スマホレジとは?国内外の事例と共に解説|店舗・消費者双方のメリットとは?
2022.10.24
2021.02.01
新型コロナウイルスの影響で3密回避が叫ばれて久しいが、会計時に人が密集するのを避ける「スマホレジ」が今注目を集めている。世界ではキャッシュレス決済の定着・一般化が進み続けており、スマホレジもまた、その潮流を汲んで生まれた技術的革新による「新たな日常」の形と言える。
この記事では、スマホレジとは何かといった基本的な説明から、その仕組みやメリット、実際に導入を始めた国内外企業の事例などをそれぞれ紹介していく。
コロナ禍で広がる『スマホレジ』とは?
スマホレジとは、従来のレジシステムに代わって、来客自身のスマートフォンで決済を済ますことができる次世代の会計システムのことである。支払いはキャッシュレスもしくはクレジットカードで行う店舗が多い。今まで人員を割いていたレジを無人で回すことができるため、人件費削減や効率化が見込めるとして話題となっている。
スマホレジの一般的な利用の流れ
スマホレジを一般的な利用の流れは下記の通り。
①消費者は専用のアプリをスマホにインストール
②アカウントを作成し、クレジットカードを利用する場合はあらかじめ紐付けを済ませておく
③スマホレジ対応の店舗へ入店し、欲しい商品のバーコードをアプリでスキャンする
④店内のスマホレジ用の端末に表示された2次元コードをスマホでスキャンしオンライン決済、もしくはそのまま退店することで決済が完了する
店舗が採用するシステムによって多少の違いはあるが、おおよその利用フローは上記の通り。使い方の流れを聞くと、いかに革新的で従来のレジシステムと勝手が異なるかが見て取れる。
スマホレジの導入メリットとは?
消費者側、従業員側、店舗側、それぞれにスマホレジを利用するメリットがある。具体的に見ていこう。
レジに時間がかからなくなる
もっとも大きな利点は、会計時の時間や手間が省略できることだ。レジで順番待ちをする時間や、会計時に店員を待っている時間が無くなり、スムーズな買い物が実現する。
また、従業員は商品バーコードをひとつひとつ読み取る時間や、袋詰めする手間、レジ打ちの工程などが削減できる。店舗側としても従業員をレジに置かずに済むため、その分の人件費を削減したり、他の仕事に回したりことができる。
財布を持ち歩く必要がない
スマホひとつあれば買い物ができてしまうので、財布を使う必要がなくなり身軽に過ごせる。貴重品の存在を気にすることなく外出できるので、リスク管理の面においても気楽だ。重たい財布を持ち歩いたり、会計時に取り出したりしまったりする物理的なストレスや手間もない。
また、ポイントもアプリを通して付与されるので、様々な店のポイントカードを何枚も携帯する必要もなくなってしまう。
人と近付かないので衛生的
現代のコロナ禍において、レジで立ち止まって並んで人と密集したり、会計時に従業員と接近しやりとりしたりする必要がないことは非常に大きい。
新型コロナ感染拡大の懸念が減り、消費者だけでなく店舗側、企業側としても嬉しい効果である。もちろん従業員にとっても、不特定多数の来客と面と向かってやりとりしないため安心で、感染リスクを大幅に減らすことができる。
国内のスマホレジ導入事例
現在はまだ実験的な段階にあることから、スマホレジに対応した店舗は限られている。しかしその利便性や回転率の高さ、新型コロナウイルス拡散防止の観点から、今後普及していく見込みは大きいとされる。
ここからは、実際にスマホレジを導入した企業や店舗について詳細を紹介していく。まずは国内の事例から見ていこう。
ローソンのスマホレジ
コンビニエンスストアフランチャイザーである株式会社ローソンは、コンビニ大手ではいち早くスマホレジの導入を決めた。
セルフで商品バーコードをスキャンした後、購入ボタンをタップするだけで決済が完了する簡明なシステムだ。支払いはクレジットカードのほか、Apple Pay、LINE Pay、楽天ペイなど各種オンライン決済も可能となっている。
現在、スマホレジの対応店舗は限られてはいるが、関東を中心に北海道から九州まで全国で導入済みで、競合他社と比較すると大きく先行して実用化に至った。
イオンのスマホレジ
大手スーパーマーケット、イオン株式会社が取り入れたのは、「レジゴー」と呼ばれるスマホレジシステムだ。来客は自分のスマホではなく、店舗内だけで利用可能な貸し出し用のスマホを使うのが特徴。利用中はスマホ画面に合計金額が表示され続けているため、消費者としては買い過ぎを防ぎやすく、節約思考の方にも評判が高いと言われている。
そうなると店側の売上は下がることが予想されるが、結果的に客単価は導入したすべての店舗で15〜20%アップしている。画面に購入品一覧が出ることで、消費者が買い忘れに気づきやすく、それまで取りこぼしがちだった調味料などの売上が伸びたのが原因だという。結果的に消費者にも企業側にもメリットのある導入となった。
カスミのスマホレジ
茨城県を中心に関東に展開するスーパーマーケット、株式会社カスミもスマホレジ導入に乗り出した。「Scan&Go」というシステムを採用しており、消費者は親会社であるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスが発行するU.S.M.H公式アプリをインストールする必要がある。
アプリ内で商品購入後に表示されるQRコードを、店舗にあるQRコードリーダーにかざすと決済が完了する仕組みだ。一般的にスーパーは人員の3割をレジに割くと言われているため、スマホレジ導入によって浮いた人員を顧客満足度を高めるための仕事に回すことができると期待されている。
海外のスマホレジ導入事例
続いては、海外でのスマホレジ実用例にスポットを当てていく。国内に比べて、アメリカや中国の方がスマホレジの導入が進んでおり、規模や注目度も高い。
米国「Amazon Go」
アメリカでは2018年、大手ECサイトアマゾンドットコム(Amazon.com, Inc.)が運営する「Amazon Go」と呼ばれるレジの無いコンビニが登場した。
使い方は国内の事例と少し異なり、来客はあらかじめアプリで2次元コードを用意しておき、コードを読み取るゲートを通って入店する。買い物中は店内に設置された無数のカメラや棚の重量センサー等で、誰がどの商品をカートに入れたかわかるようになっており、利用者は商品を手にしたらそのまま退店する仕組みだ。店を出た後に自動的に紐付けたクレジットカードやオンラインペイから自動的に金額が引かれるので、消費者自身が決済手続きをする必要がない。
Amazon Goはこの後登場する米国内や世界の省人型店舗のビジネスモデルとなっており、こういったタイプの無人レジはAmazon Go型、ウォークスルー型などとも呼ばれている。
中国「便利蜂(Bianlifeng)」
一方、キャッシュレス決済が浸透し、常に最新のデジタルイノベーションが適用される中国では「便利蜂(Bianlifeng)」というスマートコンビニが成功を収めている。2020年6月の時点で全国20都市に1500店舗を展開している大手チェーンだ。
便利蜂では、商品をスマホでスキャンするスマホレジのほか、来客が店内の無人レジカウンターで商品をスキャンしてスマホ決済を行うシステムも導入されている。中国はキャッシュレス社会と言われるほどオンライン決済が一般化しているため、キャッシュレス決済を利用したシステムは構築や浸透がしやすい背景がある。
スマホレジ導入はコロナ抑制と人員不足解消のカギ
今回の記事では、スマホレジの基本的な使い方から、ローソンやイオンなど国内の実例から、海外の導入事例などを解説してきた。
日本の小売店は、従業員の人手不足が深刻な課題となっている。スマホレジは時世的な衛生面のメリットだけでなく、省人型店舗にすることでレジを無人にし、従業員は顧客満足度を上げるための他の仕事を優先できるのが大きな利点だ。
消費者や店舗、企業、どの立場にとっても恩恵のあるスマホレジ。日本が直面する人員不足問題の助け舟になる可能性があるという意味合いからも、これからもコンビニやスーパーを中心に普及していくだろう。