エムアイフードスタイル駅前小型店の進化系、クイーンズ伊勢丹浜松町店が9月30日オープン
2025.11.04
クイーンズ伊勢丹を展開するエムアイフードスタイルが駅前の小型店となる浜松町店を9月30日にオープンした。JR浜松町駅の南口改札口に隣接する浜松町駅前再開発C地区に立地し、オフィスと住居で構成されるWORLD TOWER RESIDENCEの3階部分への出店。
約48坪のコンパクトな売場に、約1500種類の厳選された商品が並び、忙しい日常に寄り添う新しいスタイルのスーパーマーケット(SM)を目指した。

メインターゲットは周辺で働く人だが、上階の住宅部分のレジデンスに300戸ほどが入るなど足元客の需要も見込まれる。朝食や昼食、夕食の一品に合わせた店内製造、出来たての惣菜をメインに、酒や「手土産ニーズ」に応える菓子、プライベートブランド(PB)商品の「ISETAN MITSUKOSHI THE FOOD(ミツコシイセタン・ザ・フード)」の商品などを展開。
商品構成は通常のSMと大きく異なり、生鮮食品の取り扱いをあえて省き、デリカやグロサリー、飲料、洋日配に特化。そのため、売上高構成比ではデリカが4割を占める計画になっている。
デリカについては店内に厨房を設け、スチームコンベクションオーブンやフライヤーを設置し、店内調理を実施する。商品は弁当がメインで、対面で従業員が盛り付けて提供する商品と作り置きの商品の2種類を展開。

対面で提供する「Hot Deli BENTO(ホットデリべんとう)」は中身を選択できる方式で、今回、初めての展開となる。商品はキット調理を含め店内で製造し、出来たての状態で盛り付けることで付加価値を付ける。コンセプトは、『~店内で調理した出来立てデリの「選ぶ楽しさ」と「食べる喜び」をひとつのBENTOで!~』。
販売時間は限定で、平日午前11時~14時まで。白米と主菜、サラダ、副菜2つをセットした形での提供で、主菜が1つの場合、980円(本体価格、以下同)の「シングル」、2つの場合は1280円の「ダブル」の2種類を用意している。
「Hot」と付けられているように、保温の什器を用いることで温惣菜については提供時にも温かい状態での提供としている。商品は飽きずに頻度高く利用してもらうことを見込んで週替わりでの展開だが、選ばれる商品が集中する傾向もあることから絞り込みなども視野に入れる。また、ご飯は現状白米のみだが、雑穀米なども検討していきたいという。
Hot Deli BENTOは1日100セット程度の販売を見込むが、オフィスでの昼食需要がメインのためか、12時~12時30分の30分間に需要が集中する傾向が強くなっている。

弁当の品揃えについては店内製造に加え、アウトパックの商品を導入することで20種類以上用意することで目的買いを促す。店内調理の「お肉屋さんの牛めし」や「10品目の野菜とともに味わう豆腐ハンバーグ」など、季節の食材をふんだんに使用した重などを展開。店内調理の商品はオペレーション面も考慮し、丼や重など「載せ」の商品を中心としている。

その分、仕入れを含むアウトパックの商品はおかずの種類が多い商品も多数あるなど、品揃えのバラエティは豊富になっている。仕入れの弁当では亀戸の老舗「升本」の商品や金沢で親しまれてきた「芝寿し」の押し寿しなど、こだわりの逸品も多い。

寿司に関しては助六と海鮮丼に特化。マグロ丼やアボカドポキ丼、ネギトロ丼など海鮮丼を日替わりメニューも導入しながら提供する。
オフィス立地のため、弁当についてはランチミーティングや大人数での集いなどに向けた予約の需要を見込み、11月ごろから事前予約の開始を予定している。


同店の大きな特徴として、限られた店内で、時間帯別マーチャンダイジングに注力していることが挙げられる。時間限定のHot Deli BENTOは端的な例だが、他にもある。
例えば、こちらは常時販売しているものの特にオフィス立地の朝の需要に向けて、店頭にはコーヒーマシンを3台設置。支払いまでマシンで完結させる方式で、1日100杯の販売を想定している。コーヒーについては香り、味わい、余韻にこだわり抜いたクイーンズ伊勢丹オリジナルのスペシャルブレンドコーヒーの他、猿田彦珈琲とのコラボレーションのドリップコーヒーなど、独自性を持たせている。


また、夜の時間帯に向けては立ち飲みの形で酒と惣菜が楽しめる「Yorimichi Bar(よりみちバル)」を展開。こちらは平日の16時~20時30分までの時間限定。デリカ売場中央の平台を高めのテーブルに転換することで、テーブルを囲む形での席を用意。
お客さまは店内で販売している酒を選び、その場で気軽に楽しめるスタイルとなっている。ウイスキーについてはハイボールでも提供。他にも日替わりでお奨めの日本酒やワインなども提案する。
つまみについては設備を生かし、揚げたて、出来たてで提供する。「軽く一杯」という需要に加え、「しっかり楽しむ」需要にも応えるようにしている。

バルに転換することを前提としているため、酒はテーブルとなる平台に隣接した場所で展開。ワインは銘醸ワイン(フランスのボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュ)を始め、バイヤーが直接買い付けたワインなどを200種類ラインアップ。日本酒は北は北海道の十勝(上川大雪酒造)、青森の陸奥八仙(八戸酒造)から、南は佐賀の七田(天山酒造)、山口のOhmine(大嶺酒造)まで日本各地の商品をラインアップ。
飲み切りサイズや1合瓶を50種類、ビールは京都醸造、二兎醸造を始めとした話題のクラフトビールを20種類をそろえた。バルはもちろん、自家消費だけでなく、ギフト需要も想定した品揃えとなっている。




駅近、かつオフィス立地ということを受けて「手土産ニーズ」に応えるため菓子のギフトコーナーを展開している。直近にオープンした駅中店の千葉店(千葉市中央区)などでも同様にギフトコーナーを設置していることもあって、同社としても定番となるコーナーといえる。
浜松町店では1976年から販売しているロングセラーのブランデーケーキを筆頭にリーフパイや焦がしバターフィナンシェなど食感や香りにこだわったオリジナルブランド「シベール」を始め、「赤坂柿山」や「にほんばしえいたろう」「新宿高野」「ラ・メゾン白金」「泉屋東京」など東京銘菓を展開。さらに今回から「銀座千疋屋」の商品をクイーンズ伊勢丹で初めて取り扱う。急な訪問や帰省前など、多様なシーンに対応できる品揃え尾を誇っている。

前述したように、限られた面積で品揃えは限定されているが、あくまで仮説ということもあってお客さまの声などを聴きながら品揃えについては柔軟に対応していく意向。
「お客さまのご意見になるべくそれにお応えする形でブラッシュアップしている。商品でも最初なかったものを取り入れたりしている」(杉本 猛店長)
例えば、オフィス需要がメインと想定されることから当初は素材系の和日配の商品を置いていなかったが、オープン後、お客さまの要望が多かったことから納豆、豆腐、卵など、また、水産の商品などを導入するなどしている。



浜松町店の場合、日曜日が休業、土曜日も短時間営業ということで、平日中心にこの数字を作り上げることが求められる。オフィス需要が多いことから、土曜日は客数も少なく、営業時間も短いが、逆に上のレジデンスを含め住民が利用するためか、客単価が高くなるという。ワインなども高単価のものが動く。
客単価は平日が1000円弱、土曜日が約1500円といった水準で、土曜日が高い。土曜日には高単価の酒のまとめ買いなども見られるという。

クイーンズ伊勢丹浜松町店は浜松町駅の南口至近にある一方、駅からやや離れた北側にマルエツ プチが2店、南側に1店、他、まいばすけっとが数店ある程度。隣の田町駅至近には300坪クラスのライフ、オーケーがあるのとは対照的で、ある種のSM空白地帯ともいえる。
その意味では、「ここにSMがある」ことの認知がいかに広げられるかは大きな要素となるかもしれない。オープン後、いきなり取り扱いのなかった日配の商品を導入してほしいという要望があったのは需要の表れともいえ、その意味では「マーケット創造」のような挑戦をしているともいえる。都市部におけるSMの在り方の方向性の1つとして、今後の推移に注目したい店である。
クイーンズ伊勢丹浜松町店概要
所在地/東京都港区浜松町2-3-6
営業時間/平日:7時30分~21時、土:9時~16時、日祝休み
従業員数/23人(うち正社員5人)









