「密」をつくらない年始商戦、イオンリテールが「2021新春祝市」を年末12月26日から前倒し展開
2022.04.12
2020.12.31
イオンリテールは12月26日土曜日から順次、本州、四国の「イオン」「イオンスタイル」など約400店(食品の企画は東北を除く約350店で展開)で福袋や福企画の販売を開始した。展開期間は店舗、商品ごとに異なり、また、仙台市内の店は新年1月2日からの販売となる。
新型コロナウイルスの影響で、「密」をつくらないため、通常の年末のように特定の時間に客数が集中するような状態を避けなければならなくなっている。「新春の混雑解消のために、ちょっとでもゆとりをもってお客さまにお買物を楽しんでいただきたいというのが主旨だ」(進 亨・イオン東久留米店店長)
例えば、イオンリテール南関東カンパニーのイオン東久留米店(東京都東久留米市)では、以前は福袋などの新春の商品は元旦までは販売していなかった。今回、初めて前倒しし、先行販売に踏み切った。12月25日までのクリスマス商戦の後は、通常は2日ほどかけて切り替えをしていたが、それを早めた。
特に衣料、住居余暇商品は、例年、年末商戦に需要が盛り上がるというわけではないため、その間に切り替えを前倒しで実施。一方、食品については年末商戦の商品を通常よりも早めし対応しつつ、どちらかというと新型コロナウイルスの影響を受けている産地をサポートする企画などを強化している。
新年も、通常であれば新年に実施していたイベントなども大部分を取りやめるなど、できるだけ混雑をしないような運用を計画。「お客さまに集まっていただくことを避け、安心して正月のお買物をしていただけるようにしている。やはり数量限定といった訴求は迷惑になるのでそれを控える。とにかくお正月の混雑を回避する」(進店長)
巣ごもり需要に応える企画を用意
今回、イオンリテールとしては、巣ごもり需要に応える企画として、家の中での時間をより快適にするルームウェア福袋やインテリア、住まいのリフォームなどの福企画を組んだ他、旅行気分を味わえる生本マグロや松阪牛など、ごちそう福企画を「生産者応援」の意味も込めて用意した。企画数は衣料品450、くらしの品43、食品131で合計624(企画数は店ごとに異なる)。
例えば、在宅ワークなど、「家ナカ需要」に応えるため、高脚こたつなどUSBポート付き家具を均一価格で用意したり、「新しい生活様式」に対応するために新たに生まれた需要に応えるオリジナル福袋・福企画なども準備した。
さらに、地域ならではの限定企画も取りそろえ、「新年の福を呼び込む」買物体験の場を提供するとしている。例えば東京都、千葉県、神奈川県、山梨県では「新春祝市 松竹梅15万円セット」として本体価格「15万円」の企画を実施。販売期間は12月26日~1月5日で大型家電や調理器具、インテリア、高圧洗浄機など、暮らしを充実させる60種類以上の商品を用意。商品を価格帯ごとに松、竹、梅に分け、その中から各1点ずつ選ぶ方式の均一価格のセット企画だ。
店内ではこれまでの防疫対策と併せ、混雑が予測される売場は入場制限や順路を明示したり、ネットスーパーの店舗受け取りサービス、約90店舗まで拡大した駐車場での受け取りサービス「ドライブピックアップ!」をはじめとする各種店舗受取りサービスを年末年始も稼働し、接触機会を減らしたいニーズにも応える。
イオンリテールは東北を除く本州、四国の「イオン」「イオンスタイル」約200店でネットスーパーを展開しているが、すでに全店で店舗受け取りサービス「ピックアップ!」を実施済み。「ドライブピックアップ!」など選択肢を増やすことで利便性を高めてきた。
イオン東久留米店の進店長も、「EC(電子商取引)関連の予約は増大している。リアルとデジタルに関しては、急速に変換が起きて、だいぶ広がってきている」と語る。イオンリテール全社ではネットスーパーの売上げが前年比で130%ほどになっている。
一方で進店長は、次のようにも話す。「われわれが目指しているのはリアルの良さ。やはり現物を確認したい、見たいというニーズがある。その辺りを品揃えでしっかりとお客さまに提供できればと考えている」。前述の「15万円」企画などもリアルならではの企画として、打ち出していく。
新型コロナウイルスで、リアル店舗としては大きな商戦であっても集客を避けなければならないなど難しい状況が続く。今回の年末年始商戦に対して、防疫対策を前提とした前倒しによる長期化と需要の平準化、EC強化という方向性を打ち出したイオンリテールの施策は、この間の「新しい生活様式」下における小売業の在り方を象徴している。