【盆商戦】対策2024 鮮魚編 相場安の解凍本マグロを生かし、刺身のマンネリを「価値訴求」で脱する
2024.07.10
2024.07.09
2023年の盆商戦期間(8月11日~15日)の売上状況は、全国的におおむね好調であった。令和になって11日が「山の日」の祝日となったため、盆商戦の帰省が11日を起点にしてスタートするようになった。さらに昨年の曜日回りは、「山の日」の祝日が金曜日で3連休となったため、予測通り期間前半に売上げが集中する結果となった。
8月11日~13日の3日間の傾向としては、次の表のように売上高、客単価、買上点数共に12日が3日間の中で一番高くなったが、1点単価だけは13日が一番高く、買上点数は3日間の中で一番低かった。13日は刺身盛り合わせ、寿司盛り合わせなど大型商品、高額商品に集中した購買状況がうかがえる。

23年の盆商戦を総括すると、次のようになる。
①刺身盛り合わせの大皿、大規格(1パック2990円~3990円、4~6人前)の売上好調企業が多かった。
②人手不足を反映してか、加工品(切り落とし、たたきなど)を活用した盛り合わせが目立つようになってきた。
③つまなし刺身盛り合わせは生産性が高く、拡大傾向ではあるが、チャレンジする企業とチャレンジしない企業に二極化傾向がみられた。
④盆関連商品は台風の影響もあってか、12日、13日に前倒し傾向が顕著であった。
⑤バーベキュー商材は、地域、天候によって売上げの良しあしは二極化傾向が顕著であったが、全体としては好調に推移し、2桁の伸びを示す企業、店舗が多かった。
それを踏まえ、今年の盆商戦の流れを考えると、次のようになる。
①帰省客の動きとしては、今年は11日の山の日の前日である10日が土曜日ということもあり、帰省客の始動が昨年よりも半日程度、早くなる可能性がある。
②Uターンの動きとしては、昨年は台風の影響で例年よりも少し早まった。今年は台風などの与件がなければ昨年並みか、少し後ろにずれ込む可能性がある。帰省先での滞在期間は昨年よりも長くなる傾向と思われる。

魚惣菜、つまみ商品、相場安の解凍本マグロに注目
今年、新たに加えるべきと考える商品(群)は次のとおり。
①魚惣菜
この数年、盆時期の異常な暑さにより、家で火を使うことを避ける場面が増えている。結果として、焼き魚など魚惣菜への需要が高まりつつある。また帰省客向けの懐かしい焼き魚(焼きカレイ、焼きサバ、焼きダイ)などの提案強化してはどうか。
②ビールのつまみ
今年になって「タコキュウ」やあん肝など酒のさかな、つまみ系商品の展開が増えてきた。例えば、「タコキュウ」は、通常は1パック398円前後での販売が多いが、盆期間は1パック580円以上の大型パックの販売強化する。
③バーベキュー商材
この時期は親類縁者が集まっての「スーパーバーベキューパーティ」の機会が増える。通常のバーベキューメニューに、カニ類を追加してはどうか。定番のズワイガニ、タラバガニだけでなく、ゴールデンキングクラブやアブラガニ、ベニズワイガニなども検討してはどうか。
続いて、扱いをさらに増やすべきと考える商品(群)は次のとおり。
①解凍本マグロ中とろ入り刺身盛り合わせ、寿司盛り合わせ、解凍本マグロ尽くしセット
盆商戦にかかわる主力商品の中で昨年と今年で大きく違うのは解凍本マグロの相場だ。今年は昨年同時期と比較して2、3割安く、この盆商戦で活用しない手はない。解凍本マグロ中とろ入りの刺身盛り合わせや寿司盛り合わせの強化。さらには解凍本マグロ尽くしセットなども販売強化したい。
②バーベキュー用冷凍食材のメガパック
最近、バーベキュー用冷凍具材のメガパックの動きが良い。殻付牡蠣、アルゼンチン産アカエビ、マツイカ、ホタテ片貝など冷凍食材の冷凍ケースでの販売が定着しつつある。冷凍販売することでロスの心配が減り、お客にとっても、「好きなときに好きなだけ使える」メリットが再認識されている。
③真空包装商品
うなぎかば焼き、塩サケ、塩干商品、冷凍切り身の真空包装商品も増えている。展開場所は商品によって冷蔵ケース、冷凍ケースそれぞれだが、真空包装による消費期限の延長が売る側にも買う側にもメリットとなっている。
特にうなぎかば焼やホッケ開き干しなど干物の真空包装は、おかずがもう1品欲しいときなどに便利で重宝されている。
盆の刺身のマンネリを防ぐ
盆商戦の「刺身企画」にマンネリ傾向がみられる。マンネリの最大の理由は、人手不足もあってか刺身盛り合わせの販売に消極的になっている場面が多くみられることにある。商品仕様、規格は昨年のままで、売価だけアップさせるといった方策は最悪だ。
また、鮮魚の寿司を展開する企業、店舗では、寿司優先で刺身盛り合わせが二の次になっているケースもある。今年の相場と消費環境の中で、刺身盛り合わせの販売高をいかに最大化させるか、腕の見せどころと考え、積極的に仕掛けたい。
まずは、今年ならではの「価値訴求」を実践したい。昨年との一番の違いである解凍本マグロの相場安を有効活用し、昨年の盆商戦にはなかった魅力、価値を加味した仕様、規格を考える。
そして、刺身売場の景色を変えることだ。6点盛り、8点盛り、10点盛り、12点盛りなど、売場にたくさんの種類の刺身盛り合わせが陳列されていても、お客に商品ごとの違いが伝わっていないことが多い。
最近の刺身の変化としては、食材の相場高が続いたこともあって「1山3切れ規格」が増えた。
1山3切れ規格となると通常の平切りでは大根のつまが見え過ぎ、価値を損なってしまう可能性があり、その対策として面を拡げる必要から「削ぎ切り」が増えている。通常の平切り刺身を定番とするのは構わないが、少し見た目の違った刺身規格も品揃えに加えないと売場が活性化しない。
次の写真を上と下で見比べて欲しい。1パック単位で見ると、上の平切り刺身盛り合わせ(6点盛り)もなかなかに立派な刺身に見えるが、売場で3、4フェース陳列したときの見栄えは、下写真の削ぎ切り刺身盛り合わせの方が明らかに「映える」。


定番商品に1、2品、こうした刺身を加えて売場の景色を変えてみてはどうか。
最後に、大根のつまなし刺身のメリットについて触れたい。つまなし刺身は、企業によって評価が分かれるところだ。ただ導入店舗では生産効率が高く、「高評価」とする企業、店舗は多い。まずは1ラインから始めてはどうか。
つまなし刺身のメリットは、次のようにたくさんある。
①生産性が高い!
8点盛りなら1時間に60パック以上の盛り付けが可能(切り手のスライス作業は別)。
②分業制が成り立つ!
切り手は、ひたすら横スライス。商材によっては切り身のストックができるのもメリット。
③盛り付けが簡単!
最初に大葉などを敷いて右から盛り付け。技術が不要であるため、盛り手を選ばない。誰でも盛り付けられて、さらに出来ばえに差が生じない。へらで盛り付ければ、包丁が苦手な人でも作業ができる。
④ビジュアル的にも合格ライン!
傾向として点数(山数)が増えるほど見栄えが良くなる。大根のつまがないことでの「安っぽさ」「ボリューム感がない」などのデメリットはほとんどなくなる。
⑤パセリ、海そうなど原価コストと盛り付けるための人件費コストが減らせる
写真の盛り方であれば隙間が少なく、パセリ、海そうなどのあしらい物を最小限に抑えられる。
