【盆商戦】対策2024 精肉編 輸入の価格上昇の中にあって「安売りは厳禁」、冷静な判断で安定利益を確保
2024.07.08
精肉には過去稀に見る向かい風が吹いている。特に、輸入肉に関しては、為替や相場が極めて良くない方向に動いていて、仕入原価高騰で2023年よりもさらに過酷な状況となる。
過去5年を見ても米ドル/円為替が約50円の円安。分かりやすく表現すれば、精肉では米国産牛肉1100円/kgだった商品が、現地価格は同じでも為替の影響で1600円/kg出さなければ購入できないということである。
全く同じ商品でも、為替が円安に振れているだけで1.5倍のお金を出さなくてはならない。これは、米ドル/円だけでなく、豪ドル/円も同様に円安となっているため、豪州牛でも同様のことが言えるのである。
価格が上がる米国産牛肉、国産は和牛が安め、交雑が上昇傾向
為替の影響だけでも価格は大きく上昇するが、牛肉の相場も大きく上昇している。米国農務省(USDA)が、今年初旬に24年の見通しを発表しているが、繁殖雌牛の飼養頭数は24年1月1日時点で2822万3000頭(前年比2.5%減)と減少したと発表している。
大きな要因としては、19年をピークとするキャトルサイクルの縮小期、23年の干ばつによる牧草生育状況の悪化の影響(経産牛の淘汰)、未経産牛の肥育仕向けが進んだこととしている。長期スパンでも、今年は頭数が少ないため、その分相場が上昇すると想像できる。
肥育牛飼養頭数の一時的な増加から、今年前半はと畜頭数、牛肉生産量の増加が見込まれ、安泰のように思われるが、後半は肥育牛が減少見込み。年間の牛肉生産量も261億8500万ポンド(約1187万7316t)(前年比2.9%減)で減少する見通しである。
肥育牛飼養頭数および牛肉生産量の減少から、24年の肥育もと牛の平均価格は去勢牛で100ポンド当たり180米ドルと想定され、例年よりも高いと言われていた昨年23年をさらに上回る。4年前の20年と比べると、年間平均価格は70米ドル/100ポンド高いことになる。
国産牛の生産量全体を見ると農畜産業振興機構の需給予測では、3カ月平均(4月~6月)では、出荷頭数89万2000頭(前年比99.8%)、生産量28.7000ドル(同100.1%)と昨年並みの予測となっており、おおむね昨年同様の生産量が予想される。
枝肉相場に関しては、和牛は昨年よりも安い傾向、交雑は105%以上で今年は推移している。
国産豚の生産量は肉豚生産出荷予測(農水省食肉鶏卵課、5月22日付)によると、6月130万9000頭(前年比99%)、7月129万9000頭(同104%)、8月129万9000頭(同103%)、9月132万9000頭(同103%)、10月145万1000頭(同101%)である。今後5カ月間の合計頭数は前年比約101%と前年を上回る見込みとなっている。
方、豚枝肉「上物」相場は、大幅に上昇傾向にある。その背景には、輸入豚肉の現地相場高で、米国産豚肉の輸入量が大幅減っていることなどが考えられる。その影響もあり、カナダやメキシコ産の豚肉の輸入量は増加傾向となっている。
24年の盆商戦に関しては、輸入肉の相場や為替の影響が大きく仕入れに関わってくることは否めない。特に、今年は米国からの商品の手当が牛肉では、価格的にも厳しいと想像されるため、特に焼肉商材などでは、工夫をして展開していく必要がある。
豚肉に関しても、輸入肉は仕入単価をチェックしておく必要がある。
目次
利益商材をバランス良く展開
焼き商材の仕入れをうまく利用して、利益商材を活用することで、無理なく売上げも粗利益も稼ぐことを考えると、必然的に販売できる商品に目星が付くことと思う。
国産黒毛和牛焼肉セット 3800円/400g

盆商戦の売上げの核とするのは焼肉。中でも相場が上昇していない黒毛和牛を売り込み、売上げと利益を確保していく。単品訴求の焼肉だけでなく、三点盛りにした焼肉セットを売り込むことで、サシの入った部位と赤身部分をバランス良く展開する。
特にカタ部位は、ミスジ、カタサンカク、コサンカクといった見た目と食感の異なる小割部位が含まれているため、うまく活用すると良い。同様にシンタマ、ランプ、カタロースも、パックを開けると大量に商品ができてしまうので、懸念されがちであるが、商品化を工夫すれば、むしろ使いやすい部位となる。
国産黒毛和牛モモブロック 598円/100g

夏場には売れないイメージのある牛肉ブロックであるが、バーベキュー需要が増加したことや、ディスカウントストアやホールセラーがブロック販売強化に伴い、実は購入者が増えている商品の1つである。
何よりも、商品化のオペレーションが楽であるため、販売側としても拡販に力を入れたい。ローストビーフソースやシーズニング、バーベキュー用のスパイスなども関連販売することで、より明確なメニュー提案を訴求することが可能となる。
和牛だけでなく、納品価格を見極めて、交雑牛や乳牛、和牛経産も活用すると、ブロックにもバリエーションが出るため、仕入段階からさまざまな国産牛のグレードの価格にアンテナを張り巡らせておくと良い。
タイ産若鶏ソリレス(モモ)味付け(解凍) 380円/300g

焼肉商材で利益商材として展開が強化されているのが、鶏モモ肉の一部であるソリレスである。上モモ肉に付いている部位で、国産鶏肉ではモモ肉に付いたまま流通しているのが一般的である。
タイ産ではソリレスを仕入れることが可能で、ガーリックペッパー味や山賊焼きなど、鶏肉の焼き商材として販売できる。砂肝ほどの大きさのため、焼き上げるとやや縮み、おつまみ商材としても展開できる商品である。
注意点としては、部位表示にソリレスはないため、ソリレス(モモ)の表示が必要となる。販促シールやPOPで、腰骨の付け根のくぼみ部分の肉であると消費者に伝えることが必要である。
牛豚焼肉6点盛りセット 1780円/650g

輸入肉が為替や相場で高騰しているが、国産豚肉とセットにすることで値入ミックスをして利益が確保できる商品化をすると良い。米国産牛は豪州よりも影響が大きいと考えられるが、その時々の納品価格を見て輸入肉は調整すると良い。
部位としては、お客は必要な商品しか買わなくなっていることから、牛肉で一番人気のハラミ、バラと値入れが調整しやすいモモ、カタ、国産豚バラ、カタロースを盛り合わせて商品化する。ハラミの代わりにサガリを活用したり、鶏ハラミやソリレスなどを1品入れたりするとさらに粗利益率が改善する。
国産豚肉使用 生ソーセージ 880円/300g

会員制ホールセールクラブで生ソーセージが人気となり、特に夏場はバーベキュー需要も重なり消費量が多くなる。
加工肉売場でも生ソーセージの扱いがプライベートブランド商品を中心に徐々に増えてきているが、いま注目を集めているのが、精肉のブランド豚肉を使用した生ソーセージである。
加熱済みのコンシューマパックのソーセージよりも調理後の食感がジューシーで、子どもも食べやすい。1本50g以上のロングタイプにすることで、ボリューム感が出るため、価格設定も比較的高単価で販売できる。
焼肉コーナーでの展開は、キャンプ需要や家庭での屋内焼肉需要で強化できる。豚肉売場での販売の場合は、夕食や朝食の1品としての提案となる。加工肉売場では、価格がコンシューマパックとは異なるため、割高感が際立ってしまうため、精肉売場での展開が好ましい。
過去の成功体験からの脱却
お客やマーケットが年々、日々変化している。いままでメーカーや商社に価格を叩いて安く仕入れることが出来ていたこともあり、あまり深く考えることがなかったかもしれないが、特に輸入肉に関しては、相当な向かい風となっている。いままでと同じ売り方をしていると、確実に儲けが出ない構造になってしまう。
「輸入牛肉が高いから仕入れない」というのは先々の仕入れを考えると得策ではないため、最低ロットで仕入れは継続しておくことが望ましい。国産豚肉や鶏肉とのセット販売を行うことで、値入ミックスを考慮した商品展開をしても良い。
いままでの「こうすれば売れる!」という方法も、いまの環境では売れなくなってきていたりするため、同じ店でも地域に見合った商品政策を独自に行ってもらいたいと思う。