iPaaSとは?代表的なサービスやメリット、Paasなどとの違いと併せてを解説
2023.01.06
2022.12.28
iPaaSは、Integration Platform as a Serviceの略称で、異なるサービスやアプリケーションなどをつなぎ、情報の統合・連携を行うサービスである。
今回は注目を集めているiPaaSについて、種類やメリット、混同されやすいSaaS、PaaS、IaaSとの違いについて解説する。あわせて、iPaaSの代表的なサービスについても紹介する。
目次
iPaaSとは?
iPaaS(アイパース)とは、Integration Platform as a Serviceの頭文字を組み合わせた言葉で、異なるサービスやアプリケーション同士を繋ぐことで、情報の連携や統合ができるクラウドサービスである。iPaaSを利用すれば、オンプレミス型とSaaS、またはSaaS同士の連携が可能となる。さらに、データや業務フローの連携もiPaaSの機能として挙げられる。
複数のシステムでバラバラに管理していた情報が一元化できるため、過去に利用していたオンプレミス型サービスに膨大なデータが残っているケース、部署間で利用しているクラウドサービスが異なるケースなどの企業課題を解決する一手として、近年注目を集めている。
iPaaSの種類
iPaaSは大きくレシピ型、ETL/ELT型、EAI型、ESB型の4種類に分けられる。
レシピ型とは、ツール連携においてユーザーがよく使うワークフローがレシピ(テンプレート)として用意されているものである。自社にあったレシピを選べば、複雑な知識がなくともすぐに活用できるというメリットがある。
ETL/ELT型は、Extract、Transform、Loadの頭文字をとったものである。データをExtract(抽出)、Transform(変換)、Load(格納)の手順で処理するため、素早く大量のデータを移したり、各所に点在するデータを集約したりする際に役立つ。
EAI型は、Enterprise Application Integrationの略称で、企業間の異なるシステム同士を連携させるものである。ETL/ELT型より多様で高機能な処理ができるため、リアルタイムで整合性を保つ必要のあるデータの連携などに適している。
ESB型は、Enterprise Service Busの略称で、データ連携にSOA(サービス指向アーキテクチャ)を使用するものである。SOAとは、独立したアプリケーションを連携させることで大規模なシステムを構築する手法である。このSOAによって異なるアプリケーションを一つのシステムとして利用できるようにするのが、ESB型の特徴といえる。
RPAとの違い
iPaaSとよく比較されるのがRPAである。RPAとは、Robotic Process Automationの略称で、PCやクラウド上で動くロボットを指す。
RPAを活用すれば、今まで人が行っていた単純定型業務を自動化できる。近年では学習機能が備わっているツールも増えており、業務をこなすたびに習熟度が上がり、作業スピードも速くなる。RPAをうまく活用することで、作業効率のアップ、ヒューマンエラーの削減など多くのメリットが期待できる。
ただし、個別判断が求められたり、ルールの多かったりする非定型業務はRPAによる自動化は不向きな点は注意が必要である。
iPaaSとRPAはどちらか一方のみを使うではなく、ツールの特性や行いたい作業によって適切な使い分けを行うことが重要である。
iPaaS導入のメリット
サービスやシステムの連携ができるiPaaS。導入することで企業にはどのようなメリットが見込めるのだろうか。詳しく解説する。
コストや時間を抑えてシステム統合が可能
情報やシステムの統合、連携作業は従来であれば膨大の時間とコストがかかる作業であった。しかし、iPaaSを活用すれば、短期間かつ低コストでシステム統合、連携が可能となる。
iPaaSサービスの中には、ノーコードで専門知識がなくても直感的に操作できるものもある。エンジニア人材が不足している企業でも導入しやすい点も、iPaaSの特徴といえる。
業務効率化を実現
SaaSの台頭により、自社内でさまざまなシステムやサービスを利用している企業は多いだろう。
iPaaSを導入し、分散したデータを一元管理できれば、二重入力や他部署への問い合わせ等の手間が省け、業務効率は向上する。情報共有もスムーズに行えるようになるので、部署を跨いでデータの共有が必要な業務や、リアルタイムでデータを取得する必要がある業務などで、特に利便性を感じられるだろう。
多角的な分析がスムーズに
これまで、他部署のデータを使って分析を行いたい場合は、情報提供の依頼、収集、必要なデータの抽出、加工など、多くの処理が必要であった。しかしiPaaSを導入すれば、各部署に点在していた情報をリアルタイムで確認できるようになり、分析にも素早く取り掛かれる。
また、オンプレミス型のシステムとも連携可能なため、過去のデータも有効活用できる。幅広いデータを活用して、多角的な分析、スピーディーな分析が可能となる点は、企業の成長や事業の発展にもプラスになるといえる。
新しいシステムの導入もしやすい
近年、ビジネスに役立つさまざまなSaaSが誕生している。そのため、今まで使っていたサービスをやめて、新たなシステムやサービスを導入したい、既存のシステムに加えて、新たなシステムやサービスを追加したいと考える企業も今後ますます増えるだろう。
新しいシステムを導入する際に多くの企業が懸念事項として挙げるのが、データの移行や連携である。スムーズにデータ連携ができなければ、かえって業務効率を落としてしまったり、作業を複雑にしてしまったりするケースも考えられる。
iPaaSは、API(Application Programming Interface)が公開されているSaaSであれば、すぐに連携が可能である。新しいシステムであってもスムーズにデータ連携ができるため、企業が積極的に自社に有益なシステムを導入しやすくなるのは大きなメリットである。
iPaaS導入時の注意点
導入することで多大なメリットが期待できるiPaaSだが、導入時の注意点やデメリットが少なからず存在する。詳しくみていこう。
APIが公開されていないサービスには使えない
iPaaSは、各ツールのAPIを連携させることで機能する。そのため、APIが公開されていないツールの連携はできない。
また、APIが公開されているツール同士でも連携がうまくできないケースもある。連携が可能かどうかは実際に利用してみなければわからないため、不安が残る場合はトライアル期間があるサービスを選ぶとよいだろう。
運用に深い知識が必要となる製品もある
上述した通り、iPaaSにはさまざまな種類のサービスが存在する。レシピ型であれば、自社に会うレシピを選択するのみなので簡単に運用可能で、プログラミングやシステムに関する知識や複雑な操作は必要ない。
しかし、多様で高機能な処理が可能なETL/ELT型、EAI型、ESB型の場合は、システム連携やデータ連携の知識、その後の運用、メンテナンス、管理などにかかわる知識が求められることもある。
iPaaSを検討する際は、自社が求める機能が備わっているかにプラスして、社内人材のスキルや知識も考慮したうえで、サービスの選択をしてほしい。
SaaS、PaaS、IaaSとの違い
iPaaSと似た言葉に「SaaS」「PaaS」「IaaS」がある。それぞれの言葉を耳にしたことがあっても、意味や違いがはっきりとわからないという人は多いだろう。ここからは、SaaS、PaaS、IaaSそれぞれの意味や特徴と、iPaasとの違いについて解説する。
SaaS(サース、サーズ)
SaaSは、Software as a Serviceの略称で、クラウド上でソフトウェアやアプリケーションを提供するサービスを指す。具体的には、ZoomやSalesforce、DropboxやマネーフォワードなどのサービスがSaaSにあたる。
目的に合わせて多様なサービスが提供されており、個人、法人問わず幅広く利用されている。インストール不要でバージョンアップやセキュリティ対策などをベンダーに任せられるので、専門知識を持つエンジニアが不足している企業でも導入しやすいのがメリットといえる。
PaaS(パース、パーズ)
PaaSは、Platform as a Serviceの略称で、クラウド上でアプリケーション稼働に必要なプラットフォーム(OS、データベース、ミドルウェアなど)を提供するサービスを指す。代表的なサービスとしては、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platformが挙げられる。
手間のかかるインフラ設計が不要で、保守や管理の手間もかからないのがメリットだ。低コストかつスピーディーに目的に合うプラットフォームを調達できるため、要件の少ないアプリケーション開発やテストアプリ開発などに利用されるケースが多い。
IaaS(イアース、アイアース)
IaaSは、Infrastructure as a Serviceの略称で、クラウド上でシステム構築に必要なインフラ環境(サーバー、ネットワーク、ストレージ、各種機材など)を提供するサービスを指す。代表的なサービスとしては、PaaSと同様、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platformが挙げられる。
SaaSやPaaSでは難しい高度なシステム構築を行う場合や、カスタマイズ性や自由度の高いアプリケーションを開発する際に主に用いられる。インフラの保守や運用以外はすべて自社で管理する必要があるため、導入には知識と技術のあるエンジニアの存在が不可欠である。
SaaS、PaaS、IaaSとiPaasの違い
SaaS、IaaS、PaaSはクラウドサービスを利用形態によって分類され、付けられた名称である。一方で、iPaaSは、SaaSやオンプレミス型システムの統合、連携を目的として提供されるサービスである。プラットフォームを提供するという意味合いではPaaSと似ているが、両者では目的と用途が違うため、混同しないよう注意したい。
iPaaSの代表的なサービス4選
iPaaSには、さまざまなサービスがある。ここからはiPaaSの代表的なサービスについて、特徴やメリットを紹介していく。
Zapier(ザピアー)
Zapieは、世界シェアNo.1を誇るレシピ型のiPaaSサービスである。複数のアプリケーションを統合し、ワークフローを構築、自動化することで業務効率化を実現。5,000以上のアプリとの連携がノーコードで簡単にできるため、プログラミング知識がなくても運用できると利用者からの評価も高い。無償プランも用意されているので、気軽に始められる点もメリットといえる。
なお、現時点(2022年12月)では日本語対応していないので、その点は注意してほしい。
Anyflow(エニーフロー)
Anyflowは日本で生まれたレシピ型iPaaSサービスである。ノーコードで海外のSaaSはもちろん、Smart HRやfreeeなど日本生まれのSaaSとも連携が可能な点が、大きな特徴といえる。国産サービスゆえ、日本企業にフィットしたわかりやすいUIと、日本語でのサポートが受けられる点はメリットである。
Mulesoft(ミュールソフト)
ESB型のiPaaSサービスであるMulesoft。数あるサービスの中でもセキュリティの高さは顕著で、強固なセキュリティが求められる金融機関などでも採用されている。操作性がよく、一つのプラットフォーム上で統合、運用、管理が一元的にできる。最適なツール連携方法やサービスの利用方法についてのコンサルティングやレクチャーなど、手厚い支援が受けられるのもMulesoftの特徴といえる。
DataSpider Servista(データスパイダーサービスタ)
DataSpider Servistaは、HULFTが提供するiPaaSサービスである。ノーコードで、データ、クラウドサービス、lotなど多様な連携が可能。高速処理機能が実装されているので、膨大なデータも素早く処理し、すぐに取り出せる。
システムや事業規模に合わせて選べるパッケージプラン、最短1か月から利用できる月額ライセンスのほか、初期導⼊時の技術支援や、技術コンサル、システム設計などが受けられるプロフェッショナルサービスも用意されている。
iPaaSでシステム連携やデータ統合の課題を解決
ソフトウェアの購入やインストールなどの手間がかからないクラウドサービスは、今後ますます導入企業が増えていくだろう。しかし、やみくもにサービス導入してしまうと、データの孤立化や煩雑化など新たな課題が発生する。
そのような問題を解決できるのが、iPaaSである。iPaaSを活用すれば、システムやデータの連携、統合がスムーズに行える。また、データを一元管理できるため、業務効率の改善やスピーディーなデータ分析も可能になる。
iPaaSの導入を検討する際は、iPaaSの特徴やメリットデメリット、iPaaSサービスの種類や機能、特徴をよく理解して、自社にあうツールを選択してほしい。”