カスミ松ヶ丘店、高収益狙う「新スタンダードモデル」1号店として10月24日にリニューアルオープン

2025.10.27

カスミは10月24日、カスミ松ヶ丘店をリニューアルオープンした。ネイバーフッドショッピングセンタ(NSC)のアクロスモール守谷の核店として2006年4月にオープンし、19年に渡って営業してきた店舗を改装した。

つくばエクスプレスと関東鉄道が乗り入れる守谷駅から直線距離で約1.5kmの住宅地に立地するが、この間、直線距離で850mほどで、かつ駅に近い場所にNSCのロックシティ守谷(現・イオンタウン守谷)がオープンし、同社の旗艦店フォーマットのフードスクエアが出店した他、直線距離で約1.7kmの場所で古くから営業している守谷店を低価格フォーマットのフードオフストッカーに転換するなど、ドミナント強化と自社競合の調整などが行われてきた。

その意味では、松ヶ丘店は住宅地の標準店として営業を続けてきたわけだが、今回の改装で大きな役割を担うことになった。カスミが現在開発中の、よりバジェット(低価格)の価格帯を強化した新たなフォーマットの1号店となったのである。

今回の改装に先立って、既存店のフードスクエアライフガーデン東松山店店(埼玉県東松山市)とフードスクエア新木駅前店(千葉県我孫子市)を小規模改装し、今回の取り組みを実験した結果、5割ほどの売上増効果があったことから、今回、同社の「新スタンダードモデル」の1号店としてオープンさせるに至った。

リニューアルオープンに際しては朝、300人ほどが並んだ。低価格への期待の高さが伺える
売場レイアウト図

カスミの新スタンダードモデルとなることを狙う新フォーマットの特徴は、多くの低価格フォーマットが採用する原則と同様、商品を絞り込むことで発注、補充頻度を減らしたり、バックヤード在庫を減らすことで作業効率を向上させたりした上で、通常より低価格で販売するというもの。また、価格については、チラシなど一部特売は行うものの、基本的にエブリデーロープライス(EDLP、毎日低価格)を採用。

店舗入口脇のスペースでは投げ込み陳列で特売商品を売り込む

品揃えは標準店より4割ほど削減し、什器などの変更を含め効率化を図り、人件費率を5%ポイント程度引き下げることを狙う。ただし、人員については絶対数を減らすというより、低価格販売で売上げを増加させることで結果として「人件費の比率」を下げるという性格が強い。

一方で、組織体制として「部門配属」から「店配属」ということで、「大部屋化」への転換を図り、人員を作業に充てる際の柔軟性を高める。品揃えを絞る際には基本的に売れ筋を残すという考えだが、中にはカテゴリーごとカットしたものもある。特にカットしたカテゴリーについては今後、妥当性なども検証していく。既存店のライフガーデン東松山店では取扱SKUを約8000、新木駅前店では約7000にまで絞り込まれた。

また、絞り込みと価格強化をしながらも生鮮、デリカには注力し、青果、鮮魚、デリカについては人時をかけて店内加工も実施する一方で、低価格対応に向けた商品も新たに投入されている。鮮魚では丸魚を展開するものの、氷上での販売はせずにパックで展開するなど、作業負荷を減らすための取り組みも模索。精肉はプロセスセンターを活用したアウトパックに特化しつつ、週末のファミリー層やストック需要に対応した大量目商品の品揃えを充実させた。

松ヶ丘店の取扱SKU数は改装前の約1万4000から約8400まで大幅に絞り込まれた。例えば鮮魚は302から244に、精肉は669から400に、青果は354から295に絞り込み。一方で惣菜に関しては、むしろ品揃えを増やし、292から298に微増している。

SKU数、売上高構成比計画

青果の平台は低めにした上で、商品を絞り込んだ上で単品大量販売
店内にはのぼりを多用し、にぎやかな雰囲気を演出している他、各コーナーは遠くからでも分かるように目立つ仕様になっている
鮮魚については店内加工で、刺身、切り身などを展開。鮮魚を強化した店は既存店でも評判が良いことから鮮魚については全社的にも強化方針
鮮魚の切り身は4切れ250円から品揃えする
鮮魚の丸魚はパック物に特化
寿司は鮮魚売場に設置。鮮魚の寿司も展開する一方、惣菜の寿司も展開しているが、2つをいっしょにコーナー化している
鮮魚、精肉と続く奥主通路では壁面側に向けて平ケースを1列設置。2列でない分、通路幅が広い
鮮魚、精肉では需要の高まっている味付け商品をコーナー化
精肉は全てアウトパックだが、豚の骨付きのロースステーキなどめずらしい商品もみられる
精肉では大容量のレディトゥクック商品なども展開
惣菜では店内加工も多用。ただし、あらかじめおかずなどを惣菜子会社のローズコーポレーションの工場でセットにしたカセット弁当など作業負担を減らす取り組みを進めている
弁当ではシンプルなおかずの250円(本体価格、以下同)の弁当も商品化
低単価の商品だけでなく、デカ盛りの商品も展開するなど、買い得感を打ち出す
インストアベーカリーも導入し、平台2台でコンパクトに展開
冷凍のギョーザでは今年4月にオープンした阿見よしわら店(茨城県阿見町)併設のローズコーポレーションの中華惣菜の工場で製造された商品を展開している
物量の多い和日配の定番商品ではケース陳列も展開している
商品でコラボレーションする茨城県地盤のサザコーヒーのラインアップの1つ「将軍珈琲」を使用したコーヒーゼリーをカスミのオリジナル商品として開発、398円で展開する。このようにバジェットの価格帯に限らない商品の厚みを持たせている
売場レイアウトとして、惣菜を最後にせず、惣菜の後に冷凍食品のコーナーを大々的に展開している

価格については、商品カテゴリーごとにナンバーワン商品を地域最安値で提供する他、特に高購買頻度のカテゴリーをはじめ、米や卵など必需品を低価格販売。また、イオングループのプライベートブランドであるトップバリュを強化し、特に低価格ラインのベストプライスをコーナー化なども用いて大きく打ち出す。トップバリュの品揃え上の構成比は16.3%にまで高められた。

トップバリュは、イオンのディスカウントストア用のブランドを含め1366SKUの品揃え。絞り込みによってその比率は高まった。第1主通路では大きく低価格ラインの「ベストプライス」をコーナー化

一方で、カスミが積極的に取り組む地域商品などでは高単価の商品も導入することで「ローカル性を活かした地域のお客さまへの提供価値の向上」を目指すなど、必ずしも低価格の商品に特化しているということでもない。カスミとしては価格帯と販売施策を組み合わせることで、満足度の高い買物体験の提供に努めたいとしている。今回、商圏の半径10km圏まで想定するなど、結果としてスーパーマーケットとしてはかなり広域狙いとなる。

地域商品は、主に中通路のエンドで売り込みを図っている
ゴンドラエンドはシンプルな構成で、下段では投げ込み式の単品大量販売の方式
価格が上昇し、関心が高まっている国民食の「米」は商品を設定し、EDLPで販売。ロイヤルティを高める
ワインは均一価格を導入している
ペットボトルや缶飲料はケース売りも多用
ビールやレディトゥドリンクは、ディスカウント店では常温のみで展開することが多いが、カスミの新スタンダードモデルでは冷蔵の商品も販売。「すぐに飲む」需要にも応える

松ヶ丘店は売場面積約706坪と大型店。年商目標は20億円で、既存店同様、売上げを5割ほど伸ばすことを狙う。また、低価格と同時に強化される生鮮とデリカの売上高構成比は改装前の44%から過半の52%まで高める計画。

また、今回のバジェット価格および生鮮とデリカを強化したフォーマットの開発は、カスミが属するユナイテッドスーパーマーケットホールディングス全体の動きの一環だという。商品の値上げが続く一方で消費の二極化が指摘される中、低価格の支持の高まりは多くの企業が実感するところであろう。カスミとしては松ケ丘店の推移を見ながら、今回と同様の改装を数店実施していく意向。

レジは通常レジ3台とセルフレジ6台で、セミセルフは採用していない。現金の他、クレジットカードやコード決済など各種キャッシュレスの決済手段にも対応する。

カスミ松ヶ丘店概要

所在地/茨城県守谷市松ヶ丘6-6-1

リニューアルオープン日/2025年10月24日

店長/神林哲太朗

営業時間/9時~21時45分

売場面積/2333㎡

駐車台数/800台(アクロスモール守谷共有)

駐輪台数/333台

従業員数/正社員7人、パ-トタイマー・アルバイト39人(7.75時間換算)

主要商圏/29万4465世帯、68万3000人(1次2万2271世帯〈0~3km〉、2次27万2194世帯〈3~10km〉)

お役立ち資料データ

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