。

メニューは典型的な軽食店のそれといえ、ラーメン、フライドポテト、たこ焼き、今川焼き、ソフトクリーム、飲料などを総合的に展開。昨今では尖った商品も含む専門店の出店が目立つフードコートの中で、「決して商品としては尖ってないかもしれない。ただ、本当に普通、そして安定した味で、ついまた食べたくなる」(白澤光晴・ポッポ部総括マネジャー)存在として、独自の立ち位置を保っている。

ポッポで支持されている商品ランキングのナンバーワンは「ポテト(メガ盛り・山盛り・小盛り)」で、年間80万食以上を販売しているという。実に来店客の2.5人に1人がポテトを食べている計算になる。

イトーヨーカドーの閉店によって店数は以前より減っているが、現在でもGMSなどのフードコートでは大きな存在感を放つ

ランキングは以下、2位「醤油らーめん」、3位「今川焼(あずき)」、4位「たこ焼き」、5位「今川焼(カスタード)」と続く。今回の冷凍食品の開発に際しては、これらのラインアップを「冷凍食品に適した、実績ある軽食がそろっている」と評価し、ポテト、今川焼、たこ焼きを4月発売の11品目に組み込んだ。

今回、ポッポブランドによる冷凍食品の開発をするきっかけは大きく2つあった。1つは「イトーヨーカドーとして、『冷凍軽食』のカテゴリーが課題だった」(小笠原 優・デイリー食品部総括マネジャー)こと。

冷凍食品は市場の継続的な伸びが見られるが、同社としても市場を上回る勢いで売上げを大きく伸ばしている。コロナ禍を機に特にシニア層の冷凍食品への抵抗感がなくなった傾向が見られることから、「いままで冷凍食品を夕食に出すことに抵抗があった方々が、実はこんなにおいしいんだと気づいて、よく買われるようになった」(小笠原マネジャー)として、冷凍食品が世代を問わず「日常使い」に移ったと位置付ける。

市場の拡大に応えるため、イトーヨーカドーとしても18年ごろから取り組みを強化。売場としては加工食品のゴンドラ内にあった冷凍食品売場を惣菜売場に近づけ、それまでのストックとしての利用だけでなく、惣菜と同じ「その日のおかず」としての活用も促すようにした。売場自体も拡大傾向で、特に今後の改装店舗では冷凍食品の売場面積を尺数ベースで約1.5倍に拡大する方針になっている。

商品開発面でも18年にオリジナル冷凍食品ブランドの「EASE UP(イーズアップ)」を投入。「日常使い」を意識した商品開発が支持され、25年の既存店売上高は18年比で約300%にまで成長し、さらに、26年には25年比約1.2倍の水準を目指すなど支持を拡大している。

結果、市場の拡大に施策の強化が加わる形で、同社の冷凍食品の売上高は右肩上がりを示している。25年の売上高はコロナ禍の際の急激な支持拡大も背景に18年比で約1.8倍、26年はさらに1割増を目指すなど高い伸び率が継続することが想定される。

一方で、明確な弱点として浮かび上がっていたのが「冷凍軽食」カテゴリーだった。冷凍食品の動向をカテゴリー別に分析したところ、「冷凍軽食」に関しては同社の全体数値、あるいは市場の数値と比べても低いことが分かった。そこで、同社として「軽食は伸びしろがある」との判断に至り、今回の強化につながった。

強化策を検討することになったわけだが、そのとき、「軽食、スナックのニーズに応えるヒントはポッポにあった」(小笠原マネジャー)。それがポッポブランドによる冷凍食品開発のきっかけの2つ目である。

実は同社では、「ここ数年、著名人、芸能人の発言などで『ポッポ』が突然出ることがあって、ポテトと今川焼を冷凍食品で展開したらおもしろいんじゃないかとなった」(小笠原マネジャー)ということで、今回の冷凍食品シリーズの投入に先立つ形でフードコートのポッポで使用しているポテトをそのまま冷凍食品に商品化した「ポッポのポテト」(500g)を発売。

発売後、いきなり25年下期の「冷凍ポテト」分類で売上1位となり、その上の「冷凍野菜」分類の中でも上位に食い込むヒット商品となった。今川焼についてはすぐに商品化できなかったことからポテトのみの展開となったが、大きなインパクトを残す結果となった。

小笠原マネジャーは、「改めてポッポのブランド力、イトーヨーカドー内において非常に親しまれているブランドであることに着目し、ポッポで商品開発を進めようと考えた」と語る。長年フードコートで支持されてきたブランドの強さを改めて実感する機会になったという。

そこで冷凍のポテトに続く形で、「ポッポ」ブランドを冠した冷蔵の醤油らーめんなどにラインアップを拡大。今回の冷凍食品のシリーズの開発はその延長線上にある。この間にイトーヨーカドーとしても25年夏にポッポのグッズとして「ポッポコレクション」も発売するといった動きもあった。

冷凍食品のシリーズ化に先立って、冷蔵の醤油らーめんを投入。らーめんもポテト同様、フードコートの商品の原材料とほぼ同じものを活用できた

冷凍食品発の商品も、基準はあくまで「ポッポ」らしさ

「ポッポの冷凍食品」のコンセプトは3つ。①慣れ親しんだ味(何度も食べたくなる美味しさ)、②簡単調理(冷凍食品ならではの利便性)、③ボリューム感(満足いただける価格と容量)の3つで、拡大展開の第一弾として「ポテト類」「揚物類」「和軽食類」「洋軽食類」の4つのカテゴリーで開発した。

商品のラインアップは4月発売(ポテトのみ20日発売、他は6日発売)の商品で、ポテト類は「ポッポのポテト800g」(599円、本体価格、以下同)、「ポッポのハッシュドポテト8枚入」(399円)の2アイテム。揚物類は「ポッポのむねからあげ600g」「ポッポのももからあげ600g」(各699円)、「ポッポの牛肉コロッケ5個入」(399円)の3アイテム。和軽食類は「ポッポの今川焼8個入」(599円)、「ポッポのたい焼6個入」(499円)、「ポッポのたこ焼25個入」(499円)の3アイテム。洋軽食類は「ポッポのアメリカンドッグ6本入」、「ポッポのマヨコーンピザ1枚入」、「ポッポのソーセージピザ1枚入」(各399円)の3アイテム、合計11アイテムとなる。

おもしろいのは、冷凍食品で展開するラインアップにはフードコートのポッポで販売していない商品もあることだ。例えば、4月発売の商品ではポッポでの売れ筋に入っていたポテト、今川焼、たこ焼き以外は、ピザなど過去に一時期扱ったことがあるメニューはあるものの、基本的に冷凍食品で初めてポッポブランドで発売する商品となっている。あくまで「イメージとしてのポッポで展開していく」(小笠原マネジャー)方針だ。

また、フードコートで展開しているメニューも含め、調理して出来たてを提供するフードコートと冷凍食品ではそもそも技術的な問題もあって、全く同じものを展開するのはポテトのみ。他の商品は仕様を変えている。「全く同じ原料を使って冷凍食品を作っても、店頭の味と同じものは出せない」(白澤マネジャー)ためで、仕上がりが「ポッポらしいかどうか」を基準に原材料を含め仕様を調整している。

ただし、そこには「ポッポ」らしさに対するこだわりが感じられる。例えば今川焼とたい焼は、粒あん比率を極限まで高めたあんを全体の70%の配合になるようにした上で1個でも満足感のある90gに設計。一方であんの比率が高い分、満足感がありつつも重くならない水準に糖度を抑えるなど、子どもからシニアまで幅広い世代に支持されるように工夫を凝らした。さらに今川焼で8個、たい焼で6個というボリュームのある量目での商品化とした。

アメリカンドッグについても、特製ミックス粉をメーカーと共同で調整した上で、衣のほんのりした甘さとソーセージの塩味のバランスを取りながら食べやすい60gサイズにした上で6本入りに。ピザ2品は家庭のオーブンで扱いやすい9インチ(約22cm)とし、ファミリーユースのサイズ感に寄せた他、からあげ2品は生育から加工まで一貫して行う長年の取引先と開発し、なつかしさが感じられる昔ながらの味付けに仕上げた。からあげの量目は600gの大量目だ。

また、調理方法について簡単調理に寄せた商品もある。揚げ物についても家庭で手軽に食べられるように電子レンジ調理を可能にした他、調理方法の多様化も試みている。からあげや牛肉コロッケ、アメリカンドッグは基本的に電子レンジ調理。たこ焼やポテト(ハッシュドポテト含む)は油調もできるが、たこ焼は電子レンジ、ポテトはオーブントースター、フライパンでも調理可となっている。また、今川焼、たい焼は電子レンジ調理、ピザはオーブントースター、オーブンでの調理となっている。

赤いパッケージが冷凍食品売場でも良く目立つ

冷凍食品の売上げの5%を目指す

ラインアップ拡大後の反響は前述のとおり、計画値の200%ほどの売上げを継続する大きなものとなった。発売から20日間が経過した4月27日時点でのシリーズ累計で30万食を突破。4月6日から26日までの販売数量ランキングは1位がたこ焼、2位がももからあげ、3位がポテトとなった。たこ焼は499円で25個入りという容量が支持を集めた他、ももからあげは品質と価格のバランスへの評価が高く、幅広い世代から支持を得たという。先行して500gを販売していたポテトに関しては新たに800gの大容量商品を投入したことで「これが食べたかった」の声が多数寄せられた。

シリーズ全体としても、「昔よく食べていたポッポの味を自宅で楽しめてうれしい」「手ごろな価格でボリュームもあり助かる」といった反応が寄せられたという。イトーヨーカドーとしても、「なつかしさ。親しみやすさ、価格が高くない、適度なおいしさ、ボリューム感や割安感などが評価されたのかな」(小笠原マネジャー)と捉えている。まさにこれこそが、小笠原マネジャーのいうポッポの「イメージ」ということになるだろう。

一方で、イトーヨーカドーとしては今回のシリーズに対して30代など、同社の客層としてはかなり若い層から支持を得ていると分析している。これは同社の実感として、「子どものときに買物のついでに食べた」年齢層より下の世代という。展開商品を好みそうな小さな子どもを持つ世代がちょうど30代ということもあるが、結果として「なつかしさ」を実感する世代だけでなく、そもそもブランドとしての親しみやすさや商品としての品質への支持が集まっているということになる。スーパーマーケットの客層が高齢に寄りがちな状況がある中、若年層を呼ぶ効果は大きい。その意味では、ポッポの持つIPとしての価値は非常に大きかったことになる。

6月8日には、シリーズの新商品として「ポッポのフライドチキン」499円を発売した。若鶏のもも肉をオリジナルスパイスで味付けし、電子レンジ約2分で調理できる仕様である。この時点でシリーズ累計は発売約2カ月で50万食を突破し、計画比200%超で推移。同社の冷凍食品においてトップクラスの販売実績を記録した。

重要なのはカテゴリー全体への波及で、25年度の冷凍食品全体の売上げが前年比約8%増と伸びる一方で前年並みにとどまっていた「冷凍軽食」が、シリーズ導入後の4月から6月にかけて既存店売上高前年比で約15%増に転じた。

7月27日には、シリーズ15アイテム目として「ポッポのお好み焼(2枚入)」499円を投入。これは24年10月までフードコートのポッポで販売していたお好み焼の味わいをイメージした商品で、ふんわりした生地にキャベツの甘みと豚肉のうま味を合わせ、既存商品同様、なつかしさを感じる味わいに仕上げた他、1枚当たり約260gで約249円と、ボリューム感と価格を両立させている。冷凍食品シリーズ発売当初から「ポッポで販売していたお好み焼を冷凍食品でも食べたい」という要望が数多く寄せられたことを受けたもので、お客の声を起点にした品目追加となった。

シリーズ投入後の計画以上の反響を受け、小笠原マネジャーは「冷凍食品の売上げの5%が目標」(小笠原マネジャー)と高い目標を掲げる。

相互に影響し合いながら、「ポッポ」ブランドが拡大

興味深いのは、冷凍食品からフードコートへの逆流も視野に入っていることだ。白澤マネジャーは、ポッポで過去に扱ったことのないハッシュドポテトを挙げ、冷凍食品での反応が良ければフードコートのメニューとして商品化する可能性もあるとした。からあげや牛肉コロッケ、アメリカンドッグについても、ポッポの商品として冷凍品を調理して提供する形も含め、今後検討していきたいという。

さらにこの間、店数を減らしてきたフードコートのポッポだが、ポッポ部としても出店の可能性も含め反転攻勢を伺う。今後、新商品の発売頻度を上げる他、特にらーめんについてはプレミアムシリーズの開発も視野に入れる。また、イトーヨーカドーの食品全体としても、今回のように「ポッポ」ブランドのラインロビングをさらに強化する意向で、白澤マネジャーは「今後、いろんな食品で『ポッポ』の商品を皆さんにお届けできると思っている。今後のイトーヨーカドーからの発売を期待していただきたい」と力を込める。

実際、従前から投入されていた冷蔵のシリーズでは醤油らーめん、ナポリタンに加え、冷やし中華といった季節商品、さらにプリンやクレープといったスイーツも加わる形で冷蔵商品のラインアップの充実が図られた他、直近ではカップ麺タイプの醤油らーめんも発売されるなど、「ポッポ」ブランドの商品群が温度帯を超えて広がっている。醤油らーめんなどは冷蔵の商品としても売れ筋になっていることから小笠原マネジャーは冷凍食品での醤油らーめんの開発にも意欲を示す。

実は惣菜としても販売されていて、ポテトはすでに25年6月から全店展開を開始している。今年7月まで累計で100万食を突破するなど大きな手応えを得ている。反響を受け、アメリカンドッグ、ハリケーンポテト、ハッシュドポテト、今川焼、たい焼についても惣菜での商品化に踏み込み、8月下旬には6アイテムが出そろう。

惣菜売場でも人気のポテト。山盛りのボリューム感と安さが大きな支持を得たポイントと捉えている

惣菜での展開は、今回の冷凍食品での展開とは別のきっかけで始まったものだが、こちらも「ポッポ」ブランドの価値を証明することになった。もともと北海道のGMS店舗の撤退の際にフードコートのポッポが先行して閉鎖されたため、お客から「食べたい」という要望が寄せられ、それに応えるために惣菜で展開したことがその始まりだ。その情報が社内で共有される中、他の地方の閉店の際にも同様の動きが広がり、結果として全店展開に至っている。

冷凍食品にしろ、惣菜にしろ、今回、内部にあった「資産」を活用することで新たな商品価値を生み出すことに成功し、新たな売上げやお客の掘り起こしに成功したことになる。IPに注目が集まる昨今だが、その意味では特に歴史のある企業にとっては、社内に眠る資産に改めて焦点を当ててみる価値はある。

冷凍食品を担当する小笠原 優・デイリー食品部総括マネジャー(左)とフードコート飲食事業を担当する白澤光晴・ポッポ部総括マネジャー(右)

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