イオンのPB最前線、タスマニアビーフが誕生から50周年を迎える
2024.05.01
イオンの精肉の代表的なプライベートブランド(PB)商品であるタスマニアビーフが誕生から50周年を迎えた。


50年前にオーストリア大陸から南東に約240kmに位置するタスマニア島にタスマニアフィードロット社を設立し、イオンの直営牧場として1974年から肥育を開始した。自然豊かなタスマニアは空気中の二酸化炭素の濃度が低いとされ、空気のおいしさに定評がある。
牧場設立当初から安全性とおいしさにこだわる姿勢を持ち、成長ホルモン剤、抗生物質、遺伝子組み換え飼料を使わず、また、肉骨粉を飼料として与えないことを徹底してきた(ただし、感染症予防のためのワクチンは投与)。
2000年代初頭にBSEの影響で世界中が混乱に陥った時も、BSE発生の原因とされた肉骨粉を与えていないことが、安全性のアピールにもなった。当時は、米国産牛肉の輸入が一時的に禁止された他、牛肉消費が一気に落ち込んだ。そうした環境下にあっても、こつこつと販売され続けてきたのが、タスマニアビーフだ。
タスマニアビーフはブラックアンガスの血統100%の牛を素牛(もとうし)としている他、タスマニア島内産の穀物での肥育、2500ha、東京ドーム500個分の牧場でストレスを与えない肥育環境を整備するなど、ジューシーな赤身の肉質とするための工夫が施されている。
今後も、自然環境や持続可能性に配慮した肥育を推進し、これまでも実施してきた広大な牧場での肥育、肥育後期用の屋根付き畜舎整備などで牛のストレス軽減に努めるなどの対応や、地域の食品加工工場で規格外となった栄養価の高いジャガ芋を飼料に活用して食品廃棄物の削減に貢献するなど、地域循環型にさらにこだわった取り組みをしていくという。
イオンとしても、直営牧場から牛を1頭丸ごと仕入れることができるため、ランプやヒレ、タンやテールなどさまざまな部位を使った商品化ができることも強みとなっている。
今回、タスマニアビーフが50周年となることを受け、より多くの人に、より手軽にタスマニアビーフを食べてもらえるように調理しやすい形状にカットした精肉や下ごしらえ済みの商品、加工品など、約50品目の新商品を順次発売していくことになった。
例年は10品目ほどの発売のため、かなり開発を積極化した格好だ。
「牛タンかたまり」といった素材系もあるが、「手仕込みローストビーフ チョップドカット」「生ハンバーグ」「生ミートボール」「味付プルコギ用(テールブイヨン入り)」「コーンドビーフ」「ロールマッシュポテト」など多くが加工品となっている。


加工品は簡便が求められる時代に適していると考えていて、現状は販売している商品のほとんどが素材であるが、早々に加工品の売上げを2割程度にまで高めたい意向だという。例えばローストビーフは市場は縮小傾向にあるが、イオンリテールの数値では21年比の23年度の売上げは120%に伸びているという。
また、素材に関しても、節約志向もあって、食肉の鶏肉へのシフトが進んでいるが、イオン、およびタスマニアビーフは牛肉マーケットが落ち込む中にあっても売上げを伸ばしている。
イオンでは21年度比23年度が約102%、タスマニアビーフは同期間約106%に伸びているという。
2023年度の売上げは94億円、量でいうと1万6100頭、3100t。畜産の売上高構成比では20%を占める。これを24年度に100億円、25年度に110億円超を目指すとしている。
「いまお客さまは赤身のおいしいお肉(牛肉)を求めていると思っている」(土谷美津子・イオントップバリュ社長)。50年という歴史を持つに至ったタスマニアビーフだが、赤身肉にも支持が集まる状況は追い風といえる。
新型コロナウイルスの影響もあって、世界的にオーガニックなどより自然をコンセプトとする商品への支持が高まった。いわゆるオーガニックの定義とは異なるが、自然豊かな環境で肥育され、トレーサビリティのしっかりしたタスマニアビーフも、そうした範ちゅうの商品として捉えられるものであるといえる。
当然、供給量はすぐに増やすことはできないが、今後もじわじわと売上げを伸ばすことが期待される。
タスマニアフィードロット概要
開設/1974年
飼育頭数/約9000頭(2024年3月時点)
面積/約2500ha