新型コロナの影響も受け、モザイク化し様変わりする「シニアマーケット」をどう取り込むべきか?

2022.04.21

2020.10.02

ラディック代表 西川立一

2020年9月現在、65歳以上の高齢者は前年より30万人増えて3617万人となり、過去最多を更新、総人口に占める割合も28.7%と過去最高で、世界で最も高い。(総務省人口統計)。

19年に高齢者の就業者も892万人と16年連続で増加し、働く人に占める高齢者の割合も13.3%となり過去最高となった。

こうした「シニア世代」は新型コロナウイルスによって、行動を大きく制限され、生活様式も大きく変化をしているのは明白だ。

シニア世代はゆとりがなく、格差も大きい

総人口が減少する中で高齢者が増えることで「超高齢社会」を迎え、シニア市場に注目が集まるが、シニアにアプローチするには幾つか留意しなければならない点がある。

まず、シニアマーケットは一律的に肥沃で魅力的であるという幻想を捨てることだ。19年の「高齢社会白書」によれば、高齢者の平均総所得は318万6000円、約6割が300万円未満。

平均貯蓄額は2384万円と全世帯平均1812万円の約1.3倍だが、貯蓄高では1000万円以下が約4割。そのうち300万円以下が13.4%を占め、3000万円以上が27.6%%と、歴然とした格差が生じている。貯蓄の目的も、病気や介護への備えや生活維持のためで、財布のひもは固い。

暮らし向きでは、「家計にゆとりはないが心配なく暮らしている」が49.6%、「家計にゆとりはなく多少心配である」26.8%、「家計が苦しく、非常に心配である」8.0%となっており、決して経済的にゆとりのある生活を送っているわけではない。

変わるシニア像、アプローチ手法も変化

70年代から消費をけん引してきた、約700万人の「団塊世代」もすべてが70歳を超え、高齢者の意識や行動、ライフスタイルも変容、従来の高齢者像が大きく崩れ、アプローチの手法も変えていくことが求められている。

シニアを取り込む上で、見落としがちなのが「コミュニケーション」である。顧客との関係性を築くためには、単なる情報のやり取りだけではなく、提供する商品やサービスに対する「共感性」をどう感じてもらうのかである。

ストレートに良さや、メリットをアピールするのではなく、商品やサービスを生み出した背景や考え方を伝えることで共感してもらう。露骨にマーケティングで仕掛けて、消費者を躍らせるのではなく、良好な関係性を築いた上で、情報を受発信し、アプローチし取り込んでいく「物語(ストーリー)」が重要となる。

「商品を買ってもらい、サービスを受けてもらう」という単なるお客として接するのではなく、店や商品の価値観や考え方をきちんと伝えて顧客と共有する。共感関係を構築した上で、ときには疑似的なインフォーマルな関係性にも発展させてより強固な関係性を保っていく。顧客を単に「作る」というよりは「商品やお店のファンになってもらう」ことが重要だ。

選択権はあくまでも彼らにあることをいま一度自覚して、選ばれる選択肢を提示する。もちろんそこには「賢い選択をした」と思えるような仕掛けづくりも必要だ。

賢いシニアは、自分のモノサシに当てはめて価値を認めれば、自分のためにもおカネを使う。彼らの親の世代より明らかに自己消費が多くなる。こうした点に留意して、受信にも最大限に配慮しながら、的確に情報を受発信していくことが重要だ。

マーケットインのスタンスで、賢いシニアのニーズを拾い上げ対応していく。ライフスタイル提案という大上段から振りかぶるのではなく、シニア需要を1つずつ掘り起こすことが近道となる。

キーワードは「エイジレス」「三世代消費」「時間消費」

自立して生活している人は、一般的に実年齢より5歳~10歳若いと感じているという。個人差も大きく、若さにこだわる「アンチエイジング」志向も強く、50代、60代、70代といった年代別マーケティングは通用しにくくなっている。

そこで、シニアの取り込みを想定しながら、その下の世代にも訴えかける「エイジレス」でアプローチすることを勧める。

プレゼントやお祝い、旅行・レジャー、外食などさまざまなシーンで展開されている「三世代消費」。シニアにターゲットを限定するのではなく、子ども、孫との関係性に着目して取り込みを図ることが欠かせない。

ランドセルやひな人形はすでに祖父母の購入が中心となっており、かわいい孫へは財布のひもが緩みがちで、三世代消費は今後も拡大し続けていく。

また、セミリタイアやリタイアで時間に余裕のあるシニアには「時間消費」が有効でもある。フィットネスクラブの営業開始前には年配者が長い列を作り、昼間のカラオケルームやゲームセンターで過ごす姿も目立つようになった。

さらに、消費が単なる欲望の充足だけではなく、価値観、考え方といった知性という装いをまとい、環境や社会に配慮した「エシカル消費」といった新たな消費行動も生まれている。

一方で、現実的に「経済合理性」を重視する低所得者向けに、ディスカウントや低価格の商品やサービスの提供も活発化している。

高齢者は和菓子、和食といった思い込みはもはや通用しないのは誰の目から見ても明らかである。マーケットインでニーズや要望を探し出しながら、プロダクトアウトで提案も行い、共感できる快適な商品・サービスを納得できる価格で提供し、価値創造していくことが求められている。

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