客単価とは?意味や計算方法、分析するメリット、上げる8つの方法を解説

2023.06.15

実店舗やECサイトの売上に関連する重要な指標が「客単価」だ。客単価は売上拡大はもちろん、店舗経営の方向性や売上目標の設定、経営の振り返りや見直しにも重要な役割を果たす。

実際に売上を挙げるために客単価を上げたいものの、計算方法や具体的な施策方法がわからないという担当者も多いだろう。この記事では、客単価の概要や計算方法、分析するメリット、客単価を上げるための8つの方法を解説する。

客単価とは

客単価の意味や概要、計算方法を解説する。

客単価の概要

客単価とは「顧客ひとりあたりが1回の買い物で支払う・購入する金額」を指す。顧客単価とも呼ばれる。

顧客が1回あたりの買い物やサービスの提供で支払った金額の平均値は「平均客単価」と呼ばれる。ただし、飲食業のように業種によっては、平均客単価=客単価と呼ぶ場合もあるため注意しよう。

客単価の計算方法

純粋な客単価の計算方法は「顧客が支払った金額の総額」で算出できる。ひとりの顧客が、1回の買い物で500円の品物と750円の品物を購入した場合の客単価は、1,250円だ。

平均客単価は「指定の期間の売上総額 ÷ 同期間の客数」で算出できる。売上総額が100万円、利用客数が100人だった場合の平均客単価は1万円となる。「客単価の算出」といえば、平均客単価の算出を表すことが多いのを覚えておこう。

客単価を分析するメリット

経営上でも重要な指標となる客単価は、算出し分析することで、店舗やECサイト経営上でも多くのメリットが得られるだろう。客単価を分析することで得られるメリットを解説する。

売上拡大につながる

客単価は、売上に直結する重大な指標のため、客単価を分析することで売上拡大への具体的な施策が把握できる。集客のための施策を多く行っても、実際に顧客が購入する金額が少ない、または購入機会がなかった場合には売上は上がらない。一方で集客が少なくても顧客ひとりあたりが購入する金額が高ければ売上は上げられる。

客単価を分析することで「商品価格は適正か」「商品の陳列数や在庫数は足りているか」「商品のレイアウトや陳列場所は適正か」など、売上が上がらない原因や店舗の持つ課題を把握できるため、売上を上げるための具体的な施策を立てやすい。客単価の分析は、売上を上げるために必須といえるだろう。

店舗経営の方針やブランディングに沿っているかを確認できる

企業や店舗で決めた経営方針やブランディングに沿った、店舗運用ができているかどうかを把握するのにも、客単価の分析が役立つ。「高級路線」を方針やブランディングとしている場合、客単価を分析すると「購入金額が高く購入数が少ない」というバランスになる。逆に「コストパフォーマンス重視、薄利多売」の方針ならば、客単価を分析すると「購入金額が少なく購入数が多い」というバランスになるだろう。

客単価を分析することで、売上だけでは分析できない、1回の買い物当たりの単価や注文数も分析できる。経営方針やブランディングが実現できているか、競合店と比較して価格や注文数に差がないかなどの把握にも役立つだろう。

経営の見直しにつながる

客単価を分析した結果と、経営方針やブランディングとの間で差異を発見した場合は、経営の見直しにつなげられる。「薄利多売」の方向性で経営を進めていたものの、客単価を分析すると商品販売数が少ないという結果が出ていた場合「顧客が多くの商品を購入できない」原因があったり、営業の方向性がずれていたりする可能性がある。商品価格を見直す、顧客のクロスセルへ誘導するための割引クーポンやまとめ買い割引を導入する、などの施策を行うといった経営の見直しにつなげられる。

客単価が低下する原因

客単価は売上拡大や経営方針の見直しにつながる重要な指標である一方、施策によっては客単価が下がり売上も下がってしまうことがある。客単価の低下防止のために知っておきたい、客単価が低下する原因を解説する。

ひとりあたりの購入金額が減少する

顧客の購入個数を上げる目的で導入した施策によって、購入金額が下がってしまうことがある。たとえば安い価格帯の商品を増やすと、まとめ買いやついで買いに誘導できれば購入個数も購入金額も上がるものの、ひとつの商品のみで顧客が満足してしまうと顧客単価は下がってしまう。

客単価を上げるための施策として、商品数やラインナップを増やすことを検討している場合には注意が必要だ。

ひとりあたりの購入個数が減少する

客単価を上げるための施策のひとつに、セールの開催がある。セールを開催するとふだんよりも割引価格で購入できることから、セールを機に購入個数を増やす顧客が多いため、客単価も上がることになる。ところが、セールが終了すると商品が通常価格に戻るためひとりあたりの購入個数は減少することになり、当然客単価も下がってしまう。

次のセールを待つ顧客の「買い控え」も客単価が下がる原因となるため、セールの開催時期や回数に注意するのが重要だ。

客単価を上げる8つの方法

客単価を上げるための施策にはさまざまな方法があり、顧客層や経営方針などに沿った施策を選ぶのが重要だ。客単価を上げるための代表的な8つの方法を解説する。

商品単価を上げる

商品の販売価格を上げれば客単価は上がる。ただし単純に値上げをしただけでは顧客離れのリスクが発生してしまうだろう。商品単価を見直す場合には、顧客が値上げに納得できる付加価値を提案し、訴求するのが有効だ。たとえば「原材料を国産へ変更した」「新鮮な食材のみを使用」などの付加価値をパッケージで提案したり、購入後に受けられるアフターサービスを付帯したりする方法がある。

商品の原価率が高いと、商品価格を高くしても利益が出にくい。商品の販売価格を上げるときには、原価にかかっている費用についても見直しをしよう。たとえば保存期間の短い原材料を使用している商品の場合、廃棄数が多く原価率も上がってしまう。保存期間の長い原材料に見直して、原価率を下げることで利益が出せる。

まとめ買いによる割引や特典を付ける

顧客のまとめ買いを誘発し、客単価を上げる方法として「化粧水+乳液+クリームの基礎化粧品セット」「野菜+肉+豆腐+魚介+鍋の素でお鍋のセット」などコンセプトをまとめた商品をセット販売する方法がある。

ほかにも「3点以上のお買い上げで10%オフ」「ひとつ350円の価格の商品を3つまとめて購入すると1,000円、組み合わせ自由」「5,000円以上のお買い上げで送料無料」など、まとめ買いによる割引や特典を付ける方法も有効だ。

上位商品の提案をする(アップセル)

顧客が購入しようとしている商品よりも上位の商品をおすすめし、購入すれば購入金額が増えて客単価も上がる。ただし、上位商品をただ押し売りするだけでは顧客離れのリスクもあるため「上位商品を購入することで得られる付加価値」や「お買い得感」も一緒に提案するのが重要だ。たとえば顧客が今購入している商品に対して「上位商品には異なる機能が付いている」「今なら通常価格よりも割引で購入できる」などの提案を行うことが有効となる。

関連商品を提案する(クロスセル)

顧客へ関連商品を提案することでついで買いを誘発し、客単価を上げる方法もある。たとえば精肉売り場に焼肉のタレやステーキソースを陳列する、お酒のコーナーにおつまみを陳列するなど関連商品のついで買いを誘発したり、ECサイトの商品ページに「この商品を購入した方はこんな商品も購入しています」と関連商品を表示させたりする方法がある。

価格設定で「松竹梅」を用意する

「松竹梅の法則」を利用して客単価を上げる方法も有効だ。「松竹梅」の3つの価格帯を用意すると「高いもの、安いものは避けてほどほどのものを選びたい」という心理が働き、真ん中の「竹」の価格帯を選ぶ人が多い。「竹」に利益率が高い、在庫が確保しやすい商品を設定することで、客単価を効率よく上げられる。

商品だけでなく、ラッピングサービスなどの付帯サービスにも松竹梅は利用できる。

特定の顧客に対する優遇を行う

リピーター顧客に対して優遇措置を提供し、お得感を出すことで購買意欲を上げ、客単価を上げる方法もある。たとえば特定の顧客のみ割引クーポンの付いたセールの案内を出す、数量限定の商品を特定の顧客へ優先販売をするなどの施策がある。

特典を付ける

商品の購入者に対して特典を付け、購入を促す方法だ。「商品を購入した方にサンプルプレゼント」「商品を●個以上購入するとオリジナルのクーラーボックスプレゼント」「●円以上購入で空くじなしの抽選がひける」などの特典がある。

決済方法を増やす

決済方法を増やすことで、購入層が増える。また、高額商品の決済にクレジットカード決済を導入すれば、購入機会が増える。現金以外のクレジットカード、スマホ決済、電子マネー決済、ID決済などさまざまな決済方法があるため、購入層のニーズに沿った決済方法を導入しよう。

客単価は売上や経営方針、ブランディングにも関連する重要な指標

客単価の概要や計算方法、客単価を上げるメリットや方法を解説した。客単価は売上を上げるだけでなく、経営方針の見直しなどにも役立つ重要な指標だ。客単価の分析や客単価を上げるための施策を行い、店舗やECサイトの運用に活用しよう。

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