【盆商戦】対策2024 青果編 盆休みは長期予想、際物商品の売り切りに細心の注意を

2024.07.08

世界的インフレや気候温暖化、さらにはコロナ禍の影響もあって、近年の盆商戦の商品、販売状況は毎年大きく変化している。そのような中、まず昨年の盆商戦を振り返り、その上で今年の商品、販売環境を踏まえた、今年の盆商戦の方向性を考えていくことにしたい。

まずは、昨年の振り返りから。観測史上最も暑かった昨年の夏、盆期間直前には台風6号が迷走した上で九州に接近、さらには盆期間中に近畿地方に台風7号が上陸して本州を縦断、そのため日別の販売状況は地域、日別に大きく変化した。

一例として首都圏の店舗では13日に台風の影響で大雨となり、この日を境に盆前半は消費者の買い急ぎが起こり、売上げはおおむね昨年対比110%駄台で推移。後半はその反動もあっておおむね昨年対比90%台となり、期間を通してほぼ前年並みの売上げとなった。

商品面では気温が高かったため、各品目が前進出荷傾向となり、モモやナシなど盆期間に品薄気味で高値となったため売上げが伸び悩んだ。半面、暑さでスイカやブドウ、サラダ商材の動きは良く、盆期間の商品構成は目まぐるしく変化した。

昨年の販売状況を基に、今年の盆商戦をどのように戦うかだが、気候変動の影響で天候や商品状況が読みづらい中、お客の節約志向が強まっていることを考え、「トータルの仕入売価は前年並み程度に抑え、その中で今年の商品状況に合わせた商品構成で商売を組み立てる」ことが基本方針となるだろう。

年々、粗利益確保が強く求められる環境下、前年並みの仕入金額で商品の仕入れを抑え、販売状況によっては品切れを防ぐため、売価や販売単位の調整を行い、売上げ、利益をバランス良く取っていく考え方だ。

それを前提に今年の盆商戦のポイントをまとめた。盆商戦前半、盆中、後半に分けて商売のポイントを確認していくことにしよう。

2024年青果盆商戦のポイント

①長い盆休み

今年は曜日回りが良く、一般的には10日の土曜日から12日の振替休日を挟んで18日の日曜日までの9日間に及ぶ長い盆休みとなりそうだ。

そうとはいえ、節約志向が強まる中で盆期間の売上げが大きく伸びることは考えにくい。休み期間が長いからといって仕入れを増やすことは避けたい。全体の仕入金額を抑えつつ、長い休みで家族での来店機会が増えると考え、カットフルーツや枝豆など、し好品的な商品を攻める商売を考える必要があるだろう。

②前半のポイント

盆前週末の3日(土)、もしくはその週明けからが盆準備の期間となる。お供えセットや切り花、盆用品に加え、帰省ギフトや盆期間中の手土産に好適な地元名産果物や夏果実の化粧箱を展開したい。

その際、商品包装や地方発送の案内を併せて行うと良いだろう。また、売場展開については扱い部門にかかわらず、菓子などの名産品、花、盆用品をまとめて売場展開をしたい。

③盆期間中(おおむね13日~16日)のポイント

この期間は盆期間の来客へのおもてなし、家族が集う食卓でのごちそうメニューを提案していきたい。旬の果物やカットフルーツ、暑い季節に食欲が進む薬味や香辛野菜の他、枝豆やととろ用に長芋、山芋を売るのも良い。生ワサビ、大玉果実など普段は売れない「ちょっと良い物」を売場にさりげなく取り込みたい。

④盆後半のポイント

例年、Uターンのピークは盆後半の13日~14日となることが多いが、今年は長い盆休みとなるため分散傾向となりそうだ。そうとはいえ、14日以降、18日の日曜にかけて日常生活に戻るための買物が増えるのは間違えない。

野菜のベーシック品目に加え、旬の果物をできるだけ買いやすい単位、価格で売場づくりするように心がけたい。

また、このタイミングでは在庫商品のカウント、品目別売れ数を把握し、盆商戦を限りなく在庫ゼロで着地させるための仕入調整を行いたい。

盆期間終了後は相場が動き、盆期間の在庫で評価損を出すケースが多いからだ。そのために盆期間後半で唯一開市日となる17日(土)のタイミングを逃さず、しっかり在庫調整を行う。

盆商戦品目別戦い方

①盆準備(際物)商品の売り方

先祖を迎えるに当たって、必要な盆飾り、お供え、切り花は扱い部門が違っても1カ所で売場展開するのが望ましい。これらは盆の入りまでに売り切らないと商品価値がなくなる際物商品である。

まとめて展開、かつ複数場所で展開し、早期に売り切ることが原則だ。ただ、迎え火、送り火を焚くのに使う「オガラ」は、買い足し需要があるので16日の日中まで品揃えしておくことが望ましい。

②お供えセットの発注は売り切り数で行い、不足分はインストアで商品化

お供えセットも売れ残ると商品価値が下がる際物商品だ。ただ、品切れは機械ロスを生むことにもなるので、インストアでの商品化で品切れ、ロスを防ぐ方法が効果的となる。

次の写真のように黒のトレーパックを用意しておき、通常売場で販売しているブドウ、モモ、ナシ、バナナなどを盛り付けることで簡単に商品化が可能。アウト加工品のお供えセットを安心して売り切ることができる。

③盆中のおもてなし、し好品販売の考え方

商品状況にもよるが、盆中のおもてなし、し好品の販売を行う場合、自分が来客を迎えたり、一家でお盆の食卓を囲んだりするシーンを考えてみると良い。

いつもよりワングレード上の枝豆やアスパラガスがたっぷり盛られたサラダ。大房のブドウやすぐに食べることができるカットスイカなどが思い浮かぶのではないだろうか。これらを目立つ場所で展開しつつ、POPでは「おもてなし」「一家団らん」「冷えたビール」などをキーワードに、お客に食卓シーンを思い起こさせる工夫を行いたい。

また、展開の際は通常メインにしているグレードに加え、ハイグレードのものを前面に出し、ハレの日の食卓に並べることを提案していきたい。

枝豆売場の展開例。レギュラーグレードの品揃えに加え、ハイグレード品を比較販売して売り込む
ブドウは高値頃の大房をメインに小分けやデラウエアなど低価格品の押さえも行う
サラダ材料のプラスαとしてアスパラガスを売り込む
カットスイカは普段より大型のパックを品揃え

④普段の生活に戻る盆明け後は買いやすさを前面に出す

ハレの日でもある盆が終わると、盆期間中に出費がかさんだお客の買物モードは一気に日常生活節約モードに戻る。その際に有効なのが「買いやすさ」を前面に出したばら売りだ。果物では出回りが増えるナシやつがるリンゴのばら売り、野菜ではピーマン、ナス、キュウリなど果菜類、ジャガ芋、玉ネギ、ニンジンなど家庭の常備野菜のばら売りだ。

できれば価格を合わせてのバンドル販売の実施もしてみたい。

この際、課題となる「ロス管理」については、定期的に売り減らしをしていく。売れ残った小さ目のものや小傷のあるものを袋詰めし、割安な価格を付けて売り切る。その後、新しい商品を補充すればロスは最小限にとどめることができるだろう。

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