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第6回 キノコ革命
2022.08.22
「え、ちょっと待て待て、これ何かの誤記じゃないか?」。アメリカで飲んだアルコール飲料の原料を確認したときのことだ。「MAITAKE(マイタケ)」と書いてある。これ舞茸のことだよね? ブルーベリー、レモン、ラベンダー、カモミールに続いて、堂々とMAITAKEの記載があるのだ。缶の表面には「RELAX」と書かれており、アルコール度数は4.9%、健康を意識したお酒である。
コロナ禍において、ビタミンDが豊富で免疫力を高めるキノコに注目が集まった。特にアメリカでその活用に、ぶっ飛んだ異変が起きているのだ。異変とは「イノベーション」と言い換えられる。この潮流はあまりにも興味深く、日本人として必見だ。
世界的に通常、キノコはお惣菜や調味料などに使われる。ここ最近だと代替肉にうま味を加える目的も増えた。欠かせない役割を担っているキノコではあるが、イメージ的にどちらかというと脇役で目立たない。お鍋の具材でも、悲しいかなメインディッシュになることはない。
しかし、ここ最近アメリカで、急に脚光を浴びはじめている。キノコがサプリメントやスポーツニュートリション、さらにはソフトドリンクなど、あらゆる食品カテゴリーに幅広く応用されるようになってきたのだ。ついにその才能が見出された! ちょっとうれしい。
キノコには免疫作用だけでなく、さまざまメリットが研究により分かってきている。品種によっては集中力や認知力などを高めるらしい。
しかも膨大な種が存在し、まだ発見されていないものも多い。そして植物ではない。菌類だ。この絶妙な立ち位置がなんともミステリアスで、高いポテンシャルを感じさせる。
老人のひげのような形状をしたヤマブシタケは、脳の機能を高めると言われており、アメリカでいま人気の原材料だ。サンフランシスコのファーマーズマーケットを訪問したとき、キノコ農家のお店では、この品種が一番に売り切れていた。生産者によると煮詰めてスープやコーヒーに使うのがお勧めだとのこと。たしかにInnovaデータベースで分析しても、用途の広がりが見て取れる。
写真のスーパーマーケットの棚には、免疫やエナジーをうたった小さめの飲料ボトルが並んでいる。写真右の「Mental Magic」や「Inner Energy」と訴求したShroomshotドリンクに注目だ。
パッケージデザインから明白なように、「主演:キノコ」。ヤマブシタケが配合されている。買って飲んでみたら、脳が活性化したような、しないような…。薬ではないので、まあこれが正常な反応だろう笑

以下のオートミールも斬新だ。日本でもオートミールが最近はやっているが、以下のアメリカの製品は一歩も二歩も先を行っている。霊芝、冬虫夏草、チャーガ、ヤマブシタケといった、複数のキノコがブレンドされているのだ。メンタル、エナジー、免疫サポートに効果的だとのこと。

要するに、キノコをスーパーフードとして捉えているのだ。この製品では「アダプトゲン」と表現している。身体がストレスに適応するのを助け、機能を正常化する効果があると考えられるナチュラル原料のこと。
グローバルトレンドを読み解く上でとても重要なキーワードなので覚えておいた方がよいだろう。クリーンラベルにも通ずる概念である。
長い間、控えめな脇役キャラだったキノコが、コロナ禍をへて、ウェルビーイングが声高に叫ばれる社会になって、あれよあれよという間に表舞台に躍り出た。私たち日本人もこの事実に目を向けるべきであろう。
なぜなら日本は言わずと知れたキノコ大国であり、大きなチャンスを内蔵しているからだ。世界のキノコの活用事例をぜひ知って、一度圧倒されてほしい。そして「日本は特殊だから…」とか言って目をそらさずに、新しいアイデアを取り入れよう。
日本からも、いや日本だからこそできるキノコ革命を起こそうじゃないか。「主演:キノコ」という発想を持って。