「ヤオコー蕨錦町店」オープン。ホームセンター核SCに出店した旗艦店クラスの最新店の売場とは?

2022.04.12

2021.03.24

ヤオコーは3月17日、埼玉県蕨市に蕨錦町店をオープンした。埼玉県92店目、全社では169店目になる。

イトーヨーカドー錦町店の建物をホームセンター企業のビバホームが再開発し、3月10日にビバモール蕨錦町としてオープンしたショッピングセンター(SC)内への出店。今回のオープンはビバモールとして第1期のオープンの位置づけで核店のスーパービバホーム蕨錦町店など日常使いの業態を中心にオープンし、4月に第2期オープンとして約30店の専門店がオープン予定。最終的には約40店から構成されるエンクローズ型のSCとなる。

ヤオコーは、スーパービバホームと通路を挟んで並ぶ形で1階に出店。位置づけとしてはスーパービバホーム同様、核店となる。

西側約800mのJR埼京線戸田駅、東側約1.2kmのJR京浜東北線蕨駅の間に立地し、路線バスも通るなど交通アクセスに便利な立地。2km圏内の人口密度が1万5000人以上と高く、さらに人口、世帯数ともに増加傾向にあるという。年齢構成は30~59歳がボリュームゾーンで、特に20代の人口の割合が県全体より高く、若い世代が多く居住する地域となっている。1km圏内では、単身と2人世帯を合わせると過半数を占める状況で、埼玉県平均に比べても単身、2人世帯の比率が高いことが特徴となっている。

壁面の日配の展開からレイアウトの狙いを読む

店舗面積は789坪と大型で旗艦店クラスといえ、さらに人口密度が高い地域のSC1階への出店ということで、初年度年商予定は35億円と非常に高い。大型店ではあるものの、坪当たり販売効率は440万円を超える水準だ。実際、オープン後は連日大きな集客を達成し、売上げもかなり高い模様だ。

店舗前にスーパービバホームとの間の通路が走っていることから、左右両側からの入店が期待できる構造になっている。それもあってか直近に改装した所沢北原店(埼玉県所沢市)など同社の旗艦店の一部で採用される、青果と惣菜を第1主通路にまとめたレイアウトを採用せず、青果と惣菜を両側に振り分けたレイアウトとなっている。

惣菜とインストアベーカリーは青果と反対側にしっかりゾーンとして確保
青果に続いて、壁面を用いた和日配売場が広がる。平ケースでは量販を仕掛けている

また、その他、レイアウトの特徴といえる点として、特に日配の配置を挙げることができる。まず、豆腐などの和日配の主力商品は、青果に続く壁面で展開している。その後、壁面沿いに鮮魚、精肉を挟み、ギョーザ、シューマイなど強いプライベートブランド商品を持つ商品を展開。内側のセミ多段ケースでは麺類を展開している。

そして壁面はそのまま牛乳などの洋日配の飲料となり、その内側のセミ多段ケースでは同じく洋日配のチーズ類を展開。さらにその内側ではワインが展開されていることからチーズとの連動が図られていることが分かる。

ヤオコーが多くの店で採用する第2主通路突き当たりのワインとチーズなどつまみを提案する「デイリーセレクション」コーナーを設置

和日配が豆腐などの「素材系」とギョーザ、シューマイ、麵などのどちらかというと「レディトゥクック系」、もしくは「惣菜系」とに分け、それぞれ生鮮側、惣菜側に近づけているようなレイアウトになっている。

特に日配の商品は、最近は温めるだけで料理が完成するものなど、惣菜との境界があいまいな商品も増加している。蕨錦町店のレイアウトには、こうした商品の実態も考慮されているように感じられる。

惣菜の売上高構成15%超、生鮮と惣菜では54%に迫る

ヤオコー蕨錦町店のストアコンセプトは、「伝えよう私達の想い 届けよう感動を~『美味しさ』・『楽しさ』・『安さ』でお応えし、『想い』が伝わるお店づくりをしよう~」。

野菜は特設平台を中心に、圧倒的な鮮度と値頃を打ち出す。また、栄養価、汎用性が共に高いキノコを、食べ方も提案しながら年間を通して売り込む。

フラットな特設平台を活用し、鮮度感の訴求と量販を仕掛ける
青果壁面の先頭は地元野菜
栄養価、汎用性の高いキノコを前面に打ち出して提案を試みる

鮮魚は近海魚をバラエティ豊富に品揃えし、刺身としてだけではなく、しゃぶしゃぶやサラダ、カルパッチョなど幅広い食べ方を提案。また、週末を中心に単品盛りバイキングを実施することで「選べる楽しさ」を提供する。

刺身はカルパッチョ風にするなど、洋風でも提案

精肉は用途が広い牛ブロックと、しゃぶしゃぶカテゴリーを強化する。特に和牛モモ肉を部位別で豊富に取りそろえ、メニューの幅が広がる提案で差別化を図る。また、平台で大型パックコーナーを展開することで、買い得感を訴求する。

強化カテゴリーの牛ブロック

惣菜では弁当の品揃えを強化。店内でスライスしたローストビーフを使用し、「シャリアピンソース」「ねぎ塩」の2種類のたれを使用したローストビーフ丼の他、握り寿司を展開。

「シャリアピンソース&自家製タルタルソース仕立て」のローストビーフ丼(本体価格498円)
ローストビーフの握り寿司と巻き寿司
弁当を強化。平台で大々的に展開している
弁当では中華やエスニックの商品も開発。「亜州料理 味庵米飯(あじあんべいはん)」としてコーナー化している

また、ライブ感ある「鉄板焼SACHI」では、名物商品の「鉄板巻上げ 厚焼玉子」の他、お好み焼き、焼きそばなどを、出来たてを訴求しながら販売。

寿司は、ヤオコーオリジナルの味付けで酢締めした本格的なさば棒寿司を中心に、名物化を狙ってアジやイワシといった青魚商品を強化した。

「旨とろ〆さば棒寿司」(左)と「旨とろ〆さば棒寿司と青魚握り盛合せ」
特色を打ち出した商品開発が多く見られる
焼き鳥は串に刺した商品の他、ばらした商品も展開するなど売り方にも工夫がある
小量目への取り組みも目立つ。「柔らか手仕込みロースとんかつ」は1枚を半分に分けたサイズを販売したり、おはぎも玉を小さくした「手握りこはぎ」も品揃えしている。おはぎについてはあんこ自体も販売するなど「あんこマーチャンダイジング」を深化させている

インストアベーカリーでは、蕨錦町店の限定商品として生クリームを使用した「あん食パン」を販売する。

また、食事パンのラインを強化し、こだわりの「発酵バター」「天然酵母」「低温長時間熟成」といった要素を打ち出しながらおいしさを訴求すると共に、店内手作りスイーツで差別化を図る。

インストアベーカリーでは食事パンを強化。「天然酵母」をシールでアピールしている
ピザは平台で展開。バックヤードがガラス張りのため、店内で製造する様子がよく見えるようになっている

日配食品では、デザートやおやつ需要を取り込むべく、ヤオコーオリジナルの「watashino sweets」を中心に、生菓子、ヨーグルトカテゴリーを強化。

また、豊富なナチュラルチーズの品揃えで、日常普段のちょっとしたつまみからハレの日に至るまで「チーズとワインのある楽しい食卓」を提案する。

ドライ食品では、「専用調味料」を強化。メニュー提案コーナーのクッキングサポートと連動し、ベーシックからハイグレードまで、食材に合わせてさまざまなメニューを提案する。

調味料では、特定メニュー用の「専用調味料」を強化

酒は、ナチュラルチーズとの関連提案をしつつ、特に直輸入ワインを強化した。

初年度売上高構成比見込みは生鮮が38.6%、グロッサリー(日配食品、ドライ食品)が46.3%、デリカ(惣菜)が15.2%となっており、生鮮と惣菜で53.8%と過半となる他、惣菜の構成比が高く、惣菜が売れる店との見通しを持っているようだ。

SKU数は、生鮮が約1280、グロッサリーが約1万2800、デリカが約370となっている。

ヤオコー蕨錦町店概要

所在地/埼玉県蕨市錦町1-12-1

オープン日/2021年3月17日

営業時間/9時~21時45分

駐車台数/1239台(商業施設全体)

駐輪場/615台(商業施設全体)

店舗面積/2607㎡(789坪)

延べ床面積/3856㎡(1167坪)

店長/藤村健二

年間売上げ/初年度35億円(予定)

従業員/正社員28人、パートナー・ヘルパー・アルバイト165人(延べ人数)

商圏人口/1km圏内4万2000人(2万1000世帯)、3km圏内35万7000人(18万世帯)、5km圏内94万人(46万3000世帯)

お役立ち資料データ

  • 2023年 下半期 注目店スタディ

    2023年下半期注目のスーパーマーケット7店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・オーケー/銀座店 ・ヨークベニマル/仙台上杉店 ・ベイシア/Foods Park 津田沼ビート店 ・ヤオコー/松戸上本郷店 ・カスミ/…

  • 2023年 上半期 注目店スタディ

    2023年上半期注目のスーパーマーケット5店舗を独自の視点でピックアップし、企業戦略を踏まえた上で、出店の狙い、経緯、個別の商品政策(マーチャンダイジング)まで注目点を網羅。豊富な写真と共に詳しく解説しています。 注目企業における最新のマーチャンダイジングの取り組みや、厳しい経営環境と向き合うスーパーマーケットのトレンドを知ることができ、企業研究、店舗研究、商品研究などにご活用いただけるほか、店舗を訪問するときの参考資料としてもお勧めです。 <掲載店舗一覧> ・ ヤオコー/トナリエ宇都宮店 ・ サミットストア/川口青木店 ・ 原信/紫竹山店 ・ ライフセントラルスクエア/ららぽーと門真店 ・ …

  • 有力チェーントップ10人が語る「ニューノーマル時代のスーパーマーケット経営論」

    有力スーパーマーケットチェーンの経営者10人にリテール総合研究所所長の竹下がインタビューを実施し、そのエッセンスをまとめています。 インタビューを通じ、日本を代表する有力トップマネジメントのリアルな考えを知ることができ、現在の経営課題の主要テーマを網羅する内容となっています。 変化する経営環境において、各トップマネジメントによる現状整理と方向性を改めて振り返ることは、これからの新しいスーパーマーケットの在り方形を模索する上でも業界にとって大変有用と考えます。 ぜひ、今後のスーパーマーケット業界を考える材料としてご活用ください。 ■掲載インタビュー一覧 ライフコーポレーション 岩崎高治社長 ヨー…