日本でも広がりを見せる「ブラックフライデー」企画、その意味と意義を考えてみた

2023.11.22

2023.11.14

日本でも「ブラックフライデー」の商戦が年々存在感を増している。もともと11月第4木曜の北米の祝日、「感謝祭」の翌日の金曜日から始まる商戦で、実質的な年末商戦のスタートとして米国ではなじみのある大型商戦だ。

イオンでは本セールに先駆けて「ご予約販売会」を実施。開始日時が決まっている商戦とはいえ、打ち出しの前倒し化の動きもみられる

米国では各社が早朝からさまざまなセールを仕掛け、お客もそれに期待して大きな売上げが上がることから店が黒字になるということで、「ブラックフライデー」と呼ばれるとされる。今年は11月24日の金曜日からスタートする。

北米の祝日に基づく商戦のため日本ではなじみがなかったが、例えばイオンは2016年からブラックフライデーの商戦を仕掛け始めるなど、少しずつ日本でも見られるようになってきた。

オンラインの世界でも、米国にルーツを持つアマゾンジャパンが19年から日本における商戦をスタート。日本の小売業でもイオンの他にもイトーヨーカ堂など大手企業を中心に年々広がりを見せるなど、オフライン、オンラインを交えた形で日本でも商戦として存在感を増してきた。それに伴い、展開企業の拡大の他、各社、「前年比〇%増」といった形で続々商戦の大型化が進んでいる。

ネットの巨人アマゾンジャパンは、「Amazonブラックフライデー」と「Amazon初売り」を順次実施すると発表。年末年始にかけて長期戦での商戦を意識するなど、ある意味、米国にルーツがある企業らしい展開。

17年から「ブラックフライデー」セールに参入したイトーヨーカ堂も、お客の生活防衛意識にも対応した商品を前年比約1.5倍となる過去最大の約230品以上のアイテムで展開すると発表するなど、各社、次第に実施の陣容が見えてきた。

「今年は昨年からの物価高騰、それに伴う節約指向の高まりの中、 例年よりブラックフライデーにお客さまの関心、期待が高まっているとわれわれも捉えている」(齋藤吉昭・イトーヨーカ堂営業業務部統括マネジャー)

イトーヨーカ堂としては、今年のブラックフライデーの企画は前年と比べ1日少ない12日間となるが、前年比105%の売上げを目指す。

イトーヨーカ堂は、ブラックフライデーということで「96(黒)」にかけた商品を展開

さらに同社では今年独自の取り組みとして、ディズニー100 周年限定デザイン企画の商品も用意。予約も含め、オリジナル商品の魅力によって強い購買動機を作ろうとしている。実際、ブラックフライデー企画による来店促進が全体の売上げに及ぼす影響も少なくないということで、同社の中でもこの企画が重要な商戦として定着している様子がうかがえる。

イトーヨーカ堂は今年初めてディズニーのデザインのオリジナル商品を展開。強力なコンテンツを差別化要素として訴求する

また、イトーヨーカ堂の場合、同社の販促企画のスタートのサイクルに合わせ15日の水曜日からスタートするという先取りの展開になっていることも特徴といえる。

実施時期についてはイオンが11月2日木曜日から12日の日曜日までの11日間に「ご予約販売会」を実施するなど、早めの仕掛けを含め、実施時期、内容についてさまざまな工夫が見られるようにもなっている。

アフターコロナで幅広い客層をターゲットにするイオン

日本では最も古くから展開をしている部類に入るイオンは11月17日から最大10日間、 全国の「イオン」「イオンスタイル」とオンラインショップで「イオンブラックフライデーセール」を開催する。

西垣幸則・イオンリテール営業・デジタル担当取締役常務執行役員は、インフレによる物価高やコスト高騰による生活防衛意識の影響で先行き不透明な状況としつつも、「本格的にアフターコロナへの移行による外出機会の増加、旅行や行楽、また社会行事で家族や親せきと久しぶりに集うなど、ハレ型の商品は消費拡大傾向にある。お客さまの購買行動は昨年と異なり、めりはりの効いたシビアな目になっている。日本でも大規模商戦として定着し、お客さまの期待感が年々高まっているブラックフライデーに向けて、生活防衛に直結するお買い得商品の食品の品目数を 昨年の約2倍に拡大し、また外出機会に最適な衣料品の限定価格を前年比の2.3倍に拡大させた」と語る。

イオンでは、ブラックフライデーを幅広い客層に活用してもらえることを意図し、「こだわり&あこがれ」と「コスパ」の2つのテーマで商品やイベント企画を用意。全国のイオン、イオンスタイル635店とイオンモールの140モール合同、グループ内企業を横断したイオンならではのスケール感で企画を実施、本セールと予約販売会を合わせ前年比1.4倍となるイオン過去最多の1960品目を用意した。

また、EC(電子商取引)も強化し、例えばイオンスタイルオンラインではブラックフライデー限定企画を前年比3倍の品目数で展開し、前年比4倍の売上げを目指す。またイオンとしてブラックフライデー初の取り組みとして、イオンネットスーパーやイオンショップ、グループのオンラインサイトを含めたキャンペーンも企画した。

イオンとしてはこれら店舗とECの取り組みでブラックフライデーの関連の売上げ前年比110%を目指す。「当社は、国内におけるブラックフライデー実施企業のトップランナーとして、いまお客さまが求めているニーズへの対応を中心に、幅広い年代のお客さまが楽しめる企画、商品開発にも取り組み、『イオンのブラックフライデーでしかできないお買物の体験』を実現していきたい」(西垣取締役)

イオンとしては新型コロナウイルスの5類への移行もあって、今年は三世代消費を重視。昨年はコロナの状況もあって商品に入る前に若年層をターゲットとしたが、今年は全世代をターゲットにしている。昨年以上に消費に期待がかかる。黒(ブラック)にかけた商品も多い

ちなみに米国では長く続く年末商戦のスタートの意味もあるブラックフライデーだが、非食品を含むハレの商品の買い得商品を多数展開するということで、年間で最も重要性が高い「年末商戦」への影響が懸念されるところだが、西垣取締役は、「年末商戦への影響はない」と語る。「ブラックフライデーはわれわれが先陣を切り、いろんなところが参画され、一大イベントとしてお客さまの期待感がものすごく大きい。クリスマスの商品には先食いが若干あるとは思うが、年末年始はない」(同)

売上げとしては純増のような状況になっているという。由来としても日本とは縁遠かった商戦だが、販促テーマとしては着実に日本の定着が図られたといえそうだ。実際、イオンの場合、ブラックフライデーの企画始めた16年から19年までは売上げ2桁増、コロナ禍では伸び率は低くなったが、この間、ブラックフライデー関連の売上げは伸び続けている。

小売企業にとって販促テーマは売上げを作る上で極めて重要なものだ。

昨今ではイオンやイトーヨーカ堂など総合スーパー(GMS)やアマゾン、楽天などネット企業など「ブラックフライデー」企画の年数を重ねている企業群にとどまらず、スーパーマーケット、コンビニ、専門店、あるいは外食まで「ブラックフライデー」にちなんだ打ち出しが広がっている。

本来の由来とは関連が少ないこともあって、日本におけるブラックフライデーは独自の進化が進み、店頭に「黒」にちなんだ商品が多数並ぶといった独特の雰囲気になっているが、こうした点も含め、「新しい販促」として今後、浸透が進む過程には注目しておきたい。さらに今年は新型コロナウイルスの影響が減り、より通常モードに近づいたという意味でも、今回のブラックフライデー商戦には注目すべきだ。

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