原価率とは?意味や目安・計算方法について詳しく解説

2022.11.08

2022.08.30

原価率は売上高にかかった経費、コストをいう。原価率が高いと、売上総利益が高くてもコストの割合が大きくなるため売上高は下がってしまう。売上を上げるためには原価率を把握し、適切な金額に抑える必要がある。原価率の計算方法や目安、さらに原価率が高い場合に低く抑えるためのポイントについて詳しく解説する。

原価率とは?

原価率とは売上高を100%としたときに、売上にかかった費用の割合をいう。売上高に対するコストである。売上高から原価を引いたものを、売上総利益という。売上高が高くても原価にかかる費用の割合が大きいと、売上総利益は下がる。

業界によって原価にかかる項目は違うが、小売業の場合なら商品の仕入れ値、店舗の賃料、人件費、在庫を保管する倉庫代などが原価といえる。原価率を把握することで、コストを抑え売上総利益をあげる対策が取れる。

たとえば小売業であれば仕入れ先を変える、人件費を抑える、顧客のニーズを踏まえて商品を仕入れて在庫を減らすなどの施策があるだろう。

原価率の計算の仕方

原価率の出し方を説明しよう。

売上原価÷売上高✕100=原価率

上記の計算式で原価率を出せる。

たとえば、売価10,000円の商品の仕入れ値が5,000円であれば原価率は50%になる。(5,000 ÷ 10,000円 * 1000 = 50%

また、まとめて50個以上仕入れるなら仕入れ値がさらに4,000円と安くなる場合は、原価率は40%となる。(4,000 ÷ 10,000円 * 1000 = 40%

原価率を出す場合、原価をどこまでとするかがポイントである。材料費や仕入れ値だけで計算するケースと、人件費やそのほかの細かい経費を含めて原価として計算するケースでは、当然原価率は変わってくる。

原価率の目安とは

原価率は業種によって異なる。

経済産業省の商工業実態基本調査で見ると、飲食業の原価率は平均44.1%、売上総利益は平均55.9%である。

また、経産省の2021年企業活動基本調査によると、主要産業の製造業、卸売業、小売業の平均原価率は80.5%だ。詳しく紹介すると製造業80.8%、卸売業87.6%、小売業71.2%となっている。飲食業の原価率は、主要産業に比べて低いことがわかる。

飲食業の場合は、原価だけではなく人件費が売上高に対してどのくらいの割合なのかも把握する必要がある。飲食業は機械を使った自動化が難しい業務が多いこともあり、人件費がほかの業種よりも高い傾向がある。食材などの原価と人件費が売上高のどのくらいの割合を占めているのかも気にする必要があるだろう。

原価率が高くなる原因

原価率が高いということは、売上総利益が少ないことになる。つまりキャッシュフローが厳しい状態である。原価率が高い状態が続いていて売上高が大きく減少した場合、企業に持ちこたえる体力がなく、すぐに資産売却や大規模なリストラなどを行わなければいけなくなることもある。

原価率は常に管理し適正な数値を保つ必要がある。原価率が高くなる原因は、業種や業態によって違う。また社会情勢の影響もあるだろう。ただし、どんな業界でもある程度共通していえる理由がいくつかある。詳しく見ていこう。

売れ行きのいい商品の変動

売上高は変わらなくても、原価率の違う商品が売れるようになった場合、売上総利益が下がってしまうことがある。たとえば、先月までは原価率60%の商品がよく売れていた店で、社会情勢の変動によって最近は原価率が70%の商品の方がよく売れるようになったとする。この場合、売上高は同じでも原価率が上がるために最終的な売上総利益は下がってしまう。

ロス率が高い

原価率が高い場合、仕入れの量が適切か見直してみよう。過剰に仕入れている商品はロスにつながりやすい。

ロス率が高いと原価率が上昇する。飲食店でよく見られるケースである。たとえばキャンペーンやフェアなどのために特定の食材を多く仕入れたのに、想定していたほど売れなかった場合、その食材を大量にロスすることになり当初計算していた原価率より大幅に上がってしまう。

通常の仕入れでも同じことがいえる。店によってはロス率が頻繁に起こっているところもあり、原価率の上昇につながっていることに気づかない場合さえある。

量が多い

オーバーポーションとは、規定の食材の分量よりも多い量で料理を提供することをいう。飲食業で使われる専門用語だ。1品や1組の顧客だけならそれほど大きな損失にはならないが、オーバーポーションが常態化してしまうと何千〜何万食分となり、原価率が高くなる可能性がある。

またオーバーポーションの料理に慣れている顧客がいつもと同じ料理を注文したのに分量が減っていると感じれば、実質的な値上げだと思いその店に足を運ぶ回数が減ってしまうこともある。客離れを防ぐためにも、原価率を細かく管理することは重要なのである。

原価率を抑える方法

原価率が通常よりも高くなったり、目安としていた率よりも上がったりした場合は、なるべく早い段階で原価率を抑える対策を取らなければいけない。「原価率が上がる=売上総利益が減る」ということを、経営者だけではなく社員もしっかり認識する必要があるだろう。

原価率を抑える方法はいくつかある。業種や業態によっても取れる対策は異なるだろう。在庫管理を厳重に行うことはもちろん、仕入れ先の変更や価格の見直しなどできることを行い原価率をなるべく抑えるようにすべきである。一つひとつ詳しく解説する。

在庫管理の徹底

まずは在庫管理を徹底しよう。在庫管理が適正にできていないと、仕入れてから長期間売れずに商品が放置されたまま商品価値が下がってしまったりロスが発生したりする。これらはすべて原価率を高めてしまう原因で、結果的には利益率が下がってしまう。

年に一度決算のために棚卸しを実施する会社もあるが、それでは適正な在庫管理はできない。月に一度は棚卸しを行い、在庫状況を把握しよう。また売り切れを防ぐために在庫を多めにストックしておくことは必要だが、多すぎる場合ロスにつながることもある。在庫管理システムを導入して在庫は抱えすぎないようにするといいだろう。

仕入れ先を変える

原価率を下げるために、仕入れ値を下げられないか検討してほしい。現状よりも安い仕入れ値で購入できる新たな仕入れ先を開拓するのもいいだろう。

しかし、仕入れ先とは創業当時からの付き合いでなかなか交渉しづらい、仕入れ先を変えられないケースもあるだろう。その場合、仕入れ値を下げるには仕入れ先にある程度の数をまとめて発注して単価を下げる、仕入れ先をいくつかに分けてリスクを減らすなどの方法が取れる。

取引先との関係を良好に保ちつつ、なるべく原価率を下げられる仕入れ方法を考えよう。

仕入れの量を見直す

仕入れの量が適切かどうか確認しよう。過剰に仕入れをすると、ロスにつながったり長期保管して商品が劣化したりする。いつも仕入れた分を売り切れる商品ならば問題ないが、季節や時期によって売上に大きな変動がある商品は、過剰に仕入れると原価率を上げてしまう可能性がある。

仕入れ量を決める場合、前年度の売上データを参考にすると予算を立てやすい。同月比で比べて検討しよう。また、1度の仕入れでは、大量に発注しないようにすることも大切だ。小ないロットで仕入れを行えば、その後の仕入れ量をコントロールしやすくなる。

販売価格を変える

原材料費や仕入れ値が高騰したのに販売価格をそのまま変更せずにいると、原価率が高くなってしまう。販売価格の値上げは、顧客にとってもダメージを伴うものなので、なるべく価格を据え置きたいと考える企業も少なくないが、場合によっては販売価格の見直しも必要である。

販売価格を変える際は、影響力の大きい企業の販売価格をベースにするプライスリーダー追随法、仕入の原価に利益を上乗せするマークアップ法、クオリティの高さなどを武器にプレミアを付ける名声価格法、1,000円・3,000円などきりのいい数字から少し値下げをして端数にする端数価格などがある。

販売価格を改訂する場合は、市場の相場から大きく外れない範囲で顧客のことを考えて決定するべきである。商品の質に対し販売価格が高すぎると、売れなくなってしまうので注意が必要だ。

原価率の低い商品を販売する

なるべく原価率の低い商品を売れるように工夫しよう。売上総利益のアップにつながる。すべての商品の原価率が同じであることはないので、原価率の低い販売したい商品をお店の目につく場所にディスプレイしたり、おすすめ商品としてポップやメルマガ、LINEなどで紹介したりするといいだろう。

ロスを減らす

原価率を下げためになるべく製造業なら不良品、飲食店なら食材をロスしないようにしたい。ロスを減らすためには、古い商品から販売する、どの商品が売れているのか確認する、適切な場所に保管するなど、在庫管理の徹底が求められる。人為的なミスによるロスを防ぐためには、マニュアルの整備や研修の実施を行うといいだろう。

また、歩留まりについても把握しておきたい。歩留まりとは、製造業の場合なら投入した量に対する実際に作られた生産の数、飲食業なら食材の使える部分の比率をいう。歩留まりがいいほうが原価率が下がり、利益になる。歩留まりを改善するための有効活用や業務フローの見直しも考えるべきだろう。

原価率の違うものを組み合わせて販売する

店や経営側の意図とは違う商品が売れることも少なくない。原価率が低くてもなかなか売れない商品もあるだろう。その場合は、原価率が高くよく売れる商品と原価率が低いがあまり売れない商品を組み合わせて販売すると効果的だ。

店や経営者は顧客のニーズや社会情勢を踏まえながら原価率も計算した品揃えを行い、原価率が低い商品も売れるよう工夫したい。

原価率を把握し低く抑える工夫を

売上を増やすためには、やみくもに商品を売ればいいわけではない。原価率を把握し、売上総利益にどのように影響しているかを理解する必要がある。

原価率が高い場合は、在庫管理を徹底し仕入れ先や仕入れの量などを変える、ロスを減らす、原価率の低い商品が売れるよう工夫するなど原価率を下げるための対策を取ろう。場合によっては、販売価格の見直しが必要になることもある。

原価率を下げることで、売上総利益を増やす努力も大切である。

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