ベルク葛飾高砂店がオープン、東京都9店目、3月の練馬高松店に続く23区内出店の新店はクルベの要素もミックス

2024.07.17

2024.07.16

ベルクは7月10日、東京・葛飾に葛飾高砂店をオープンした。京成線京成高砂駅から徒歩約10分ほどの住宅地に立地している。東西を川に挟まれた場所であるが、南側のJR小岩駅側を中心に周囲にはライフコーポレーションが複数出店している他、サミットやヨークマートも近隣にあるなど、有力企業がひしめく中に出店した形となる。

ベルクといえば、標準化された平均売場面積600坪の店を出店することによるチェーンストア経営で生産性を高めつつ、時代の変化に合わせフォーマットを進化させることで好業績を維持していることが大きな特徴といえる。既存店活性化をしつつ、年間6~8店の出店を続け、関東1都6県でのシェアを高めることに注力。

今回の葛飾高砂店は東京都9店目の出店となった。都内には3月にも練馬高松店(東京・練馬)をオープンしていて、埼玉県を中心とした北関東から千葉県を中心に出店を重ねてきた同社だが、深耕中の神奈川県に加え、23区内を含む東京都への出店も増えている。

直近では2025年2月期の第1四半期に2桁の営業減益を喫したが、24年2月期まで33期連続の増収を続けてきた他、営業利益も長年にわたって増益を続けている。24年2月期の売上高営業利益率は4.2%に達するなど、スーパーマーケットとしては高い経営効率を誇る。

背景には、標準化された店舗フォーマットをローコストオペレーションで運営することを追求し、徹底するという戦略があるが、さらに昨年7月には群馬県高崎市の既存店をリューアルし、ディスカウントフォーマットの「クルベ」を開発。

もともと、物流センターや作業効率を高める什器を多用することで、総コストの削減に努めているが、クルベについてはより踏み込んだ取り組みを始めた。一方でディスカウントフォーマットのため、ベルクとは売価、サービス、キャンペーンなどを変えた形で運営していて、クルベについては、現在、群馬県に2店展開するに至っている。

そうした中、オープンした葛飾高砂店だが、売場場面積は約600坪とこれまでと同様。一方で標準化を志向しつつも、マーチャンダイジングや売場づくりについてはクルベで展開した要素がミックスされたものとなっていて、ハイブリッド的ともいえそうだ。全般的に価格訴求が強く打ち出されたディスカウント店の雰囲気が強く打ち出されている。周辺に多い競合店との差別化にもつながりそうだ。

売場づくりは、オーソドックスにメインの入口から入った先頭に青果を配置。続く売場は鮮魚ではなく、主通路沿いに精肉、鮮魚、洋日配、和日配と流れ、最後に惣菜、テナントのインストアベーカリーが配置されている。青果に続いて精肉売場を配置するパターンは売上げの動向なども踏まえたもので、ここのところの新店では定着している。

入口から入ると、壁面側にかご台車に入れられた「スペシャルプライス」の加工食品が目に飛び込んでくる。細長い大型の袋に入れられた「POPコーン!」(塩149円、キャラメル249円、本体価格、以下同)といったインパクトのある商品の他、カップヌードル(チリトマト、シーフード、カレー、各99円)などナショナルブランド商品が並び、強く買い上げを促している。

こうしたかご台車による訴求はコロナ禍の特需の利益還元を目的に開始されたが、ベルクとしても継続した売場となっている。これはクルベにおいても重要な役割を担う売場となっている。

青果売場についても通路側の常温売場では通い箱や段ボールを積み上げた形で単品訴求を実施している他、壁面の冷蔵売場でも通い箱などを活用した単品訴求的な売場が存在感を増している。この通い箱、段ボールを積み上げた陳列方式はクルベを思わせる。

スポットライトなどを効果的に活用している他、売場によって照明を変えるなど演出面にもこだわっている
冷蔵のカットスイカなどは平台で展開
ブロッコリーの上に氷を置き、それが溶けることで水がブロッコリーにかかる。自動的に鮮度保持が図られるという仕掛け
価格訴求を強めた売場だが、単価999円の黒ニンニクなど高単価商品も販売
壁面の冷蔵ケースでも、通い箱ごと陳列するなどしている
モヤシは9円で販売する目玉商品

精肉売場では牛豚合いびき肉(期間限定で100g当たり98円)や国産豚ひき肉(同88円)のメガパックなど買い得感ある商品を展開しつつ、松阪牛など和牛も大々的に売り込むなど価格帯を広げた展開で、核売場の1つとなっている。

精肉では松阪牛を大々的に売り込む

壁面側では精肉に続いて、鮮魚の寿司を含む鮮魚売場が展開されるが、内側の常温平台では精肉、鮮魚が手掛ける惣菜を展開する。

精肉部門が手掛ける惣菜。精肉売場と通路を挟んで対面する形で展開
こちらは精肉惣菜と同じ平台で展開される鮮魚部門が手掛ける惣菜
鮮魚売場先頭では寿司を展開。こちらは惣菜部門の寿司とは別に、鮮魚部門が手掛ける寿司。寿司飯に赤酢を使用していることをアピールしている
加工肉では、常温販売可能な商品は常温で販売している

需要の高まっている惣菜については、壁面の温惣菜、寿司、平台の米飯などが目を引くが、インパクトがあるのは、オープン時の販促の一環である「お試しセール!」で、一律200円で展開されるアウトパックの冷惣菜の麺、米飯だ。

通常売価は400円弱ということで、オープン後、かなりの価格投資をし、試してもらうことで長期的な支持を得る戦略だ。有料ではあるが、一種の試食販売ともいえる。

惣菜は壁面で温惣菜、寿司を展開する他、平台では米飯を打ち出す
「お試しセール!」による200円均一の訴求が強力な価格訴求になっている冷惣菜。麺類、丼物など多様なラインアップが並ぶ。試食の役割を果たしている
惣菜部門の寿司では、魚をたねにした握り寿司も展開しているが、売場先頭ではローストビーフの握り寿司を訴求。鮮魚の寿司と差別化ができている

また、壁面にはバックヤードとの間に窓を設けた上で物流センターのローラーコンベアのようなものを傾斜を付けて設置し、そこを通じて商品を売場側に出すようにしている。これはクルベで導入されたもので、狙いとして品出しや補充の際の移動距離を少なくすることで、よりローコストオペレーションとすることにある。

バックヤードからローラーコンベアで売場側に商品を送る設備を設置。ディスカウントフォーマットのクルベで見たれたもの
ホールセールパンの売場では通い箱ごと陳列できる什器を使用。常にローコストオペレーションを追求する姿勢が表れている
冷蔵多段ケースでも、最下段の売れ筋消費などでは商品を直に陳列するのではなく、通い箱などに入れた形で陳列している
商品によってはケース単位での販売も行い、単価アップに努めている
冷凍食品は平ケースとリーチインケースで展開する。こちらも最上段と最下段は箱に入れた形で陳列している

売場全体を通じていえることは、既存店の要素にクルベの要素がミックスされ、よりディスカウントの要素、さらに売場の賑わいが増している感がある。クルベの開発を経て、ベルクの標準店はさらに進化したようだ。

グロサリーでは高めのゴンドラを採用し、上に在庫を置いている。これは既存店でも導入されている手法だが、ディスカウント色が高い運用といえる
かご台車を用いた投げ込み販売は売場先頭以外にもポイントポイントで見られる
プライベートブランド商品の「くらしにベルク」は24年2月期末段階で933SKU。同期だけで335SKU増加するなど開発を積極化している。写真のざるラーメンは「タイパ(タイムパフォーマンス)」といったキーワードを用いるなど、若年層にもアピールしそうな商品
「くらしにベルク」は売場での販促も強化しながら売り込んでいる

ベルク葛飾高砂店

所在地/東京都葛飾区細田3-9-6

営業時間/9時~0時

駐車場/120台

売場面積/約600坪

お役立ち資料データ

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