在庫日数とは?意味や求める計算方法や適正、目安などを解説

2023.06.15

どのくらいの期間で商品が売れているのかを把握する指標として「在庫日数」がある。小売店など、商品の在庫管理が必須となる場合に役立つ指標だ。商品は在庫として倉庫に眠ったままではスペースを取るだけで売上にはならないため、在庫日数を活用して適正な在庫量にしていきたい。

本記事では、在庫日数の意味や、混同されやすい「在庫回転日数」との違い、在庫日数を把握するメリットや計算方法、在庫日数の適正や目安を解説していく。

在庫日数の意味とは?

在庫日数とは、「在庫として抱えている商品が何日分の売上に相当するか」の指標のこと。適正な在庫を管理していくのに重要となる数値だ。商品は売れたら売上になるが、残っていたら在庫のままである。在庫日数は、短ければ短いほど、売上に変わるまでの期間が短く、長いほど在庫として長期間抱えてしまっていることになる。

在庫日数の計算は「どのくらいの期間でこの商品は売れるか」が見えてくるため、発注数を決めるときの根拠としても活用できる。例えば、あと7日ぐらいで売れると分かれば、5〜7日後に入荷するように発注をかけることや、在庫日数が長いものは定期的に発注をしていたとしてもストップをかけるなど、判断基準の一つになる。

また、せっかく売れ筋の商品があっても、なかなか売れていない商品が倉庫内のスペースを取っていることで売れ筋商品の入荷ができなければ売上にも繋がっていかない。在庫日数の把握は、限られたストックスペース内で売上に繋がるための在庫を残しておくためにも重要である。

在庫回転日数との違い

在庫日数と混同しやすい用語に「在庫回転日数」がある。在庫回転日数も、適正な在庫管理を行うための指標であることは同様だ。両者の違いは次の通りである。

在庫日数・・・在庫として抱える商品が何日分の売上に相当するかの指標

在庫回転日数・・・対象となる在庫が何日間で入れ替わっているかの指標

在庫回転日数も、数値が短いほど短期間で在庫が入れ替わっていることが分かる。計算方法は、次の通りだ。

在庫回転日数=日数÷在庫回転率

在庫回転率=売上原価÷平均在庫金額

売上原価=期首の在庫金額+仕入れ在庫金額ー期末の在庫金額

平均在庫金額=(期首の在庫金額+期末の在庫金額)÷2

在庫日数を把握する目的やメリット

在庫日数は何のために把握し、把握することでどのようなメリットがあるのだろうか。3点ある。

現在の在庫数が適正かが分かる

在庫日数を把握する目的やメリットとして一番にあげられるのは「在庫数が適正かどうか」が分かることだ。「この商品が500個ある」というのが適正な在庫数なのかは、それだけを見ても分からない。倉庫に60日間残っているのか、入荷してから3日で売れるのかなど、在庫日数を計算することで、過剰在庫になっているか、在庫切れの可能性があるかが分かる。

例えば、次のケースを考えてみてほしい。

<商品A>

在庫数:300個

在庫日数:1.5日

<商品B>

在庫数:20個

在庫日数:10日

在庫数だけを比較すると商品Aが多く、たくさん在庫が残ってしまっているように見える。しかし、在庫日数で見ると、商品Aは1.5日で商品Bは10日と、商品Bのほうが在庫として倉庫に存在している期間が長いことが分かる。一見すると「こんなに在庫数があって売り切れるのかな?」と思えるが、在庫日数をきちんと把握することでどちらが適正な在庫かを見極められる。在庫日数からも売上に繋がっているかを判断できるため、どの商品がどのぐらいの期間で売り切れているのかを見ることで、効率の良い在庫管理に繋げられる。

適正在庫が保たれ、倉庫が整理される

商品の在庫は、全てが在庫日数の短いものではなく、なかなか売れずに残ってしまうものもあるだろう。商品ごとの在庫日数を把握しておくことで売れ筋と売れにくい商品がわかる。これにより、例えば、あまり売れない商品は棚の一番下など、倉庫の中でも比較的取り出しにくい位置に。反対によく売れる商品は取り出しやすい位置に配置するなど、倉庫内の整理に活用できる。在庫日数をベースに倉庫内の商品の配置変えをすることで、効率よくピッキング作業ができるようになり、品出し時間の削減に繋がるだろう。

売上に繋がる商品に倉庫のスペースを割ける

どのくらいの日数で商品が売り切れるかが把握できると、そのタイミングに合わせて商品を発注できる。例えば、商品Aはあと3日で売りきれるだろうから、商品Aが保管してあった倉庫のスペースに次に入荷される季節商品Bを配置しようといった調整ができる。倉庫のスペースはどうしても限りがあるため、在庫日数が長いものばかりになってしまっては季節商品や売れる商品の在庫を置くことができない。在庫日数を見て発注を調整することも一つの方法だ。

在庫日数の計算方法

在庫日数は基本的に以下の計算式に当てはめることで求められる。

在庫日数=平均在庫金額(売価)÷平均売上金額

※平均在庫金額=(期首の在庫金額+期末の在庫金額)÷2

月、週、日ではそれぞれ次のように求められる。

【一か月の在庫日数】

一か月間の在庫日数=月平均在庫金額(売価)÷1か月の平均売上金額

月平均在庫金額500万円÷1か月の平均売上金額250万円=2か月

【一週間の在庫日数】

一週間の在庫日数=週平均在庫金額(売価)÷1週間の平均売上金額

週平均在庫金額100万円÷1週間の平均売上金額200万円=0.5週

【一日の在庫日数】

一日の在庫日数=日平均在庫金額(売価)÷1日の平均売上金額

日平均在庫金額30万円÷1日の平均売上金額20万=1.5日

在庫日数の適正や目安

在庫日数の適正

商品は在庫として保管されていても売上にはならない。在庫日数が短く、商品が倉庫に保管される期間が短いものは、効率よく売上に変化していることになる。しかし在庫日数が短すぎても適正な在庫量とは言えないのだ。在庫日数が長いとき、短い時のリスクをそれぞれ見ていこう。

在庫日数が長いときのリスク

在庫日数が長いと、キャッシュフローが悪化するというリスクだけではない。商品の保管期間が長いということは、それだけ商品が劣化するリスクがある。特に賞味期限や消費期限が設定されているものであれば、消費期限切れにも繋がりかねない。消費期限がなくても、長期間倉庫に保管されていると、商品が劣化する恐れもある。商品の品質を低下させないためにも、在庫日数が長くないか確認したい。

在庫日数が短いときのリスク

在庫日数は短ければ短いほどいいのだろうか。確かに在庫日数は短いほど、効率的に売上に変わっていることになる。そこで考えてほしいのが在庫切れの問題だ。

「在庫日数は短いほうが効率がいい」と、保管される在庫数を減らしすぎると、在庫切れが発生する可能性がある。商品が売れてしまって在庫がなくなれば、当然販売できないので売上も立たない。発注を毎日のようにできればいいが、週に1回、2週に1回など、期間が開いてしまうとその分、販売機会を損失することになる。在庫日数は数値が少ないほど効率的に売れていることになるが、在庫切れの恐れがあることも認識しておこう。

在庫日数の目安

在庫日数が長すぎても、短すぎてもそれぞれにリスクがある。ではどのくらいの在庫日数を目安と考えればいいのか。これは会社や業種、地域、商品など様々な状況、条件により異なるため「この在庫日数だと長い、短い」とは断定できない。

しかし、在庫日数が適正かどうかを判断する方法の一つとして、発注から納品までのリードタイムを把握してほしい。発注が締め切られる日にち、発注してから入荷するまでの期間を把握することは、在庫日数が適正かどうかを判断する一つの材料となる。

例えば、毎週水曜日に発注をして、発注の翌週の金曜日に納品されるとする。その場合、発注から納品までに9日間かかる。ということは、発注段階ですでに9日分の在庫数が倉庫にないと途中で在庫切れが発生して販売できなくなってしまう。

発注から納品までのリードタイム以外にも、商品ごとの在庫日数の比較をして売れ筋商品が次の納品までに売り切れていないかを検討することや、賞味期限切れでのロスが発生している商品の在庫日数を計算するなど、在庫日数を用いて違った角度からその商品が適正な在庫量かを確認してほしい。

在庫日数を把握して適正な在庫量を保とう

在庫日数は商品の適正な在庫数を把握できるだけでなく、倉庫内の整理や売れ筋商品に倉庫のスペースを割けるようになるなど、在庫日数を活かすことで売上にも繋がっていく。在庫日数が長すぎても、短すぎてもリスクを負ってしまうが、適した在庫日数は、会社によっても、商品の種類によっても異なる。そのため自社や店舗ではどのくらいの在庫日数が適正な数値かを計算して見極める必要がある。売り逃しにならず、長期保管にもならない、自社に適した在庫日数を目指してほしい。

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