マルエツ新糀谷店が10月30日リニューアルオープン、鮮魚専門店「魚悦」のノウハウ注入+生鮮デリカ
2026.11.02
マルエツは10月30日、東京都大田区の新糀谷店をリニューアルオープンした。売場面積はアウターなども取り扱う衣料品を含む976坪で、同社最大の売場面積を持つ店舗となる。今回の改装では、約250m先にある自社の唯一の鮮魚専門店「魚悦糀谷店(東京・大田)」で従業員研修を行い、水産売場で新たに生魚の対面販売を実施する態勢にした。

併せて生鮮デリカの作業室を新設し、フィッシュデリを拡大すると共にミートデリを新たに導入。専門性の高い魚とデリカを核に、地域の食卓を支える「街の市場」を目指すとしている。
同店は京浜急行空港線の糀谷駅から南東へ約500m、徒歩約10分、萩中通り商店街沿いの一角に位置する。1969年に旧サンコーとして糀谷の地にオープンして以来、大型の駐車場を備えた店として競争力ある店舗として君臨してきた。駐車場は250台、駐輪場は351台を確保している。一方でこれまでの傾向としては徒歩と自転車のお客が多く、雨の日に弱いということで、駐車場があるとはいえ、近隣のお客が売上げを支える構造にあったといえる。




700m商圏内の世帯数は1万7475世帯、人口は3万2809人。子育て世代や若年単身者から長く住む世代まで、幅広い年代が暮らすエリアだという。250台の駐車場があることを改めて訴求するため、今回は駐車場に照明を当てて明るくし、安心して車で来店できるよう手を入れた。
マルエツはこの商圏で、新糀谷店の他に前述の魚悦糀谷店と、駅前の利便性を生かし夕方から夜に人通りの多い糀谷駅前店(東京・大田)の計3店を展開している。本間正治社長はこの3店体制を意識しながら、最大の売場面積を持つ新糀谷店で地域に最大限応えることを1番のコンセプトに据えたとする。

11月6日には新糀谷店から南東方向約700mのところにバローの関東2号店がオープンすることもあって、新糀谷店リニューアルオープンの前日の10月29日には南東方向約300mと、最も近い競合店である食品館あおば本羽田店(東京・大田)がリニューアルオープンするなど周辺では競合店の出店や改装が相次ぐが、本間社長としては特定の1社を想定した対策ではないとしつつ、特に生鮮3部門の品揃えと、価格面では定番価格の価格帯の見直しも意識したという。
特に売上げの高い大型店ということで品揃えは「松竹梅」の幅を広げた。当然、梅の価格の部分も重視するが、「日替わりで価格を出してお客さまに『来てください』というのは、いまの時代、お客さまのライフスタイルからしても厳しい。『今日、この時間は安いよ』ということでは厳しいと思う。お客さまのライフスタイルに合わせていつでも安心して足が運べるお店にならないといけない」(本間社長)。そのために定番の価格についてはイオングループのプライベートブランド(PB)のトップバリュ ベストプライスを積極的に活用する。


一方で今回のリニューアルオープンは、マルエツが属するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)のフォーマット戦略とも絡む2つの流れを汲む取り組みと位置づけられる。1つは川口キュポラ店(埼玉県川口市)、国領店(東京都調布市)、朝霞店(埼玉県朝霞市)、BLiX茅ヶ崎店(神奈川県茅ヶ崎市)など500坪強の売場の店舗で生鮮を強化してきた流れ。
それに加えてアーバンエリアで競争環境の激しい幸手上高野店(埼玉県幸手市)、上期に売場を1.5倍に広げてリニューアルした三郷中央店(埼玉県三郷市)で強化した生鮮デリカも踏まえた形で、最大の売場面積を持つ新糀谷店でトライアルするというのが1つ。今回、フルパターンでの展開となるが、評価を得た商品は500坪や300坪の店、草加デリカセンター(埼玉県草加市)製造の商品であれば100坪のマルエツ プチにも広げていく考えを示した。
もう1つは、「デリカはまだまだ道半ば」(本間社長)としつつも、「USMHグループ各社の良い商品は貪欲に取り込んでいきたい」(同)ということで、いなげややカスミなどが監修した各社の売れ筋商品をモチーフにした商品、あるいは共同調達商品など、「品質とコストメリットを享受しながらグループのシナジーを発揮する」(同)こと。今回、魚悦との連携も含め強化した生鮮デリカと併せて両極からデリカの品揃えを充実させる意向だ。リニューアル後の年商は37億円を見込む。
水産は、魚悦の技と活気を受け継ぐ売場とした。魚悦糀谷店はマルエツ創業時の名を冠した鮮魚専門店として、2000年にオープン。かつて同屋号でディスカウント型の店を出店していたが、現在は同社が1店だけ展開する鮮魚専門店として、自ら毎朝丸魚を買い付けてさばき、売り切る専門店型の商売をしているという。今回、新糀谷店の水産主任と代行が同店で朝の仕入れから売り切りまで研修を受けた。同社が魚悦で研修を行うのは今回が初めてで、仕入れから売り切りまでの流れや専門店ならではの商品化、売場づくり、対面販売のノウハウを学んだという。

研修で最も勉強になったのは「価値の出し方」(本間社長)だったという。例えばブリの切り身でもこれまでは1切れ75g、厚切りでも90gといった考え方だったのに対し、食べたときのジューシーさを基準に考える専門店では125g、150gと厚く切ったりしている。お客は価格やサイズ、グレードといったもの以上に「おいしさ」を重視していると考え、そのためにわざわざ来店してもらうための「価値をどう提案するか」を商売の起点にする発想が重要だとする。

すでに魚悦では、次の店に備えて別の従業員が研修を続けており、同店を最大の研修場所と位置づけて今後も継続する方針。同社としては水産の強化は「最後はコミュニティ社員(パートタイマー)さんも含めた人の力」(本間社長)と捉え、水産の強化を人材の成長機会にしたいと考えている。

売場では対面販売を強化し、豊洲市場から届く生魚や活貝を丸魚のまま販売する他、都度切り身やサク、刺身、寿司に店内で加工し、魚の特徴やおいしい食べ方の提案を強化。さらに売場には「魚河岸」の看板を掲げ、鮮魚の商品に加え寿司と魚惣菜も連動させる形で展開している。しかも、寿司は水産の寿司「魚悦」とデリカの寿司を一体化している。これは前述の三郷中央店で展開されたものと同じだ。

「三郷中央店も含め、直近のお店ではデリカのお寿司とお魚のお寿司をなるべく融合している。答えとして全店をこれに切り替えられるかはハード面の問題もあるので一概には言えないが、やはり『マルエツのお寿司』として自信を持って売場も商品も提供できる、提案できる水準にしていきたいという社内メッセージも込めている」(本間社長)
水産の寿司では豊洲市場から入荷した魚を使った日替わりのお薦め商品も販売する。海鮮丼コーナーには「魚悦」の海鮮丼に加え、デリカとして手頃な価格の「し~ふ~丼」を導入するなど、海鮮丼として商品ラインに厚みを持たせている。

水産の売上高構成比は12.5%を計画するが、魚悦と合算して考えることで25%を超える、30%近い水準を目指すとしている。


生鮮デリカも今回の改装の柱の1つ。フィッシュデリ「旬鮮庵」は、豊洲市場から入荷した魚を当日加工する焼き魚などを拡大した。新たに導入したミートデリ「旬鮮庵(水産と畜産で同じ名称)」は、「素材」にこだわった「お肉屋さんのお惣菜」を掲げ、銘柄肉を使うなど素材の魅力を生かした商品をそろえる。フィッシュデリとミートデリは水産、畜産売場の間に設置した常温平台で集合展開し、「今日は魚にする?肉にする?」と選ぶ楽しさを提案する。





畜産は、牛肉、豚肉の焼肉コーナーを常設し、週末には食べ比べセットや盛り合わせも用意する。大容量パックもそろえ、普段の食卓から週末のごちそうまで対応する。




農産は、売場に「農家さんの直売所」のコーナーを設けた。カットフルーツやカットサラダ、炒め野菜といった、毎日の食事に便利な商品もしっかり取りそろえる。



デリカは、ランチから夕食、おやつまで、生活シーンに合わせて選べる品揃えを目指す。本間社長は、デリカの品揃えを量や価格ではなく食卓のシーンで捉え直す必要があると語る。これまでは揚げ物やフライ、弁当が中心で、おやつや朝食の時間帯の商品が欠けていたといったように、お客から見た売場と自社の認識にずれがあったという。前述のようにデリカ自体を「まだ道半ば」と捉え、USMHグループ各社の良い商品を貪欲に取り込んで再挑戦する考えだ。



主役商品は、マルエツ従来商品の約2倍の厚みを持つ「極厚!!ロースカツ」。デリカセンターで一次加工し、解凍設備の工夫と厚切りの調理法で、中のジューシーさを残しながらしっかり加熱する。このロースカツを店内焼成の湯種仕込み山型食パンで挟んだのが「お惣菜屋さんの極厚!!ロースカツサンド」で、食パンは4枚切りを使うなどカツだけでなく、パンの厚みにもこだわったボリューム感のある商品だ。

グループ各社の知見も売場に取り込んだ。イオンフードスタイル監修の「備長炭火焼き鳥」、カスミ監修の「銀鮭西京焼き重」、いなげや監修の「伝説のジャンボメロンパン」が並ぶ。さらに、USMH4社の担当者が原料と味付けから共同で開発し、マルエツ草加デリカセンターで一括製造する「溢れる肉の旨み!2層仕立てメンチカツ」(1個、本体価格199円)も10月29日に発売された。本間社長は、こうした商品が増えれば「監修」の冠がなくても、専門店に負けないデリカ商品をグループとして出せるようになると期待を示した。




この他、14種類をそろえた店内手揚げの天ぷら、長時間発酵させた生地を店内で手延ばしして焼き上げるピッツァ、エスニックのアイテムを商品化した「RICE BOWL」シリーズを展開する。おやつ向けには、新商品の「鉄板仕上げ香ばし団子」やハニーメープルフレンチトーストを店内で製造する。イートインコーナーは約1.5倍の広さに拡大した。





デリカの店内加工比率は約6割で、本間社長は平均よりやや多いとみる。一方で、3年後、5年後、10年後を見据えると、プロセスセンター化、センター集中化は重要な課題だという。稼働3年目の草加デリカセンターではパスタなど新たな商品を加えており、使っていないラインを新たな商品の製造に転用して生産性を高めている。その上で人時を減らすということだけでなく、例えば今回強化しているケバブサンドやタコスなど手間のかかる商品に人時を振り向けて全体のポテンシャルを上げることを目指す。寿司で特徴を出す店なら、人時を思い切って寿司に振る。店舗ごとにめりはりを付ける考えだ。




グロサリーとデイリーは、牛乳や卵、納豆など毎日の食卓に欠かせない商品を中心に、価格を意識した品揃えを強化した。トップバリュ ベストプライスはしっかり扱う方針で、インフレ下の価格軸の基軸と位置づける。一方で、高タンパク商品やトップバリュ グリーンアイのオーガニック冷凍野菜、こだわりのeatime商品もそろえる。外食やカフェに向かう客も想定し、多様なフレーバーを個食で選べるコーヒーパックのコーナーも設けた。


非食品は雑貨売場を拡充した。売場の広さを生かしてワンストップで買物できるよう、衣料品や生活用品に加え、トレンドのアジアンコスメを導入した。アジアンコスメは三郷中央店でも展開している。本間社長は、来店客の年齢層を決め付けて品揃えを絞ることは、結果としてお客を自社が区切ってしまうことになるとし、世の中のトレンドを取り込む売場をやり切ったと語った。


サービス面では、店内で購入した商品を3時間以内に自宅へ届ける「らくらくクマさん宅配便」を用意する。即時配達サービス「Uber Eats」にも対応する。マルエツは25年から「WAON POINT」を全店で導入しており、イオンマークのクレジットカード利用者向けに毎週日曜日の優待施策も実施している。
生鮮の定評のある強力な競合店の出店というきっかけも相まって、これまでの大型店強化の集大成のような今回の新糀谷店のマーチャンダイジングがどのように定着し、他店にも波及していくのかはUSMHグループにとっても重要なポイントとなる。昨年11月27日にオープンしたBLiX茅ヶ崎店で丸魚の対面販売を導入するとき、本間社長は「売場を続けること」の意義を強調した。
同店のオープンから約11カ月が過ぎたが、現在ではパートタイマーによる売場の仕切りができるようになっているという。今回の売場づくりでもこのBLiX茅ヶ崎店でのオペレーションが鍵になった。その意味では、今回の魚悦のノウハウを活用した水産売場の強化が積み重ねの上に成り立っていることが分かる。
ドラッグストアなど他業態を含め、「食のシェア」をめぐる競争はどんどん激化している。水産が食品の中でもとりわけ参入障壁が高い分野であることを考えると、スーパーマーケットとしてここまで踏み込んだ水産売場を展開し始めたことは今後のスーパーマーケットのマーチャンダイジングを占うという点でも極めて大きな意味を持つ。
マルエツ新糀谷店概要
所在地/東京都大田区萩中2-12-5
リニューアルオープン日/2026年10月30日
営業時間/9時〜22時
駐車台数/250台
駐輪台数/351台
売場面積/976坪
店長/増原大介
従業員数/120人(8時間換算、うち正社員27人)
年商計画/37億円
商圏/700m商圏内1万7475世帯、3万2809人









