ザ・トップマネジメント 新たな小売業をもたらす :「ベータ・ジャパン 北川卓司カントリーマネージャー」

2020.08.11

更新:2020.08.12

ベータ・ジャパン北川卓司カントリーマネージャー

販売を主目的としない「小売りの新しい形」を日本へ

――米国の事業を日本で展開しようと思ったきっかけ、可能性を感じた部分は。

北川 小売り全体が厳しい中、オンラインで買われる方が多くいらっしゃる。その際、「それでは、店舗はどのような形で進化していく必要があるか」と考えたときに、よく昔から「体験型にシフトしよう」と言われてきたと思う。

ただ、それを「販売しながら体験にフォーカスする」といった形でやる場合、結局、売れたりすると販売の方にどんどんシフト、フォーカスしてしまう流れが多いと思っている。

その点、b8ta(ベータ)は、販売はするが、最初から主目的として販売を置いていないことを明言している。かつ、いろいろなものを1つのフロアで体験、発見していただける。こういったモデルは、あるようでなかったということを、アメリカでお店に行ったときに感じたし、そこを魅力と感じた。

もう1つは、特に東京だとイベントスペース等もあまりない。あっても長く使えるところがない。その辺りを考えたとき、オフラインの、特にイベントとして使用する以外で、なかなか東京の一等地の1階には(店を)出しにくいのではないか。それが可能であればおもしろいモデルではないかと思った。

――面積や商品数の目安は。

北川 区画が60㎝×40㎝、あとはエクスペリエンスルームを持つか持たないかで若干の増減はあるが、基本的には40坪で、100区画ぐらいとエクスペリエンスルーム1つという新宿の形がスタンダードのサイズかなと思っている。

――一等地で家賃も高く、カメラなど設備投資もかかると思うが、月額出品料30万円でビジネスとして成立するか(100区画で年間3億6000万円)。

北川 成り立つが、正直、大きく儲けるというものではない。どちらかというとb8taの認知度がまだまだ低いということもあるし、われわれとしても小売りの新しい形を日本でうまくやっていけるかどうかを、今回の2店舗の立地の中で見ていきたいということもある。

――商品の配置はどのように決めているのか

北川 マーチャンダイズのマネージャーが各店舗に1人いて、チームで相談しながら決めている。基本的にはブランドを出品するパートナー企業側は、どこに置くかを選べないモデルになっている。

最初は(新宿、有楽町のマネージャー)2人とも、やはりカテゴリーでまとめてみたりしているが、実際にオープンしていくと、どのエリアが滞留しているのかが、ヒートマップで見られる。それを見て変えていって、どのような流れが作れるかを調整する。

――やはり店内全体を歩いてもらうのが望ましい。

北川 もちろんだ。人気商品だとか、日本初進出、初出品というものがある程度引っ張ってくれる。ただ、いまはオープンしたばかりということもあって、皆さん、ある程度回遊していただけている。

――出品者から場所についてクレームはないか。

北川 ない。基本的に出品料が一律で、どこに置かれるか選べないというのは、最初からお伝えしている。

――販売を主目的としていないが、買える商品もある。

北川 8割ぐらいの商品は買えて、在庫も置いている。決済もb8taが行うが、売上げは100%、出品者に行く。サイトで買ってもらってもよいが、お持ち帰りしたいと言われる方が一定数いらっしゃるので用意している。ただ、大型商品はほぼ置いていない。

自前の従業員「b8taテスター」で差別化を目指す

――商品は、b8ta側が選ぶのか、あるいは出品者側からの希望によるのか。

北川 両方だ。パートナーシップというチームがあり、われわれの方で興味のある商品を一覧にしているので、そちらの方々にどんどんコンタクトしている。やはりわれわれとしても、自分たちがまず見てみたいというものにお声がけしている。ただ、まだ、われわれも知名度、認知度が低いのでそうしているが、おかげさまで多くのメディアに取り上げていただいたので、お問い合わせは増えている。

――出資者の出品など特に条件を変えているか

北川 いない。出資者であるかどうかも関係なく、出品料は一律。ただ、たとえば10品など多くの商品を出してくれるところには1区画当たりの価格を下げることはある。

――商品の配置換えの頻度はどれくらいか。

北川 月1回。同じところでデータを分析したいので、基本的には変えたくないが、そうは言っても、(回遊など)差が出てくるので、ヒートマップ等を見ながら変えている。

――自前の従業員にこだわっている。

北川 新宿は丸井さんの出向の方が多いが、所属はb8taの社員になる。従業員をb8taテスターと呼んでいるが、最終的にはテスターで差別化する部分が多々あるので、こだわりは持っている。

出品者からのヘルパー(従業員)も基本お断りしている。お客さまがご質問された際に、出品者からのヘルパーは自社の商品しか説明できない。しかしお客さまは店舗内のさまざまな商品の説明を受けたいと考えるからだ。また、仮に全ブランドがヘルパーを送ると、人数が多くなってしまうこともある。

――145種類以上の商品について覚えるのは大変だ。

北川 まだまだ正直なところ100点満点のレベルには行っていない。もちろん、ご満足いただけるレベルの接客はできると思うが、もう少しさらに一歩踏み込んだレベルの接客をしたいとは思っている。

トレーニングのソフトがあって、出品者のミッションからスタートして、会社の歴史なども学んで、最後はその商品自体のスペックなどを学ぶ。出品者にはわれわれのプラットフォームに情報を上げていただく。あとは、たとえばカインズさんであれば、直接店舗とオンラインでつないでいただいて、商品の担当者の方から商品の説明をしていただくといったこともした。

――食品の出品もある(新宿で株式会社千休「千休(Senkyu)」と株式会社True Food & Design「True Food Chocolate」、有楽町でMOON-X株式会社「CRAFT X クリスタル IPA」)。新型コロナウイルスで難しいが、試食なども考えるのか。

北川 個包装のものをお渡しすることはできるとは思うが、やはり皿に載せてということは、新型コロナの問題もあって難しい(「True Food Chocolate」のみ、個包装で試食を実施している)。食品は、アメリカではほぼないので、日本独自にはなる。

株式会社千休の「千休(Senkyu)」
株式会社True Food & Designの「True Food Chocolate」
MOON-X株式会社の「CRAFT X クリスタル IPA」。現在、試飲は行っていない

――オープン後の反響は。

北川 難しい状況下ではあったが、多くの方にご来店いただいた。密を避ける意味では、AI(人工知能)カメラを使ったトラフィック(交通量)のコントロールもうまく動いていた。店舗の広さと什器を除いた通路の幅などから何人入れるかを試算し、バロメーターを超えたら入口で入場をお待ちいただくといったこともうまくできた。

また、思ったよりもお客さまの滞在時間が長い。われわれの想定をはるかに超える長さで、その意味では入れ替えに時間がかかり、お待ちいただくのが長い時間帯もあった。ただ、それは最初のオープンだけかもしれないので、もう少し落ち着いてくるかなというところではある。

――商品に興味があると判断する基準は5秒以上ということだが、はるかに長い時間いたと。

北川 ただ、その中でも通過するところもある。5秒は結構長いので、濃淡は出てくる。

――興味を持たれなかった商品についてはコンサルティングもするのか。

北川 確かに、ご出品いただく際にそういう話もいただいた。まだまだチームとしてそれほど大きくないため、そこまではできないと思っているが、将来的にはサービスの可能性もある。

「b8taという新しいカテゴリーを作りたい」

――経営上重視している数値、要素は何か。

北川 われわれにとっては区画の売上げ。100%はまだ埋まっていないので、そこを埋めていくのがわれわれのミッションだ。ただ、あくまで重視しているのは「体験」。テスターの評価も売上げではなく、デモ数などにしている。

――出品料ということで、売上げには上限があるが、それでよいのか。

北川 よい。

――店が増えていくことで売上げが増えていくと。

北川 そうだ。

――出品者のメリットを改めて。

北川 やはり、大企業は別かもしれないが、スタートアップや日本に進出したばかりの企業などは、新宿マルイの1階や有楽町電気ビルの1階に急に出店できるようなものではないと思っている。そこに商品を置くことで、来店してもらい、注目もしてもらえる。施策としては圧倒的に効率が良くメリットがある。

「商品を手に取ってもらう」ということは、カスタマージャーニーとしては相当遠いところにあるものだ。たとえば、①オンラインで広告を打って、②ウェブサイトに来てもらって、③どこで販売しているかを見て、④来店してもらって、⑤触るという5ステップある。

それがb8taの場合、偶然の出会いかもしれないが、①来てもらって、②触るという2ステップになる。

特にカインズさんは、東京(23区内)には南砂(南砂町SUNAMO店、東京・江東)しかないので、特に若い年齢層にすごく好評だ。そもそもカインズさんがプライベートブランドを手がけていることを知らない方が多々いらっしゃったし、実際に売れている。「食品用ラップケース スパッと切れるラップケース」などはものすごい人気だ。

また、たとえば、富山の細川機業株式会社には、「オリガミクス 和紙布スリッポン」を出品していただいている。これは和紙を練り込んだ糸で作っていて、通気性が良くて素足で履けるというものだが、普通に東京で生活していたらあまり出会わない。

――「体験」と共に、ネットだとなかなか出会えないといったことを受け、「発見」を重視している。

北川 (ネットでは)自分の興味のある範囲外のものに出会うのは難しいと思うし、百貨店などは、それこそ名前のとおり何でもあるが、同じフロアの中で見えるものは限られている。その意味では1つのフロアでご自身の興味のあるもの以外のものに出会える、そういった「偶然の出会い」というのはおもしろいのではないか。

――場所貸しとは違うし、小売業とも言えないモデルだ。

北川 「いままで過去に同じようなモデルがあったのか」とか、「どこと比べてどうなのか」と言われるが、いつも私が申し上げているのは「b8taという新しいカテゴリーを作りたい」ということ。体験型、あるいはリテール・アズ・ア・サービス(RaaS、サービスとしての小売り)というビジネスモデル自体が、今後増えていくと思っている。そのときに、カテゴリーとしてわれわれが作ってきた、「b8taっぽいお店」と言っていただけるようになるまで、われわれもがんばっていきたいと思う。

――イメージとしては、分析なども含め、広告をリアルにした感じだ。

北川 それもある。

――今後の出店もやはり都市部がターゲットになるのか。

北川 結局、ご出品いただける企業がいらっしゃるかというのが、われわれにとってすごく重要なポイント。出品企業に出たいと思っていただけるところは、やはりトラフィックが高いところになる。

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