ベルクフォルテつくば店を詳細レポート、4月9日オープンの自社開発SC核店、クルベ展開を経て「楽しさ」と「高生産性」の要素が深化

2025.04.29

2025.04.28

ベルクフォルテつくば店は、ララガーデンつくば跡地にベルクが開発したネイバーフッドショッピングセンター(NSC)「フォルテつくば」の核店として4月9日にオープンした。フォルテつくばにはベルクの他、ホームセンターのカインズが4月23日にグランドオープンした他、ドラッグストアのクリエイトエス・ディー、衣料品の田原屋が展開するパシオス、一部医療機関などが出店している。

店頭には、「Welcome(いらっしゃいませ)」と「Belc」(ベルク)を掛け合わせた「beⅼcome」と掲示。こうした遊び心ある演出が楽しさを生んでいる
売場レイアウト図

ベルクは、SC出店ではあるものの、約600坪を標準とする同社として標準的な規模での出店。ただし、2023年から展開するディスカウントフォーマットのクルベの要素が随所に取り入れられ、店づくりの進化を感じさせるものとなっている。

同社が23年から展開するディスカウントフォーマットのクルベを感じさせる要素が随所にみられる。店頭にはかご車陳列での特売商品を展開
既存店でもおなじみのポップコーン。大容量と陳列量が目を引く
青果でもケースごと陳列している商品が多数見られるが、一方で商品によっては選び方や活用の仕方など、情報提供も実施
什器に並べるというオペレーションに縛られず、商品によっては段ボールごと陳列している青果の平台
地元野菜コーナーも単品当たりの陳列量が多い
袋物などはケース陳列。棚割りもシンプルだ
ベーシック商品のモヤシは本体価格18円
青果に続いては精肉売場。売場先頭は牛肉ではなく、加工肉、ひき肉、鶏肉の順
鶏肉に続いて関東で需要の高い「豚肉」は商品ラインに厚みを持たせた上でめりはりを付けた展開。先頭はこだわりの「彩の国黒豚」を大々的に展開
豚肉は売場も広く、商品化も多彩。しゃぶしゃぶは厚さ1.5mmにこだわっていることを訴求
牛肉は平ケースで展開するものの、定番コーナーは精肉売場の一番最後、牛タンは「タン当直入」のコーナー名で目立つようにコーナー化している。売場のアクセントとなっている
「おうちでBBQ」を提案する牛肉売場
主通路沿いに精肉、鮮魚と売場が続くが、内側の平台では精肉と鮮魚の生鮮惣菜を展開する。精肉売場共通のモチーフである「肉肉研究会」のブランドで店内調理をアピールしながら温惣菜を売り込む
クルベの名物商品的な存在になっているコストコを思わせる大容量の肉惣菜を展開
平台では、精肉と連結した形で魚惣菜を展開。グラタンとスパゲティを融合させた「パイレーツ オブ スパグラタン」をPOPと共に展開。演出に凝っている
魚惣菜では焼き魚、煮魚、弁当などを展開する他、ホタテクリームコロッケやイカメンチカツなど揚げ物も展開
主通路沿いに壁面では鮮魚売場が始まるが、内側では魚惣菜に続いて鮮魚寿司の平ケースを設置。生鮮部門の即食商品をまとめている。赤酢使用の本格感をアピール
鮮魚寿司では握り寿司、海鮮丼などが並ぶが、「本まぐろ中とろステーキ重(だし醤油味)」(本体価格880円)といった凝った商品もある
鮮魚売場の壁面先頭は丸物の側面販売
簡便の観点で需要が高まっている味付け商品もこだわりを情報提供しながら訴求
魚のあらを氷を敷いた什器でさまざまな活用法を提案しながら販売
鮮魚売場で販売している「お魚屋さんがつくったあんドーナツ」「お魚屋さんがつくったでかバウム」。こうした意外性のある商品が「発見」などの楽しさを生む。売場では随所にこうした商品が差し込まれている
鮮魚売場の後は日配を挟み、惣菜を最終コーナーの第3主通路沿いで展開。壁面側の先頭はアウトパックの冷惣菜。「ハイカロリーロープライス」のコピーが値打ち感を感じさせる
惣菜売場の壁面にはデジタルサイネージを設置し、環境への取り組みなどの情報を流している
壁面側は冷惣菜に続いてばら売りの温惣菜となる。クルベで導入されたバックヤードと売場を結ぶローラーコンベアを垂直に設置している
ばら売りに続いて温惣菜のパック商品。こちらにもローラーコンベアを設置しているが、こちらは売場側に出た後は壁面に沿って流れるようになっている
大きめのチキンハンバーグにパスタをあしらえ、本体価格399円。インパクトある商品だ
弁当など米飯は平台で展開
平台ではフレンチトーストなどスイーツ系の商品も展開している。プラス一品になり得る商品だ
中華は台湾の小籠包専門店で日本でも店舗を展開する「京鼎樓(ジンディンロウ)」監修をうたう
惣菜の寿司も握り寿司、巻き寿司、助六寿司まで総合的に展開
握り寿司は冷蔵ケースで販売する一方で、助六寿司は常温で販売するなど、極力ご飯の食感を重視していることが見て取れる
ピザは核商品としてどんどん焼きながら大量に陳列。強い磁石売場となっている。コンベア式オーブンで高温のまま連続して焼いていることをアピール
インストアベーカリーはフジパンストアーがコンセッショナリで出店
冷凍食品はゴンドラの内側で平ケースを囲むように両側にリーチインケースを配置して大々的に展開
プライベートブランドの「くらしにベルク kurabelc」は、25年2月期末段階で品目数1153SKUで、売上高構成比は9.2%となっている。冷凍食品では精肉の「肉肉研究会」のスパイスを活用したチャーハンなど、独自性のある商品も開発し、アピールしている
PBは特に大型のPOPを用いて売り込んでいる
簡便商品もPBでシリーズで開発し、コーナー展開で売り込む
シリアル売場では、ラトビアから輸入したPBのオートミールを関連販売していた
従業員が薦める商品なども販促に生かしている。カップ麺ではばら売りの他、ケースでも販売
特売商品の売り方として、あえてPOPに価格を明示しないことで、逆に関心を引く演出。「黄金PRICE 宝はここだ」とのコンセプト
店全体としてはディスカウントのイメージが強いが、付く場という立地もあってか、ワインは本体価格19万9000円の高単価商品まで扱っている
高単価のワインを取り扱う一方で、本体価格299円の直輸入ワインもある。ワインの価格帯は非常に広い
酒はケース販売も多用するが、冷蔵でのばら売りも実施
酒売場では投影型のサイネージを設置し、商品情報などを流す。リテールメディアの一環

ベルクの2025年2月期の決算は、連結、単体共に増収増益を達成、連結の売上高営業利益率は4.5%、単体の同数値は4.3%と原価高、経費高の経営環境にあっても、しっかりと利益を残した。

この業績の背景にクルベ的な要素を盛り込みさらに進化する売場づくりやローコストオペレーションの追求があることは確かだろう。25年2月期の従業員1人当たり売上高は3603万円だった。同社の調べでは同業の平均的な水準と比べて約1.35倍と高く、生産性を重視した経営方針がこの数字にも表れている。同期の売上総利益率は27%であることから、労働生産性は約973万円と1000万円に迫る水準となっている。

ベルクはチェーンストアとして標準化を志向していることもあって、同社の新店を見ることで同社の現在の戦略、さらにその高い生産性の背景の一端を具体的に見ることができる。

多くの企業でも導入されている販売量の多い牛乳のケースごと陳列
かご車ごと陳列、ケース販売、投げ込み陳列など多様なローコストの販売法が混在するが、これが「にぎわい感」や「発見」の要素を生んでいる
販売量の多い商品ではケースごとの陳列、補充を導入。必然的に商品は絞り込まれている
ゴンドラの上に在庫を置いていることも、補充の手間を減らすローコストオペレーションの取り組みといえる
常温販売できるコンニャクなど一部和日配の商品は、日配売場の中で冷蔵ケースで販売されることが多いが、ベルクでは常温販売可能な商品は常温で販売。ディスカウントのための低経費追求の姿勢が感じられる
サッカー台はカートごと挿入できるようにしている。カートでの大量購入を促す
レジでは「返金保証」を大々的に掲示し、安心感を生んでいる

売場や商品を見ても分かるとおり、ローコストオペレーションだけでなく、楽しさの要素が強化されている進化したベルク流の店づくりは、クルベを展開したことで、一層強化されているようにみえる。

ベルクフォルテつくば店概要

所在地/茨城県つくば市小野崎278-1

営業時間/9時~24時

駐車場/680台

お役立ち資料データ

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