ローコード・ノーコード開発とは?それぞれのメリット・デメリットや代表的なツールを紹介
2022.10.05
2022.08.30

ローコード・ノーコード開発とは、ソースコードを全く、もしくはほとんど記述せずにアプリケーションを開発する手法である。DX普及の波やインターネット市場の拡大などによりプログラミングのニーズが高まっていることで、注目を集めている。
ローコード・ノーコード開発は簡単に開発できるなどのメリットもあるが、機能に制限があるなどのデメリットもある。複数の開発ツールが提供されているが、それぞれに機能の違いや特徴があるので、開発をおこなう際にはさまざまなツールを比較検討して自社に合ったものを選択すべきである。
目次
ローコード・ノーコード開発とは
近年、ローコード開発・ノーコード開発といった言葉を耳にする機会が増えてきた。DX普及やインターネット市場拡大による影響は、アプリケーション開発の場にも例外なく押し寄せている。プログラミングのニーズは年々増加の一途をたどっており、ローコード・ノーコード開発の注目度も高まっている。ローコード・ノーコード開発が可能なプラットフォームも数多く存在し、カオスマップが作成されるほどである。ここでは、ローコード・ノーコード開発についてその概要から詳しく解説していく。
ローコード開発
ローコード開発とは、ソースコードの記述をほとんど必要としない開発方法である。基本的にはノーコードと同様、ソースコードを書かずに開発を進められるが、ソースコードを記述することでより幅広い業務に対応したプログラムの作成や機能の拡張、外部サービスとの連携をおこなえる。ローコード開発ツールの市場は拡大を続けており、今後もさまざまな企業や自治体が導入していくと考えられる。
ノーコード開発
ノーコード開発はソースコードの記述をまったく必要としない開発方法である。テンプレートを利用したり、パーツを組み合わせたりして直感的に開発を進められるよう設計されている。経験者を新たに雇う必要がないため、2025年の崖として危惧されているITエンジニア不足にも対応できると考えられる。また、プログラミング経験者が使用しても開発工程の縮小や開発時間の短縮が見込まれるため、専門的なエンジニアがいる会社においても重要視されている。
ローコードとノーコードの違い
ローコードとノーコードは非常に似通った開発手法だが、大きな違いはソースコードの記述が必要か否か、という点である。ソースコードの記述をまったく必要としないノーコードに対して、ローコードは機能を拡張させたり外部サービスと連携させたりする際にソースコードの記述が必要となる。それゆえに、ローコード開発の方がノーコード開発に比べて自由度が高い。
ローコードのメリット
ローコードは、フルスクラッチと呼ばれる従来のプログラミング手法と、ノーコード開発の両方の特色を併せ持った開発手法である。両者のメリットをいいとこ取りした存在ともいえる。ここからはローコード開発のメリットを挙げていく。
従来のプログラミングよりも簡単に開発が可能
ローコード開発は、ソースコードを記述する工程を極力排除しているため、従来のプログラミングに比べてアプリケーション開発にかかる時間や労力を抑えられる。開発が簡単にできることで、今までのレガシーシステムを刷新したり、最先端の技術に対応したアプリケーションを作成したりしてDXを推進できるのもメリットの1つである。現場の人など、エンジニア以外の人でも開発に携われるので、「どんなシステムが必要か」という点をはっきり理解している人が自らアプリケーションを開発でき、要件定義のヒアリングや作成後のチェックも短縮できる。
幅広い業務に対応できる
ローコード開発では、ソースコードを記述することで機能の拡張や外部サービスとの連携が可能になるため、幅広い業務に対応したアプリケーションを開発できる。ノーコードではソースコードの記述ができないため、機能の拡張や外部サービスとの連携はツールやプラットフォームが提供するテンプレートに依存するが、ローコード開発であればAPI連携でさまざまなアプリケーションと連携させることが可能だ。ローコードは汎用性が高いため、独自のロジックをシステムに組み込みやすく、業務に最適なアプリケーションを構築できる。
ローコードのデメリット
一見便利に思えるローコードであるが、フルスクラッチ開発やノーコード開発と比較した場合のデメリットも存在する。ここからはローコード開発のデメリットについて解説していく。
ソースコードの記述が必要な場合もある
ローコード開発はノーコード開発と違い、ソースコードの記述が必要な場合がある。専門のエンジニアでなくても気軽にアプリケーション開発に携われるが、ソースコードの記述なしで作成できるアプリケーションの機能には限界もある。より複雑な動きや多くの機能を組み込んだシステムを作成したいと考えている場合には、基礎的なプログラミングの知識を身に付けておくとよいだろう。
企業独自のセキュリティ対策を施せない
ローコード開発では、開発されたシステムのセキュリティはサービスやツールを提供しているプラットフォーム側が管理する形となる。使用する企業独自のセキュリティ対策をおこなったり、他社のセキュリティソフトを利用したりすることはできないため、特に機密情報を扱う業務や、顧客の個人情報を管理するようなシステムを構築する場合には、使用するプラットフォームが充分なセキュリティ対策を施しているか事前に確認しておかなければならない。
ノーコードのメリット
ノーコード開発は、ローコード開発と似た部分が多いものの、そのメリットとデメリットはノーコード独自のものが存在する。ここからはノーコードのメリットについて着目していく。
プログラミングに関する知識が不要
ノーコード開発はその名の通り、ソースコードを記述する必要がないので、プログラミングに関する専門的な知識が不要である。また、多くのノーコードツールが直感的・感覚的にアプリケーション開発をおこなえるようなインターフェイスになっているため、プログラミングや開発の経験がない人でも簡単に作業を進められる。ソースコードを記述しないのでプログラミングの人為的なミスも減り、システムの品質を維持したり、脆弱性のリスクを低減させたりすることも可能だ。
開発にかかる時間が少ない
専門的な知識を必要とせず、ソースコードの記述をせずに開発がおこなえるノーコード開発は、従来のプログラミングによる開発と比べて短い時間でアプリケーションを開発できる。そのため、人件費の削減や業務の効率化にも貢献する。プログラミングの未経験者だけではなく、プログラミング経験のあるエンジニアにとっても便利なツールであるといえるだろう。
ノーコードのデメリット
ノーコードは簡単にアプリケーション開発ができる反面、デメリットもある。ローコードと共通するものもあるが、ここでは特にノーコード開発において特徴的なデメリットについて挙げる。
実現できるシステムが限られる
ノーコード開発はソースコードを記述することなく開発できるが、それが実現できるのは、プラットフォーム側が用意したテンプレートを使用した単純なシステムに限られてしまう。より多くの機能や複雑な動きを実装したい場合には、ローコードツールを使用するか従来のプログラミングで開発をおこなわなければならない。その他にも、基幹システムなど大規模なシステムを実装するには限界があるなど、実現できるシステムが制限される点は大きなデメリットと言えるだろう。
機能の拡張はプラットフォームに依存する
ノーコード開発はプラットフォームが用意したテンプレートを使用しておこなうため、機能を拡張するためには、プラットフォーム側に必要な機能のテンプレートを実装してもらう必要がある。そのため、企業独自のプログラムなどを組み込むことはできない。また、ソースコードを記述する機能がないために、外部サービスとの連携についても、プラットフォーム側でテンプレートが用意されていない場合は組み込みができない。
代表的なローコード・ノーコード開発ツール
ここからは、実際にローコード・ノーコード開発をおこなう際におすすめの開発ツールを紹介する。それぞれのツールの特徴を比較して、業務内容や開発したいシステムにマッチしたものを導入してほしい。ここで紹介する以外にもローコード・ノーコード開発ツールはさまざまな種類があるので、自社の状況や業務に合ったものを探すのもよいだろう。
マイクロソフト Power Apps
Microsoft Power Appは、Dynamics365とOffice365で利用できるノーコードツールである。Dynamics365で提供されているアプリケーションだけではカバーしきれない機能を、実際に業務で使用する部署が主体となって作成できる。馴染みの深いPowerPointやExcelのような、直感的で簡単な操作でアプリケーションの作成が可能だ。さらにDynamics365のアプリケーションと連携させることであらゆるデータを一元管理し、効率的に活用できるのが大きな特徴といえる。
クラリスファイルメーカー
クラリスファイルメーカーは、ローコード開発のプラットフォームであり、クラリス社が提供している。35年以上の長い歴史があり、世界中のユーザー数は100万人以上である。Appleの100%子会社であるが、Mac OSだけではなくWindows OSやモバイル、WebなどマルチOS、マルチデバイスに対応している。ノーコードで直感的に開発をおこなうこともできるが、JavaScriptを利用した開発も可能であり、プログラミング未経験者からプロのエンジニアまで、幅広いユーザーが自らの知識レベルに合わせて開発できる点が特徴的である。
kintone
サイボウズ株式会社から提供されているKintoneは、ノーコードで開発できるプラットフォームである。民間企業のみならず、自治体でも使用されている。JavaScriptでカスタマイズして運用することもできるので、自由度の高いローコードとしても使えるのが特徴的である。主に現場向けのツールであり、現場の要望を反映させたシステムを短時間で確認できる。さらに情報システム担当者としても、現場が作成したさまざまな業務システムを1つのプラットフォーム上でまとめて管理できるメリットがある。
アステリアワープ
アステリアワープは、アステリア社が提供するノーコードのデータ連携ツールである。データを統合したり分析したり、システム間の連携をノーコードでおこなえる。そのため、プログラミング未経験者でも簡単にシステムを構築でき、経験者も構築にかかる時間を大幅に短縮できる点がメリットである。RPAによる自動化や業務の効率化にも貢献できる。データ連携の接続先やテンプレートも数多く用意されており、さまざまな用途に活用が可能だ。
ローコード・ノーコード開発ツールを選ぶポイント
近年、ローコード・ノーコード開発ツールは数多く登場しており、選択の幅が広がっている。それゆえに、自社でどのツールを採用すればいいかわからなくなってしまうケースも考えられる。そこで、ローコード・ノーコード開発ツールを選ぶ際にチェックしておきたいポイントについてピックアップした。
必要な機能が実装されているか
特にノーコード開発ツールにおいて、どのようなアプリケーションを作成できるかは提供されているテンプレートによって決定される。ローコード開発ツールでも、テンプレートに用意されていない機能は自らソースコードを記述する必要があったり、実装できなかったりする可能性がある。自分が作成したいアプリケーションにはどんな機能が必要なのか、その機能が実装されているツールはどれなのかということを、ツールを選ぶ前にはっきりさせておかなければならない。
他のアプリケーションとの連携が可能か
基本的に業務で作成されたデータは、さまざまなアプリケーションで利用される。データの共有を安全かつ効率的におこなうためには、他のアプリケーションとの連携は必要不可欠である。
多くのローコード開発ツールでは、ソースコードの記入によって他のアプリケーションと連携できる場合が多いが、ノーコード開発ツールでは連携先が制限されているケースもある。現在社内で使用しているアプリケーションや、今後連携させたいアプリケーションが連携に対応しているかどうかは確認しておくべきだろう。
ローコード・ノーコードまとめ
ローコード・ノーコード開発ツールにはさまざまなものがあり、実装できる機能はツールのテンプレートに依存することや、それぞれのツールには特徴があることがわかった。しかし、ローコード・ノーコードについてもメリットだけではなくデメリットがあるので、ローコード・ノーコード開発をおこなうか否か、どのツールを使うかべきかについては、それぞれの用途や作りたいシステムによって変わってくる。フルスクラッチ開発も含めてさまざまなツールや開発手法を比較検討して、目的に一番合ったものを選びたい。