マミープラス武蔵浦和店が5月10日オープン、小商圏型戦略フォーマット新規出店、JR高架下に居抜き出店で、都市部MDも視野

2025.05.13

マミーマートが5月10日、マミープラス武蔵浦和店をさいたま市南区にオープンした。同社は現在、生鮮、惣菜を強化した広域集客型フォーマットの「生鮮市場TOP!」を主力としているが、「マミープラス」は、それに続いて開発を進めるもう1つの小商圏型の戦略フォーマットとして新規出店の他、既存のマミーマート標準店の転換を図っている。

小商圏型のため、生鮮、惣菜が主力の生鮮市場TOP!とは異なり、日配、グロサリーのEDLP(エブリデーロープライス、毎日低価格)をマーチャンダイジング上の主力とし、加工食品で65%程度の売上高構成比を見込む。必然的に生鮮、惣菜は売上高構成比で35%程度と限定されるが、壁面をしっかり固めながら低価格販売するため、存在感は大きい。

精肉は子会社である彩裕フーズのプロセスセンターから全てアウトパックでの供給とするなど、店内作業の省人化を高めているが、一方で鮮魚は店内加工をしながら寿司も展開、また惣菜も温惣菜、米飯、ピザなどを店内加工するなどめりはりを付けている。

武蔵浦和店はマミープラスとして13店目になるが、昨年11月にオープンしたセキチュー東松山高坂店(埼玉県東松山市)以来の2店目の新規出店となる。JRの武蔵浦和駅と北戸田駅の中間の鉄道の高架下の敷地への出店。

駐車場は84台、駐輪場は100台と、それなりに確保しているが、武蔵浦和駅から900m弱、徒歩十数分の街中にあるため、既存のマミープラスと比べ惣菜を強化、標準的な売上高構成比より3%ポイントほど高めの10%程度を見込む。惣菜だけでなく、全般的に簡便商品を強化した。

「足元のお客さまが多く、若いファミリー層が非常に多い立地。駅まで歩いて行かれるお客さまも多いので、(既存店と比べ)売場も変更をかけた。惣菜など即食をより一層強化した他、量目もあまり大き過ぎずに適量で買える量目に一部変更をかけた。後は(グロサリーの)簡便商品のふりかけ、レトルト、レンジ(調理商品)はしっかり品揃えをするようにしている」(斯波雄也・執行役員マミープラス事業部長)

集客は自転車がメインとなるとみていて、そのため、客単価も既存店ほどは上がりづらいと想定しているという。

生鮮市場TOP!は広域をターゲットとするため、必然的に売場面積も大き目で、かつ郊外での展開が中心になるが、一方で小商圏型のマミープラスは今後、面積や形状など出店の制約が多い都市部での小型店や変則的な形での出店を含めた展開を視野に入れている。

武蔵浦和店の商圏は半径2km圏で約16万8000人の人口があるなど、厚いマーケットを抱える。その意味では今後のより都市部への出店に向けての実験としても位置づけられる。同商圏の平均の世帯人数は2.2人。

JRの高架下という特殊な立地だが、足元商圏の人口は非常に多い

縦長のスペースを中央部とその南北でエリア分け

武蔵浦和店は売場面積約680坪。大型店といえる規模だが、前述のように高架下への出店のため、縦長、かつ柱が大きいことから実質的に売場として活用できる面積は500坪程度だという。

もともとマミープラスは生鮮については平台、平ケースを用いず、ワンウエーコントロール的なレイアウトを採用しているが、今回もその要素を踏襲しつつも、縦長のスペースにどのように売場を配置するかについてさまざまな検討をした。

また、出入口が1カ所である上、ほぼ中央部にあることもあり、結果的に売場を中央部、南側、北側の3つに分けて売場を配置。出入口のカート置き場に一部、かご車陳列の特売商品があるが、入口から入ったお客はそのまま南側方面の青果売場に進むことになる。南側には冷凍食品、冷蔵の和洋日配、酒に続いて壁面側に鮮魚売場と続く。

入口のあるスペースにはかご車陳列での特売商品が並ぶ。ディスカウントを強く印象付ける
生鮮は基本的に平台、平ケースを用いず、ワンウエーコントロールの通路両側での展開。ただし、壁面では一部ケース陳列での売り込みを設け、めりはりを付けている
生鮮は壁面に限定されるが、売場づくりは分かりやすさも重要な要素となるため、フェーシング数はかなり大きい
青果に続いて冷蔵の洋日配、冷凍食品、アイスクリームを配置。和日配はその後の生鮮に連動させているため、先に洋日配が来る
商品が認知されたコモディティ商品をEDLPで売り込むことから、特に売り込み商品のフェーシング数、陳列量はかなり多い
需要も高まっている冷凍食品は、青果に続く壁面側に平ケースとリーチインでスペースを取っている。ワンウエーコントロールでは最後の方にレジと近づけて配置したかった面もあるが、縦長の敷地の中での配置のバランスからこのようにした
冷凍食品に続いては酒売場を配置。全て常温での販売で、冷蔵ケースは用いていない。販売量が多いビール系飲料やレディトゥドリンク類はゴンドラの下段でケース販売、上でばら販売している。ビール系飲料は6缶パックを置いているが、お客がばらして1本単位でも買えるようにしている
ワイン、ウイスキーなどは品揃えも充実させている。価格も低く抑えているため、目的来店性も見込める
鮮魚は店内加工を導入するなど人時をかけているが、冷凍の商品、売場を広げることで、品揃えの充実とロスの低減を図っている
加工食品主体のディスカウントを旨とするフォーマットではあるが、生鮮も一定程度強化。特に鮮魚は店内加工で刺身盛り合わせ、寿司まで展開する。納品形態を極力フィーレにするなど、できるだけ作業の簡略化を目指す。刺身盛り合わせは直線的に並べているが、これも作業性を考慮してのこととみられる
寿司は鮮魚部門のみの展開。全社的に鮮魚の寿司を強化していて、その流れを踏襲。ただし、他のフォーマットと比べ作業を簡略化する方向で、かつ、高単価の商品を取り扱わずに丼物を強化するなど、買いやすさに配慮している

主通路はそのまま奥壁面側の中央部の戻り、鮮魚に続いて精肉売場、惣菜売場と続く。続いて今度は北側に広大な常温のグロサリー売場が続く。そして、中央部の青果と反対側に設置されたレジで精算し、出入口から出るという流れになる。

実質的に生鮮を含む冷蔵、冷凍の売場と常温のゴンドラの売場が分断されたような造りとなっているが、人員態勢は他のマミープラスと同様、正社員は4人。他はパートタイマーによる運営となる。「作業設計をどうするかの問題があるが、行ったり来たりしないなど、工夫をしながらやっていきたい」(斯波事業部長)

今回は新店だが、既存店からの転換では売上高が約2倍になるのが目安となっていることから、追加の人時の投入があるにしても、そもそも精肉の店内加工がなく、その他の作業もさまざまな部分で簡略化されていることもあって人的効率、人時生産性がかなり高いフォーマットになっているという。

精肉は店内加工をせず、全て子会社の彩裕フーズのプロセスセンターからのアウト供給。牛肉では一頭買いしているオリジナルブランドの交雑種、埼玉県産「武蔵黒牛」を売り込むが、和牛も品揃えしている
アウトパックではあるが、簡便商品である味付けなどはしっかり展開。商圏的にも他の分野でも簡便商品を強化している
売場の掲示に「マミープラスでの買い物は宝探しだ!」
ナショナルブランドの商品の独自規格の商品をスポット的に売り込む。店数や展開期間が限られるからこその展開だが、こうした要素が宝探し的な楽しみを生む
惣菜は店内加工の商品を多数売り込む。マミープラスの売価の特徴として「ぞろ目」が多いことが挙げられる。写真は222円(価格は全て本体価格かつオープン時の価格、以下同)の弁当
米飯の下限は222円ではなく、さらにシンプルな199円のラインもある。アイテムは「竹輪磯辺天丼」や「かにかまたっぷり飯」「鶏とたまごの2色そぼろ丼」
多くの企業でトップレベルの売れ筋であるカツ丼「だし香る!ロースかつ重」は399円だが(左)、より手軽な商品としてコロッケを使用した商品「おなか満足!本気じゃがコロッケ重」を299円で開発。今回、新規投入した
「おなか満足!本気じゃがコロッケ重」。よく見ると、カツ丼とは異なり、コロッケは卵とじされておらず、載せている形。低価格の維持が難しいインフレ傾向だからこそ、このような商品開発のアイデアは重要性を増している
売価などの違いから惣菜はフォーマットごとに商品開発をしてきたが、昨今では全社共通の商品開発も進める。唐揚げもその1つで、直近の4月にリニューアルをかけた
駅から徒歩圏内の住宅地ということもあって、マミープラスの中でも特に惣菜を強化。つまみ系の焼き物などの品揃えを充実させている
惣菜は店内加工の商品に加え、子会社の彩裕フーズの工場製のアウトパックの商品も活用しながら品揃えしている。「自家製タルタルソース」の展開などは惣菜の子会社を持つからこその商品開発といえる
惣菜ではデザート系のスイーツを強化中。彩裕フーズの工場製の競争力ある商品が多数展開される。写真は79円の自家製カスタードシュー、エクレア各種

また、通常のマミープラスは壁面に平台、平ケースを置かない生鮮を配置し、内側の日配やグロサリーをしっかり売り込むのが基本方針となるが、武蔵浦和店の場合、前述のように縦長に南北に分断された形のため、日配、グロサリーの売場は既存店に比べ狭くなった。

マミープラスでは通常、1万1000ほどのアイテムをそろえるが、このような事情から日配、グロサリーのアイテムは若干絞られ、武蔵浦和店のアイテム数は1万程度になっている。商品絞り込みに際しては需要を想定し、カテゴリーごとにめりはりを付けた。

マミープラスは今後も既存店の転換を中心に拡大を続けていく意向で、新規出店は生鮮市場TOP!が中心となる。

売場は天井も貼らず、グロサリーの売場では壁なども最低限の内装にとどめている
グロサリーは売場の制約によって、通常店と比べゴンドラが少なくなったが、アイテムを絞り込むことでフェーシング数などは多めになるように、分かりやすさに留意した。POPの「迷いを断ち切る安さ!」といったコピーが目を引く
こちらのPOPのコピーは「安心してください いつでも安いです」
こちらのPOPのコピーは「価格の守護者 マミープラス」。CGCのドリンクタイプのゼリーなどはケース販売も実施
菓子は「内緒で買っても大丈夫」と子どもにメッセージ。間接的に「安い」ことをアピール
酒同様、グロサリーの飲料も常温のみで展開。下にケース、上にばら売りの商品を置く
日用品もマミープラスの通常店と比べ、ゴンドラは少なめ。ペットフードも絞り込まれている。犬用に「ワンダフル」、猫用に「ニャンダフル」といったように、こちらでもPOPに遊び心が感じられる
レジはセルフレジ主体。オープン時はセルフレジを22台、有人のセミセルフを6台設置しているが、今後、オープン後の客数の落ち着き度合いによって間引く予定。セルフレジの利用率は半分強といったところ

マミープラス武蔵浦和店

所在地/さいたま市南区沼影3-5-15

オープン日/5月10日

営業時間/9時~22時

駐車場/84台

駐輪場/100台

店長/水本竜次

お役立ち資料データ

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