リモート接客とは?メリットや先進企業の導入事例を交えて解説

2022.10.25

2021.04.01

新型コロナウイルスの蔓延によって非接触が推奨される昨今の状況も相まって、小売各社がオンラインを活用し、リモート環境を取り入れる事例が急速に増加している。

対面でこそサービスが成立すると考えられていた接客の分野に、リモートはどのように取り入れられているのか。リモート接客の概要や種類、メリット、デメリットとともにリモート接客を実際に導入している3企業の事例を解説する。

コロナ禍で急速に浸透したリモート接客とは?

実際に導入されているリモート接客の種類を解説する。

●リモート接客の概要

リモート接客とは、オンライン環境を利用した接客方式を指す。オンライン上でさまざまなツールを使用することで、リアルタイムで顧客へ非接触・非対面で対応が可能となった。リモート接客は、取り扱う商品や顧客層に応じて、いろいろな種類がある。

主なリモート接客の種類

リモート接客は、用いられるツールによって主に以下3つの種類に分けられ、単体で用いられる場合もあれば、複合的に組み合わせることでよりインタラクティブな顧客体験を提供できる。

①チャット

チャットを通じて、リアルタイムで顧客とコミュニケーションが取れる方式だ。ECサイトや、クラウドツールの問合わせ窓口などでも活用されている。顧客からの問合わせに素スピーディに対応できるのがメリット。主に問合わせ窓口として使用されているため、チャット方式では店員からの提案などは行わないのがほとんどだ。

②ビデオ通話

ビデオ通話で顧客とコミュニケーションを取る方式もある。アプリやSNS、店頭のディスプレイなどを介して、顧客への一対一での接客をリモート下で可能にした。一対一の接客のため、従来の接客のように店員からの提案もできる。また、映像と音声による接客が提供できるため、テキストよりも円滑にコミュニケーションが取れる。顧客からの個人的な相談なども受けやすいため、顧客と店員の間に信頼関係を築きやすいメリットもある。

③ライブ配信

SNSなどを通じたライブ配信によるリモート接客もある。ライブ配信は、店員のコーディネートを紹介するアパレル業界や、新商品を使ったメイク方法を紹介する化粧品業界などで取り入られている。

ライブ配信は、一人の店員が不特定多数の人へ一度に提案できるリモート接客方式として有効だ。複数の顧客からのコメントをリアルタイムで受け取れるので、感想や反応も視覚化しやすい。企業のブランディングにも活用できるだろう。

ただし、不特定多数への配信を前提としているため一人一人の疑問には答えにくい。コメント欄などで受けた質問などに答えるには、タイムラグが発生してしまう。

リモート接客に期待できる4つのメリット

オンライン環境で接客をするリモート接客は、対面接客とは違うメリットが得られる。リモート接客を導入すると、以下4つのメリットが期待できる。

①非接触・非対面で接客できる

リモート接客はオンライン環境で顧客へ接客を行うため、非接触・非対面で接客が提供できる。リモート接客が急速に広がった背景にはこの感染症対策というメリットが大きく関与している。

②オンラインにおける顧客体験の向上

従来のECでは顧客とのインタラクティブなコミュニケーションは難しかったが、リモート接客を導入すれば、リアルタイムにコミュニケーションをとりつつ、購入をサポートすることができる。VR技術などを用いることで、オンライン上であっても、リアルでの接客に近い体験を提供するようなサービスも登場してきている。

③コストカットができる

リモート接客は、一人の店員が複数の顧客へ接客することもある。店頭に配置する従業員の数を減らせるので、コストカットにもつながる。また、遠方にいる顧客に対しても、オンライン環境で説明や提案などができる。顧客のために遠隔地に担当者が足を運ぶ必要がないため、出張費などの削減も可能だ。

④多様な働き方が実現できる

リモート接客は、方式によっては店員の在宅勤務も可能だ。育児や介護などを両立させながら働きたい店員や、復帰を希望している店員の支援など、多様な働き方の実現にもつながる。

オンライン環境があれば接客ができるので、実店舗が存在しない地方在住の従業員の雇用もできる。人手不足の場合は、地方への求人を導入することで新しい応募者層の開拓にもつなげられる。

リモート接客導入事例

リモート接客を導入した3つの企業、三越伊勢丹、東急ハンズ、ゴディバの事例を紹介する。

三越伊勢丹のリモートショッピングアプリ

出所:https://www.mistore.jp/store/shinjuku/shops/
other/other_shopnews/shinjukunews0101.html

三越伊勢丹の「リモートショッピングアプリ」は、百貨店の販売員からの接客が受けられるアプリだ。あらかじめチャットで好みの色やデザインを伝えると販売員からの提案が受けられるほか、テレビ会議システムにてリアルタイムで顧客からの質問に答えたり、販売員がコーディネートの提案をしたりなどのリモート接客を提供している。

三越伊勢丹は、従来の百貨店の接客をオンラインで提供する取り組みとして、LINEとZoomですでにリモート接客を提供していた。アプリを導入することで、別のツールが必要だったリモート接客を、統合した形になる。

東急ハンズのアバター遠隔接客システム

出所:https://prtimes.jp/main/html/
rd/p/000000015.000029811.html

東急ハンズでは、店頭に設置されたディスプレイのアバターを通じたリモート接客を提供している。接客をするのはバックヤードにいる店員だ。店内カメラを通じて、店員がアバターを通じて顧客へ話しかけることもできる。アバターだがAIではなく、実際の店員による接客というのがポイントだろう。

ゴディバのリモートショッピング

出所:https://prtimes.jp/main/html/
rd/p/000000032.000005095.html

オンラインビデオ通話でゴディバの店員からマンツーマンでの接客が受けられる「リモートショッピング」を導入している。全国18店舗の専用サイトからアクセスして利用可能で、アプリのダウンロードなどは必要ない。

リモートショッピングのほか、来店前に商品を予約して店舗で受け取れるモバイルオーダーや、オンラインショップで1粒ずつチョコレートが購入できるサービス、毎月おすすめチョコレートが届くサブスクサービスなども導入されている。

リモート接客はニューノーマル時代の接客方式として期待されている

オンライン環境があれば遠隔地の顧客へ接客の提供をできるのが、リモート接客のメリットだ。非対面・非接触での接客方式としても注目されている。リモート接客には方式もさまざまにあるため、取扱い商品や業種、顧客に合ったものを導入するのが重要だ。今後もリモート接客は新しい接客方式として拡大していくことが予想される。

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