ザ・トップマネジメント 令和4年新春特別編 ヨークベニマル 大髙善興会長

2022.04.12

2022.01.10

「コロナ特需が終息する中、生き残りを懸けた競争時代に、開発中の都市型300坪型を磨き込み、ドミナンス強化で生き残る」

ヨークベニマル大髙善興会長

——2021年を振り返ると。

大髙 20年の2月からコロナ特需でマーケットが大きく変化した。その中で、スーパーマーケット(SM)は非常に恵まれた業態だった。

ただ、21年10月から緊急事態宣言が解除され、10月はそうでもなかったが、11月は(20年春の特需の影響が大きかった21年4~6月を除いて)久しぶりに(既存店売上高が)前年比割れになった。11月に入ってからかなり外食、あるいは大型店など(にお客が戻ることで)いろんな意味でSMのコロナ特需が終息を打った。

11月は19年対比では上回っているので、まずまず。それでも、久しぶりにトレンドとしては厳しい状況になってきたと感じている。

一方では原料の高騰、円安が進んでいるため、これから値上げにどう対応していくかは大きな課題となる。日本の場合は、各業態が生き残りを懸けてがまんしている。各企業が努力でもって吸収しているところがある。だから、これから本当に大変な時代が来るのではないか。

SMにとっても、21年は何とかなったが、22年以降は、本当に、「成長」というより「生き残り」を懸けた競争時代が来る。いろんな意味での再編などもあるのかなと思っている。

SMは、この2年間は恵まれた業態だったが、これからが大変だなというのが、振り返って思うことだ。

——大変になる22年以降、どうしていくか。

大髙 企業はやはり、常にマーケットに対して挑戦していかなければだめ。多少失敗もあるかもしれないが、こういう時代だからこそ、むしろマーケットに対して新しい提案をして、マーケットをクリエイトする。

私が長年見てきた中で思うのは、順調なときはあまりイノベーションがないということだ。むしろ、今回のようなパンデミック、世界的な大流行の危機の中、お客さまの価値観、あるいは生活行動が大きく変わってきているので、逆にこういうときほど、イノベーション、技術革新が起きるチャンスだと思って取り組む。

ピンチをチャンスにして、こういうときほど、思い切って挑戦しようということで準備をしているところだ。

ただ、それ以前の問題として、会社の中にいっぱい課題がある。異常値、むだ、むらをいっぱい抱えている。ヨークベニマルはそういう点では、まだまだできていない。やることはいっぱいあるので、そんなに心配しないで挑戦しようという思いだ。

常に地域のお客さまの食卓を楽しく、豊かに、便利にしていく。そういう「パーパス」、目的を持って、社員がそういう理念を持って、本当に行動してくれているのか。会社が大きくなって、みんながだんだんそれを忘れて、できなくなっているのではないか。

もう1回、初心に帰って、創業元年のつもりで、次の100年に向けて挑戦していこうと。

社内を見ると課題はいっぱいある。店のデータを見ると、良いところと悪いところがいっぱいある。「いっぱいむだがあるから、これからだ」と思って、前向きに、地道に、こつこつやっていく。嘆かないで、失敗することもあるけれども、とにかく挑戦していく。次の100年に向けて、第2の創業ぐらいのつもりでやっていこうと。

いつも申し上げるが、会社がだめになっていくのは何かというと、外部ではない。最終的には内部の人たちが、常に危機感、緊張感を持って、やはりパーパス。「こんな会社にしたい」「なんのために働くのか」、1人1人が心の成長、技術、マネジメントのレベルを上げた分だけ、結果、お客さまが良い買物ができる。

新本社も、立派なものができた。教育とコミュニケーションということで、人材育成をして次の100年に向けて、仕事をしていく。

やはり、「基本の徹底と変化への対応」、そして「単品管理」。みんな「知っている」ことだ。しかし、誰もが「知らない」(徹底できない)。

デジタル化はあくまで手段。小売業はマインドが大事だ。「幾つ売ってみよう」という思いがあると5倍、10倍売れてしまうものだ。「立てた目標は必ず達成するんだ」という思いと、「こんな店にしたい」という思い、そしてパーパス。

良い組織風土ができることが小売業にとって大事になる。しかし、なかなかできない。できないからおもしろい。そう思ってやっている。

300坪型の最大の課題は人件費、組織から見直す必要性

——18年11月から都市部をターゲットにした300坪型の開発に着手している。21年12月3日にも300坪型の仙台小松島店(仙台市青葉区)をオープンした。

大髙 私どもの平均では歩いて10分、車で5分のマーケットのシェアはせいぜい20~25%。80%のマーケットは空いているわけで、その顧客に対して、新しいマーチャンダイジング、オペレーションと投資構造で、どれだけフォーマットを進化させられるかが勝負になる。

フォーマットということでは、どちらかと言うとわれわれは郊外型の600坪型の店を中心に、大型では800坪型を展開してきた。それに加えて、いま、住宅地の中で、300坪で顧客満足ができるようなフォーマットに挑戦している。

1号店は大和町店(仙台市若林区)、2号店は宇都宮の街の中に今泉店(栃木県宇都宮市)、仙台小松島店は3号店だが、1店舗1店舗をやりながらフォーマットを進化させて、次の成長に役立つ店にしていく。1号店、2号店とも決して成功しているとは言えないが、これからだと思って挑戦しているのが現状だ。

仙台などが特にそうだが、地方において人口30万人以上の街の中のシェアは、あまり取れていない。家賃の高い都市部の中で収益を出していくにはどうするか。いまテストを重ねているというわけだ。

21年12月に仙台市内に売場面積999㎡(302坪)の仙台小松島店をオープンした。都市型攻略フォーマットとして改善を重ねている。第1主通路を広く取り、青果と惣菜を持ってくるレイアウトを採用している

お客さまに認知していただいて、良い買物体験をしていただいて、まさにロイヤルカスタマー、お得意さまをどう創造していくかという点では、まだまだ顧客から支持されていないと思っている。限定商圏の中の顧客満足度、商品、サービスがまだまだ顧客満足ができるようなフォーマットになっていない。

ただ、それでも1号店の大和町店は、オープンから3年目でさらにリニューアルしながら2桁近い成長をしている。

——300坪型の課題は。

大髙 一番の問題は人件費。大型店の組織と仕組みでやるのは難しい。本来、小型店は1人何役といった形でやらないといけないが、われわれは魚担当ならずっと魚担当といった形で、縦割りで育ってきているのでなかなか難しい。

大和町店では鮮魚のマネジャーが副店長を兼ねるといったことをやりながら工夫しているが、本来は最初からキャリアプランなどを含めて、例えば10年で魚、肉、野菜を経験するような組織の下、計画的にやっていくといったことが望ましいのだろう。

フォーマットは、「ぱっ」とできるわけではない。やはり地道にこつこつやっていくものだ。課題をいっぱい持っているので、みんなで知恵を出しながらやっていく。5年ぐらいの中でフォーマットの見とおしを付けたい。

——特に人件費が課題ということだが、他社のように精肉などをセンター供給にするという選択肢は。

大髙 考え方の中では、センター供給にしたとしても、お客さまにとって価値が落ちないものは集中してセンター化しても良いとは思っている。ただ、やはり生鮮食品は「愛情」がないとだめだという思いがある。

シミュレーション上、合理化するにはセンターにした方が良い。ところが、不思議なことに現場の売る人と商品を作る人が分離すると、雨が降ろうと、嵐が吹こうと発注量がだんだん一定になっていってしまう。

われわれはできるだけ、現場で、曜日別、時間帯別、個店別にやはりお客さまのニーズに合わせながら出来たて、作りたてを出していこうと考えている。

難しいということは分かっているが、あえてその難しい方を選ぶ。そのちょっとした差、「何となくあそこに行くと良いものがある」。これが大事だと考えている。

センターを造ると、家賃だとか電気料とか物流費など出てくる。どちらが良いのか。

最後は哲学ではないか。どういう会社にしたいのかという信念を持ってやっていく。われわれは「安さ」「安さ」ではなく、「価値を創造していく」。だから、ネットなどと戦っていくとき、同じ土俵で戦っていくのが良いのか。

だから、商売はやはり難しい。特にSMは当日仕入れで、当日売り切って帰るという生鮮食品の原則がある。だから難しい。

ドミナンスは、コスト構造を下げることと教育のために必要

——食品をフルラインでそろえるドラッグストアが存在感を増している。対ドラッグストアの戦い方は。

大髙 われわれはコンセプトを明確にする。限定商圏、歩いて10分以内のお客さまの日常の普段の暮らしを豊かに楽しくしていく。だから、「今晩のおかずは何にしよう」と言ったとき、ドラッグストアに負けないような価値を創造していく。品揃えを良くしていく。鮮度、味を良くしていく。価格もリーゾナブルで、常に新しさを提案していく。

「負けてたまるか」というぐらいの気持ちでイノベーションを起こしていかないといけない。まだまだこれからだ。それを実現するためにはやはり人材。SMはとにかく技術とマネジメントがなければ非常に難しい業態だ。

これまで60年間で200店舗以上をつくってきたが、やはりしっかりした理念、パーパスをしっかり持って、トップ自らが現場で働く人たちに「ご苦労さん」「ありがとう」という感謝の心を持って、やれる組織であること。それから技術とマネジメントがなければならない。そんな簡単にできる商売ではない。

生鮮食品、デリカテッセンをきちっとやることは、なかなか口で言うほどできるものではない。いま236店あるが、本当にできているのは2割ぐらい。2割ぐらいはまだまだ課題だらけ。だから成長できると考えて、取り組んでいる。

——今後の出店エリアはいまのドミナント内になるか。

大髙 そうだ。まだ領域を超えてということにはならない。SMはアメリカで見ても、リージョナルチェーンだけ。ナショナルチェーンで残ったところはない。やはり、ドメスティックな産業だ。

だから本部があり、そこでの物流、商品調達、工場がありということで、配送距離も、行って帰ってくることができる200km以内。その中でのドミナンスを作りながらコスト構造を下げ、人材を育成していく。エリアが広がると教育ができない。

コモディティ的で地域差がない商品は全国でできるかもしれないが、SMは違う。

まだまだ、栃木にしろ茨城にしろ、仙台だって、まだまだシェアは知れたものだ。まだまだ空いている。これからだ。

ただ、特に東北は大変であることは確か。人口減少で、首都圏とはマーケットが違う。だから真剣になってやって何とか従業員の生活を守らないといけない。

22年度は12店舗出店する予定だが、そのうち7店舗は新店、5店舗は古い店の建て替えになる。体力のあるうちにしっかりやる。それに加えて活性化もしていく。

やはり競争の最後は、そこで働く従業員の心と技術とマネジメントの総和。これが競争の最後の武器だ。特にSMは難しい産業だと思う。

ライフフーズの製造小売業としての組織はそのまま引き継ぐ

——3月1日に惣菜子会社のライフフーズを合併予定だ。いま同社の第4工場の計画があるが、どのような位置づけになるか。

大髙 まだ、いま構想を練っているところだ。第1工場が老朽化していることもあるが、これと併せ新しいやり方を考える。やはりSMは問屋マーチャンダイジングの時代から製造小売業にどこまで踏み込めるかが、大事な点だろうと思う。

どこまでいままでのライフフーズの工場を活用するか。それからヨークベニマルの集中と分散をどうするか。ヨークベニマルはインストアが多いので、一部センター化してもお店のレベルを落とさないで合理化できる部分について、いまプロジェクトをつくって進めている状況だ。

——組織的には、ヨークベニマルの小売業、ライフフーズの製造小売業の2本柱になるのか。

大髙 とりあえずは、ライフフーズの製造小売業としての組織をそのまま引き継ぐ。ただ、お店のマネジメントという面ではいままでテナントという扱いをしていた。統合することによって、製造小売業の組織はそのまま残しながら、むしろ販売面でヨークベニマルとライフフーズの一体化をしていく。

いままでは販売計画などでは、別会社的な組織になっていたが、今度は一体化していく。そういうメリットも一方で出てくるのではないかと思って、いま統合に向けて進めている。

製造小売業としてのライフフーズは、3月の統合後は販売面での連携を強化する方針

——店で使う原材料、資材を一本化するのか。

大髙 これからもライフフーズはライフフーズでやる。情報は共有化するが、やはり製造小売業で使う原材料と、ヨークベニマルで小売りで売る部分とは違う。野菜などは一部共通でやるが、ライフフーズは従来のとおり、製造部門は独立した形で今後も運営していく。

われわれとしては、(年商)5000億円を目標にしているので、この機会に統合をとおして、さらにライフフーズも良くなり、ヨークベニマルも良くなり、結果、お客さまにとってもプラスになるような統合に向けて、準備をしている。

5000億円は、5年以内ぐらいに実現しようと思っているが、毎年毎年、少しずつでも良いから年輪のように成長していければ良い。最後に残ることが大事だと思っている。

——セブン&アイグループのプライベートブランド「セブンプレミアム」の全体の売上高が上期、前年割れとなった。

大髙 われわれはこの2年間のコロナの中で、みんなゆでガエルになっていた。イノベーションが起きない中、マーケットがどんどん進化してきている。だから、われわれの目指す姿が達成できていない。一言で言えば、前年割れは、イノベーションが起きなかったから。

(07年のスタートから)15年目を迎えるが、初めて割った。その要因はどこにあるかと言えば、外部ではなく、われわれ自身にある。ラベルの貼り替えではなく、どれだけ新しい商品ができたか。質の追求が遅れている。

実際、リニューアルした商品、新しい価値のある商品は良く売れている。498円(本体価格、以下同)の冷凍のピザは山形県米沢の(取引先の)工場で作っているが、単品で20億円売る。工場は2回も増床し、新しく598円の商品も出した。

ナショナルブランドよりは価格帯は高いが、やはり味の良い、おいしい、食べたお客さまがリピーターになる、自分の家族にも買って帰りたい商品を作らないとだめ。やはりリピーターが鍵だ。

セブンゴールドの冷凍ピザは498円と598円の高めの単価だが、よく売れているという

価値を創造すればマーケットは無限にある。その中で、価格は、お客さまにとってリーゾナブルであるのか。その点では、本当に納得して買ってもらえるか、価値と価格のバランスがどうなのかという点はセブンプレミアムでは課題となっている。

——地域での商品開発については。

大髙 進めているところだ。例えば青森のリンゴを全部買い取って、良いものはそのまま販売し、残りは福島の工場でジュースに加工するといった形の開発をしている。

地場の産物をいっしょになって開発していくことは、これから非常に大きなマーケットだと思う。地域にいるスーパーバイザーはバイヤーを兼ねていて、まだまだだが、地域商品を一所懸命開発しようとしている。

われわれが目指すのは「地場」。アメリカと日本の最大の違いはそこ。アメリカは生鮮食品の生産基地が基本的に全国同じだ。

日本の場合は、レタスでもシーズンごとに変わっていく。案外、地元について知らないものだ。だから、いまできるだけ地域にあって、良い原料、設備のあるところと組んで商品を開発していこうとしている。県単位で、そういう考え方で地域ごとに生産者と組んで良いものを出して行こうと考えている。

青森のリンゴを使って開発したリンゴジュース

お役立ち資料データ

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