イトーヨーカ堂が新規出店、ヨークフーズ東小金井店を4月25日グランドオープン、新生ヨークフーズ代表店
2025.04.28
イトーヨーカ堂は4月25日、東京都小金井市にヨークフーズ東小金井店をグランドオープンした。今回はスーパーマーケット(SM)を展開していた旧ヨークの出店の延長といえ、ヨークフーズフォーマットの出店。ヨークフーズとしては105店目、イトーヨーカドーの92店と合わせたイトーヨーカ堂の店数としては197店となる。

イトーヨーカ堂は2025年度の食品戦略として「商品を通じて、地域のお客様の“日常”をより楽しく、豊かに、便利にすること」を掲げる。この実現に向けて「二極化への対応」「簡便・即食・便利の強化」「新しい価値の提案」という3つの柱を軸に取り組んでいる。
今回オープンするヨークフーズ東小金井店でこれらの取り組みが反映された最新のマーチャンダイジングが展開されている。この店は実験の位置づけで、ここで成果が出た取り組みを広げていくといった流れが想定される。

売場面積は約560坪と、旧ヨークの標準か、やや大き目といった規模。JR中央線の東小金井駅北口側の再開発エリアの一角、1700坪弱の敷地にフリースタンディング出店した。駅から徒歩約1分、さらに駅側の隣接地には20階建てで151戸が入居するマンションの建設が始まっている。マンションの引き渡しは27年4月上旬の予定。

駅至近ということで敷地が限られる一方、車での来店にも期待することからピロティ形式にした上で、1階に駐車場を設置。98台分の駐車場を確保した。初年度の売上目標は約28億円と高いレベルにある。立地が良いだけに地代も高いとみられ、また昨今の建築コスト高騰の折の新設ということで、利益をねん出するハードルも必然的に高くなっているとみられる。高い販売効率が実現できるかは東小金井店のポイントの1つとなる。
最寄りの東小金井駅の両隣り、武蔵小金井駅と武蔵境駅にはそれぞれ駅前に総合スーパー(GMS)タイプのイトーヨーカドーがあることから、SMタイプではあるものの、ドミナントを強化するための出店でもある。
首都圏の都市部を含む出店のため、敷地が十分に確保できないことが多いことから旧ヨークでも活用していたピロティ形式での出店。1階に駐車場、2階にイトーヨーカ堂の売場
東小金井エリアはJR中央線を通じて新宿や東京駅へのアクセスに優れ、閑静な住宅街が広がる他、近隣には東京農工大学や法政大学など複数の大学のキャンパスがある。そのため、ファミリー層と単身世帯や20代の構成比が高いが、さらに近年人口は増加傾向にあるという。
半径1.5km圏内の人口は約9万人、約4万5000世帯と厚く、駅利用客を含む多くの利用が期待できる。同圏内の人口増加率は約104%、500m圏に限れば108%に上るという。所得で言えば比較的高所得のファミリーが多い一方、学生などはそれほど可処分所得も多くないとみられる。
その意味では、「二極化への対応」「簡便・即食・便利の強化」「新しい価値の提案」という3つの柱に基づいた店をオープンするのには格好の商圏ともいえた。同社としては、このような地域特性を踏まえ、日々の食卓を便利にする簡便、即食性の高い商品から食卓を華やかに彩る上質な商品まで、幅広いニーズに応えられるような豊富な品揃えを目指した。
総SKU数は約1万3000。内訳は加工食品が約9000SKU、デイリーが約2500SKU、青果が約500SKU、精肉が約380SKU、鮮魚が約280SKU、デリカ(ベーカリー含む)が約430SKUとなっている。
二極化への対応としては、主に価格の「松竹梅」の「松」と「梅」の強化が挙げられる。「『松』の一番は生鮮というところで、今回、イトーヨーカ堂の会長に就任した真船(幸夫・前ヨークベニマル会長)会長がヨークベニマルの知見も含めていっしょにやろうということで、精肉、鮮魚を特に強化した。われわれのもともとの産地、お取引先も入っているが、ここにヨークベニマルの力も加えて、かなり生鮮の強化をした。特に牛肉、マグロ」(伊藤弘雅・取締役執行役員営業本部長)

牛肉では黒毛和牛の生産が盛んな鹿児島県産の「薩摩和牛」を訴求。マグロについては、週末限定とはなるが、豊洲市場の有力マグロ専門仲卸である「やま幸」から生の本マグロを仕入れ、平ケースで展開するなど上質を打ち出す。「これを続けて行けるような仕組みになっている」(伊藤本部長)という。

売場づくりについても注力が見られる。精肉では和牛を中心にL字型の平ケースなどを活用し、牛肉を前面に打ち出す。この店の精肉部門は、社内でも高いレベルで専門的な技術を習得しているマスターマネジャーが担うようにした。

鮮魚は豊洲市場から直送される商品など丸物をしっかり見せながら売り込む売場を設置。

加工食品のグロサリーでも「松」の商品を強化しているが、これは旧ヨーク時代の22年からグループのシェルガーデンの商品を置く取り組みを開始したことを踏襲する形で実現。「フルーツ専門店 新宿高野」「軽井沢 沢屋」「銀座千疋屋」「京都 桝俉」など10ブランドを「ザ・ガーデン自由が丘」のコーナー名を入れつつ導入している。

また、イトーヨーカ堂がヨークと統合したこともあって、イトーヨーカ堂で取り扱っている関西の取引先として、兵庫県加古川市に本社を構えるベーカリーの「ニシカワパン」を今回、ヨークフーズとして初めて取り扱うことにした。
一方の「梅」については、セブン&アイ・ホールディングスの低価格プライベートブランドの「セブン・ザ・プライス」を活用。生活防衛意識の高まりもあって、24年度の売上げは前年比約200%を記録するなど、需要が高まっているゾーンとして、目下強化中でもある。
今回、「松と梅」を強化するに当たっては、「竹」は絞り込んだという。「『松と梅』のところを今年しっかりとトライしていく。売場の大きさ的にも広いお店ではないので、『竹』のところを絞り込んで行きながら、『松と梅』の比重を上げていく。『竹』はメーカーを少しずつ集約していきながらやっていきたいと考えている」(西山英樹・執行役員フード&ドラッグ事業部長)
簡便・即食商品としては、オリジナルのミールキットや味付け商品の「シェフズレシピ」の品揃えを充実、従来の冷蔵に加え、冷凍の肉、魚商材も展開し始めた。それらに加え、1人用で使い勝手が良いオリジナルの冷凍食品の「イーズアップ」などを売り込む。「メニューを選んでいただいて買えるような、即食・簡便の世界がだいぶ表現できてきたと思っている」(伊藤本部長)


即食・簡便の代表的な商品であるデリカは、昨年5月からブランド化した「ヨーク・デリ」を全面的に生かし、さらに強化した展開。標準店舗の約2倍の広さとし、店内で焼き上げる「だし巻き玉子」を始め、だし巻き玉子を使った弁当などの卵焼きメニューを充実させる他、鉄板焼きメニューを充実。






寿司では握り寿司の江戸前寿司やちらし寿司、巻き物など助六寿司など幅広く品揃えする。

また、子会社であるピースデリの惣菜工場で製造し副菜中心の「おばんざい」シリーズや「ポテトサラダ」などオリジナル商品もしっかり打ち出す。

また、名物商品的なものとして熟成肉を打ち出す飲食店の「格之進」を展開する岩手県一関市の門崎の協力を仰いだ「格之進・肉おじさん特製!旨みメンチカツ」を1日3回、20個限定といった形で揚げたて販売する他、人気のご当地グルメ「ご当地麺!武蔵野肉汁つけうどん」「混ぜて食べる油そば」など、バラエティー豊かな品揃えで多様なニーズに応える。


インストアベーカリーについては、デザート分野を開拓。季節の果物等を使用したデニッシュやパンプディングなどを開発し、提案する。一方で、ヨークベニマルでも展開される「湯捏ね食パン」や店内で焼き上げた「だし巻き玉子」を使用したサンドなどサンドイッチの品揃えを充実させるなど、需要の高まっている惣菜パンもしっかり品揃え。


「工場と店」との取り組みという点では、3月にヨークベニマルから真船会長を迎えたことに加え、ピースデリにはかつてヨークベニマルの惣菜子会社であった旧ライフフーズの社長を務め、ヨークベニマルとの統合を経て同社のデリカ事業部を率いた松崎久美氏が副社長に就任している。
「工場と商品部、お店が製販一体で仕事をしていく部分を、いま急ピッチで進めている。ヨークベニマルとして50年、製販一体の惣菜事業をしているので、売場だけでなく、会社の仕組みとして取り入れていく」(伊藤本部長)


同社はインストアベーカリーを含めたデリカの売上高構成比を15%まで高めることを目指しているが、実際、今回の東小金井店ではその15%の売上高構成が目標となっている。駅前ということもあって、「夕方のお客さまが相当来られると考えている」(西山事業部長)ため、期待したいところだ。
簡便・即食の点では生鮮部門でもそれぞれ強化。青果売場ではカット野菜を中心に使い切りサイズの品揃えを充実させている他、果実売場に冷凍コーナーを導入し、イチゴ、パイナップル、レモン、ミカンなどの冷凍フルーツや、果実を丸ごと凍らせた冷凍フルーツバーを取り揃える。






新しい価値の提案では、環境という観点で陸上養殖のサーモンを使った惣菜や青果売場での工場野菜の展開といったことが挙げられる。


トマトはお客の要望も多く、品揃えを充実させた。ミニトマトは量り売りを導入。



さらに、地域に根差した品揃えにも注力。西東京エリアの生産者14軒と組む形で地元野菜コーナーを設置する他、当日の朝に収穫された東京産の「朝採り野菜(サニーレタス、ロメインレタス)」を夕方に展開する取り組みも実施。

また、立地する東小金井市がクリの産地として有名だったことを受け、洋風デイリーでは、栗を使ったロールケーキとして「東小金井ロール」を店独自の商品として開発した。

クリにちなんだ商品としては、インストアベーカリーでもクリを丸ごと1個使った「ひがこ栗入りアンパン」を商品化。
地域商品は和風デイリーでも強化され、チルド麺やコンニャクなどで地域の商品を取り入れている。

酒ではJR東日本グループで商業施設などを展開するJR中央線コミュニティデザインが手がけるクラフトビール「ぽっぽやエール」をSMで初めて取り扱う他、中央線沿線に関連する小澤酒造(青梅市)の澤乃井や石川酒造(福生市)の多満自慢、田村酒造(福生市)の嘉泉などの地酒をそろえた。菓子では明治26年創業、青木屋の銘菓「武蔵野日誌」など、グロサリーでも地域商品を多数そろえている。

その他、商品構成上では売場面積が限られる中にあっても、住居関連商品を通常の店と比べ約2倍に拡大している点が挙げられる。「住と食、生活、暮らしというドメインの中でワンストップで買っていただけるお店になっている」(伊藤本部長)
目玉となるのが、子育て環境の変化や多様化する生活スタイルに対応するため「アカチャンホンポセレクション」を展開している点だ。同じヨーク・ホールディングスのグループ企業である赤ちゃん本舗の商品を導入した形だ。



売場を拡大できた背景としては、ピロティ方式ということもあって入口が1つということを生かし、「売場づくり、動線をある程度ワンウエー(コントロール)にすることで、ゴンドラ本数が想定よりも多く取れた」(西山事業部長)とする。その分をできる限り住居関連商品にし、アカチャンホンポの商品やペットフードを充実させた。



駅前立地で約560坪、駐車場もそれなりに確保できたということで、初年度は約28億円の年商を想定するが、30億円以上を視野に入れたいところだろう。
ヨークフーズ東小金井店概要
所在地/東京都小金井市梶野町5-10-1
オープン日/2025年4月25日
営業時間/10時~22時
駐車台数/98台
駐輪台数/210台
建物構造/2階建て(1階駐車場、エントランス、テナントの「うさちゃんクリーニング」(クリーニング店)、2階イトーヨーカ堂売場)
敷地面積/約5565㎡
売場面積/約1851㎡
店長/山村健太郎
従業員数/81人(社員21人、パートタイマー60人、8時間換算)
初年度売上目標/約28億円