セントラルスクエア恵比寿ガーデンプレイス店のミールソリューション「6つ」のポイント

2022.04.25

セントラルスクエア恵比寿ガーデンプレイス店の売場面積は1765㎡(535坪)、売上目標は42億円(2年目)である。1km圏内に単身世帯58.5%、2人世帯比率は22.5%と81%が2人以下である。

オフイスや恵比寿駅にも近いため昼食需要も望める立地だ。実際に買物をしながらレイアウト、品揃えの狙いを確認してみた

ミールソリューション的「6ポイント」

①ミールソリューションの考え方

2人以下の世帯81%、1km圏内に約9万人のオフィスワーカーが働く商圏であることから、昼食や夕食に対応するために即食系商品が強化されている。野菜、果物売場では壁面に沿ってカットフルーツ、カット野菜、生野菜サラダを強化。

鮮魚売場では売場にアイランド型の作業室を設け「うを鮨」のブランドで寿司、連続して隣に刺身を販売。精肉売場には黒毛和牛専門店「おがわ」のバイオーダーによる「ハンバーグ弁当」「黒毛和牛弁当」を販売。

惣菜はオープンキッチンで出来たてを提供。インストアベーカリー、ピザ、スイーツ、和洋生菓子の売場、品揃えを強化した。

生鮮食品、ドライの料理素材(レディトゥセレクト、RTS)より、下処理(レディトゥプリペアード、RTP)、ミールキット(レディトゥクック、RTC)、レンジアップ商品(レディトゥヒート、RHH)、即食商品(レディトゥイート、RTE)、出来たて(ジャストレディトゥイート、JRTE)を強化した店だ。

②「5温度帯」の品揃えを実現した

即食系商品ばかりに目が行くが、商品の保存温度をよく見ると、「お客のTPOS(タイム、プレース、オケージョン、ライフスタイル)に合わせた5温度帯の品揃え」ができている。

「ホット」「常温」「冷蔵」「冷凍」、それに「水温」だ。鮮魚の水槽は高級魚の品揃えができ、死なない限りロスは出ない。バイオーダーによる料理の提供も同様である。ドライ食品、ロングライフチルド、冷凍食品は保存が効くため品揃えの幅を広げられる。さらに外食レベルの高額食材を扱うには廃棄ロスの少ない冷凍が向いている。

③プライスゾーンを広げた「松竹梅+寿」の品揃え

同店では松竹梅の品揃えに「寿」を加えたという。一般的なスーパーマーケット(SM)はプライスゾーンを絞り込み、買いやすい価格の商品を提供しているが、この店は意識的にプライスゾーンを広げた。各箇所にレストラン価格の商品が並んでいる。外食、内食、中食がボーダレスになってきているため、答えをお客に聞く点においては正解であると思う。さらに、リアル店舗とEC(電子商取引)もボーダレスになっているためこれからは「商品力」が勝負になる。

④オープンキッチンで目の前で出来たてを提供

生鮮三品、惣菜、ベーカリーは作業所が見えるオープンキッチンとなっていて、手作り比率は相当高そうだ。コンセッショナリーのバイオーダーのステーキ弁当などはまるでレストランや専門店のようだ。

⑤新しくめずらしい商品はロングライフチルド、冷凍商品を品揃え

生鮮の冷蔵品売場、冷凍食品売場の品揃えは必見。カフェなどに使われている個包装の業務用商品が品揃えされている。小売りと外食のボーダレスが進んだことから、SMでもレストランクラスの商品の品揃えが増えてきている

⑥ドライ食品縮小、菓子は売場を維持

ビオラルを含めて600坪以下の売場面積であるため品揃えには限界がある。「素材」より「即食」を強化した店あるため乾物、調味料などのドライグロサリーの売場は縮小された。

一方で、菓子売場は世界の菓子などの売場を確保している。「カットフルーツ」「フルーツデザート」「和菓子」「飲料」「パン」「アイス」など、「甘い物」の品揃えは逆に拡大されているように見える。いまSMで伸びているカテゴリーは「惣菜」と「菓子」だ。

青果売場は野菜売場より果物売場の比率が高く見える
店の上にある数種類のケーキ
中程度の精度で自動的に生成された説明
インストア製造のカットフルーツ、カット野菜は大中小のきめ細かい品揃えがされている
食用花をトッピングした鮮度のよいインストア製造の野菜サラダ
黒トリュフは3980円(本体価格、以下同)で販売。トリュフの品揃えは店の格が上がる
和日配売場。アイランドケースだが棚板を4枚入れることで豊富な品揃えを可能にした
「ずっとおいしい豆腐」(149円)。冷蔵売場で販売されていたが、常温保存可能のロングライフ豆腐。賞味期限は7月23日(4月15日購入)。ストック用として豆腐や牛乳、食パンなど「日配の8白」のロングライフ化も必要だ
「焼くだけ簡単 甘味噌漬け油揚げ」(198円)。賞味期限5月11日(4月15日購入)。油揚げに味付けした下処理済み商品。フライパンで焼くだけで料理が1品追加できる
カウンターに乗ったパンフレットの束
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「いぶりがっこスモークチーズ」(2枚198円)。ケース最下段では秋田いぶりがっこスモークチーズを大陳。賞味期限7月7日のロングライフ。チーズと組み合わせることで漬物がビールやワインのつまみになる
店の棚に陳列されている
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肉の万世のハンバーグ、ビーフシチュー。外食の料理がSMでも買えるようになった
「大豆ミートのメンチカツ」(398円)。賞味期限5月11日(4月15日購入)。ロングライフのプラントベースメンチカツ。電子レンジで加熱するだけ
屋内, 異なる, いっぱい, 座る が含まれている画像
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ドライ食品の缶入りのおでんだが練り製品コーナーで販売。部門を超え1カ所にまとめた
屋内, 食品, テーブル, カウンター が含まれている画像
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鮮魚コーナーの水槽。鮮魚売場の鮮度感が一気に高まった
屋内, テーブル, 表示, 男 が含まれている画像
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ガラス張りの独立した作業場で寿司と刺身を製造。手元まで見えるようになっている
生たね、大たねが売りの握り寿司売場。SMの寿司の価格を超え、寿司専門店のような品揃えだ
「うを鮨」の「生本まぐろ大ねた入 うを鮨(つばさ)」(1580円)。本マグロ中とろ2カン、赤身、マダイ、サーモン、生エビ、ブリの大たね7カンの握り寿司盛り合わせ。たねの色、鮮度を優先しているため販売温度は低め
屋内, 食品, 人, テーブル が含まれている画像
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握り寿司を客動線の頭に、続いて刺身を販売。切り身魚は壁面に、即食系はアイランドケースにレイアウトした
プラスチックの容器に分けられた食べ物
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鮮魚部門の冷凍ミールキット。ミールキットはチルドと冷凍の2温度帯で品揃え
カウンターに乗ったパンフレットの束
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精肉売場前の平ケースは、右に冷蔵、左に冷凍。エンド部分にはチルドの馬刺し、ローストビーフを品揃え
冷凍焼き鳥売場。冷凍の国産焼き鳥10本を598円で販売。冷蔵売場より陳列量が多く迫力がある
店の陳列棚の中にある缶飲料
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「鎌倉煮」(鎌倉ハム富岡商会)。煮込みハンバーグなどの真空パックを常温売場で販売。技術の進歩で冷蔵しなくても常温で販売できるようになった
黒毛和牛弁当「おがわ」。バイオーダーによる弁当。税込み1800円のハンバーグ弁当から同7000円の最高級ステーキ御膳といった高価格帯の展開
店の天井からぶら下がっているカウンター
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強化した惣菜の弁当売場。巾着袋に入った高級弁当なども前面で訴求
巾着袋入りの1つ。「鰻まぶし飯の二段御膳」(1380円)。巾着袋の中に2段弁当が入っている。巾着のひももしっかりと結ばれている。惣菜センターと店内製造のアッセンブリーで完成度の高い商品ができている 
常温平ケースの弁当売場。手前は店内製造の「アジアン」メニュー
店のカウンターに置いている様々なドーナツ
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「アジアン」コーナーで展開していた「キンパ巻&ヤンニョムチキン」(798円)。キンパ、ヤンニョムチキン、チヂミ、チーズドッグを盛り合わせた韓国メニューの弁当
純和赤鶏(岩手県産)の焼き鳥。インストアで焼いた焼き鳥はガラスケースでばら売りとパック詰めで販売
「純和赤鶏焼き鳥とだし巻玉子焼き弁当」(980円)。店内製造の焼き鳥と卵焼きを盛り合わせた重
レストランの厨房
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ロティサリーチキンは回転式のグリラーで焼き上げているのがガラス越しに見える
店のガラスに貼ってある数種類の食べ物
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丸、ハーフ、レッグを販売
屋内, 食品, テーブル, 表示 が含まれている画像
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惣菜部門のチルド売場
フルーツビネガー使用のフルーツ(798円)。薄皮をむいたグレープフルーツやパイナップルをビネガーに漬けたもの
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牛乳、飲料売場はハイゴンドラを使い3段目まで1ℓタイプを陳列
冷凍食品売場は他にはない商品をよく集めた
屋内, 窓, 座る, 食品 が含まれている画像
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阪急デリカアイ、オイシックス・ラ・大地のビーガンレディミールも品揃え
グラフィカル ユーザー インターフェイス, Web サイト
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冷凍では世界のグルメを展開。家庭ではできないレストランの味付け
冷凍ペットフード売場。日本でも冷凍ペットフードが登場している

「コロナはイノベーションを早めた」。世界最大級の食品見本市のアヌーガを主催するケルンメッセのチーフ・オペレーティング・オフィサー(COO)、オリバー・フレーゼ氏の言葉だ。

コロナにより、内食、中食、外食の壁が崩れた。さらにECの普及で、どこでも料理が注文でき自宅や会社、行楽地でも食べられるようになった。SMでもレストランクラスの料理を提供しなければEC市場を外食に取られてしまう可能性がある。

その点、「寿」の品揃えは、それに対する回答の1つであるようだ。

お役立ち資料データ

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