マーチャンダイザーとは?仕事内容や必要なスキル、バイヤーとの違いなどを解説

2023.06.15

「マーチャンダイザー」とは、ファッション業界の商品企画や開発などにおいて、プロデューサー的な役割を担う職種である。略称で「MD」と呼ばれることもある。

マーチャンダイザーの仕事内容と、仕事をする上で意識すべきことを紹介する。また、混同されやすいバイヤーとマーチャンダイザーの違いについても言及する。さらに、マーチャンダイザーに向いている人や求められるスキル、有利な資格とキャリアパスについても解説していく

マーチャンダイザーとは

「マーチャンダイザー」という職種を耳にしたことがあるだろうか。マーチャンダイザーとは、英語の「マーチャンダイジング」が元になった言葉である。マーチャンダイジングとは、日本語では「商品化計画」のことだ。つまり、自社で製造・販売する商品の企画立案から、売り場作りなどの販売までを総合的にプロデュースする業務担当者がマーチャンダイザーである。

今回は、商品化計画に携わる職種であるマーチャンダイザーの仕事にフォーカスして、詳しく紹介していこう。まずは、マーチャンダイザーの主な仕事内容と活躍する業界について解説する。

マーチャンダイザーの仕事内容

マーチャンダイザーの仕事内容は、商品の開発を手掛けることから始まる。市場の傾向を分析し、消費者のニーズにマッチする商品の企画立案することが、マーチャンダイザーの重要な業務のひとつだ。また、開発・製造した商品をどのタイミングで市場に流通させるのかなども検討する。さらに、価格設定やコスト管理を担当することもある。

マーチャンダイザーの業務内容や仕事の幅は、企業や製品の特性、ブランドによって異なる。例えば自社ブランドを保有する企業では、マーチャンダイザーは自社商品の開発をいちから手がけることになる。しかし、小売のみを行っている企業では、マーチャンダイザーが担当するのは商品開発以降のフェーズのみである。

マーチャンダイザーが活躍する業界

マーチャンダイザーが担当するマーチャンダイジングとは、消費者の欲求に沿う商品を、適切なタイミングと数量で提供するための企業活動のことを指す。製品の製造販売を行う企業は多岐にわたるが、その中で前述した業務を担当する人員をマーチャンダイザーと呼称するのは、小売業の中でもファッション関係・アパレル関係が多い傾向にある。

そのため、ファッション・アパレル業界以外で同じような分野の仕事を担当する場合には、マーチャンダイザーとは呼ばれないことも多々ある。また、マーチャンダイザーは略称で「MD(エム・ディー)」と表記・呼称されることもある。

マーチャンダイザーの仕事で意識すべきこと

続いては、マーチャンダイザーの仕事で意識すべきことを見ていこう。企業によって異なるが、一般的にマーチャンダイザーが担当する業務内容は非常に幅広い。そのため、自社でマーチャンダイザー職を募集する際には、どのような意識を持って業務に臨める人材を採用すべきかを事前にしっかりと確認しておきたいものだ。

マーチャンダイザーとして働く際には、いくつかのポイントがある。例えば、「売れる商品をつくる」「適切な価格で販売する」「流通させる数量をコントロールする」「販売タイミングを見極める」「適切な販売場所を選択する」などが挙げられる。このようなポイントを押さえた企画立案と販売戦略を立案・実行できる人物が、マーチャンダイザーの担当としてふさわしいといえる。

マーチャンダイザーのやりがい

マーチャンダイザーの業務には、一体どのようなやりがいがあるのだろうか。まず、自社で展開するブランド製品を消費者に届けるためには、適切な販売戦略を立てる必要がある。せっかくよい製品ができても、適切に商品を必要とする人の手元に届かなければ無駄になってしまうためだ。自社製品をいかにマッチする消費者に届けるかという流れを正確にコントロールするのが、マーチャンダイザーに課された使命である。

そのためマーチャンダイザーは、数字を分析して戦略を練る力が必要であり、また広告・PR、売り場作りなどいかに自社製品を魅力的に消費者に届けるかを考えるアイディア力をも求められる。

販促の要を担う重要なポジションである点は重責であると同時に、やりがいとなるだろう。また、toBではなく、toC消費を扱うため自ら手掛けた商品のヒットをより身近に感じやすいという点もやりがいにつながりやすいといえる。

マーチャンダイザーの年収

マーチャンダイザーの年収は、勤務先の企業によって大きく異なる。また、これまでの業務経験や能力が考慮された上で給与が決定することもあることに留意しておきたい。代表的な求人サイトを確認すると、マーチャンダイザー職での求人は、300〜520万円程度であることがわかる。

過去にマーチャンダイザーとして別の企業で活躍した実績や、手がけた商品が大きくヒットしたなどのアピールポイントがある場合には、自社における今後の活躍を期待してよりよい待遇で採用すべきかどうか、検討が必要である。また、転職者を受け入れる場合には、ファッション・アパレル業界以外でマーチャンダイザーに相当する業種を担当してきた経験を持つケースも考えられる。その場合には、マーチャンダイザーとして即戦力となることが期待できるだろう。

バイヤーとマーチャンダイザーの違い

ファッション・アパレル業界でマーチャンダイザーに似たイメージの業種とされるものに、バイヤーがある。ここでは、バイヤーとマーチャンダイザーの違いを紹介したい。

マーチャンダイザーと混同されがちではあるが、ファッション・アパレル業界でのバイヤーは商品の買い付けに特化した職種である。他社の製品を買い付けて自社で販売することをメインの業務内容としているため、業務内容が限られる。

一方、マーチャンダイザーも商品の買い付けを担当することはあるが、それ以外にも商品開発や販売戦略の立案などを手がける。ファッション・アパレル業界においては、マーチャンダイザーの方がバイヤーよりも業務範囲が広い職種であると覚えておけばよいだろう。

自社でマーチャンダイザーを採用する場合には、マーチャンダイザーの業務範囲がどこからどこまでなのかという業務の切り分けを、あらかじめ明確にしておくことをおすすめする。

マーチャンダイザーになるには?

ファッション・アパレル業界で活躍するマーチャンダイザーになるには、どのような方法があるのだろうか。マーチャンダイザーに向いている人や求められるスキルについて確認しておこう。また、マーチャンダイザーに有利な資格とキャリアパスもあわせて紹介する。

マーチャンダイザーに向いている人

マーチャンダイザーに向いている人は、まず、アパレル業界のトレンドに興味があって詳しい人である。これから製造・販売するとヒットするのはどんな商品なのかを企画するマーチャンダイザーは、業界トレンドに敏感であることが欠かせない要素だ。

また、市場調査や販売計画の立案もマーチャンダイザーの業務範囲内であるため、仕事上で数字を扱うことに抵抗がない人に向いているといえる。

さらに、多くの人と関わりながら仕事をしていく必要があるため、コミュニケーションスキルが高い人も、マーチャンダイザーの適性があるといえるだろう。自社内はもちろん、社外のメンバーとも協力して業務を推進できる能力があれば、マーチャンダイザーにはさらに有利である。

マーチャンダイザーに限ったことではないが、優れた能力を持つ先輩から見習える部分を学び、自分のものにする前向きさや貪欲さも必要であろう。

マーチャンダイザーに求められるスキル

続いては、マーチャンダイザーに求められるスキルについて確認しておこう。マーチャンダイザーには、市場分析や市場動向を分析するスキルが必要である。また、企業によっては製造や買い付けのタイミングで海外とのやりとりをする場合も多いので、語学能力に長けていれば有利であろう。この場合、アパレル業界の取引先に多い中国語と、世界の共通言語である英語が使えることが望ましい。

さらに、コストマネジメントができる金銭感覚や、チームで仕事をする上で欠かせないマネジメント力も高い方がよい。複数人のグループで業務を推進していく場合には、それぞれの能力に秀でているメンガーがいればプロジェクトが成功するだろう。

マーチャンダイザーに有利な資格

マーチャンダイザーとして業務に従事する場合に、必要な資格は特にない。ただし、保有していると有利な資格はいくつか考えられる。

まずは、一般財団法人日本ファッション教育振興協会による民間資格、「ファッションビジネス能力検定」である。ファッション・アパレル業界に従事する際に必要なベールとなる知識が備わっていることの証明になる資格だ。また、経営学やマーケティングに関する知識やそれに関する資格もあるとよい。さらに、販売士2級や、英語能力が証明できるTOEICも取得しておくとなおよいだろう。

マーチャンダイザーのキャリアパス

マーチャンダイザーを目指す場合、キャリアパスとして考えられるのは、ファッション・アパレル業界に進出している企業に就職することである。また、百貨店や流通、小売業界で事業展開する企業でも、マーチャンダイザー職が設けられているケースがある。

新卒入社後すぐにマーチャンダイザーになることは難しいため、店舗販売や営業などで業界知識などをしっかりとつけた上での配属が望ましい。マーチャンダイザーとして独り立ちする前には、マーチャンダイザーアシスタントとして経験を積むことも重要である。

マーチャンダイザーが活躍しやすい環境を構築しよう

トレンドが目まぐるしく変化するファッション・アパレル業界で活躍するマーチャンダイザーは、市場の流れに敏感でセンスがあることが何よりも必要な業種だといえる。業界知識が豊富で、市場動向や顧客の声から製品のイメージを作り出せる能力を持っているマーチャンダイザーは、自社に大きな利益をもたらす存在である。

マーチャンダイザーを採用する際には、マーチャンダイザーが活躍しやすい環境を構築することを心がけたい。自社ブランドの爆発的なヒットを狙うなら、優秀なマーチャンダイザーが集まる組織運営を目指したいものである。”

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