消費者サイドに立って「楽しい」買物・食事を実現し、「幸せ時間」をお手伝い 北野エース 油山哲也代表取締役 社長執行役員

2026.07.10

総合スーパーから食品スーパー、さらに食品専門店へとビジネスを転換

 1962年9月に兵庫県伊丹市で青果店として創業し、その後、総合スーパー(GMS)に転換し、さらに食品主力のスーパーマーケットを経て2000年ごろから次第に現在の食品専門店「北野エース」のスタイルに転換を果たしてきた株式会社エース。本社は東京・江東区の門前仲町と、創業の地である兵庫・伊丹の二本部体制。

 全国に店舗網を展開し、北海道から沖縄まで幅広いエリアをカバーしている。グループには卸機能を担う北野クリエーションと、保険および関連事業を担う北野ホールディングスを有する。現在、中核企業北野エースを率いるのは油山 哲也(あぶらやま てつや)代表取締役 社長執行役員。銀行、保険業界を経て22年11月に同社顧問として入社、23年に取締役に就任し、同年5月から代表取締役 社長執行役員を務める。油山社長に現状とこれからの北野エースについて聞いた。

 一般的なスーパーマーケットではあまり置いていないようなめずらしい商品を豊富に品揃えするグロサリー、日配を主力とした店のイメージが強い同社だが、売上としては年末商戦が圧倒的に強いと油山社長は強調する。

 「当社は圧倒的に年末が強く、そして忙しいですね。正月のおせち料理等々の食材をお求めに来ていただくお客さまが圧倒的に多いものですから、そこの売上で大きく年間の数字も変わります。お正月商戦だけで平常月を圧倒的に上回ります。圧倒的に当社の場合、おせちのかまぼこ、栗きんとんといったものが盛り上がりますね。

 多くの方が12月下旬には仕事納めを迎えられて年末の27日、28日には北野エースで買いそろえることを年中行事にしていただいているお客さまもいらっしゃいますので、そこの期待は裏切らないようにしないといけないですね。

 もともと当社は60歳前後のお客さまが多いですが、年末に20代の方々が1つ5000円ほどする紅白のかまぼこを買っていく、といった光景があったりします。彼らが『おばあちゃんから正月のかまぼこだけはいいものを食べるように言われた』といった話をしているのを聞くと、『まだまだ日本はこういう風習が残っているんだな』と、ちょっとうれしくなりますね。

 一方で、そこは武器ではあるけれども、もう少し平準化というか、それ以外の季節のイベント、売りを作ろうよということも社内では言っています。通常月は、年間を通じてのレトルトのカレー、最近はふりかけやドレッシング、常温のお菓子類が売れますね」

 客層の中心はどの年齢層になるのか。

 「圧倒的に50代ですかね。よく比較される会社として成城石井、明治屋、紀ノ國屋、もうちょっと広げると(キャメル珈琲の)カルディコーヒーファームがありますけれども、カルディコーヒーファームと比べると20歳ぐらい年齢が違います。ありがたいことに『高品質の食品を取り扱っている』とおっしゃっていただけますけれども、輸入商品の比率は本当に低くて、基本的には国内の良いものを、というコンセプトでやっています」

 後述する多アイテムのカレーを品揃えする名物売場の「カレーなる本棚®」が話題になるなど、若年層のイメージが強いこともあってやや意外ではある。もともと、同社自体、ビジネスの形を大きく変化させてきた経緯を持つ。

 「もともと発祥は関西の(兵庫県)伊丹で、商店街の関西スーパーマーケットの向かいに本店がありました。スーパーマーケットに業態変更しながら営業していましたが、競合店として大型のGMSが出店するようになり、『何か違うことを始めなければ』ということで、社員数人を東京の某社に派遣して勉強したりしながら、2000年ごろにいまの形として始めました。

 02年に関東に進出してからはかなり早い時期に東武百貨店の船橋店(千葉県船橋市)にお声がけいただきました(03年オープン)。百貨店も、もともと食品を自社でフルに展開していたものを、外出し(外部委託)できるところを探していたと思います。そこにわが社がフィットして、そこからいわゆるデパ地下の外出しという形で広がっていったところがあります。時代の流れと当社がマッチしたと思います」

 現在の標準的な売場はどのようなものだろうか。

 「百貨店だと60坪~100坪の間です。駅ビルはもう少し狭いところもあります。SKUは百貨店の標準的なお店で5000前後です。日配があるかないかで変わってきます」

百貨店内の店舗を維持しつつ、百貨店以外の成功モデルを模索

 現状、北は北海道から南は沖縄まで全国113店の店舗網を築くナショナルチェーンになっている。出店の考え方はどのようなものになるか。

 「中期経営計画を立てる中でも、例えば『よし、これを5年後に200に持っていくぞ』といった議論にはなっていないです。百貨店が出店のメインになっている中、特に地方は百貨店が減っていることもあります。

 それで駅ビル、ショッピングセンターに出店していくということになりますが、ただ、いまは百貨店のお店とかなり似たようなお店なんです。そこをもう少し差別化して、シャープな違いを表現できるようになったら、店を増やすというのもありかなと、みんなとは話しています。いまは数を維持しながら、お話いただいて、個別に採算を見て良ければ出店するという感じでやっています。

 新しい再開発拠点でもお声がかかりますけれども、いま現在は、百貨店以外のスタイルがまだ1つに集約しておらず、いろんなパターンがある状態です。逆に言えば、そこの成功モデルを早く築きたいということがあります」

 出店場所は不動産費が高い立地が中心になっているが、さらに昨今は業界として経費が高騰している。粗利、経費の状況はどうなっているのか。

 現状の粗利率はおおよそ一定の水準を維持しております。その中で販管費(販売費および一般管理費)をどの程度コントロールできるかが重要な課題ですが、売上の拡大に伴いながらも、比率としては販管費が徐々に上昇している状況です。当社においては、全体規模の中で一定割合を販管費が占めており、その内訳としては人件費や家賃、光熱費、物流費など、複数のコスト要因が上昇傾向にあります。

 幹部陣にはいまは『売上アップを目指そうではなく、利益をしっかり取りましょう』と話しています。私は銀行員だったものですから、決算書を見るのは得意です。銀行員というのはお金を貸す方ですから、どうリスクを軽減するかという中で、売上が伸びるだけで良いわけでなく、やはり利益なんです。

 銀行の審査部的には本業がどれだけ稼いでいるかを見る『営業利益』です。営業利益は人件費も引いた後ですから、『そこでしっかり利益を出しましょう。それには従業員の給料もアップした上で、営業利益をしっかり出そうよ』ということです。

 その上で最終利益は、家計で言えば最後の貯金みたいなものだから、何かあったときの蓄えや、大勝負のときのために幾ら残せるかということで計画を組もうと話しています。

 以前、銀行員としてはいかに販管費を下げるかということで、『販管費率をもう少し下げた方が良いのではないでしょうか』と偉そうに話していましたが、実際に(事業会社に)来てみると、例えば家賃もそう簡単に交渉で下げられるものでもないし、物流費も世の中的に上がっていますし、(目下、円安傾向の)為替の問題もあります。

 また、経営サイドから言えば、人件費はプラスにしなければいけない。もちろん、全体としては下げられるのであれば下げた方が良いけれど、1人当たりは増やそうと言っています。そのため、同じ業務であっても、より少ない人数で対応できる体制を整え、生産性を高めていく取り組みを進めています。

 実は私が入る前にすでにそれに向けて基幹システムを刷新していました。バックヤードの仕事を減らし、人時を減らす、あるいは手が空いた分は店頭に出て接客しようということです。自動発注なども含めて、そこでの効果は出てきています。在庫管理もかなり手作業でやっていた部分を機械に置き換えています。教科書的な部分ですが、効率化で同じ仕事をするときの人時を減らして、みんなの一人当たりの分け前を増やすということです」

 人時という意味では、レジについては小売業界としてもかなり風景が変わってきている。つまり、セルフレジの構成比が急速に上がっている。

 「当社にとっては永遠の課題です。約110店舗ありまして、そのうち約半数がサテライト(衛星店)も含めて百貨店内の店舗です。百貨店の場合、基本的にレジは百貨店の共通レジです。デパ地下で買物するとき、かごを取って、お肉、野菜を(各テナントで)買って、調味料を北野エースで買って最後に精算するのは百貨店のレジなんです。北野エースはレジの手数料を払っている形です。

 駅ビル、ショッピングセンターは、半数くらいは自社(テナント)でやってください、といった形で、さらに自社レジの中でも社員がやるケースと、委託に出しているケースとで半々くらいになっています」

 最終的に、セルフレジに対してはどのようなスタンスを取るのか。

 「(油山社長が就任した)23年から、中期のビジョンとして100年先まで成長する会社を続けましょうということを一番上に立てていますが、直近でも創業から60年経つ中においても、いろいろ変わってきています。

 青果店からスタートし、スーパーマーケットを経て、2000年ごろから現在の業態へと進化してきた経緯があり、そういう意味では大きく変わっています。そのため、レジに関しても共通レジがなくなっていく可能性もあります。そうなってくると、セルフレジについても考えないといけないと思います。

 現時点で明確な方針が定まっているわけではありませんが、10年、20年といった中長期の視点で見れば、取り組みを進めていく必要があると考えています。将来を見据えた対応は不可欠だと思っています」

これまでも時代に応じてフォーマットを転換してきた。今後も時代の変化に応じてレジも含め、総合的にスタイルを模索していく

「カレーなる本棚®」は狭い売場で商品の豊富さを伝えるために生まれた

 特徴あるフォーマットにとって商品調達は何より重要な機能となる。北野エースにはグループ企業に卸売業を展開する北野クリエーションがある。北野エース本体との役割分担はどのような形になっているのか。

 「もともと北野クリエーションは、グループの中の卸ということでスタートしたんですけれども、まだまだ比率的には、当社の場合、他社(卸)経由が圧倒的に多いです。その中で、プライベートブランド、あるいはメーカーと協議をしながらやる(留め型)分野においては、北野クリエーションの方で、ということです。

 ただ、いまは北野エースのバイヤーと北野クリエーションの商品担当が、いっしょに協働しながら商品を調達するようになっています。北野クリエーションの担当が仕入れにかかわっているケースもあります。そういう意味では北野クリエーションの位置付けが変わってきていまして、グループの中では期待の存在になっていますね。

 卸という位置付けにしていますが、いま言っているのは『北野エースがやっている小売以外のところで、幅広く北野クリエーションで取り組もう』ということです。例えば、広い意味で卸ということになるのかもしれませんが、北野エースの商品の棚を作って、他の店で展開してもらうといったものもあります。

 例えば、代表的なものにあるコンビニとの取り組みがあります。そこの店主が当社の製品をすごく気に入っていただいていまして、24年から棚に当社の製品を置かせていただいています。さらに、それがどんどん拡大していまして、非常に良い感じです。

 実際には商品を置いていただくことにはリスクがあります。乱雑に置かれるとかえってイメージダウンになったりもするのですが、そこは本当に良い形で置いていただいています。もともとそのコンビニは酒屋さんだったと思うのですが、日本酒の種類がものすごくて、わざわざそこに買いに来る人が行列を作るほどです。だから、『日本酒に合うおつまみ』というイメージで、すごく良いコラボレーションになっていると思っています。

 そういう新しい切り口へのチャレンジを北野クリエーションでどんどん広げてやっていこうということでチャレンジしています」

 そうなると、独自の世界観の主軸の部分は北野エースのバイヤーが主に担っていることになる。

 「いまバイヤーはそれぞれの食品の分野ごと、かつ東西でそれぞれに担当者がいる形です。バイヤーには商品の発掘の業務もあるのですが、店舗のサポート的なミッションもあります。売場づくりにはバイヤーの意向も反映させるということで、すごく力を入れていますので、新店、改装オープンになるとバイヤーが結構動きます」

 北野エースの売場で一際目を引くのが、レトルトカレーを書店の本棚のように並べた「カレーなる本棚®」の売場だ。

 「始まったのは、東武池袋店(東京都豊島区) のオープンのとき(09年)です。同店では限られた場所に多くのカレーを展開しないといけないという状況にありまして、『狭い売場でどういうふうに数の多さを見せようか』ということで、本部で話し合いを重ねていました。

 それで、あるスタッフが休日に書店に寄ったときに『書店のようにカレーを並べたらどうだろう』と発案し、会議の場で提案しました。当時はカレーの『背表紙』(箱の横の文字)はなかったのですが、北野エースで書店のように展開したことを受け、メーカーも、自分のところのカレーも入れてほしいということもあって、背表紙で商品名を縦読みできるように、レイアウトやデザインを変更するということも広がっていきました。

 実際に『カレーなる本棚®』の名称が初めて付いたのはその後の10年オープンの調布パルコ店(東京都調布市)です(その後、12年に『カレーなる本棚®』を商標登録、13年に(食品における)『ブック陳列®』を商標登録、18年に『カレーの壁®』を商標登録)。だからスタートは09年ですね。一昨年の24年は15周年でした」

 「カレーなる本棚®」は業界に大きなインパクトを与え、中には同様の陳列法の売場を展開する企業も多く現れた。1つの「売場の型」を作ったと言ってよく、これはまさに多様なメーカーの商品を取り扱う小売業だからこそできる「編集力」の賜物といえる。

 「いわゆるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などに載せるために、『ここから撮れば良いですよ』というマークを付けたりしています(笑)。また、いまは広報で(社内の)ガイドラインを作ってもいます。正面に見せるカレーとブック陳列(縦陳列)するカレーとで割合を決めて、全体の何パーセント以上それがないと『カレーなる本棚®』とは呼ばない、というガイドラインを定めています。それに満たない場合は普通の『カレーコーナー』ということにしています。売場が小さくて、どうしてもカレーのアイテムが少ない場合は『カレーなる本棚®』とは呼ばないということですね」

 まさに「売場のブランド化」である。

 「店頭で買物に行って、話しかけられることなく静かに見たいというときもある一方で、本当は声をかけてほしいけれども、ちょっと気遣って(従業員に声をかけられない)というときもある。その点、『カレーなる本棚®』だったり、店頭の新しい季節ものなどをこちらから意思表示することによって、お客さまが店のスタッフに声をかけやすいような雰囲気を作り出す、という効果があるのかなと思います。

 実際に『カレーなる本棚®』をつくったからといって、カレーが毎日何百個、売れているわけではないんですが、北野エースの象徴的なイメージと、店頭でちょっとお客さまがスタッフに声をかけやすい状況づくりということでは、非常に効果が出ているかなと思っています」

 もちろん、売場をブランド化することで、実際にそれに付随したさまざまな動きが起こることで認知度など広がりを生む効果は大きい。

 「おかげさまで歌舞伎俳優の尾上右近さんがカレー好きということで『カレーなる本棚®』公式アンバサダーになっていただいています。社内には『カレー部』もありまして、お店のスタッフからもメンバーも募り、本部のスタッフを含め、定期的にメンバーで集まっています。工場に見学に行ったり、取引先、メーカーを通じて入る情報を基に、コラボ企画を進めたりもしています」

 コーナーとして、アイテム数の多さが武器になるが、どのぐらいの品揃えなのだろうか。

 「一番多いところで350ぐらいですが、350までは、なかなか普通のお店ではそろえられないので、標準的なところで170くらいです」

 すっかり北野エースの名物売場となった「カレーなる本棚®」だが、同社ではすでに第2弾の売場を育成中だ。

 「『ふりかけの壁®』を新しいコンテンツとして24年から作り出していて、25年には『ふりかけの壁®』と『ふりかけの世界®』を商標登録しました。ガイドラインもでき、メディアの取材も多くなっています。

 ふりかけは手軽で、価格もそこまで張らず、お子さまのおやつやお料理にもアレンジしやすいということで、メディアからは問い合わせがすごく多いですね。意外とラー油系の辛いふりかけがインバウンドのお客さまに好まれていて、リピーターの方が結構気に入ってくださっているようです」

北野エースの名物売場といえる「カレーなる本棚®」は業界に新しい風を吹き込んだ。さまざまな商品を1つの売場として編集する、まさに小売業ならではの取り組みだ

目指すのは消費者の「幸せ時間」のお手伝い

 グロサリー、日配の存在感が大きい北野エースだが、一部の店舗では惣菜も品揃えしている。即食需要が高まる中、惣菜の取り組みについてはどうか。

 「社内の議論でも、やはり惣菜を強化しないといけないという意見が多かったです。なぜならば、家族構成についてもともと弊社の場合、平均4人ぐらいを想定していたのですが、特に都内などは1人世帯が過半数ということになると、北野エースで食材、調味料を買って料理をする人はどんどん減る一方で、買ってすぐ食べられる方向に行っているので、惣菜をやるべきだと。

 ただ、考え方としてはそうですが、百貨店に行くと北野エースの横に、お肉、野菜などがあって、その横においしそうな惣菜屋さんがあるわけです。そこにあえて参入するという意味があるかというところでいま、議論をしています。

 そもそも厨房がある店がほとんどなくて、25年11月7日にリニューアルオープンしたJR大宮駅中のfoods stage KITANO foreエキュート大宮店(さいたま市大宮区)は、本当にわずかですけれども、フライヤーなどを置いて調理できるところがあります。そこで何か特色のあるものをちょっとやってみようかと考えました。改装前は焼き鳥、唐揚げを出していましたが、今度は「八雲コロッケ」や店内で炊き上げたキノコご飯を使った弁当などを展開しています。

 店内で製造するのはこの店だけです。ですから、(アウトパックで仕入れる形で)われわれの設計で作っていただける業者が近くにないといけないですし、それを見つけられるかですね。だから、グロサリー、日配でしっかりと足場を固めながら、新しいチャレンジをしていきます。

 試行的に展開しているものに『伊丹ベイクショップ』のブランドで展開しているラスクがあります。こちらは伊丹の空きスペースを使って自社グループで作っています。そこでパンを焼いて、ラスクにして店舗に納品しています。このように自社グループの施設で製造する取り組みも始めています。

 23年から始めましたが、最初は『パンをやろう』という話もありました。ただ、食パンは過当競争になっている上、賞味期限も短い。だから、それをラスクにすると賞味期限が結構長く設定できるという、現場の知恵で作り出したものです。専門家がたくさんいるわけでもないので、ラスクをやって、もしそこからいろんなものが広げられるのであればと思っています。

 いま中心になっているグロサリー、日配などの安定基盤を急に全部取り換えようという気持ちはありません。そこはしっかりやりながら、百貨店の数が減っていく分ぐらいは新しいことをやっていかないとと思っています」

 自社、他社さまざまなところから調達した商品を売場にアソートする編集力は小売業ならではの強みといえる。商品開発においてもその強みは発揮される。

 「やはり、100店(以上の店)というのは、中小のメーカーからは非常に期待していただける部分です。例えば、小規模で、安く地元で売っているものを、われわれが全国にもう少し適正な価格で売るということになれば、他の地域のお客さまからみればそれでも安いということでみなさんにとって良いことだと思うんです。だからそういう商品を探そうよと言っています。

 プライベートブランドも開発していまして、『キタノセレクション(KS)』のブランドであごだしなど650アイテムぐらい展開しています。売上高構成比は十数%で、これはまだまだですね」

 フォーマットづくりに磨きがかかる同社だが、油山社長は北野エースが目指すのは「『幸せ時間』のお手伝い」であるとする。その意図するものは。

 「お客さまの『幸せ時間』をお手伝いしましょうというのは、店頭であればお客さまがお買物をする、その買物をしている時間自体を楽しんでもらえるようになれたら良いなということです。リアル店舗が生き残るためには、買物自体が『楽しい』お店にならないと。通販で買った方が早いし、楽だし、ということになってしまいます」

 さらに、その「楽しさ」は買物だけにとどまらず、北野エースが取り扱う「食品」そのものについても重要な役割を担うとする。

 「食品はやはり、絶対なくならない分野であり、食事は『楽しい』ものであるべきだと思うんですね。それが外食であり、内食であり、最近は中食も含めていろいろある中で、いま、当社は家での食事の部分、一部中食はありますけれども、分野にかかわらず『楽しい食事』をサポートする仕事ですよ、と若手社員には話しています」

 一方で、その「楽しい」食事をサポートする小売業自体は変革の時代にある。

 「たった20年前にさかのぼってみても、食事のスタイルは全く変わっています。これからもいろんな変化があると思うので、変化を恐れない人であれば、すごくチャレンジのできる仕事ではないかなと思っています。特に当社の若手社員には海外の可能性も説いていますし、垣根もどんどん低くなっていくと思います。業界はまだまだいっぱい変化すると思います。凝り固まらずに何でもやろうと思えばできますよということです。

 小売りは生産者と消費者をつなぐ役割だと思っていますが、生産者と消費者のうちのどちら寄りなのかで見え方が違います。その意味では、当社は生産者が売りたいものをお客さまに紹介するのではなく、消費者が欲しいものを生産者に情報として伝えられる立場に立てたら良いなと思っています。

 実は私は銀行のあと数年間、保険会社にいたのですが、保険の世界では皆さん保険の契約をするのは大体『代理店』だと思うのですが、海外には『ブローカー』という職種があります。これはお客さま側に付いて仲介する役割で、保険会社の側に付く代理店とは違うものです。だから『食のブローカー』ではないですけれども、お客さまサイドに立った仕事というものが、当社の今後の仕事の中にあるのかなと思いますね」

 店舗を持つ小売業として特徴あるフォーマットをつくり上げ、売場のブランド化を果たし、さらに時代の変化に合わせてその形も変えていくとする同社。消費者の立場に立って数ある商品を調達し、売場として編集し、提案するのは、まさに油山社長のいう保険会社の「ブローカー」と軌を一にするものといえる。

 消費者の「幸せ時間」を手伝うために、「食のブローカーたれ」という油山社長の経営方針には、あくまで「小売業ならでは」の発想が息づいている。

グループを挙げてフォーマットを強化し、消費者の「幸せ時間」を創造していく

お役立ち資料データ

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