マミープラスセキチュー東松山高坂店、マミーマート戦略フォーマット小商圏タイプの全貌

2025.01.17

マミーマートは2024年11月30日、埼玉県東松山市にマミープラスセキチュー東松山高坂店をオープンした。「マミープラス」として10店目、全社では80店目のオープンとなった。

マミープラスのコンセプトは「家計にプラス、満足をプラス、美味しさをプラス。」。

マミーマートが新フォーマットとして既存店の転換、出店を進めている2つのフォーマットの1つで今回、マミープラスとして初の新規出店となった。もともとロピアが出店していた場所に居抜き出店した。

ホームセンターのセキチュー内への出店だが、同店内にはホームファッションのニトリも出店するなど、商業集積を形成している

もう1つの新フォーマットの「生鮮市場TOP!」がある程度広域をターゲットにした生鮮強化モデルであるのに対し、基本的にマミープラスは小商圏をターゲットとする。特に日配、グロサリーの高購買頻度の商品について、「競合に負けない圧倒的地域一番価格で販売しながら、生鮮商品も品揃えを強化し、お惣菜は外食にも勝てる美味しさ・即食商品を品揃えした売場作り、接客に取り組んで」(同社)いる。

ただし、生鮮について、例えば青果は店内加工なし、精肉は全て子会社の彩裕フーズのプロセスセンター(PC)からの供給とするなど、基本的にはローコストオペレーションを志向。

チラシについても、オープンから売上げが落ち着くまでは一定程度打つものの、その後はハイ&ローはせず、基本的にはエブリデーロープライス(EDLP、毎日低価格)で、一部スポット商品のチラシのみ展開といったように、かなり限定的。それもあって日配、グロサリーの価格は生鮮市場TOP!の通常売価より低く設定している。

マミープラスの価格コンセプトは、一部目玉商品を設けた安さではなく、全品、しっかり値付けをするというもの。お客に「この店では何を買っても損をしていないだろう」と信頼してもらう「価格の信頼性」(斯波雄也・執行役員マミープラス事業部長)を重視している。

そのため、日配、グロサリーなどの加工食品については基本的に全商品、市場売価を調査しながら最下限になるように売価設定しているという。「地域の最下限を、多品目作れるように日配、グロサリーは値付けをしている」(斯波事業部長)。「地域一番価格」にこだわることから、さらに主力品目については競合店の売価調査もしながら最下限にするようにしているという。

一方で、今回オープンしたセキチュー東松山高坂店は実験店の位置付けも持つ。「ローコストを目指す中で、やはり生鮮の加工ができないことが足かせになり、商圏が広がりづらい原因の1つになっていたので、基本的には日配、グロサリー(低価格販売)の良いところは残しながら生鮮の品揃え、品質、鮮度を上げて、どれぐらい集客できるかを試すのが今回の勝負」(斯波事業部長)

というのも、マミープラスではメインの商圏は、店舗近隣に住む人がターゲットとなるが、今回のセキチュー東松山高坂店の場合、約1.2kmの距離にある東武東上線高坂駅がある他、店舗に隣接して国道407号が南北に、500mほど南側には県道212号が東西に走り、さらに約6kmの距離には関越自動車道の東松山ICもあることから、広域からの集客も見込める。

そこで青果で店内加工も実施する他、鮮魚では生魚の比率を高めて店内加工も強化。精肉は全て彩裕フーズのPCからの供給である点は変えていないが、新商品を開発し、牛肉の品揃えを強化している他、「焼くだけ」「炒めるだけ」の簡便商品、時短商品もさらに強化した。

惣菜はもともと彩裕フーズからの供給に加え、店内加工も多用していたが、これまで同様、「お弁当・お惣菜大賞」(全国スーパーマーケット協会主催)などの外部機関で受賞した商品を打ち出すことに加え、フルーツサンドやパウンドケーキなどのスイーツ商品の品揃えを拡大した。

一方で、コモディティ商品については「地域一番価格」での販売を目指すという両面作戦を実施している。

マミープラスは小商圏をターゲットとするため、既存店の商圏設定は基本的に2km圏だが、今回、セキチュー東松山高坂店は生鮮を強化したことから商圏設定を拡大し、5km圏に設定している。

比較的商圏が広いホームセンター内への出店は、広域商圏をターゲットとする生鮮市場TOP!にとって相乗効果が高い形態だが、今回はマミープラスとして初の挑戦となったのは通常よりも広域を狙った店であることもある。

それでも、セキチュー東松山高坂店では正社員6人態勢での運営とするなど、マミープラスの徹底したローコスト運営を踏襲。配置については部門主任のチーフは配置せず、店長1人とフロア(売場)を管理する2人、生鮮全体を管理する1人、さらに青果、鮮魚や惣菜など商品の製造を管理する人が2人といった部門横断の態勢を敷いている。

青果では平台を用いないなど、とにかく作業性を重視

青果は、基本的には販売数量が少ない商品の取り扱いを減らし、あくまで日常使いの店として満足してもらえる品揃えと鮮度を必ず維持するようにしている。

売場づくり上は平台を用いず、多段ケースのみでの展開である点は大きな特徴といえる。時季ごとの量販商品によって大きく売場を変更する平台を用いないことで、多段ケース内での売場変更にとどめるなど、作業性を重視している。また、冷蔵多段ケースでの販売が中心となるため、鮮度も維持しやすいというメリットもある。

壁面に特化した上で基本的に単品大量を志向しているため、棚割りはシンプルだ

鮮魚では切り身を含め、生魚の比率を高めている。「既存店は、鮮魚が弱点だった部分もあるので、そこはしっかり競合に負けない品質に持っていこうと考えている」(斯波事業部長)。

既存のマミーマートプラスと比べ、鮮魚の品揃えを重視。ただし、刺身盛り合わせなどでは直線的な盛り付けとするなど、オペレーション効率を高め工夫がみられる

また、マミープラスの既存店でも鮮魚で寿司を展開してきたが、今回、規格を見直し、価格帯を広げた品揃えに強化した。

もともとマミープラスは、ローコストオペレーションによって低価格を目指すことをコンセプトとしているが、一方で「チープ(この場合は「安っぽい」といったマイナスの意味)ディスカウントにならない」ように注意している。

「(低価格で販売するために)普段買いに不便がない品質、品揃えの中で、最低価格を出していこうというオペレーションでやっている。その意味では鮮魚寿司はチェーンとしての武器になるので、残そうとなった。低価格の実現のための対応として、店舗の魅力作りに妥協せずにコストを使いつつ、牛乳の什器を開発したり、ばんじゅうごと陳列したりといった他での効率化の結果、コストを抑える」(斯波事業部長)

数量が出る牛乳はケースごと陳列するパターンで、かつ可動式になっている
ばんじゅうなど、ケースに入れた状態で販売することで陳列作業の簡素化を目指す
し好性の高い乳酸菌飲料などでは箱売りも実施している。客単価向上に寄与しそうだ

精肉は100%PCからの供給の中、例えば今回、モヤシが載った味付け商品など簡便商品を中心に新しい商品規格を投入。もともと埼玉県を地盤としていることから豚肉の売上高構成比が高く、牛肉の売れ行きは限られていたが、「牛肉もPCでしっかり品質の高い商品を供給して、頻度品の(鶏)モモ肉やひき肉を下限価格で売り込んでいくのが戦略」(斯波事業部長)となる。

精肉は全てアウトパックではあるが、牛肉では和牛を取り扱う他、オリジナルブランドの交雑牛である「武蔵黒牛」を一頭買いして展開
精肉では簡便商品として味付け商品を充実させている。味付け商品の充実は生鮮市場TOP!でも強化している
鮮魚、精肉では冷凍の商品も活用。お客としては保存に便利である上、販売側としては販売数量の多くない商品でも品揃えできるなど、ロス対策の面でも効果が見込まれる

惣菜は店内加工も多用し、揚げ物のばら売りのバイキングを常設して中身を変えながら展開するなどシズル感のある売場を作っているが、ところどころで低価格商品が目立つ。米飯では特に本体価格222円の弁当が目を引く。

「ベーシックアイテムを置く。量目が大きすぎないなど、普段食卓に並べられる商品をなるべく低価格で提供するのが惣菜のコンセプト。いろいろ商品構成を書いた上で、『バジェットラインとしてここの価格帯が欲しい』というところからスペックを当てはめ、価格と価値のバランスが合ったのが222円」(斯波事業部長)

マミープラスでは他のフォーマットと比べ、米飯の売上高構成比が高い傾向にあるという。全体に占める惣菜の売上高構成比は生鮮TOP!と同レベルの6~7%となっている。

本体価格222円の弁当
「かにかまたっぷり飯」「ちくわ磯辺天丼」といった本体価格199円の米飯もある
揚げ物のバイキング。展開アイテムは変えていくが、レジはセルフがメインのため、同時には1種類(1売価)のみ展開している。オープン日には「4種のチーズ入りメンチカツ」を展開
おにぎりはいなり寿司と共に大きくコーナー化。ワンハンド(片手)で食べられる米飯ということで、簡単・便利の需要に応えられる期待の商品群
彩裕フーズ製造のサンドイッチは具を大きくしていて、見た目にも非常にインパクトがある。品揃え、ボリューム、自家製パンの3つに驚くということで、「3sando(さんど)驚く!」といった打ち出し
彩裕フーズ製造の「専属パティシエ監修」のスイーツコーナー

ゴンドラエンドではスポット商品を売り切り販売

基本的にディスカウントのため単品大量販売を志向し、アイテムについても以前は絞る傾向にあったが、特に昨今は日配、グロサリーについてはあえてアイテムを絞ることはしていない。売価設定の中で、結果的にポジショニングがあいまいとなってカットすることはあるが、日配、グロサリーでは「選択肢を残す」ことを重視している。

補充頻度を減らすなど生産性向上を追求しながら、「限界まではアイテムを入れている」(斯波事業部長)という。

しかも、青果で平台を用いていないことから内側の日配、グロサリーのスペースを広く取ることができるため、アイテム数を確保しやすい環境にもある。「ここが生鮮中心の生鮮TOP!との一番の違い」(斯波事業部長)。マミープラスの日配、グロサリーの売上高構成比は65%に及ぶという。

人時をできるだけかけないことを目指しているため、例えば、エンド計画といった「企画」の概念がほとんどない。例えば、ゴンドラエンドはバイヤーが指定するスポット商品をかご車ごとなど簡略化した陳列で売り切りの形で販売するといった運用にしている。

「お店で計画をして、発注をして、といった作業を極力省いている。パソコンの前で考えて何かをしなければいけないということをなるべく削いで、売場に集中してもらうようにしている」(斯波事業部長)

そのため、発注は日配、グロサリーはAI(人工知能)による自動発注、生鮮でも精肉、塩干、惣菜など一部実験的にAI自動発注を取り入れている。

徹底的にローコストオペレーションを追求するため、ゴンドラエンドの「企画」はなく、スポット商品の売り込みに徹している。しかも陳列も投げ込み式などシンプル
スポット商品は随所で展開されている。こうした「掘り出し物」的な展開が楽しさを生む
冷凍食品はあえて内側のゴンドラ内に売場を設置している。日配、グロサリーを売りにするマミープラスとしては冷凍食品の売上げボリュームも大きく、レイアウト上も重視した
ピザは通常はホールで本体価格500円のところ、オープン日は同400円にしている。特にマミープラスでは「ホールは大きすぎる」というお客が多いことから、基本的な売り方としては「ハーフ2枚で本体価格500円」としている

EDLPだからこそ、2年目、3年目の伸び率は高い

初年度年商計画は25億円だが、じわじわと支持を増やす形となるEDLPを採用していることもあって特に2年目、3年目に向けては年率で10%程度の増加を目指しながら、年商を伸ばしていくのが基本となる。

この伸び率については、ハイ&ローを採用する生鮮市場TOP!や通常のマミーマートと比べてマミープラスは高い傾向にある。商圏人口の多い店などでは2年目にさらに伸ばす例もある。

客層も他のフォーマットと比べて最も若く、「30代~40代のファミリー層、日配、グロサリーの価格に敏感で、簡便を求めている世代が多い」(斯波事業部長)ため、子ども向けの飲料やその世代が好むし好性の高い商品などについて価格、品揃えも含め戦略的に仕掛けているという。

し好品でもある酒はしっかり売場を取り、日本酒、ワイン、ウイスキーなどの瓶物については価格帯を広げて、高級のラインまでそろえている。

他、冷凍食品で高単価のデザートやギョーザを取り扱うなど、ディスカウントのイメージからすと意外な部分もあるが、これには「高単価の商品であっても値打ち価格で販売すれば、客数が多いという強みを生かすことで回転する」という逆転の発想がある。

酒は主通路最後に飲料と合わせた形で広くコーナー化。缶飲料も含め、常温で販売しているのはディスカウント店らしい
紙パックの飲料なども常温販売可能な商品はあくまで常温で販売

足元商圏が少ない中で生鮮を強化することで、マミープラスとして広域化を図ったセキチュー東松山高坂店。ある意味、「週末型」ともいえる立地にオープンしたわけだが、その意味ではオープン後、小商圏型のマミープラスの強みである平日の集客をどれだけ確保できるかが課題となる。

「足元にあまり人口がいない商圏で、どれだけ平日の集客が図れるか」。セキチュー東松山高坂店でそれが実現できれば、マミープラスとしての出店余地も広がってくる。

「マミープラスは生鮮市場TOP!と比べてもまだまだ激しくマーチャンダイジングも売場も変更をかけている。今後も大きく変わるかもしれないが、そこを恐れているとフォーマットはできないので、1個1個固めながらしっかりやっていきたい」(斯波事業部長)

マミープラスセキチュー東松山高坂店

所在地/埼玉県東松山市あずま町4-1-1

オープン日/2024年11月30日

営業時間/9時~20時

駐車台数/256台(共用)

売場面積/524坪

初年度年商計画/25億円

お役立ち資料データ

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