「新品か、中古か」の選択が当たり前の世の中に アップガレージグループ 河野映彦社長
2026.11.04

FC展開で培ったノウハウを、業界を支えるプラットフォーム・システム事業へ昇華
1999年4月に創業し、自動車・バイクパーツのリユース(中古品の再流通)を軸に成長を遂げてきた株式会社アップガレージグループ。現法人の設立は2014年4月、神奈川県横浜市青葉区に本社を構え、2021年には東京証券取引所スタンダード市場へ上場を果たした。カー&バイク用品のリユース専門店「アップガレージ」を中核に、新品タイヤ専門ブランド「タイヤ流通センター」、ECサイト(電子商取引)「upgarage.com」などを多角的に展開。さらに2024年4月には米国1号店を出店するなどグローバル展開にも乗り出している。掲げるブランドスローガンは「Good Mobility, Happy Life」である。
その舵取りを担うのが河野映彦(こうの・てるひこ)代表取締役社長。証券会社を経て同社へ参画し、2023年4月に社長に就任した(創業者の石田誠氏は取締役会長として経営を支える)。目下、業績は堅調で、2026年3月期の売上高は153億8400万円(前期比10.0%増)、営業利益は11億300万円(同5.7%増)と、上場以来5期連続で売上高・営業利益ともに過去最高を更新し続けている。社会全体でリユースへの関心が高まる中、河野社長に今後の成長戦略と事業への想いを聞いた。
同社の事業は、もともと中古車販売の現場から生まれたという。
「創業者が中古車販売店を営んでいた際、下取りや買い取りをした車両から外したパーツやタイヤを店頭に並べたところ、予想を大きく上回る反響がありました。『これこそが世の中に求められている事業ではないか』と着目し、事業転換を決断したのが始まりです」
事業が創造された瞬間と言っても良いだろう。それが今の事業に繋がっている。
「中古カー用品・バイク用品、近年では自転車を含めた買取販売店舗を、直営店およびフランチャイズ(FC)モデルで展開することが当社の祖業です。
昨今、消費者の皆様のリユースに対する心理的ハードルが下がり、物価高を背景に『賢く質の良いものを選びたい』というニーズも高まる中で、大変多くのお客様からご支持をいただいています。
さらに当社では、店舗ビジネスにとどまらず、FC加盟店様向けに開発・運用してきた業務システムや供給体制を、外部企業様向けにプラットフォームとして展開するBtoB事業を拡大させています。自社グループで実証し磨き上げたオペレーションだからこそ、現場の課題に即した高い実用性を持っています。近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進や人手不足による省人化・業務効率化の波とも合致し、多くのパートナー企業様にご導入いただいており、これが新たな成長ドライバーとなっています」
FC加盟店向けの仕組みを他社へ外販する好例が、新品タイヤや消耗品の流通卸売りである。
「中古パーツは全て『一物一価』であり、タイヤやオイルといった消耗品は非常に回転が早い商材です。また、同じ車種であっても年式やグレードごとに適合サイズが細かく異なるため、多種多様な在庫ラインアップが不可欠となります。
そこで当社では、中古タイヤの供給のみならず、新品の調達・卸売りを一手に行う受発注プラットフォームを構築しました。FC加盟店様や提携企業様がWeb上で発注すると、サプライヤーから直送され、請求・管理は当社が一元管理する仕組みです。現場の調達負荷を大幅に削減し、本業に集中できる環境を提供しています」
この仕組みは、大手中古車流通企業をはじめとするアライアンス先でも幅広く導入が進んでいる。
「例えば、提携先の大手中古車販売店様が車両を販売される際、ご購入者様から『ドライブレコーダーを取り付けて欲しい』『新品タイヤに交換して欲しい』といったご要望が日常的に発生します。提携店様は当社が提供するパーツ受発注システムを通じて最適な商品をスムーズに手配できるほか、適合確認などの専門的な問い合わせも当社のコールセンターが一括して代行・バックアップしています。
提携店様からするとあたかも自社の本部に電話をしているような感覚で問い合わせができます。カーパーツのプロフェッショナルである当社が適合確認(その車に取り付けられるか)を担保することで、誤発注や不要なデッドストックの発生を防ぎ、確実な商品をお客様にお届けすることが可能です。お取引先様にとっては、専門知識や在庫リスクを抱えることなく付帯サービスの質を向上させ、業務効率化を図れるという大きなメリットがあります」
つまり、同業に仕組みを提供し、その会社の業務をサポートしているわけだ。このFC加盟店の課題解決から生まれたBtoB受発注プラットフォーム「NEXLINK(ネクスリンク)」を起点に、同社は業界全体の流通を支えるインフラ企業へと進化を遂げている。
現在、店舗を中心とした「リユース業態」が売上高の約60%を占める一方、このNEXLINKなどを核とする「流通卸売業態」が約40%を稼ぎ出すまでに成長しており、収益基盤の複線化が着実に進んでいる。同業他社をも巻き込む独自のビジネスモデルについて、河野社長は次のように強みを語る。
「お取引先様のニーズに合わせて、自社ブランド名でのOEM提供を行うケースもあれば、『NEXLINK』の名称でそのままご活用いただくケースもあります。パーツの適合確認を当社が支援することで先方の余剰在庫リスクを解消し、同時に車両下取り時に発生する良質な中古パーツを当社が買い取らせていただく。
新品の卸供給と中古パーツの買取・循環がシームレスに連動する当社独自のエコシステムが確立されています。さらにシステム開発を内製化しているため、市場や現場のニーズに合わせてスピーディーに機能を進化させられる点も大きな強みです」
中古カー用品市場の成長余地は極めて大きい
環境変化を追い風に変えながら、同社は持続的な成長軌道を描いている。
「コロナ禍前から業績は伸長していましたが、コロナ禍を経てリユースという選択肢が幅広い生活者に浸透したことは大きな後押しとなりました。かつてのアップガレージは『熱心な車・バイクファンが集う専門店』という色彩が強かったのですが、現在では車好きのお客様の基盤をしっかりと維持しながら、一般のライトユーザー層のご利用が拡大しています」
昨今取り沙汰される「若者の車離れ」や国内市場に対してはどのように捉えているのか。
「『車離れ』と言われることもありますが、地方を中心に生活の足としての自動車需要は極めて堅調であり、国内の四輪車保有台数自体はさほど減少していません。 現在、新品カー用品の市場規模が約1兆4000億円と言われるのに対し、中古カー用品市場はまだ約700億円程度にとどまっています。
新品市場の規模と比較して中古市場はまだまだ未成熟であり、仮に新品市場全体が横ばいや縮小傾向をたどったとしても、リユースへのシフトが進むことで中古市場は大きく拡大していくと考えています。
むしろ私たちが課題と捉えているのは、中古カー用品を全国規模・専門特化で展開するメインプレイヤーが当社グループしか存在しない点です。適正な競争がある市場ほど業界全体が切磋琢磨して拡大していきますが、当社だけで市場の3分の1強(グループ売上高約270億円)を占めている状態です。競合企業がいればもっとスピードを上げて市場拡大ができると考えています。
現在、国内で290店舗弱を展開していますが、将来的には500店舗体制まで拡大可能だと見込んでいます。年間15〜20店舗ペースで積極的な出店を継続しており、まだまだカニバリゼーション(自社競合)を起こすことなく出店を伸ばせる領域が日本国内に十分あります。」
長期の見通しについてはどうか。
「自動運転技術の進展やカーシェアリングの普及、EV(電気自動車)シフトによる部品構成の変化など、モビリティ業界には中長期で大きな変化が訪れます。だからこそ現状に安住することなく、業界を横断するDXプラットフォーム事業の強化や、自転車リユースといった隣接領域への積極的な新規展開を今から仕掛けているのです」
「90日1回転」の在庫管理と、属人性を排した仕組み化が生む店舗力
アップガレージの出店戦略は、居抜き物件を機動的に活用するスタイルだ。看板や什器、プライス設定は統一しつつも、地域特性や物件規模に応じて最適なフォーマットを組み合わせている。
主力である車用品の「アップガレージ」、バイク用品の「アップガレージライダース」、そして近年注力する自転車の「アップガレージサイクルズ」を展開。特にバイク用品では、大手バイク量販店の中にインショップとして出店し、「新品と中古を同一店舗で比較して選べる」という画期的な購買体験を提供し、好評を博している。東北地方では、カー用品量販店チェーンを運営するパートナー企業との協業により、同一敷地内で新品とリユースをシームレスに選べる店舗モデルも実現している。
この多様な店舗網を支えるのが、徹底した在庫回転の管理である。
「店舗では『在庫を90日で1回転させる』ことを基準に設定しています。中古品は一期一会の『一物一価』です。来店された際に見た商品が、次回来たときには別の魅力的な商品へと入れ替わっている。1カ月後には売場の半分が刷新されているような鮮度を維持することで、『いつ行っても新しい発見がある』という強い来店動機を生み出しています。
また、パーツをご購入いただいたお客様から、これまで装着されていたパーツをその場で買い取りさせていただくことで、次なる販売在庫が生まれ、リユースのサイクルが自然と回る設計にしています」
その回転を支える仕入れ、つまり、商品の買取についても、目利きと査定に関して長年蓄積されたビッグデータとAI(人工知能)を活用して標準化を推進している。
「商品のスペックや状態を入力すると、適正な販売価格と想定在庫日数がシステム上に即座に提示される仕組みを整えています。かつては職人的な勘に頼っていた部分をデータとテクノロジーでアシストすることで、査定精度の向上と現場スタッフの早期戦力化を両立させています。その上で、最終的な値付けや売場づくりには現場の裁量を残し、商売人としての感覚を育てるバランスを大切にしています」
店舗とECサイトとの連携においても、独自の戦略を貫く。
「EC販売比率は現在約25%ありますが、私たちはEC完結型の売上を過度に追うことはしていません。ECサイトは『リアル店舗へ足を運んでいただくための入口』と位置づけています。 ご自宅への配送だけでなく、最寄りのアップガレージ各店舗へ商品を取り寄せ、実際の状態を確認してから購入・取り付けまでをトータルでお任せいただける仕組み作りに注力しています。リアルな接点と確かな作業技術があることこそが、EC専業事業者にはない当社の強みです」

「車好き」から「次世代の小売・流通を創るプロ集団」へ
企業の急成長に伴い、求める人材ポートフォリオも大きく進化している。
「車やバイクが好きな社員の情熱はかけがえのない財産ですが、私たちが目指すのは趣味の延長ではなく、洗練された『小売・サービス業』としての高い付加価値提供です。現在、採用段階で車好きである割合は4〜5割程度。大切なのは、お客様にどう喜んでいただくかという商売の本質を追求できる姿勢です。時代とともに扱う商材がどれだけ変わろうとも、商売のこの本質だけは絶対に揺らぎません。
車好きの情熱は素晴らしいですが、一歩間違えると趣味に偏りすぎて『骨董屋』になってしまうリスクがある。ビジネスとして成立させ、お客様に真の価値を届けるためには、属人性に頼らない『仕組み』が欠かせないのです。
そして今、アップガレージグループはまさに次のステージへと飛躍する変革期にあります。現場の最前線でお客様の笑顔をつくる店舗スタッフはもちろん、事業戦略を描き切るリーダー、マーケティングを牽引するフロントランナー、さらには自社プラットフォームを切り拓くエンジニアまで、あらゆる領域のプロフェッショナルが必要です。多様な才能と熱量を巻き込みながら、業界の常識を塗り替える新たな挑戦を仕掛けていきます」
モータースポーツへの参戦(国内最高峰レース「SUPER GT」に自社チームで参戦)や、大学自動車部へのサーキットを貸切った採用イベントなども、業界への貢献と次世代育成、社員のエンゲージメント向上を見据えた同社ならではの挑戦だ。
「アップガレージ」のサービスが当たり前の世の中に
「住宅や自動車を選ぶ際、多くの方が『新築か、中古か』『新車か、中古車か』をごく当たり前に比較検討しています。将来売却するときの資産価値(リセールバリュー)まで考慮して購入を決める文化が定着しています。
しかし、カー用品の世界では、まだその選択肢が一般化しているとは言えません。私たちは『新品か、中古か』を自由に選べる購買体験を、モビリティ社会の当たり前のカルチャーにしていきたいと考えています。『不要になったら売れる』『良質な中古を賢く手に入れる』という選択肢が広がることで、ユーザーのカーライフはより豊かになり、持続可能な循環型社会にもダイレクトに貢献できます。
私たちが目指しているのは、モビリティパーツの消費行動を変える、つまり、『アップガレージ』というサービスを『当たり前』の世の中にすることです。その実現に向けて、これからも挑戦の手を止めることなく、全国への出店とプラットフォームの進化を推し進めてまいります」










