ザ・トップマネジメント「オーケー 二宮涼太郎社長」: コロナ時代の先進経営を語る
2022.04.12
2020.08.07
まとめ買い対応を強めつつ、お客の期待の先を行く商品、価格を実現
――足元の状況は。
二宮 6月は3月、4月、5月に比べて少し落ち着いた感じがある。5月までは既存店は2割ほど伸びていたが、6月はそこまでは行っていない。それでも新型コロナ前に比べると売上げは高い。
――スーパーマーケット(SM)では客単価の伸びが大きくなっている。
二宮 お客さまの買物の頻度が減ったのが常態化したのかなと思う。だから、客数の見方としては見づらい部分はある。頻度が下がって、客単価が上がっている売上高ではある。どの企業も同じ傾向ではないか。
お客さまが買物の回数を減らしていることは、客数を見ると明らか。そうなるとよりまとめ買いになるということで、オーケーのようなスーパーは良いかなと思っている。よりまとめ買いに対応しようと思って、一部の店でかごが4個載るカートをメーカーさまとタイアップして開発して導入した。
もともとオーケーの場合、週末に来られるお客さまなど購買点数が多く、客単価が高いので、3個載るカートはあった。それで3個でも足りないとなって導入したが、売場で4個載せていただいているお客さまを見ると結構うれしいものがある。週末に1週間分を買おうと思うとかご4個ぐらい必要になるのではないか。
――6月になって落ち着いてきて、価格、販促などを見直したか。
二宮 全般的には3、4、5月は、「物の確保」がとにかく最優先というところで、売場での品切れや、メーカーさまの出荷調整が結構あったこともあって、需要に追い付かない商品に対する代替商品の確保が最優先のテーマだった。
売場では目立たないものの、まだ出荷調整はあるのだが、6月に入ってからは代替品の確保モードから変わってきている。定番品がしっかり売れるようになっているので、その中でめりはりを付けて価格訴求する、従来型の方に力を入れるようになっている。
都心を含め自社物件の出店でコスト競争力高める
――競合の出方はどうか。
二宮 皆さん価格訴求を明確に出されている。われわれは、もともと「価格」を1つの訴求のポイントに勝負している。競合も価格を下げてくるなど競争が激しくなると思うので、われわれもより強くならないといけない。当然、より攻める価格、値付けができるようにしたい。
ある程度、オーケーの認知も広がってきたので、お客さまの期待も高い。「思ったより安くない」と言われるとかえって期待を裏切ってしまう。よりお客さまの期待の先を行く商品だったり、価格だったりを実現していかなければいけないと、商品部といっしょに取り組んでいるところだ。
われわれはコストが安いのが競争力だと思うので、そういう意味では自社の物件での出店には力を入れていきたい。これは将来に向けた仕込みだが、過去の店でも例えば新用賀店(東京・世田谷)、港北店(横浜市都筑区)、みなとみらい店(横浜市西区)など大型店の旗艦店は自社物件ばかり。そういうところではコスト競争力があるのかなと思う。
――小型から中型、大型店まで幅広く手掛けている。
二宮 郊外であれば、できるだけしっかりした売場面積が欲しいと思うし、もちろん、都心でも欲しい。特に都心で、しっかり人口も厚いエリアには積極的に出店したいと思っている。店の大きさも、商圏を見ながら小型店に限らず、フリースタンディングについても土地の取得から含めて、しっかりできるところは戦略的に力を入れていきたい。ただ、都心だとなかなか出店ができないため、300坪、あるいはそれ以下でも出店していく。
――長期的には借りるよりは買った方がよいということか。
二宮 借りるよりは(取得して)自分で手掛けた方が良い。借りると都心は坪当たり賃料が高い。物件を駅前に求めるとなかなかないが、われわれとしては都心とはいっても一等地ではなく、周りにスーパーがないところ、商品の魅力でお客さまをしっかり呼べるところに出したいと思っている。
新型コロナの物量増加をセンターが支えた
――物流センターも昨年から整備してきた。
二宮 東側は川口と流山、西側は寒川物流センターの3拠点。いろいろな意味で整備しておいて良かった。昨年の秋口から稼働して、ちょうどフル稼働を迎えたのが今年の2月の下旬。われわれの常温食品を一通り取り込んだが、全部取り込んだところで新型コロナで物量が増えたので、うまくこなせて何よりだった。段階稼働が新型コロナに重なっていたら大変だったことを考えると、本当にぎりぎりのタイミングだった。これは単にラッキーだったとしか言いようがない。
――店舗オペレーションの改善は。
二宮 小売りだからこそできることでいうと、例えば発注単位をできるだけ切り上げて、倉庫内の作業を減らすなど細かい工夫がある。センターの稼働に当たり、物流会社(100%子会社)のオーケー物流がセンター着で買い付けする形に切り替えた。ある種、店を巻き込めるからこそできることに積極的に取り組んで、物流業者さまからもいろいろご評価をしていただいている。
われわれとすると物流事業で儲けようというよりは、コストを下げた部分を最終的に売価に反映していって、そこでもっとより高い売上げ、高い物量を取ることで事業全体をより太くしていこうと考えている。最終的には、その積み重ねがコスト競争力になり、より強い売価を付けることにつなげていきたいと思っている。
――商品は。
二宮 生鮮では、青果は引き続き産地との取り組みを継続している。精肉は(和牛A4以上の方針のところ)、いまはほとんどA5で買い付けていて、ご支持いただいている。競合は交雑で価格を出されているが、われわれはぶれずに(国産牛肉は)和牛にこだわっている。いまは相場も下がって後押しになっている。お客さまもお安くかっていただけるチャンスで、積極的に消費いただいている。
あくまで注力すべきことは商品だと思っている。商品の見直しという切り口で商品をどんどん変えていって、よりお客さまにお買いいただけるものを追求していく。今後、自社で輸入した商品も増やしていきたいと思うし、当然、自社で手掛けるからこそより価格競争力がしっかり出せる商品にもなる。
ある程度の規模のある会社にもなったので、輸入の際もある程度ロットがまとめられるし、メーカーさまと留め型商品を開発するときにも、ロットがまとまるので、今まで以上に規模も生かした上で、より強い価格を付けられるように強化したいと思う。
輸入の商品については、ボリュームのまとまる商品から1品1品手掛けていて、秋口ぐらいから売場に並ぶ。昨年に売り出したインド製のバスタオルも安定的に売れている。
――新型コロナの問題があって以降、ワンストップという要素がこれまで以上に重要になっているようだ。
二宮 分野でいうと、非食品をもっと強化していきたい。食品強化は当たり前だが、食品と同じように力を入れていきたいのはやはり消耗雑貨などだ。ドラッグストアと戦っていく上では、食品がご支持をいただいているのであれば、非食品にもより力を付けていきたいと思う。
昨年の夏ぐらいから、全店的に「防災」売場の定番を作った。それまでは9月1日の防災の日に向けてエンドを組んだりしていたが、いまは災害が日常化していることもあって、「防災」を定番売場としてつくり、そこにまずは既存で取り扱っている中から商品を集めた。
さらにそれらの商品を多カ所展開していたものを、より「防災商品」の商品を強化しようということで、7月15日オープンの八千代緑が丘店(千葉県八千代市)ではレジの近くに「防災」の売場を3尺1本取って、防災用の食品なども品揃えた。
さらに飲料の売場と隣りにしている。飲料は、防災用に備蓄しておいていただきたいアイテムだが、わざわざ防災用に多カ所展開することなく、飲料の並びで防災食品を充実させたモデルをつくった。全店にすでに防災定番があるのだが、このモデルを他の店でも取り入れていきたいと思っている。
ネットスーパーに、より真剣に取り組む
――新型コロナを経て長期的にSM経営が変わっていくと思うか。
二宮 宅配という部分が、今回、確実に生活の中に浸透してきたし、より抵抗感がなくなり浸透するだろうと思う。現在、買ったものを有料配達するサービスを実施しているが、これは買物の延長で、新型コロナで伸びたかというと伸びておらず、むしろ利用が落ち着いている。
その意味からいうと、より人との接触を避けて、家で注文して家に届けてもらうことがより当たり前になるだろう。新型コロナの中でできた生活スタイルは、(新型コロナが落ち着いたとしても)染みつく部分はあると思う。
――ネットスーパーはどうか。
二宮 展開していないが、当然、こういう状況もあるので、より真剣に取り組んでいきたいと思っている。(需要として)ボリュームができれば無視できない分野だと思う。
――ネットスーパーは採算性に課題を抱えている企業が多い。
二宮 そう。そこをどう折り合い付けるかだが、不採算のものが、社会に不採算のまま浸透して、みんなプレイヤーが疲弊したまま展開するということは考えにくいと思う。より生活に浸透していくとすれば、ビジネス的に成り立つ格好に収れんすると思うので、それを待ってからというよりは、ある程度「こうなるであろう」という絵も持ちながら考えていきたいと思う。
――DX(デジタルトランスフォーメーション)の見通しはどうか。
二宮 技術の進化はしっかりウオッチして、社内でDXしなければいけない部分はいろいろ手を付けている。本社業務、店舗業務もそうだが、しっかりデジタルを使って効率性を追求できるところはやっていきたい。
――セミセルフレジ、フルセルフレジを導入している。
二宮 セミセルフは、新店はもちろん、既存店も優先順を付けて入れ替えている。
フルセルフも採用の厳しい一部の店では導入している。従業員1人で多くのお客さまを見ることができるので、レジの従業員が少ないときでもレジを開けることができることはメリットだが、お客さまが(スキャンなどを)やるので、レジの処理能力自体は決して高いわけではない。その分、お客さまが並んでしまったりしてトータルではマイナスになってしまうのでそこは考えながら展開している。