そよら入曽駅前がグランドオープン、駅前の時短需要とゆったりと過ごせる施設の2つの「時間価値」を提供
2025.03.24
イオンリテールは3月21日、埼玉県狭山市にそよら入曽駅前をグランドオープンした。「そよら」は同社がショッピングセンター(SC)フォーマットとして展開する都市型SC。2020年に名称が定められ、今回、全国では15カ所目、埼玉県では23年9月開業のそよら武蔵狭山(狭山市)に次ぐ2カ所目となる。オープン日の3月21日の9時の開店に際しては450人が並ぶなど、地域の期待の高さが伺えた。

そよらは、基本的に近隣型のテナントで構成されるネイバーフッドショッピングセンター(NSC)といえるが、特に人が集まる「コミュニティ」としての機能を重視。具体的には日常生活に必要な10の機能を想定し、直営売場と専門店を各地域のニーズに応じて組み合わせて展開する。
10の機能は、①スーパーマーケット、②生活サポート(EC〈電子商取引〉、ネットスーパー、デリバリー)、③ファーマシー、④ベーカリー、⑤ランドリー、⑥クリニック、⑦シェアスペース(カフェ、イベントスペース、広場)、⑧習い事、⑨メンテナンス系サービス(理美容、サイクル、リペア)、⑩雑貨・日用品。
規模がさまざまな既存施設の改装のパターンもあるが、スクラップ&ビルド(S&B)や新規開発の場合は敷地面積1万㎡程度が目安となる。
「今回でそよら15店舗。ようやく横でいろんなものを比較しながら、どういったものが本当に強いのかといったことをしっかり検証して、モデルを磨いていく作業を進めていきながら、どんどん改善していくことが流れとしてできてくればいいと思う」(古澤康之・イオンリテール社長)

そよら入曽は、11年3月に閉校となった狭山市立入間小学校の跡地に開業した。西武新宿線の入曽駅前に立地し、隣接する県道8号と県道50号と併せて交通アクセスに優れている。

また、3月末には入曽駅の橋上駅舎が整備されることで、改札から徒歩約1分で来店できるようになるなど、利便性が向上する。イオンは22年11月、狭山市と包括連携協定を締結しており、その一環としてご当地電子マネーの「さやまWAON」の発行などを行っている。そよら武蔵村山に続き、今回のオープンによってさらに狭山市との取り組みが深まった格好だ。
そよらのコンセプトが「通う・集う・つながる場」ということもあり、小学校跡地としても地域の人の思い入れのあるこの場所に「集い」「語らえる」、身近な交流の場を目指す。店舗外装には狭山市名産のお茶と、茶箱をイメージしたデザインを取り入れた他、2棟をつなぐデッキからは100年以上もの間、当地に根付くケヤキを望めるなど、開業に向けて新たに植樹する木々と併せ、駅前でありながら「自然を感じられる空間」を作り出した。


核店となる同社直営の「イオンスタイル入曽駅前」をはじめ、日常使いの専門店をそろえた「デイリーライフ」をコンセプトとする本棟と、ブックカフェやキッズアミューズメントなど集いやくつろぎの場を提供する「ニューライフスタイル」をコンセプトとする別棟の2棟での構成となる。駅前での「時短」での買物ができるコンパクトさと、ゆったりと過ごせる施設との2つの「時間価値」を提供する。
テナントの専門店には生活に寄り添い、毎日通いたくなる日常性の高い専門店を誘致。本棟からデッキでつながる別棟には、全国初出店となる子ども向けアミューズメント施設「Kininal ASOBLE」(キニナル・アソブル)や京都を中心に展開している書店「大垣書店」のカフェ併設店舗を展開。他、気軽に集えるレストランや英会話教室など、ライフスタイルに合わせて「通う」「集う」「つながる場」としての機能を提供する。
「キニナル・アソブル」は全国初出店となる子ども向けアミューズメントで、今回、そよら専用のフォーマットとして開発された。
「店舗が増えてきたので、今後、各出店者さまと『そよら』向けの業態をつくっていきたいと思っている。皆さまもだいぶ、地域密着型の商業施設について、ご理解をいただいてきている。より高頻度に来ていただけるようなメニュー、品揃え、陳列の仕方、什器の高さ、坪在庫の持ち方なども、進めていただいている」(蓑原邦明・イオンリテール執行役員SC本部長)

また、大垣書店のカフェ併設店舗もゆったり過ごすという機能を提供するコンセプトに沿ったものだ。

さらに365日、毎日通ってもらうことも視野に、ラジオ体操などをイベントとして実施。「(同敷地に以前あった)小学校ではないが、気が付けば皆さんが通ってしまうような店にしたい」(古澤社長)

イオンスタイルは「フード&調剤付きのドラッグ」
イオンスタイル入曽駅前は、「フード&ドラッグ」として地域密着の品揃えに加え、惣菜や鮮魚、冷凍食品など強みを発揮できる分野を充実させた食品売場と、コスメや文具のトレンド商品をそろえる他、調剤薬局も併設するヘルス&ビューティケア(H&BC)の売場を展開。「人とまちをつなぐ“心地よい”生活拠点」を目指すとしている。小商圏、高頻度来店の店となることが意図されている。
「フード&ドラッグは、OTC(一般用医薬品)だけでなく、調剤がしっかり入っていることが利便性の高さにつながる。調剤を頼んでいる間の待ち時間をうまく活用していだける。食料品などの買物を全部セットで、ワンストップでできる。こういった業態はますます増えていくだろうなと感じているし、期待をしているフォーマット」(古澤社長)

駅前立地の特性を生かし、「タイパ・簡便・トレンド」を意識。食品は時間帯ごとのニーズに合わせたタイムパフォーマンスの高い売場を展開する他、子育てを応援したいとの思いから、子育て視点で取り入れた商品を展開。また、地場産品や地域で親しまれている商品を積極的に品揃えすることで「鮮度」と「親しみ」を提供する。
駅前立地ということで、時間ごとに変わる客層の変化と時短のニーズに対応したタイムパフォーマンスの高い売場の実現に努める。朝は通勤、通学の軽食需要と生鮮品のニーズに応える一方、夕刻にはタイムサービスと併せて惣菜の出来たて、魚の切りたての商品を提供。夜は仕事帰りの人に向けて電子レンジ調理品や小容量の惣菜など即食型の商品を充実させる。
開店時からは焼きたてパンやおにぎり、だし巻き、唐揚げなどの軽食を展開し、弁当も飽きずに楽しめるよう、季節商品を交えながら毎日40品目以上を取りそろえる。夕刻には惣菜売場で「唐揚げ唐王」や豚カツ、コロッケなどの出来たて販売を実施する他、鮮魚売場でも刺身や寿司、魚惣菜などの即食商品の品揃えを充実させる。

鮮魚売場では「味つけ切り身」や「レンジ調理商品」をコーナーして展開する他、精肉売場では黒毛和牛を使った特製だれの「味付け焼肉」を展開。ピッツァはホールサイズから4分の1サイズまで展開。



全般的に即食、便利を打ち出す商品を充実させているが、特に子育て世代の需要に応えるため、小さいサイズのおにぎりや、骨を取った上で調理した魚、オーガニックの野菜、ドライフルーツ、オートミールなどを強化している。

また、冷凍食品は地域最大級となる約1250品目を品揃えし、選ぶ楽しさを提案。すぐに調理できる冷凍の総菜、野菜や果実、有名店のラーメンやワンプレートミール、全国各地のご当地の味、「ご当地アイス」など幅広く取りそろえる。


機能面では即食商品の強化と併せ、イートインスペースも充実。買った商品を店内で座って食べたり、休憩したり、ランチやティータイムにゆったりくつろげる約30席のスペースを用意する。


子育て視点としては、子どもが残さずに食べ切れる量、骨を取り除いた魚など子どもが手軽に食べられる加工をした商品、あるいは「今日はコレ!」と子どもが楽しんで選べるパンやピザ、焼き芋などおやつのバリエーションを豊富にするなどする。



地場産品、地域で支持される味の展開としては、まず、店舗近隣のイオンアグリ日高農場から、その日の朝に入荷した鮮度抜群のオーガニック野菜を展開。また、11月から冬季にかけての旬の季節に地元の「富の川越いも」を使った焼き芋を品揃え。
地場野菜コーナーでは、近隣の生産者と協力し、カブやミズナ、カラシナ、ラディッシュ(二十日大根)など10~20種類の地場野菜を取りそろえる他、旬果実として埼玉県産の2年連続最高金賞を受賞した「あまりん」や、県オリジナル品種の「べにたま」なども取り扱う。

また、ドレッシングの消費支出の多い地元ならではのこだわり商品として「ななくさの郷」の「松田のマヨネーズ」などを展開し、野菜をよりおいしく楽しめるよう工夫した品揃えを展開。
他、埼玉県内で製造され、地元住民の支持が高い、見澤食品の「ところざわ醤油焼きそば」、サイボクの「ゴールデンポーク」などを品揃えする他、地域の特産品「狭山茶」を種類豊富に取りそろえる。近隣エリアでは豚肉消費支出が高く、うどん文化が根付いていることから「味噌豚ホルモン焼うどん」も品揃えする。

2階のH&BC売場では、駅を利用する人が気軽に試せる話題のコスメや文具、サプリメントなどをバラエティ豊かに品揃え。駅前立地の特性を生かし、アジアンコスメをはじめブランドコスメやカラーコンタクト、文具などZ世代を中心にニーズが高まっている商品を豊富に展開する。医薬品売場では、健康をサポートする商品や美容商品、グミサプリなども豊富に品揃えする。


総合スーパー(GMS)企業としての強みを生かし、ビューティや日用品の他にもインナーやベビー用品など消費頻度の高い商品も取り扱う。
「イオン薬局」としてシニア層も気軽に立ち寄りやすいサルーステーション(健康測定コーナー)や調剤薬局を設置、健康志向にも対応する。

また、イオンリテールとして強化しているネットで注文し、店舗で受け取れる店舗受け取りサービスも整備。3月18日に配送開始予定でイオンネットスーパーを展開し、ネットから商品を注文、好きな店舗で商品を受け取れる「ピックアップ」にも対応する他、サービスカウンターで受け取れる「カウンターピックアップ」と、ケヤキ側の出入口に設置するロッカーで受け取れる「ロッカーピックアップ」も導入。通勤や送り迎えのついでに店舗に立ち寄って便利に使えるサービスとして訴求。
店頭で買った商品を配送するサービスの「即日便」も展開。買った商品をその日のうちに自宅へ配達する。今回は通常の食品、日用品の他、調剤した薬を宅配する「調剤おくすり即日便」にも対応。「即日便」「調剤おくすり即日便」共に4月2日より配送開始予定となっている。
そよら入曽駅前概要
所在地/埼玉県狭山市南入曽540-1
オープン日/2025年3月21日
営業時間/食品:8時~23時、非食品9時~22時、イオン薬局(調剤)9時~20時、他、専門店は個別に異なる
駐車台数/152台(敷地内133台:平面29台・屋上104台、敷地外19台)
駐輪台数/自転車286台、バイク12台
SC構造/地上2階建て(本棟、別棟いずれも)
専門店数/9店舗
敷地面積/1万255㎡
売場面積/5809㎡(直営:3722㎡、専門店2087㎡)
店長/日浅孝仁