店舗におけるDXとは?先進企業の最新事例を交えてメリットなどを解説

2021.09.07

2021.09.09

加速度的なテクノロジーの進化によって、AIやIoTなど様々なデジタル技術のビジネス活用が当たり前になりつつある。実店舗でも、利益率や売上アップを図るためにデジタル技術を活用することは、もはや必須と言っても過言ではない。

デジタル技術が注目を集める中、近年よく耳にするのがDXという用語だ。店舗のデジタル化を進める上で押さえておきたい用語だが、漠然とした意味合いしか知らない人も多いだろう。

本記事では、改めてDXの意味から店舗がDX化するメリットなどを、最新事例を交えつつ解説していく。

改めてDXとは?

DXとは、デジタルトランスフォーメーションを略した用語。基本的には、「AIやIoTなどデジタル技術を活用することによって、ビジネスモデルや組織体制を改革し、競争優位性の確立や外部環境に適応していくこと」を意図して使われている。

DXの概念は遡ると、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマンが、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説に基づいて提唱したのが始まりとされている。

2018年には、DXのビジネス活用を推進するため、経済産業省が「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を策定。主に、経営者層に向けて、 DX に取り組む上で抑えるべき事項や活用のチェック項目を定義・明文化している。

その経産省のDX推進ガイドラインによれば、「あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネスモデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起きつつある。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーションをスピーディーに進めていくことが求められている。」としている。

デジタルテクノロジーの進化によって、企業を取り巻くビジネス環境はますます激しく変化しており、企業はその競争環境を生き抜き、勝ち抜くため、積極的に業務プロセスや組織、企業文化などもデジタル技術で変革し、企業間競争で優位性を築いてい必要が高まってきているといえる。

店舗におけるDXとは?

店舗におけるDXとは、店舗運営の様々な領域にデジタルテクノロジーを導入し、顧客体験の向上を図り、業務プロセスの改善を行うことである。

昨今ではIT技術の進歩だけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大で、消費者行動も多様化。デジタル技術を積極的に取り入れ、業務を効率化しつつも他店と差別化を図らなければ、多様化する消費者のニーズにも対応できなくなってきている。

しかし、店舗のDX化には人材やシステムなど決して少なくはない投資が必要であり、思い切ったDX化には二の足を踏んでしまうのが実情だろう。次からは、店舗のDXを推進することで達成されるメリットを簡単に解説していく。

顧客満足度の向上

スマホ一台でさまざまな情報を入手できる現代では、オンラインサービスを充実させることが、顧客満足度の向上にも繋がりやすい。例を挙げるとするなら、ECサイトの展開だ。

依然として、コロナ禍により外出自粛は続いているが、一方でECサイトを利用する消費者はコロナが流行する前より上昇傾向に。感染の心配なく、自宅にいながら安心して買い物ができれば、顧客離れを防げる。

また、消費者の質問に対して、自動で回答を表示するチャットボットのツールも広く普及している。AIチャットボットも存在し、顧客対応の結果を学習することで、精度の高い回答を表示できるように。コールセンター業務の負担を軽減し、加えて消費者は電話やメールを出さずとも気軽に質問が可能となるため、顧客満足度の向上にも繋げられるだろう。

業務の効率化

先ほどのチャットボットと同様、店舗にDXを導入することで、効率化を図れる業務は複数存在する。ここでは、DX化で負担を軽減できる業務を見ていく。

勤怠管理

店舗責任者の負担となっている業務の一つが勤怠管理。打刻時刻の正確性や労働時間の管理、さらには給与計算など、チェックすべき項目は非常に多い。

しかし、システムを導入すれば、勤怠情報の一元管理や他のシステムとの連携も可能であり、加えて適切な労務管理も行える。労働基準法の違反を未然に防げるだけでなく、社内の労働環境の改善に役立ち、DXの目的でもある企業文化の変革に繋げやすい。

発注業務

取り扱う商品数が多い店舗において、導入しておきたいのが発注管理システム。在庫状況をリアルタイムで確認しながら発注業務を行えるため、作業効率は大幅に向上する。在庫管理部門と購買担当部門が分かれている場合でも、システムを利用して情報共有しやすいのがメリットだ。

また、過去の履歴を確認しつつ、発注業務を進めることも可能。誤発注や在庫切れによるチャンスロスも発生しにくくなる。

省力化による人手不足の解消・人件費の削減

多様な業界において、従業員の人手不足は深刻化している。帝国データバンクが2021年1月に実施した調査によると、非正規雇用の従業員が不足していると回答した商品小売業界の企業は52.0%でトップとなり、半分以上が人手不足に悩まされている。

しかし、DXを導入すれば業務の工数を削減でき、人手不足の解消と人件費の削減に繋げられる。店舗のDX化はコストこそ発生するものの、費用対効果の高い店舗運営で、利益率の向上も十分可能と言えるだろう。

店舗におけるDXの事例を解説

大手企業を中心に、さまざまな実店舗がDXを導入して運用を始めている。ここでは、DXの事例を紹介していく。

スムーズに精算できるセルフレジを導入した「ユニクロ」

大手ファッションブランドであるユニクロで採用されているのが、スムーズな精算を行えるセルフレジだ。消費者は手に取った衣類をレジ前の専用カゴに入れ、自分でディスプレイをタッチしていくと、読み込まれた商品が自動で一覧表示される。誤りがあれば再読み込みを行い、問題がなければ現金・クレジットカード・電子マネーなどで精算を済ませ、商品を袋詰めする。

ユニクロのセルフレジでポイントとなるのが、専用カゴに商品を入れるだけで読み取りしてくれるRFID技術の存在だ。各商品にはICタグが付いており、セルフレジに搭載されたRFIDリーダーがカゴの商品を一括で読み取る。消費者は商品をスキャンする必要がなく、購入点数が多い場合でも、1分程度で精算を済ませられる。

店舗側としては、各商品にICタグを取り付けなければならない。しかし、ICタグは技術の進歩で価格相場が年々下がっており、1枚あたり約10円で購入できる。

ユニクロのセルフレジは消費者の回転が速く、レジ待ちの混雑が起きにくいため、感染拡大の防止に繋がっている。また、セルフレジをサポートする従業員の人数も多く必要とせず、コスト削減も見込める事例だ。

AIによる無人決済店舗「TOUCH TO GO」

TOUCH TO GO」とは、株式会社TOUCH TO GOが開発した無人AI決済店舗で、JR高輪ゲートウェイ駅構内にて第1号店が2020年3月23日にオープンした。

買い物の流れとしては、まず専用のゲートをくぐって入店することから始まる。入店の際に、ICカードやアプリをかざしてゲートが開く店舗もあるが、個人認証は行わず、ゲートの前に立つだけで開く仕組みだ。

入店後は、天井に設置されている約50台のセンサーカメラと重力センサーが消費者を追跡。手に取った商品をリアルタイムで認識し、消費者は精算前であっても、商品をそのまま自身の買い物袋に入れても良い。店内の買い物カゴを使用せずに済み、新型コロナウイルスの感染予防にもなる。

購入したい商品を持って決済エリアに立つと、タッチパネルに商品一覧が表示され、誤りがなければ「お支払い」をタップして精算を進める。なお、誤りがある場合はバーコードスキャンを利用し、修正することも可能だ。

決済方法に関しては、当初交通系電子マネーのみに対応していたが、クレジットカードやその他電子マネーにも拡大している。決済が完了すればゲートが開き、退店して買い物は終了。

スーパーやコンビニで導入されているセルフレジよりも省力化でき、人件費の削減に繋がる。加えて、接客する必要がほとんどないため、感染拡大の防止も期待できるだろう。

VRショッピングを楽しめる「三越伊勢丹HD」

三越伊勢丹HDでは、VR空間(仮想現実)でショッピングできるスマホ向けアプリ「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」をリリースしている。バーチャル伊勢丹には24時間アクセス可能で、自身のアバターを操作してVR空間を散策できる。

VR空間には、実店舗で販売されている商品が並んでおり、気になる商品があればアプリから「三越伊勢丹オンラインストア」へ遷移。オンライン上で実際に商品を購入できる。

また、百貨店らしくデパ地下や、実店舗で行われていたイベントもVR空間で再現している。例えば、伊勢丹の人気催事である「世界を旅するワイン展」をVRで開催。ワインソムリエがアバターで登場してお客を迎え、選りすぐりのワインセットをチェックできる。

オンライン上でも、現実さながらのショッピングを楽しめるとして非常に人気の高いサービスだ。

オンラインで接客する「ビックカメラ」

日本マイクロソフトはビックカメラと協業し、マイクロソフト製品に関するオンライン接客を開始した。人気PCであるMicrosoft Surfaceのページに遷移すると、画面右下にオペレーターのアイコンが表示される。アイコンの色で対応可否を確認でき、グリーンはすぐにオンライン接客が可能な状態、グレーは接客中を表す。

ビックカメラのオンライン接客を利用すれば、製品選びを相談できるため、専門知識を有していなくても安心。また、パソコンに限らず、スマホやタブレットなどさまざまなデバイスでオンライン接客を受けられるのも嬉しいポイントだ。

こちらから質問する以外に、製品使用方法の説明やデモンストレーションも視聴できる。手に持った大きさ・色・薄さなどをカメラ越しにチェックでき、実際の商品を細かく見れないオンライン販売の弱点を解消している。また、Webサイトを見て商品を購入する割合より、オンライン接客を受けてから購入する割合のほうが高く、成約率の向上も図れる施策だ。

AIカメラでスムーズな接客や販促を行う「イオンリテール」

イオンリテールは埼玉県川口市の「イオンスタイル川口」に、AIカメラ約150台を導入した。導入目的には、接客や売場の改善などが挙げられる。

AIカメラは消費者の行動を分析しながら学習することで、接客が必要であるか判断する。例えば、ベビーカーやランドセル売場で商品の購入を検討しているお客がいた場合、接客が必要とAIが判断。従業員に通知することで、離れた売場で作業していた場合でも、スムーズな接客対応が可能となる。

また、AIカメラで撮影した映像データを分析し、消費者の立ち寄り時間が長い売場や行動の動線、手を伸ばす割合が多い人気の商品棚などをヒートマップで可視化。店舗販促に必要なデータを収集でき、売上アップも期待できる。

加えて、AIによる年齢推定も行える。レジ前に設置したAIカメラがお客の年齢を分析し、未成年と判断した場合はレジ従業員に通知。年齢確認の判断業務がなくなり、レジ従業員の負担を軽減することも可能だ。

顧客満足度の向上や従業員の負担軽減、売上アップなど、AIカメラの導入でさまざまな効果が見込めると言えるだろう。

AI値引きで食品ロスの削減を目指す「ローソン」

ローソンは食品ロスの削減を目標とし、店舗ごとの気候や販売データを元にAIが推奨値引き額を提示するAI値引きを開始した。対象食品は消費期限が短い弁当・おにぎり・寿司・調理パンのカテゴリー。

ローソンではこれまで、店舗の判断で値引き時間や値引き額を決定していたが、経験に頼る部分も大きかった。しかし、AIがその日の在庫数なども踏まえ、商品ごとに値引き額を推奨するため、値引き作業を簡易的かつ効果的に行えるようになる。AIの精度が高まれば、食品ロスを削減できると同時に、適切な価格・タイミングの値引きにより、利益率向上も図れるだろう。

なお、現在は実証実験の段階で、2023年度中に全店導入を目指している。

店舗のDXまとめ

店舗のDX化は準備期間やコストが掛かる一方、顧客満足度の向上・業務効率化・人手不足の解消など、導入費用相応の多様なメリットが存在する。事例でも紹介した通り、大手企業をはじめとしてDXを取り入れる店舗も多い。

コロナ禍による生活様式の変更も見据えて、今やさまざまな業態で活用されるDXの導入を、この機会にぜひ検討してみてほしい。

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