イオンが米カリフォルニア産カルローズ米100%の「かろやか」を6月から発売、狙いは選択肢の提供

2025.05.13

イオンは6月6日から順次、グループの小売企業を通じてアメリカ・カリフォルニア産のカルローズ米を100%使用した新商品「かろやか」を発売する。4kgの規格で本体価格は2680円(一部店舗では価格が異なることがある)。取扱量は約1.4万tとなっている。

供給量の関係から、まずは品薄感の強い都市部を中心の販売となるもよう。昨今、米の供給不足が深刻化している中、イオンとしては日本人の味覚にも合うものとしてカルローズ米に着目、今回の商品開発につながった。

販売においては、米の供給不足とそれに伴う価格の高騰の影響を受けることによる米食文化の維持自体に対する危機感もある。現在、イオンではパンやパスタの売上げが伸びていることから、「お米文化から遠ざかるのではないかと不安を感じている」(土谷美津子・イオン取締役執行役副社長商品・物流担当)という。「日本の米食の文化の未来を支えていく、お客さまに寄り添う存在でありたいという思いから開発を進めた」(同)

イオンはこの4月にもミニマム・アクセスの枠内で輸入されたアメリカ産米と国産米をブレンドした「二穂の匠(にすいのたくみ)」を4kgの規格で、本体価格2780円(一部店舗では価格、規格が異なる場合あり)で発売している。反響も大きく、計画を上回る売上げにつながったことから、アメリカ産の米も選択肢の1つとしてお客が必要としていることを実感したという。

それが今回のアメリカ・カリフォルニア産カルローズ米を発売することにつながった。今回の「かろやか」はそれに続く輸入米の販売となる。「かろやか」の商品名には「軽やかで、あっさりした食感という特徴」と、「カルローズ米」の「カル(Cal)」を「軽」にかけ、「気軽に、自由に、毎日の食卓で使っていただきたい」という思いを込めたものとなっている。

今回発売するカルローズ米は、米国カリフォルニア州の農業基準の下で生産され、品質管理や残留農薬検査などを実施。さらに日本の食品衛生法基準を全て満たした上で、輸入時の検査を経て安全性も確認しているという。

価格面では、二穂の匠を下回る水準になっているが、今回はミニマム・アクセス米ではなく、関税が課される一般輸入米のため、1kg当たり341円の関税が課されている。関税がなければかなりの低価格で販売ができることになる。

パッケージにはアメリカ産食材を使った商品の目印である「ごちそうUSA」のロゴを入れた

「カリフォルニア」と「ローズ(バラ)」に名前の由来を持つカルローズ米は、1948年に開発され、現在、カリフォルニア州産米の代表的な品種になっている。日本で一般的なジャポニカ米のうちの一種に位置付けられるが、短粒種がほとんどの日本の品種とは異なり、中粒種。

そのため、粘り気の強い日本の米とは異なり、炊き上がりはふっくら、ぱらっとしていて冷めてもべたつかないことから、サラダやピラフ、リゾット、ブイヤベースといった洋風料理の他、アジア料理にも適している。

中粒種ではあるが、国産米と比べて形状はそれほど変わらないように見える
白飯として炊いたもの。それなりに粘り気もあり、おにぎりや寿司などにも利用できそうだ

そのため、イオンとしては今回の発売について、日本の米の「代替」ではなく、あくまでお客のライフスタイルに基づく「選択肢の提供」との位置付けを強調する。

「グローバルな食生活、さまざまなライフスタイルに寄り添う自由なお米の楽しみ方を提案したいと思っている。全てのお客さまにより良い選択肢を提供することが大切だと思っている。(適した)料理もご提案しながら販売していきたい」(土谷副社長)

たれを混ぜたり、炊き込んだりする料理やサラダなどにより適しているとされる
メニュー提案などしながらの販売も視野に入れる。新たな選択肢として定着させることで、輸入米の将来的な可能性も増す

その上で、「日本のお米は非常に重要だと理解している。今回は、選べる自由と供給の安心を両立することを目的に、国産を大切にしながらもカルローズ米を取り扱うことで、『選べる』という新たな選択肢をお客さまに提供していきたいと思っている」(同)と、国産米の重要性について強調する。

もちろん、今回の販売についてはアメリカとしても期待がかかる。「日本にとって米は非常に重要。おそらく世界で最も品質に妥協を許さない消費者の方々がいらっしゃる。農家では『日本に売ることができたら世界のどこでも売ることができる』と言っている」(ジョージ・グラス駐日米国大使)

5月13日に在日アメリカ大使館大使公邸で行われた発表会にはジョージ・グラス駐日米国大使(写真左)の他、「かろやか」を生産するカリフォルニアの米農家のレオ・グランデ氏、ケン・グランデ氏も参加し、今回の輸出に対する思いを述べた。写真右は土谷美津子・イオン副社長

国産米の価格が高止まりしている中、大きな武器となる今回のかろやかだが、今後、国産米の価格が落ち着いてきた場合については、「お客さまの状況を見ながら」(土谷副社長)ではあるものの、一方で今回、強調した「新しい料理提案をお客さまが受け入れてくださったら、別のお米として販売させていただきたい」(同)ということで、品揃え充実の側面での期待もかかる。

また、今回はパッケージされたグロサリーとしての米の販売になるが、米に関しては惣菜の米飯の原料としての側面もある。イオンリテールでは現在のところデリカ事業では輸入米を取り扱っていない。近々ではデリカ事業での取り扱いは予定していないというが、冷凍食品などでの活用については模索していきたいという。

米の価格の高騰によって、スーパーマーケットなどでは米の売上げ自体が大幅に上がっている上、パンなどへのシフトもそれほど強くは起こっていないという声もあるなど、「米食文化の根強さ」が指摘されるところでもある。こうした状況下に代替としてではなく、「新たな選択肢」として、手頃な価格での輸入米を発売するイオンが一石を投じた形だ。

国産米に対する強い支持が歴史的に続いてきたことは確かだが、一方で料理など食のグローバル化が進んでいることも確かではある。今回のアメリカ産を含め、輸入米が今後、どのように日本で支持を拡大していくかということについては、さまざまな視点で見ることが重要だ。

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