POSシステムとは? 概要や機能、メリット、デメリットを解説

2022.10.28

2022.02.25

商品の売買や取引を効率化するだけでなく、売買状況や顧客情報の取得と収集による販促にも活用される「POSシステム」。

小売業などレジ会計が発生する業種だけでなく、EC(電子商取引)化の拡大によって多くの業種で導入されるようになった。

この記事では、POSシステムの概要や機能、メリット、デメリットについて解説する。今後POSシステムの導入を検討している企業や店舗担当者も参考にしてほしい。

POSシステムの概要や仕組み、種類を解説

POSシステムの概要や仕組み、POSシステムを搭載した端末の種類を解説する。

POSシステムとは

POSとは「Point of Sales」の略で、「販売時点情報管理」と呼ばれる。商品が販売された時点で、商品に関する以下の情報をリアルタイムで収集、蓄積、管理をするアプリケーションを指す。

・販売日時

・販売店舗

・販売個数

・販売商品名

・販売商品の価格

・商品を購入した顧客の情報(年齢、性別など)

・会計時の状況(天候、イベント開催状況など)

POSを搭載したシステムの総称が、POSシステムだ。あらかじめ登録したPOSシステムのデータとバーコードの情報を照合させるため、決済時にレジへ商品名や価格を都度打ち込む必要がない。さらに商品の販売を通じて販売実績と顧客の購買環境をデータとして収集できるため、在庫管理やマーケティングに生かせる。

POSシステムは従来、対面での販売を行う小売業や流通業、飲食業などで主に使用されていたが、近年EC需要の増加に伴い幅広い業種に導入されるようになった。

POSシステムの仕組み

POSシステムは、商品の販売や決済を行うバーコードをスキャンして、データを収集する。POSシステムの仕組みを、小売店における決済の流れに当てはめると、以下の通りになる。

1.会計時、商品のバーコードをスキャンする

2.バーコードから収集したデータとPOSシステムのデータが照合される

3.照合データからレジ画面に商品や価格などが表示される

4.決済が完了すると、POSシステムに売上情報が蓄積される

5.POSシステムに蓄積されたデータを在庫管理や発注業務、マーケティングに活用する

POSシステムの種類

POSシステムを搭載した端末は、「POS端末」と呼ばれている。POSシステムはさまざまなPOS端末に搭載した上で活用されるのが一般的だ。

大まかなPOSシステムの特徴や、主なメリットを下記にまとめていく。

特徴メリット
筐体一体型のPOSシステム・POS専用の筐体の中に専用のソフトウェアをインストールして使用
・スーパーマーケットやコンビニで多く普及
・大〜中規模店舗にて広く利用されている
・専用回線を使用するため安定性が高い
パソコンPOSレジ・市販のパスコンにPOSアプリケーションを利用してい使用
・端末の選択肢の幅が広く、筐体のコストを抑えやすい
・ハードの交換が容易
タブレット・スマートフォン型POS・iOSやAndroidのタブレット端末にアプリをインストールして使用・タブレット端末を使用するため、手軽に導入が可能

筐体一体型のPOSシステム

POS機能が搭載された専用の筐体にバーコードを読み取るスキャナー、レシートを発行するプリンターなどが一体化した端末を指す。小売店の会計で活用されているレジはターミナルPOSの一種で「POSレジ」とも呼ばれている。会計や決済が恒久的な業務として発生する小売店などで、いつでもPOSシステムを活用できる端末だ。

パソコンPOSレジ

市販されているパソコンに、POSアプリケーションをソフトをインストールして利用する。推奨スペックの端末であれば、基本的に筐体を自由に選択できるので、比較的コストを抑えやすい。

タブレット・スマートフォン型POS

タブレットやスマートフォンをPOS端末として使用することもできる。パソコンPOSのモバイルデバイス型とイメージして欲しい。タブレットやスマートフォンにPOSシステムをインストールして、POS端末として活用する。導入コストがおさえられる、直感的な操作ができるなどがメリットだ。

POSシステムの機能

POSシステムは小売業を中心に日本では1980年代から少しずつ導入されてきた。現在は多くの業種で利用されていることもあり、機能も多様化している。POSシステムは、大きく分けて以下5つの機能がある。

・売上管理機能

・商品管理機能

・顧客情報管理機能

・勤怠管理機能

・ECサイト連動

それぞれの機能について解説する。

売上管理機能

初期のPOSシステムから搭載されている、POSシステムの根底的な機能に当たる。売上管理機能として搭載されているのは、以下の機能だ。

・売上登録

・釣り銭の計算

・決済

・レシート発行

・売上集計

・売上分析

・売上ジャーナル

バーコードをスキャンすることで登録データを読み込み、自動で売上げを計算し、会計業務を完了させる。また、売上データの登録、集計、分析も可能だ。チェーンやフランチャイズ店舗なら、POSシステムを使って本部で各店舗の売上の集計や分析もできる。

商品管理機能

売れた商品を通じて、商品情報や在庫管理に活かせる機能を指す。主な機能は以下のとおりだ。

・商品情報の管理

・発注依頼

・在庫管理

POSシステムに商品情報を登録することでレジに都度商品を打ち込む必要がなくなるのはもちろん、注文や受発注などさまざまな業務で登録した商品情報をそのまま生かせる。どの商品が売れているかなどの分析もできる。

売れた商品の管理と共に、在庫管理ができる機能が搭載されたPOSシステムもある。店舗の在庫数管理の他、仕入れの調整や店舗間での在庫移動にも活用可能だ。

顧客情報管理機能

POSシステムで顧客情報の収集や管理もできる。顧客情報管理機能には、以下のものがある。

・顧客情報登録

・オーダー管理

・予約管理

POSシステムに登録した顧客情報は、マーケティングにも活用できる。売れた商品と購入した顧客情報をひも付け、性別、年齢などの属性別に商品の売れ行きを見ることも可能だ。ポイントカードやアプリなどの顧客情報と連動させると、「お誕生日クーポン」などのサービスも提供できるだろう。

飲食店などにおける注文のやりとりをデータを用いて行うシステムを総称してオーダーエントリーシステムと呼ぶ。おもにハンディターミナルPOSに搭載されているのが、オーダーエントリーシステムを実行するためのオーダー管理機能だ。

テーブルでの注文、キャンセル、変更などができる。顧客情報やオーダーをひも付け、予約管理ができるPOSシステムもある。

勤怠管理機能

従業員の勤怠管理機能が付帯したPOSシステムもある。POS端末とタイムカードが連動していて、出退勤時間、休憩時間と回数などの管理が可能だ。勤怠データと紐づけた給与計算もできる。

ECサイト連動

POSシステムによって、実店舗とECサイトのデータを連動させることも可能だ。実店舗とECサイトで商品データを共有することで売上げや在庫、受発注、顧客情報管理などが効率化できる。実店舗とECサイト間での在庫移動などもスムーズになるだろう。

POSシステムのメリット

POSシステムを導入することで、多くのメリットもある。POSシステムのメリットを解説する。

会計業務の効率化

POSシステムは、商品や伝票のバーコードをスキャンするだけで商品名や単価、個数が表示され、自動計算される。商品を1つずつ手打ちし、計算する必要がないため会計業務が効率化できるのがメリットだ。

現金でのやりとりはもちろん、クレジットカードやスマホアプリ決済などのキャッシュレス決済に対応しているPOSレジも多い。会計業務1回当たりの時間も短縮されるため、レジの混雑解消にもつながる。

マーケティングへの活用

POSシステムを通じて決済や会計が行われると、販売した商品、顧客、販売した日時や天候などの情報がデータとして収集され、蓄積される。売れた商品や個数、条件などがデータとして可視化できるため、マーケティングにも活用できる。

特に実店舗だけでなくEC事業を展開している場合は、集客や売上向上にマーケティングは必須となる。POSシステムを通じて、ECにおけるマーケティングにも役立つだろう。

複数店舗の一元管理

POSシステムでは複数店舗のデータを一元管理できる。本社や本部で店舗データを一元管理すれば、売上げや在庫、従業員の勤怠管理も可能だ。売上げの低い、高い店舗のデータを参照することで、具体的な経営改善戦略なども出しやすい。従業員の勤怠データを参照することで、労働時間や休憩、休日など適正な勤務状況となっているかも把握できる。

在庫の適正化

POSシステムでは店舗それぞれ、さらに本部における複数店舗の在庫管理ができるため、在庫の適正化ができる。在庫数を把握することで、受発注や店舗間の在庫のコントロールが可能だ。過剰在庫や長期在庫を防ぎ、小売店としてのリスク回避にもつながるだろう。

ヒューマンエラーの最小化

POSシステムを導入すると、各業務における作業が効率化するため、ヒューマンエラーの最小化にもつながる。たとえば会計業務はバーコードをスキャンするだけで正しく集計された会計が提示できるため、商品や価格の打ちミス、計算間違いが防止できる。オーダーエントリーシステムを導入すれば、オーダーミス防止にもつながるだろう。

近年では、スマートフォンやタブレットにPOSシステムを導入することで、直感的な操作もできるようになった。POS端末の操作ミスによるヒューマンエラー防止にもつなげられる。

コスト削減

POSシステムを導入することで各業務が効率化され、人的コストが削減できるメリットがある。POSレジによって会計一回当たりの時間を短縮し、レジの回転を速くすれば売上向上にもつながる。対面のPOSレジの他、セルフレジを導入することでも人的コスト削減が可能だ。

不正防止

POSレジは、会計を担当する従業員の情報も残せる。いつ誰が会計をしたかの記録が残るため、従業員による会計時の不正も防げる。在庫管理によって、従業員による在庫や商品の盗難も防げるだろう。

POSシステムはタイムカードなどと連動して勤怠管理もできるため、遅刻早退欠勤の正しい管理、不当な残業の是正など勤怠面での不正防止にも役立つ。

POSシステムのデメリットと対応策

多くのメリットのあるPOSシステムには、デメリットもある。POSシステムのデメリットを対策法とともに解説する。

初期費用とランニングコストがかかる

POSシステムを導入するには、端末の購入やシステムの構築など多くの初期費用がかかる。システムのメンテナンスやアップデートなどのコストも発生することも忘れてはいけない。あらかじめ発生するコストを想定しておくこと、予算に応じて導入するPOS端末やシステムを選定するのが有効だ。

停電、不具合によるオペレーションの停止

POSシステムに限らず、電子機器とITシステムは停電や不具合が発生すると使えなくなる。不測の事態によって店舗での混乱や、オペレーションの停止による販売機会や顧客の信頼損失となるリスクがある。

不測の事態を想定し、あらかじめ以下の対策を行っておこう。

・マニュアルを作っておく

・POSシステムが使えない場合の代替策(手計算、手伝票など)を準備しておく

・リスクを分散させておく

停電時、システムの故障など不具合に応じたマニュアルを作り、店舗責任者や従業員に周知しておく。営業中に不具合が発生した場合は、オペレーションを継続させるために一時的に手計算にする、手書き伝票を使うなどの代替策を準備しておこう。

リスクを分散させておけば一つのPOSシステムがダウンしても、もう一方のPOSシステムでオペレーションの継続ができる。たとえば店舗のPOSレジの他、事務所のノートパソコンにもPOSシステムをインストールしておくなどの手段がある。停電になり店舗のPOSレジが使えなくなっても、モバイルバッテリーで駆動するノートパソコンを停電復旧までの間、POSレジの代わりに使用できるだろう。

システムや端末のミスマッチによる不具合

POSシステムを導入すれば業務が効率化できるものの、使用する従業員によっては端末の操作が複雑で逆にミスをする、業務上で使いづらいなどの不具合が発生する。導入するPOSシステムを最大限活用するには、店舗の業務形態や目的に応じたPOSシステムやPOS端末を選ぶのが重要だ。

POSシステムやPOS端末のミスマッチの具体例と対策法には、以下のものがある。

・操作が複雑…タブレットやスマートフォン型の直感的に操作できるPOS端末にする

・従業員が動き回るため固定の端末が使いにくい…ハンディーターミナルPOSにする

・特定の決済方法に対応できなかった…利用する顧客に合わせた決済機能を搭載しているPOSシステムを導入する

POSシステムまとめ

POSシステムの概要や機能、メリット、デメリットを解説した。POSシステムは業務効率化や顧客データによるマーケティングへの活用ができる他、レジの混雑緩和、割引クーポンの発行、ヒューマンエラー防止など顧客満足度の向上にも役立つ。店舗や業態に応じたPOSシステムを導入し、利益の最大化を実現させよう。

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