ザ・トップマネジメント バローグループの「現在」 バローホールディングス 小池孝幸社長

2023.08.08

2023.08.07

生鮮に強いデスティネーション・ストアの店を拡大しつつ、これからは多業態抱えるグループの強みにさらに磨き

――「中期3ヵ年経営計画」(2022年3月期~24年3月期)の最終年度の総括は。

小池 大きいところでは、「商品、顧客、社会を繋(つな)ぐというところに向けて」という中長期の話の中でやっているが、やはり商品のところでは、商品力を向上させるのは製造小売業を進化させることだろうなと思ってやってきている。顧客、社会をつなぐというところではDXを使って、情報連携していくところをやってきている。

大体のところはうまくいっている。この中計でやろうとしている「繋がっていこう」というところに関しては、具体的にもできてきているところは多いと思う。

ただ、中計というもの自体の考え方は、変えていかなければいけないだろうとも思っている。実際、今回のコロナで先の見通しができない中で作った数字にこだわるのではなく、大きい方向付けだとか、われわれがやらなくてはいけない目的を確認するために中計は使うのだが、その中の数字などは適時見直しをかけていく。変化に対応できる力を共有していかないといけないと思う。

数字はKPI(重要業績評価指標)としても定めるのだが、状況によって大きく変わるときにはそれに適した形で開示していく。そうでないと、社外に対しても、いままで言っていた数字に対しての進ちょくがどうかという話の中で、われわれも余分な説明が増えるし、その数字を達成する裏の目的、本当の目的がぶれ始めていくことにならないように。

今回のように変化の大きいとき、これからも変化は大きいだろうということで、長中期計画の作り方は、考え方を整理していく必要があると思う。

――「繋ぐ」というのは端的に言うと。

小池 社内と社外の両方ある。社外に関しても取引先という形もあれば、お客さまという形もある。ステークホルダーを両極で見ていくということになる。

社内に関しては、やはりグループは50の会社の集団であるわけだから、グループ経営の良さを生かすというところでは、もっともっと連携を密にしていくことが必要だろうし、「繋げていく」先に出てくるのは、つながった後にそれを集団としてどうやって機能的にフォーメーションを組んでいくのかといったパフォーマンスをどうやって上げていくのか、これが中計の次につながっていくポイントかなと思う。

――田代正美会長兼CEOは社長時代から長年にわたって「製造小売業」ということで、M&A(合併・買収)も含めて踏み込んできた。それがある程度完成してきて、「繋がり」といった段階に進んできているということか。

小池 製造小売りに関しては、もう一回、総括することが必要かなと思っている。やはり、バローの場合、「製造」というところよりも、「バリューチェーンの作り方」が強みだというところが見えてきた。

キラーコンテンツになるような、大ヒットするような商品を作り上げることにはもちろん、取り組むが、それだけに集中するのではなく、いろんな商品を、われわれの店舗のあるエリアに効率良く、いかに無駄のない形で届けるバリューチェーンを作り上げていくか。

これが他のベンダーが持っているナショナルブランドを扱うときもそうだろうし、産地の商品を持っていくときもそうだろうし、われわれの地域に一番近づいていく、そういう製造小売業だ。

正しく言うと、「製造小売業」という前に「流通業」という言葉をわれわれは使っていたが、「地域流通業」というか、そういう言葉が近いのかなということも考えている。

――製造小売業というと、どうしても、プライベートブランド(PB)というイメージになるが、それだけではないと。

小池 そう。PBを届けるまでのバリューチェーンの作り方にこそ、強みが生きるということ。作った商品と売場をつなげるところ。商品の価格がどんどん上がっていったり、コストが上がっていくというが、実際には商品の原料コストよりも間接コストの方が比率としては非常に高い。間接コストこそが、われわれが合理的にする部分だろうなと。

原料コストを下げることが、商品の価値にとって良いことなのか。本当に良い商品を原料のコストを下げてできるのかというと、そうではないと思う。

グループ経営の強みは「全天候型」で変化対応しやすいところ

――主要3事業として、スーパーマーケット(SM)、ホームセンター、ドラッグストアを手掛けるグループはめずらしい。強みや難しさについてどう考える。

小池 グループ経営の強みは、やはり、「全天候型」というか、変化に対応しやすいということがある。しかも、われわれはSMの中にも、バローもあればタチヤもあれば、食鮮館タイヨー、公正屋もある。それぞれの会社を残し、集団を形成している。

それぞれを残し、競争するという状況は、こういう変化に対応するスピードを上げるには非常に有効だと思う。全体を把握して、それに対して1つの政策だけで仮説・検証を回すのではなく、いろんな会社が仮説・検証を回し続けるという中で、良い事例は水平展開することができる。

事業はペナントレースみたいなもので、勝ち続けるという形ではなく、将来に勝つための育成といったことも必要だと思う。そうなると、どうしても一時期弱くなったり、調整的に不安定になる時期も出てくる。

例えばSMが苦しいときにドラッグストアが助けてくれる、ドラッグストアが苦しいときにホームセンターが助けてくれるといったように、3事業あることによって、組み合わせで走っていけることは強みだと思う。

一方で、弱み、難しいところはというと、調子が良いところを見抜いて、それに向けてフォーメーションを変えていく、それぞれをコントロールする機能だと思う。

実際にどの取引先にどのように対応するか。お客さまが求めるものはSMとホームセンター、ドラッグストアでは全く違う。それぞれに関してどうやって横串を刺していくのか。

ちょっとこれからギアを上げていこうと思っているのは、「ホールディングス(HD)」の存在にもう一回、スポットライトを当てようかなと思っている。

これまでは、それぞれの会社の後ろから付いていく、それぞれの事業会社を強くするためのHDと位置付けて、「何かあったら言ってください、それに対してきちんとフォローしますよ」という形でやってきたが、やはり今後に関してはそれを強くするために、先に立って、横串を刺して、例えば人事とか財務とかグループ調達だとかに関しては3社統合することも必要ではないかといった切り口で対応していく。

例えば人材に関しても、意図的にジョブローテーションをしていって育てていくといったことも必要だと思う。

PBに関しても、「ここに関してはSMとドラッグストアはいっしょにやった方が良いだろう」ということがある。

――グループSMには、タチヤや八百鮮といった個性的な企業がある。

小池 規模が小さくても、尖ったものを持っていることは、われわれにとっても学びになるし、グループとして別々にやっているという意味につながる。「ここの優れた部分をどう自分だったらやるのだろう」という風に考える、この気付きを持てることがグループのメリットなので、学びの材料として尖ったものを持っていることは生かす。

――長年タチヤの社長を務めていた森 克幸氏がいま、事業会社バローの社長になっている。デスティネーション・ストア(DS)の戦略を進め、店舗数も増えている。

小池 (森社長が)実際に生鮮のロジックをいまスーパーに持ち込んでいる。スーパーの中で、これだけ腹を据えて生鮮に取り組んでいる企業はあまりないと思う。DSをやっていく中で、魚だとかも含めて評価も非常に高い。大体3分の1くらいはDSに置き換わってきている。

「地域一番店」を目指すデスティネーション・ストア戦略に手応えを得ている(名古屋市昭和区のスーパーマーケットバロー高辻店)

関西はDSを武器として最大限生かし、攻める

――DSと他の店が異なる点はどのようなところになるか。

小池 やはり生鮮にきちんと特化している点だ。やはりスーパーに何をしに来るのかという点で、本丸は「生鮮」だと思う。「今日はおいしい魚が食べたい」「旬の果物を取りたい」といったときに、本当にそれが良い状態で、お勧めされるなど、買いに来て「楽しい」状態で手に入る。これはやはり生鮮のだいご味だと思う。

その本丸の一番大事な「生鮮」にきちんと取り組んでいく。これがデスティネーションの意味。「何をしに来るのか」といったところにきちんと応える。

もともと、DSとして生鮮に特化していろいろなことをやるときには、やはりある程度の大きさが必要だろうと考えていた。バローの店は大規模店、中規模店、小規模店が1対2対1ぐらいの割合だが、大規模店や中規模店での改装でDSはうまくできるなというところが、去年までの結論。

一方でこれからを考えると、実際には収益が苦しい状態になっているのは小規模店。小規模店はやはり水光熱費が上がったり、いろいろな固定費が上がっている中で損益分岐が高くなり、売上げのキャップが小さいと吸収し切れない。

DSは人を付けないといけないため、マンアワーが大量にかかるが、こうした小規模店に対してDSの要素をどうやって持ち込むのかという挑戦は必ずやらなければいけないことだった。去年から今年にかけてずっと取り組んできて、小型のDSも「ネオDS」という形で師勝店(愛知県北名古屋市)を含めて形ができてきた。400坪ほどだが、バローの中では小規模だ。

実際にその中でマンアワーをどうやって減らすかということで、多能工をさらに推進して、チェッカーがベーカリーのパンを袋詰めするといったことなどを含め、いろいろやっている。

最近分かってきたことは、売場の大きさだけが全てではないというところ。小型であっても魅力のある売場のつくり方は、やりようによってはできるということ。われわれにはタチヤ、八百鮮、タコ一といった生鮮だけのカテゴリーキラーをグループ会社に抱える。

小さくてもにぎやかしのある良い店ができている。満足度も高い。そこからの学びも貢献できている。

――全店をDSにする予定か。

小池 DSが求められている店もある一方で、地域の中では本当に「ちょっと買いに行く」といった店もある。全部転換するつもりはない。例えば田舎の方の店はDSにしてたくさん集客できるかというと商圏自体が薄まっていてできない。しかし、その店がなくては困るというところもいっぱいある。商圏に合わせていければ良いと思う。ただ、少なくとも半分はDSにしていかないと「バロー」のスーパーのイメージは変わらないだろう。

――大阪を攻める方針を明確にしている。

小池 新店で(大阪の競合店と)がっつり戦うときには、DSの要素を持ち込まないと差別化はできないだろう。大阪に関してはDSの武器を最大限に生かしてやっていく。

――大阪は重点エリアとなるか。人口の多いところは重要になるか。

小池 間違いない。スーパーだけでなく、これから店舗展開していくとなると、どうしてもわれわれが意識していかなければいけないのは、「トップラインは上げ続けていく」という点。1店舗で売上げが高く、利益も出る店というところで考えると、どうしても岐阜、名古屋に閉じこもって、一番店をつくって満足しているのではなく、やはり、それが「関西ではどうか」「関東、東京ではどうか」「海外でどうか」ということで、常にトップラインを上げていくことは成長には必要ではないかと思っている。

――関東にSMを出店することもあるか。

小池 いつかは考えないといけないと思う。関西に出ておしまいではない。ただ、いまの段階で中計のような形でお伝えできるのは、すでに出店を始めていてドミナントも少し形成し始めていて、分かりやすいところで大阪ということだ。

バリューチェーンに手を突っ込んでいるからこそ対策の選択肢は多い

――コロナから3年になるが。経営環境は。

小池 経営環境では経費に関する環境は相変わらず厳しい。いろんな原料を値上げしたものは労務という問題が絡むため、昔と同じ数字まで戻ることはないだろう。コストが上がった状態の中で、どうやって組み立て直すかということが必要だと思う。

出店するときの建築コストなど、いろいろなものもそう変わらないと思う。成長は外部環境によって規定されるところだと思うので、外部環境に合わせて少しやり方を変えていかないといけない。

消費動向でいうと、だいぶ2月ぐらいまでの値上げはある程度、受け入れてもらえていたと思うが、今回の6月の値上げも含め、ここに来て値上げに対する嫌悪感、ネガティブなスタンスが出てきているのではないかと思う。

何もかも、いままでと同じように、値上げするという形でやるのではなく、本当に合理的な値上げなのか、われわれがどこの味方かを間違えてしまうような、捉え方をされないように、よりデリケートにやっていかないといけないと思っている。

――局面が変わってきたという印象はあるか。

小池 ある。お客さまの反応もそうだし、売れ行きを見ていても、ここで上げたら厳しいだろうなというのはある。ただ、こういう状況は、ピンチではあるが、われわれにとってはチャンスにもしやすいと思う。

垂直型のモデルということで、バリューチェーンに相当手を突っ込んでいることがあって、まだまだ変化できること、対策が打てることなど選択肢は多いと思う。

例えば、店舗転換でも、ドラッグストアを閉めたところをSMに転換するといったことはわれわれでないとできないことだし、グループ間で配送を集約するといったことも多いだろう。

ただ、それだけでなく、メーカーとも話をしている。値上げは必要だと思うが、値上げして最終的にメーカーとして工場の稼働率だとか、出荷自体がなくなっていってしまっては意味がない。数量に関してのコミットメントをしていくということに関しては、メーカーとしても、いまの状況ではより欲しがっていると思う。そこに関しては交渉の余地があると思うし、グループとして支援したりだとか、いっしょにやれることは増えるのではないか。

――コロナ明けで人も動き出しているが、SMの需要が他チャネルに移っているという実感はあるか。

小池 ない。実際、最初はあると思った。外食や旅行が増えて、われわれ内食需要を引き出すグループからすると厳しいと思ったが、使い分けを上手にされているのではないか。例えば旅行には行くかもしれないが、ふだんの外食を代わりに内食にしたりだとか。

相変わらず、スーパーの売上げは良い。スーパーの惣菜も良いのではないか。めりはりの付け方だと思う。外に行って、旅行もするが、ふだんは冷凍食品を含めて、弁当など、上手に使い分けされているのではないか。

生活防衛の中では、スーパーは必要な存在であることが、しっかり認知されてもらっているのではないか。

――そうなると、目下、重要テーマはエネルギーコストと人件費になるか。

小池 賃金を上げることは必要だが、企業としては生産性が上がる仕組みを作っていくことが重要だ。DX(デジタルトランスフォーメーション)だとか、プロセスセンターを含めたいろいろなインフラについては、これからももっともっとしっかりやっていかなければいけないと思っている。

電気代に関しては、その事業をわれわれがやっているわけではない。交渉はするが、それ以上は難しい。

レジのDX、セルフ化は研究しつつも慎重に考える

――DXについてはどうか。

小池 基幹システムをDXがやりやすいようなネットワーク型のシステムに切り替えたりだとか、スマート・デバイスも社員約3000人に対して渡した。これを利用したいろいろなことがやりやすい環境がどんどん増えている。

ただ、もっとできる。まだまだ、システムに関して完全に使い切っているというところには行っていない。他社もそうだろうが、まだまだそこにはもっともっと時間やパワーをかけるところもあるので、やっていく。

――対顧客に対するDXについては。

小池 LuVitカードの会員が415万人まで来ているし、LuVitアプリも75万人まで行って、いろいろな層にアンケートを取ったり、ポイントを出したりできるようになってきている。これをベースにして、クレジットカード会社を立ち上げて、勧誘と使用の促進に取り組んでいる。これができると「経済圏」という考え方で囲い込めるようになるのではないかと思う。

――レジについては、いろいろなパターンが出てきているが、どのように捉えているか。

小池 (セルフ化が進むと)お客さまに作業を押し付ける部分もあると思う。何もかもセルフでやっていけばよいかというところに関しては、慎重に考えたいと思う。

例えば、3社同盟(新日本スーパーマーケット同盟、アークス、リテールパートナーズとの戦略的な資本業務提携)の中でも、カートPOS、スマホPOSなどをいっしょに実験したり、われわれも研究したりして情報はつかんではいるが、それが全てではないなという冷静な目線も持ってやろうかなと思っている。決済手段自体が多様化していることは間違いないが、どちらかというと後追いでも良いのではないかと考えている。

そこを先行してやることが、お客さまにとって、うちがデスティネーションになる要素かなというとそうではないだろうなと。

――いま採用難で、セルフ化が進んでいる。

小池 うちもセルフレジ、セミセルフレジはどんどん増やしている。従業員に配っているスマート・デバイスを使えば、事前にスキャンしておいて、そのデータをレジに飛ばすこともできるといったこともあるので、いろいろな可能性を考えていきたい。例えば、ホームセンターではセミセルフにしてもあまり意味がないといったように業態によっても違う。

――EC(電子商取引)については。

小池 好調に推移している。コロナのときに最大値を取り、その後、少し落ちてきたが、この3月ぐらいからピークを越えて売上げを伸ばしている。やはり認知されていくに従って、使用率が上がっていくのが間違いない市場だ。ここに関してはしっかりとやっていこうと思っている。

6つのプロジェクトからHDの力を強くする必要性を感じた

――6つのプロジェクト(ヒトづくり①生産性向上と②人材育成、強い商品づくり③製造小売業強化と④PB、マネジメント⑤目標管理手法と⑥販売政策)の状況はどうか。

小池 22年8月に社長代行という形になって、どうやってこの会社の政策を練り直していくのかを考えて、ちょうどそのときに思っていた6つのテーマに関してプロジェクトで発進した。

半年間でやるということを考えると、その考え方とその方向をきちっと明確にすること、それから、その中でやれてしまうことはやっていこうということでやってきた。

ちゃんと行為計画として今年の中に組み込まれていくというところで考えると、やはり全部生きている。例えば生産性の話だと、店の中で業務を大きく改善したということだけではなく、もっと大きく捉えて、物流で納品するところから、使うマテハンを変えようということで生産性の改善をやったりだとか、人事のプロジェクトの中ではHDに人事部を作ってその中でさらに磨き上げることをやったりだとか。

PBも、当初はあえて自分のところで一番強いPBを作ろうと言っていたが、ここに来てメーカーとも稼働率を意識した商談になってきていることもあって、(SM、ドラッグストアそれぞれが)同じようなPBを作るのであれば一緒に作ったらどうか、どのようにすみ分けするのかといったこともPBのプロジェクトの中で整理し始めた。

個々にレベルが違うのだが、全部、きちんとテーマとして、これからやっていきたいことを見極める上で非常に役に立った。

PBの開発もこれまでは事業会社個社で開発していたが、今後はグループの観点も入れながら開発をしていく

――HDの力を強くしようと思ったのは、プロジェクトがあったから。

小池 そうだ。実際に人事のプロジェクトでジョブローテーションが問題だなとか、挑戦をさせることをどう設計するのかといった話になったときに、「これは人事制度まで手を入れないといけない」とか、「これは現場を持っている事業会社ではなく、グループ横断で取り組まないといけない」となった。

例えば、ある現場にエースがいるとき、放っておくとずっと5年、10年と同じところでエースとして扱ってしまう。エースでいることはすごいことだと思うが、その人にとっては本当は良くないかもしれないので、あえて現場を一時的に弱くしても抜くべきだろうといったことは、やはりHDで作るべきであろうと。

――プロジェクトはどのような人が担当したのか。

小池 実際には課長、部長が中心になってやった。2週間に1回ぐらいの頻度で定期的にミーティングをしながら取り組んだ。

――成果はあった。

小池 今年でいまの中計は終わるが、次の中計をつくるところでも、この6つのテーマから拾い出した課題や方向性は確実に組み込んでいこうと思っている。

「規模の大きさ」をつくりつつ、「地域」にしっかり根差す企業体

――人口減、少子高齢化が進む中でのSMの在り方についてはどう考えるか。

小池 いまのサービスを維持するためにわれわれに求められるものもあると思う。安易に閉店するつもりはない。よりローコストでやれるような体質を手に入れないとサービスを維持できないだろう。

あと1つ、二毛作ということで「店舗に来てくれないお客さま」をどのように取り込んで、インフラ、資産(店舗)を稼働させていくかを本気で考えないと、資産の重さについて「お客さまに助けてください」という情けない事態になる。いま資産を持っているリスクがどんどん大きくなっていくのは間違いない。

資産を生かそうと思ったら、マーケットを重層化して取っていかないといけない。それがメインにはならないだろうが、そこのところで、他の会社と比べれば楽ができているという状態にはしていきたいと思う。

実際、SDGs(持続可能な開発目標)の話も含め、子ども食堂やフードバンクなど「食の提供」に関しては、いろいろな形で市が助成を出しながら支援をしている。そこには相当食い込めてきている。もっともっと地域と連携して、地域、行政がやろうとしているところに関して、われわれはモノを提供できるというところで、その流れは確保していきたい。

いま、岐阜県と包括連携協定を結んでいる。それぞれの市とも連携しているが、もったいない部分もあった。例えば多治見市と、コロナ禍のときにコロナ療養者を支援するために、われわれのネットスーパーの「ainoma」のサービスの配送料を市が負担するという取り組みをやっていて、非常に好評だった。それでは隣の可児市や美濃加茂市ではどうかというと、やっていない。そのとき、こういう良いサービスは広げた方が良いと話したりしていた。

こうしたとき、もう少し大きな単位で岐阜県と包括連携協定を結んでいれば、もう少しアプローチがしやすいのではないかということだ。だから、行政のそれぞれの単位とそれぞれのつながり方をしていくことを増やしていくことで、行政との連携や地域との取り組みなど良い事例を水平展開しやすい、大きい動きにしやすい状況を作っていきたい。

行政も同じだと思う。少子高齢化で税収も減る中、いまの行政が抱えているサービスが本当にレベルを維持できるのかと考えると、民間と連携する部分もどうしても出てくる。その中でわれわれも何ができるのかという点で、逆にアプローチや提案ができるようにしていかないといけない。

「地域」は少子高齢化の中で、大事になってくると思う。やはり成熟化していったときに何が欲しいかというと、やはり、「質が良い」「使い勝手が良い」、われわれでいうデスティネーションそのものだと思う。

東海なら東海、関西なら関西で、地域の中で上手な(サービスの)組み合わせをしていって、一番良いモデルを作っているということが、やはり、これからのスーパーのあるべき形、出口ではないかと思う。「地域」というキーワード抜きには、これからのスーパーはつくれないだろう。

大手のインフラと地域の良さをどう組み合わせるか。企業として、「規模の大きさ」をつくっていくが、やはり見ている現場ということでは「地域」というものにしっかり根差す。

3社同盟は、もともとはそういう話。地域に根差すローカルスーパーであることを大事にし、地域でのモデルをそれぞれがつくり、大きなところで共有するということはどういうことかを考えていく。これをやっていくことに対する議論はもっと深めていくことが必要だと思う。

――そうは言いつつも、バローHDは商勢圏も広いリージョナルチェーンの規模になっている。

小池 バリューチェーンの作り方の中で、それぞれの地域というものをどうつくっていくのかということになると思う。

バローという会社はグループで(さまざまな事業を)全部やっていて、外部の人から見ると何をやっているのか分かりにくいかもしれないが、「地域」というところ、「自己完結できる能力」は非常に高くなっている。これを使って、どういうサービスが組み上げられるかということについては可能性が非常に大きいと思う。その出口をつくっていく。これが僕の仕事かなと思う。

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