イトーヨーカ堂の惣菜ブランド「ヨーク・デリ」が1周年、ピースデリ完全子会社化を経て製販連携強化の現在地
2025.05.23
2025.05.22
イトーヨーカ堂が惣菜ブランドを「YORK DELI」(ヨーク・デリ)に統一してから1年が経つ。5月22日には誕生1周年に際し、発表会を開催した。

1周年を記念して5月24日の土曜日、25日の日曜日の2日間限定で「山形県産まめのご飯と海老天丼の食べ比べ弁当」「彩り洋風オードブル」「ヨーク・デリ1周年感謝握り」の3品目をイトーヨーカドー、ヨーク店舗で発売することも発表した。


ヨーク・デリは、『「毎日食べたい」おいしさ。』をコンセプトとするが、この意味するところは、「毎日食べたいと思える、心にも体にやさしい惣菜」だという。一品一品を磨き込みながら、極力添加物を減らし、家庭の調理に近づけていくことを目標としている。今後、旬の食材を取り入れた季節のご飯弁当や家庭の食卓に欠かせない定番の惣菜や副菜などの新商品を投入し、ラインアップを拡充していくとした。
ヨーク・デリ誕生に先立つ2024年2月に、プロセスセンターとセントラルキッチンの機能を持つ「Peace Deli(ピースデリ)千葉キッチン」を開設。プロセスセンターでは、豚肉や鶏肉を5℃以下の温度で管理し、惣菜に使用する肉の加工、製造を行っている。
一方、セントラルキッチンでは、毎日朝、現地でだしを取り、素材本来の味を引き出す調理に注力、手間と時間を惜しまず、素材本来のおいしさを最大限に引き出した商品開発を実現しているという。
24年度中は同キッチンから43品目を導入し、惣菜における「ピースデリ」商品の構成比は約18%になった。25年3月にはグループ再編に伴って会社としてのPeace Deliがイトーヨーカ堂の完全子会社となった。目下、25年度に突入しているが、直近の25年3月から5月までの惣菜の既存店売上高は前年比105%に伸長しているという。
今後、25年度中に「ピースデリ」商品について、24年度の約2倍となる約90 品目まで拡大すると共に、惣菜全体に占める構成比を30%まで引き上げることを目指す。また、少量サイズで手軽に楽しめる「Plus-one-Deli」(プラスワンデリ)」のシリーズについても、PeaceDeli千葉キッチンでの製造を順次開始する。プラスワンデリは、セブン-イレブンのカップデリと似た商品で、若年層の支持が高いという。
1周年の発表会に臨んだ西山英樹・イトーヨーカ堂執行役員フード&ドラッグ事業部長は、「スーパーマーケットは、惣菜を重視、強化しないと生き残れない」と惣菜の重要性を改めて強調する。
とはいえ、エネルギー価格や食材を含むあらゆる原材料の高騰、人手不足の深刻化など惣菜にとっては逆風の環境にある。特に直近では米の価格が極端に上がっているが、これを原材料にする惣菜は難しい判断を迫られている。
直近のイトーヨーカ堂のカテゴリー別の状況では、売上げについて、麺類・軽食分類が前年比114%,、煮物分類も同115%、また、コロッケ分類が同113%と好調。こうしたことからも高騰する米から小麦など他の食材にシフトしている状況が見て取れる。
中華については、「冠生園」のブランドを復活させたが、「ピースデリ」の工場で製造したシューマイなどの支持も高く、中華分類も116%と大きく伸長しているという。

また、2個同時に製造できる調理器具を開発するなど、注力している「だし巻き玉子」については、卵焼きとピースデリで製造した唐揚げをセットにした商品が高い支持を獲得。直近で「玉子焼き分類」は前年比206%と大幅に売上げを増やしている。

今後はピースデリを活用しつつも、店内手作り惣菜の拡大を図るとし、例えば即食簡便の文脈で「インストア 手作りおにぎり」の導入店を拡大する。米の高騰の影響もあって弁当の単価が上がる中、単価が低い上、「ワンハンドで食べられる」という簡便の要素も相まっておにぎりに注目が集まっている。
「具たっぷり紅鮭おむすび」(250円、本体価格、以下同)、「チョップドハムたまごおむすび」(299円)といった商品で、おにぎりとしては単価が高めだが、「米原料価格高騰に対して付加価値をつけて手作りおにぎりを開発」(同社)した。

また、新しい売り方への挑戦としては、飲食店を運営する会社の協力を仰ぎ、同社のブランドを冠した「格之進・肉おじさん特製!旨みメンチカツ」(399円)を1日に2、3回、20個限定で販売するなど、にぎわいを作るような取り組みも開始。メンチカツとして399円の単価はかなり高いが、消費の二極化の様相が強まっていると指摘される昨今の状況に対し、「松」の商品としてイベント性を打ち出しながら展開を図る。

現状、4月25日に新規オープンしたヨークフーズ東小金井店(東京都東小金井市)と本社近くのイトーヨーカドー大森店(東京・大田)の2店での販売だが、6月から6店に拡大予定。


イトーヨーカ堂では、25年度中に惣菜の売上高構成比15%の達成を目指しているが、現状、大型店のイトーヨーカドーでは14%超、ヨークフーズでは13%超で、全社では13.6%となっている。