ダイエーの「冷凍dai革命」をイオンフードスタイル向ヶ丘店、鴨居店で体験、惣菜の4温度帯の品揃えの可能性を考える
2024.07.10
ダイエーが商品を冷凍化した上で販売する「冷凍dai革命」と銘打つ取り組みを始め、話題になっている。今回、首都圏での初導入となった同社が展開するイオンフードスタイル向ヶ丘店(川崎市多摩区)、およびイオンフードスタイル鴨居店(横浜市緑区)で実際に商品を購入し、実食してみた。
冷凍dai革命は、店のバックヤードに急速冷凍機を導入して独自の冷凍品を製造、販売する取り組み。売場を見ると生鮮各部門と惣菜売場でそれらの商品がコーナー展開されている。
まず、向ヶ丘店。青果では多段エンドでカットフルーツの盛り合わせや単品の冷凍フルーツを販売。冷凍フルーツはスムージーやデザートなどの材料として便利に使える。
鮮魚は冷凍平ケースでの展開。真空パックの冷凍切り身魚やたれ漬けの魚が並ぶ、魚は急速冷凍することで鮮度が保たれる。
精肉は、焼肉セットなどが冷凍平ケースで展開されているが、鮮度は良いものの、酸素に触れることによる発色を経ていないため、定着するには少し時間がかかりそうだ。また、精肉の場合は急速冷凍と緩慢冷凍の比較が必要かもしれない。
惣菜売場は十分なスペースがあるが新たに専用の冷凍平ケースを活用して冷凍米飯、惣菜コーナーを新設している。ただし、トレーと包材の使い方には課題もあると感じた。トレーは変形しやすいものを使用しているため、使い勝手の面でやや難があると感じた。
商品は、カツ丼、天丼、鶏の竜田揚げ、メンチカツ、豚カツなど。トレーを袋に入れて脱気した状態で並ぶ。
実際、カツ丼、天丼、鶏の竜田揚げの3品を購入し、指定の時間で電子レンジ加熱してみた。注意することは、ラベルにも記載のあるように袋の端をはさみなどで切ること。それをしないと袋が膨らみ爆発するおそれがある。
加熱前の商品

加熱後の商品

目次
【冷凍】ダブル海老&野菜天重(398円、本体価格、以下同)

【冷凍】出汁香る!ロースかつ丼(398円)

【冷凍】和風だし仕立て若鶏むねやわらか塩竜田揚げ(409円、100g当たり198円)

これら「冷凍dai革命」の商品を製造しているのは、実はイオンフードスタイル鴨居店である。地域に長期間根付いた、いわゆる箱型GMS(総合スーパー)のため、バックヤードにも余裕があったものとみられる。急速冷凍機は惣菜バックヤードの隣の専用の部屋でパックされているようだ。
向ヶ丘店で展開している商品は鴨居店で製造され、向ヶ丘店に運ばれているが、急速冷凍された商品は鴨居店でも販売されている。
鴨居店の場合、果物については冷凍平ケースを3台使いコンコース側に598円と798円の冷凍カットフルーツ盛り合わせを陳列。単品ではカットパイン298円などもある。
精肉のコンコース側の冷凍平ケースは3種類のマリネされたサラダチキン(要加熱)100g当たり98円、ローストビーフ100g当たり258円といった商品を販売。調理レシピも置かれている。真空パックされた牛ステーキや焼肉用も冷凍で品揃えされている。
鮮魚については冷凍の切り身や漬け魚を冷凍平ケースで展開。エビや切り身のパックは使いやすいようIQF(Individual Quick Frozen、ばら凍結)にしている。
鴨居店では冷凍惣菜ついては壁面のリーチインケースの扉4枚、棚板5枚で陳列されている。訪店日はカツ丼、天丼、鶏竜田揚げ、豚カツ、メンチカツの他にイカ天も品揃えされている。
チルド商品の包装、保存形態にも注目
ダイエーの場合、冷凍だけの取り組みだけでなく、鮮魚、精肉のチルド商品ではMAP(Modified Atmosphere Packaging)包装、スキンパック、真空パックなど保存性を高めた商品の品揃えも豊富である。
鮮魚売場ではスキンパックの骨取りサーモンのバジルソテー(生)や、MAP包装のキハダマグロ切り落とし(生食用)、塩ベニザケ、ボイルアサリむき身、解凍スルメイカ輪切り(加熱用)、解凍むきエビ(加熱用)、ひと塩タラ切り身(生)など、日持ちに配慮された商品がコーナー化されている。
スキンパックやMAP包装は酸化や乾燥が少ないため、保存性だけでなく「おいしさ」も訴求して欲しい。
常温(上)、冷凍(下)の「おだし亭いかの一口天ぷら」



フィリピン産【冷凍】パインブロック(298円)

お客のTPOS(時間、場所、機械、ライフスタイル)に合わせた4温度帯の品揃え
ダイエーの今回の取り組みは、「おいしさ」「チャンスロス対策」「値引きロス対策」につながる重要な取り組みだと思う。
販売温度帯を広げることで売上げ、利益、生産性がアップしなければならない。冷凍、冷蔵は常温、あるいはホットの補完商品といえる。常温惣菜が売り切れても冷凍、冷蔵で同様のものが品揃えされ、電子レンジ加熱などをして食べることができる環境があることは良いことだ。
一方で、店内製造された米飯、惣菜をトレーに詰めるまでは常温販売と同じだが、冷凍することでさらに手間とコストがかかる。もちろん、ロス削減の効果は見込めるが、それでも同じ価格ではなく、その分を価格に上乗せしても良いように思う。
バックヤードにブラストチラー(急速冷却機)を導入すれば、インストア製造された生鮮、惣菜商品の「惣菜の4温度帯の品揃え」が可能になると考える。
①ホット…製造から30分以内の商品を常温ケースで販売
②常温…30分以上経過した常温ケースでの販売商品
③冷蔵…クックチル製法で製造された惣菜を冷蔵ケースで販売
④冷凍…製造された商品を急速冷却機で冷凍し、冷凍ケースで販売
筆者はかつて、米国ボストンのウェグマンズで夕食を食べようと21時に店を訪れたことがある。深夜0時の閉店であるため、まだ品揃えがあると思っていたが、カフェ、ピザ専門店、ハンバーガー専門店、スープバー、サラダバー、ホットデリのコーナーはすべて販売を終了していて、何も残っていない。
そこで従業員に「夕食を食べに来たが何もないのですか?」と言ったところ、すかさず「おいしい冷蔵と冷凍の惣菜があるから、2階のテラスで電子レンジ加熱して食べてはいかがでしょうか」との答えが返ってきた。それは、冷蔵、冷凍の惣菜に対する自信の表れでもあるように感じた。
同様に米国のあるスーパーマーケットは、小型店ではあるものの惣菜のバックヤードを覗くと、圧力フライヤー2台、スチームコンベクション2台、チラー2台を設置し、惣菜は最初から冷蔵(消費期限4、5日)で販売されている。朝9時にはまだ従業員は出勤していないようだった。おそらく1人で作業しているのであろう。
こんなことが近い将来、日本でも起こる予感を感じさせる。