サミットストア湯島天神南店がオープン、売場は2層の210坪、賃貸マンションの建物4フロアを活用

2022.04.12

2022.03.10

サミットは3月9日、東京都文京区湯島にサミットストア湯島天神南店をオープンした。同店のオープンで同社のスーパーマーケット(SM)店数は東京都87店、神奈川県15店、埼玉県12店、千葉県5店、計119店体制となった。

文京区には1978年にオープンしたサミットストア千駄木店以来となる2店目の出店。知名度がほとんどない地域への出店となる他、売場は210坪の小型店で、さらに2層。地上14階、地下3階建ての建物の地下3階から1階までの4フロアを活用している。

周辺の競合店はほぼ小型店しかなく、お客が「複数の店を買い回りしている」との声も聞かれるといい、限られた面積であってもワンストップ性を押さえたマーチャンダイジングで支持を得たいところだろう。

過去、100坪以下の小型の店はあったものの、サミットとしては特に都市部への出店を意識し、2018年前から現代の大型化したSMを再度小型に落とし込んだ小型店の売場づくりを開始。300坪タイプの開発を進め、手応えを得てきた。さらに小型化を一気に進める意味も込め、20年7月には東京都千代田区に神田スクエア店をオープンさせ、100坪タイプに挑戦。

今回の湯島天神南店の210坪は、300坪型と100坪型の間にちょうど中間に位置する規模となる。1年前の21年3月には2層で238坪の規模の西荻窪駅南店(東京・杉並)をオープンさせているが、今回はそれをさらに縮小した形となる。

店舗の北側約200mには参拝客や観光客が多く訪れる湯島天神があり、最寄り駅は東側約200mに位置する東京メトロ千代田線の湯島駅。他、南東側約500mに東京メトロ銀座線の末広町駅、北東側約500mに都営大江戸線の上御徒町駅、東側約600mにJR山手線の御徒町駅など、複数駅からのアクセスが可能。

買物手段としては徒歩、自転車を利用する住民が多い一方で、かなりの高低差がある特殊な立地となっている。

店舗周辺にはマンション開発が進む他、文京区の子育て支援制度もあって顕著な人口増加傾向にあるという。マンション建設の際、文京区からファミリータイプの設置が義務づけられているといい、今後もファミリー層を始めとした人口の増加が見込める。

店舗周囲500mの商圏内の人口は1万3472人、世帯数は8301(20年住民基本台帳、15年国勢調査)。共にサミット平均の6479世帯、1万2212人を上回る。

大型の競合店がないことに加え、商圏の厚さもあって年商予定は15億円。1坪当たり売場販売効率は約714万円と高水準になっている。

同圏内の年齢別人口比率では20歳~29歳が14.5%(東京都平均11.8%、文京区平均12.3%)、30歳~39歳が19.2%(同13.9%、同16.0%、共に20年住民基本台帳)と、20代、30代の若年層の構成比が突出して高く、さらに単身者世帯率が67.1%とサミット平均の49.3%を大きく上回る高い水準になっている。逆に50代~70代の高齢層の構成比は東京都平均より低い。

210坪の売場に約6200のアイテムを展開

小型店は売上規模も小さく、また、特に都市部の場合は不動産費が高いことから、マーチャンダイジング(MD)についてアウトパック化を進め、効率化を図るのが一般的だ。その点、サミットの場合、小型店でもあっても極力店内加工による「出来たて」の強みを残すようにしている。結果として、それが競合店との大きな差別化要素となる。

また、売場が多層に渡る場合、入口の位置や見え方なども踏まえた上でどの部門をどこに、どの程度で配置するかは極めて重要な問題となるが、これについても、出店を重ねる中でノウハウを蓄積してきた。

湯島天神店は入口が1階。そのため、1階には総菜やインストアベーカリーなどの即食商品の他、パン、飲料、酒をまとめ、近隣で働く人の昼食需要や地域に住む人の夕食需要に対応。

1階下がった地下1階には青果からスタートする生鮮三品、パンを除く和洋日配と冷凍食品、加工食品、家庭用品をまとめた。

2層の場合、入口がある層に惣菜を中心とした即食を展開し、1階移動した層に生鮮食品と加工食品など、素材系をまとめるのはこれまでも採られてきた手法で、今回も採用されていることから妥当性も高い分け方になっているとみられる。

ただし、その中でも菓子や日配のデザート系の位置などは微妙に変わったりもしている。2層といってもそれぞれの面積のバランスが異なっていたり、商圏の需要の違いなどもある。

さまざまな与件をベースに最終的に決められていると考えられるが、特に都市部の物件はさまざまな物理的な条件がある。そこに対して、いかにMDを落とし込んでいくかという応用力はかなり高まっているとみられる。

「多層ができるということで応用力が出てきていることもあって、お声がけもだいぶいただけるようになっている。うちの他社さんとの一番の違いは部門の垣根がないこと。これは店をつくる上で大きな強みになっている」(星野郁夫・取締役常務執行役員サイト開発部・店舗開発部分掌)

売場では、磨き上げてきたMDを限られた面積で極力取り入れている。アイテム数はここのところ出店、改装が続いた400坪台では1万超のところ、およそ半分の規模となる湯島天神南店は6218と絞り込まれているが、品揃えの豊富さを感じさせる売場づくりとなっている。

ちなみに300坪型は7000~8000。100坪型の神田スクエア店は4882のため、ちょうどその間くらいの数になる。

青果売場では生産者が明確な「農家さんから直送」コーナーを設置する他、単身世帯が多いことを踏まえ、少量、適量商品の売場を広げた。

入口から入り、エスカレーターで地下1階に下りると平台を含む青果売場となる

鮮魚売場では、要望を受けて加工サービスを実施する「おさかなキッチンコーナー」は設置していなが、「さんま(頭・ワタ抜き)」「まいわし開」「まあじ(3枚卸)」「するめいか(輪切り)」など、調理の手間を省く商品を定番で品揃えする。

刺身などは多段ケースで展開

特にお勧めする商品は、食べ方や調理方法も提案しながら売り込む。

また、地域性に合わせて簡便、半調理品の販売を強化する他、「干物」「塩さけ」「うなぎ」などは冷凍販売を実施。真空包装商品の販売も行い、利便性の向上を図ると共に品質の保持にも配慮。さらに「刺身」は、平日・週末で品揃えを変えたり、夕方に出来たて商品を充実させながら需要に応える。

塩干は冷凍で販売するケースが増えてきた。真空包装の商品など利便性だけでなく、品質保持にもメリットがある包装形態の商品の導入も進む

精肉売場では、若年層のファミリー世帯に需要が高い「加工肉」を強化。さらに生鮮素材を使用した「レンジアップ商品」や「味付肉」などの即食、簡便商品の販売を強化する他、関心が高まっている「大豆ミート」を使用した商品も品揃えするなど、限られた売場の中でもトレンドの商品はしっかりと充実させている。

一方で限られた売場で品揃えを実現するため、「豚スライス」や「生姜焼」など、複数コーナーを縦でくくるといった工夫も実施している。

限られた面積ということもあり、コーナーも「大部屋化」している

インストアベーカリーを強化

サミットが追求してきたMDの特徴の1つに、生鮮部門がそれぞれの商品分野でその部門の商品を使って店内で製造した「総菜」まで手掛けることがある。青果では「フレッシュサラダ&カットフルーツコーナー」、鮮魚では「煮魚・焼魚」コーナー、精肉では「グリルキッチン」コーナーがそれに該当するが、それら「生鮮総菜」は、大型店では通常、各生鮮売場に併設する形でコーナー化が図られる。

300坪型など小型店では、それらを総菜部門でまとめて展開することにしているが、今回の湯島天神南店でも即食商品を集めた1階の総菜売場にまとめている。「コーナーはなくても商品はある」状態を作り出しているわけだ。

青果の素材を使ったサラダやカットフルーツは総菜売場で展開される
同様に、鮮魚、精肉の素材を使った総菜は、総菜売場内でコーナー化

1階の総菜売場では、米飯や寿司など曜日、時間帯によって品揃えや内容量を変化させお客のニーズに応える他、温総菜については小規格の品揃えを徹底する。

総菜売場先頭には弁当の平台を設置。周辺で働く人の昼食需要や住民の夕食需要に向け、弁当は強化カテゴリー

「店内手作りだし巻き玉子」や「桜姫鶏の焼きとり」といった既存店でも好評の特徴ある商品の出来たて提供に努め、店内放送などでもアピールしながら売り込む。

電子レンジで完成させる設計の店内製造の半加工品パスタ。サミットならではの商品で、これは大型店も含め総菜売場で展開している

また、競合店との差別化が図れるインストアベーカリーは特に強化部門として1階の売場奥に設置し、バックヤードでの製造の様子が窓越しに見える設計とするなど、大型店と比べてもそん色ないレベルの売場づくりになっている。

夕方の主力商品の焼きたて、出来たて販売の実施、ファミリー世帯や、単身世帯に人気のスイートドーナツをコーナー化し、スイートパンの品揃えも充実。専用のピザ窯で焼き上げたナポリ風ピッツァをコーナー展開する他、平台も設け、カレーパンやドッグ系を売り込む。

さらに210坪の小型店にもかかわらず、サンドイッチを店内製造。昼食需要に対応する「冷蔵サンドイッチ」を売り込むなど、インストアベーカリーは特に強化している。

また、ホールセールパンをインストアベーカリーと隣接させ、比較購買できるようにしている。

総菜とインストアベーカリーを中心とした即食商品を入口近くに持ってきていることから、小型店では総菜やベーカリーの売上高構成比が高まる。

湯島天神南店では総菜で13.2%、インストアベーカリーで4.7%の売上高構成比を計画。21年3月期の全社数値の総菜9.0%、インストアベーカリー1.7%と比べても3、4ポイント高い。

今回、売場面積210坪の湯島天神南店の出店は、300坪型、100坪型と開発してきたこれまでの出店を受けて、規模においてその間を埋めるような形となった。神田店もオープンから1年半ほどがたち検証や改善も進む中、確実に手応えを得ているという。

小型店のノウハウ蓄積を受け、今後数年のうちに200坪台、100坪台の売場での出店も複数計画されている。競争激化と人口減少で出店の物件環境が厳しさを増す中、サミットが磨き続ける小型店のフォーマットは、有効なオプションになり得るはずだ。

目新しいコーナーとして「こんにゃくコーナー」を設けていた。積極的に提案を行う姿勢が表れている。コンニャク自体の売場は常温
代替食品の「植物性ミルク」もコーナー化展開
大型店では平ケースを含め大きくコーナー化される冷凍食品はリーチインケース中心にコンパクトな売場展開
加工食品では、ゴンドラの上に在庫を置いている。当初、バックヤードの狭さをカバーするために小型店で始めた取り組みだが、補充の際の移動など作業面でのメリットもあることから現在では大型店も含む多くの店で導入されている
レジは、正方形のような形でコーナー化し、従業員がスキャンを行うセミセルフレジを2台置いている他はセルフレジに特化。フォーク型に並ぶ方式にした上で並ぶ場所も含めた設計で、人が並んだときにも極力売場にかからないようにしている

店舗概要

所在地/東京都文京区湯島3-20-12

営業時間/9時~23時

駐輪台数/43台

売場面積/695㎡(210坪)

店長/角谷貴人

年商目標/15億円

お役立ち資料データ

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