フルフィルメントとは?意味やアウトソースするメリットなどを解説
2023.06.15

比較的簡単に開設できるECサイトを運営するうえで大切なのが「フルフィルメント」だ。フルフィルメントとは、ECサイトで注文を受けてから商品が発送されるまでの業務のこと。注文が増えてきて梱包作業や商品管理が大変になってきたと感じるときには、フルフィルメントをアウトソースできるサービスを利用するのも一つの手だ。
本記事では、フルフィルメントの意味や、市場規模、フルフィルメントサービスを導入するメリット、実際のフルフィルメントサービスの紹介をしていく。フルフィルメントサービスについて気になっている方は一読してほしい。
目次
フルフィルメントの意味とは?
フルフィルメントとは?
フルフィルメントとは、ECサイトで商品が注文されてから、お客さまに商品の配送が完了されるまでに必要となる業務全般のこと。具体的には、受注処理、入荷処理、商品の保管や在庫管理、ピッキング、梱包作業、出荷作業などだ。この他にも問い合わせ対応や返品対応、クレーム対応などが含まれる場合もある。
フルフィルメント業務は顧客満足度を向上させるために大切な業務である。フルフィルメントが粗雑に行われてしまうと、例えば商品の消費期限切れ、梱包の甘さからの商品破損、商品出荷でミスの発生などが起こる可能性がある。せっかく素敵な商品だと思って購入してくれたのにお客さまからのクレームにも繋がりかねない。特にセール時期などの繁忙期ではいつも通りの作業ができないことからミスしやすい状況も考えられる。
フルフィルメントサービスとは?具体的な業務
フルフィルメント業務を全て、もしくは一部、外部に委託できる「フルフィルメントサービス」というサービスがある。フルフィルメント業務をアウトソーシングすることで、プロに梱包作業や発送作業などをお願いできる。また、それまで入荷作業や梱包作業にかかっていた時間を、販売促進やマーケティングなどに当てられるといった特徴がある。
フルフィルメントサービスは主に、次の項目を行ってくれる。
入荷
商品が倉庫へ届き、受け入れることを「入荷」という。フルフィルメントサービスではメーカーやECサイト運営者側からサービス側の倉庫へ入荷される。
商品在庫管理
入荷した商品がフルフィルメントサービスの倉庫で保管される。
ピッキング
ピッキングは、出荷指示が入ると在庫から指示のあった数だけ商品を取り出すことだ。広い倉庫から指示のあった商品がピックアップされていく。
流通加工
商品によって包装やラベル貼り、箱詰めなどが必要となる場合がある。
梱包
緩衝材を入れてダンボールなどで梱包をしていく。その際に、クーポンやチラシなどを同梱できることもある。
発送
配送業者に梱包した商品を受け渡して発送をする。
主にこれらの業務を行ってくれるフルフィルメントサービスだが、上記以外にも、決済業務や、返品対応、コールセンターなど付随する業務を承ることもある。
フルフィルメントサービスと3PLの違い
フルフィルメントサービスと似た言葉に3PLがある。3PLは「3rd Party Logistics」の略称で、物流業務を第三者にお願いすることだ。
2つの違いは業務の範囲にある。フルフィルメントサービスはECサイトで注文されてから発送までの業務で、物流業務や受注処理などを含むのに対し、3PLは物流業務のみが範囲になる。
ちなみに「1st Party」がメーカーや荷主、 「2nd Party」が問屋や小売、「3rd Party」が物流事業者や3LP業者となっている。
フルフィルメントサービスの市場規模
REPORTOCEANが2021年4月25日に発行したレポートでは、世界のEコマースフルフィルメントサービス市場は2019年に約700億米ドルで、予測期間2020年から2027年で6.5%を超える成長率で成長すると予想されている。中でもアジア太平洋地域は、予測期間中、最高のCAGR(年平均成長率)を示すという予想がされている。
世界でオンラインショッピングや電子商取引プラットフォームは増加している。また、eコマースの新興企業や急成長する中小企業ではしっかりとしたロジスティクスインフラストラクチャが備わっていなく、十分な流通ネットワークが確立されていないこともあり、eコマースフルフィルメントサービスプロバイダーへ依存しやすい。ECの増加、eコマースフルフィルメントサービスプロバイダーへ依存しやすい背景などから、2020年から2027年の予測期間中に世界のEコマースフルフィルメントサービス市場のCAGRが高くなるとされている。
参考:Report Ocean「Eコマースフルフィルメントサービス市場は2027年まで6.5%のCAGRで成長すると予想されます」
フルフィルメントサービスを導入するメリット
市場規模も大きくなると予想されるフルフィルメントサービス。利用するとどのようなメリットがあるのだろうか。
プロに任せ、顧客満足度向上に繋がる
フルフィルメントの業務をプロに任せることで作業スピードが向上し、業務が効率化される。特に繁忙期シーズンに自社スタッフだけでフルフィルメント業務を行う場合、ミスが発生する可能性があるが、プロに任せることで安心感が生まれる。丁寧な梱包などでクオリティが保たれることから、サービス面が良くなり、顧客満足度に繋がることも。
マーケティングなど他の業務に注力できる
それまで時間を割いていた受注や梱包、発送作業などを全て任せられるため時間創出に繋がる。できた時間でマーケティングや販売促進、商品開発に注力でき、これらにしっかり取り組めることで、事業拡大や利益増にも繋がりやすい。また、事業が大きくなり各業務が煩雑になってきたときにフルフィルメントをアウトソーシングできれば、一つ一つの業務に集中できるようにもなる。
積極的な販売と人件費削減に繋がる
フルフィルメントサービスを導入することで「この注文量の梱包・発送作業をこの人数で対応できるか」を考えることなく、集中して販売を行うことができる。人手が不足していると感じているときはフルフィルメントサービスの導入を検討してみてほしい。
また、経費に関してもそれまでかかっていた人件費が削減され、最低限の固定費と、売上と連動した変動費に変わり、損益分岐点が下がることにも繋がる。
自社に合ったサービスを選べる
フルフィルメント業務の範囲は受注から発送までだが、クレーム対応や返品対応が含まれるかどうかなど、範囲は明確ではない。サービスによっても承っている範囲が異なるため、どこまでの範囲をお願いしたいのかによって利用するサービスも変わってくる。例えば、24時間365日稼働させたい場合、自社でずっと対応することは難しくても、24時間365日体制の業者であれば可能だ。また、パンフレットの同梱、採寸対応、ラッピング対応など細かいサービスを承っているサービスもある。賞味期限まで管理をしてほしい、倉庫内の温度設定をしてほしいなど自社がアウトソーシングで何の業務をお願いしたいのかを整理すれば、自社に合ったサービスを見つけられるだろう。
フルフィルメントの代行業者
フルフィルメントサービスを行う業者を4つ紹介しよう。
フルフィルメント by Amazon(FBA)
FBAはAmazonの配送ネットワークが使用できる、主にAmazon出品者に向けたサービスだ。Amazonフルフィルメントサービスセンターに商品を納品すると、受注や梱包、発送、カスタマーサービス、返品対応をAmazonが行ってくれる。Amazon出品用アカウントを作成し、Amazonカタログに商品を追加、商品をフルフィルメントセンターに送るといった手続きを経てFBAが利用できる。
FBAのメリットとしては、FBAを利用した商品がAmazonプライムの対象にできることだ。Amazonを利用する方はプライム対象の商品から選ぶことがあるため、購入されやすくなる。
また、特徴の一つにFBAカスタマーサポートがある。お客さまからの問い合わせに電話やメールで対応してくれるだけでなく、返品や返金の対応も行ってくれる。さらに、FBA海外配送では、67か国以上の国に販売範囲を広げられるサービスや、Amazon以外のEコマースで販売される商品もAmazonが梱包・発送する「マルチチャネルサービス」など事業拡大に繋がるサービスがあるのもFBAの特徴だ。
楽天スーパーロジスティクス(RSL)
楽天スーパーロジスティクスは商品の保管から配送までを承る、楽天市場出店店舗に向けた物流アウトソーシングサービスだ。店舗の仕入れ先やメーカーから直接センターへ納品後、商品を保管してくれる。出荷指示が入ると、スタッフが梱包に取り掛かる。梱包が終わったら日本郵便を通して配送が行われる。
特徴は、オプションサービスがあること。梱包時にラッピングやチラシ、販促物を封入や、コンテナ入庫による大量の入庫、食品・飲料など消費期限のあるものは、期限の近いものから出荷するといったサービスをオプションでお願いできる。
また、午後3時までの連絡で翌日配送してくれる「あす楽」や、365日の出荷対応も可能。倉庫も保管や出荷制限なく利用できる。
「RSLカルテ」というサービスでは、効率的に楽天スーパーロジスティクスを利用してもらうため、物流コスト推移や、入荷数、出荷数、保管数、長期保管傾向、売れ筋商品の欠品日数の情報を提供している。
佐川グローバルロジスティクス(エクストーム)
エクストームは、在庫管理ソフトのロジクラと佐川グローバルロジスティクスの共同サービスだ。特徴としては、24時間365日稼働をしていること。また、Shopify、NEXT ENGINE、CROSS MALLなどのECカートや受注管理システムと連携ができて自動出荷ができることがある。
急な出荷増にも対応できるキャパシティもあり、実際に最先端ロボット設備により24時間365日稼働することで、1件あたり2点として一日で最大2.75万件の入出荷を実現していてる。セール時などの繁忙期にも対応可能だ。
配送スピードでは、配送センターと直結することで最短当日午前のお届けを実現している。
ヤマト運輸
ヤマト運輸のフルフィルメントサービスでは、営業倉庫で商品を保管し、入庫、保管、梱包、配送、代金回収までをお願いできる。例えば、受注、データダウンロード、トータルピック、帳票発行、シングルピック、梱包、出荷などだ。
営業倉庫は全国に110か所ある。24時間365日稼働しており、関東と関西の一部地域は当日配送を承っている。海外輸入商品の国内向け流通加工、FBA向け納品代行などのオプションも利用可能だ。
フルフィルメントサービスを利用して事業拡大の一歩に
せっかくECサイトの受注数が増えているのに、梱包作業や商品管理の負担を増やせないからと言って受注数に上限を設けてしまうのは勿体ない。受注後から商品発送までを承ってくれるフルフィルメントサービスを利用することで、利益を伸ばすことに繋げられるだろう。人手が足りない場合や、マーケティングなどに注力したいときは、自社がどの業務をアウトソーシングしたいのかを整理して、フルフィルメントサービスを検討してみるのも一つの方法だ。