東急ストア三軒茶屋店がリニューアル、惣菜強化の最新MDアップデートで年商1割増の51.3億円目指す

2024.12.16

2024.12.13

東急ストアは2024年12月4日、三軒茶屋駅直結の商業施設である「キャロットタワー」内の東急ストア三軒茶屋店をリニューアルオープンした。

「より便利で、より快適なスーパーマーケット(SM)を実現することを目指し、店舗のデザインを大幅に刷新し、お客さまのニーズに合わせた売場の再編に加えて最新のMD(マーチャンダイジング)を具現化し、新たなモデル店舗として改装を実施した」(大堀左千夫社長)

東急ストアとしては、キャロットタワーの地下1階~2階に約5600㎡の区画を持つ。直営のSMは地下1階で、売場面積は1606㎡(486坪)。SMとしてはそれほど大型店ではないが、改装後の計画年商は51億3000万円というハイレベルなものとなる。改装前比で1割強のアップということで、もともとかなりの繁盛店であったことは確かだ。直営売場以外は23のテナントを導入し、商業施設となっている。

キャロットタワー

三軒茶屋は単身や2人世帯が多く、約8割を占めるエリアとなっている。また、単身と2人世帯は増加していて、対15年比21年の数値で単身が109.1%、2人世帯が106.8%となっている。

それを受け、惣菜や簡単に調理できる商品を中心に品揃えを強化。今回、惣菜については「シン・デリカ」と名付け、店内製造商品の強化や生鮮部門の原料使用商品、その他即食、簡便商品を強化。新鮮な生鮮素材を使用したデリカ、店内製造のRICHE DELI(リッチデリ)」シリーズ、手作りおにぎりなど、デリカメニューを約30アイテム増やした。

東急ストアとしては、従来のデリカの枠を超えた取り組みを推進するため、23年9月に「シン・デリカプロジェクト」を新設。品番(部門)の枠を超えた商品開発や売場展開を進めてきた。

水産と畜産の素材を使った惣菜の「Fresh Cook DELI」では、家庭では作りづらいメニューや手間、時間のかかるメニューを素材のカットから店内調理。圧力調理にも対応できる万能調理器の「バリオ」を初導入し、「揚げる」「焼く」「煮る」といった調理で「国産あじのあじフライ」や「地養鶏の手羽先と大根の煮物」などさまざまなメニューを展開する。

「グリルDELI」は鉄板で焼き上げるお好み焼きやあごだしのつゆが効いただし巻卵焼き、海鮮塩焼きそばなどを種類豊富に用意。「鉄板炒め!海鮮塩焼きそば」「鉄板!広島風お好み焼」など新商品も登場させる。

また、ピザを展開するPizza工房では店内で手延ばしした生地を店内の高温の専用窯で焼いた「もちもち食感」が売りの商品に仕上げている。サイズ展開もホールサイズだけでなく、昼食をターゲットに長方形のスクエアサイズも用意する。

また、ワンハンドで食べられることもメリットとなるおにぎりについても深掘り。「結び屋」のブランド名で、店内で握ったおにぎりをコーナー化。通常のおにぎりだけでなく、「米」関連ということでライスバーガーやサンドおにぎりなどを13種類品揃え。

改装に際しては、製造能力を大幅に増強。厨房は複数個所設けられているが、そのうちの1つを売場区画内に新設し、ガラス張りでオープン化している。出来たての鮮度感をアピールすることも目的となる。ピザ窯や鉄板で調理する様子が見られるような構造となっていることから、ライブ感を演出できる。

冷惣菜のRICH DELIでは、生のMOWIサーモンを使用した「モウイサーモンとアボカドのポキ丼」や寿司の「モウイサーモンづくし」などを品揃えする。

スイーツでは、「いちごのタルト」「なめらか杏仁豆」「とろけるプリン」「ブルーベリーのタルト」などプリン、杏仁豆腐、フルーツタルトなどを店内製造して展開。

また、鮮魚部門の素材を使った「鱻(せん)すし」をコーナー化。魚を3つ書いた「鱻」は「せん」と読み、「魚類」「活魚」「新しい」という意味を持つことから、鮮度の高いたねであることを示している。

また、「冷凍デリ」として冷凍の惣菜商品を「Frozen DELI」としてコーナー展開。メーカーと共同開発した商品で、解凍後も米がふっくらしている弁当の他、寿司、グラタンなどをランアップ。「漬け鯖弁当」「冷凍寿司」といった米飯から「7種のチーズのグラタン」「紅ずわいがにのドリア」などグラタン系の商品を展開する。

これら徹底的に惣菜を強化することで、惣菜の売上高構成比を改装前比で2.3%ポイント高めた17.6%を見込むとしている。

日配、グロサリーではCheese工房を設置。同社ではプレッセプレミアム東京ミッドタウン店(東京・港)以来の設置となる。店内で商品化するナチュラルチーズをはじめ、燻製チーズと組み合わせたアソート商品、デザートチーズを展開する。つまみだけでなく、スイーツとしての利用も見込む。売場配置はワインとの連動を図った。

また、酒に合うオードブルとして魚を使用したつまみ、豆腐や焼き菓子をはじめ地元の名店商品など、日配、グロサリーでは、地元の商品を種類豊富に取りそろえた。

惣菜だけでなく、生鮮も徹底的に強化

一方、三軒茶屋店はもともと生鮮食品の売上高構成比が全店平均より3.5%ポイント高い34.1%だったこともあり、「鮮度、品質の向上を目指し、生鮮ではSMの原点回帰を目指し、対面販売やライブ感を感じる売場」(大堀社長)にも取り組んでいる。

青果では地元野菜の強化策として生産者を特定した取り組みを進めているが、今回はさらに地元を意識し、東京野菜を15SKU展開。プライベートブランドの「手紙のついた野菜と果物」と併せ、生産者とつながった商品の拡充に努めていくとしている。その「手紙のついた野菜と果物」については今回、冷凍の商品を初登場させている。

水産では同社としては最大規模の対面売場を設け、曜日限定で横須賀漁港や小田原漁港といった近海漁港からの仕入れも活用しながら、徹底して丸魚の強化に取り組むとしている。三軒茶屋店については丸魚に関して、従来のバイヤーメインの仕入れではなく、店舗担当者が直接、豊洲市場の仲卸を通じて仕入れる方法に変更。対面売場では、お客の要望に合わせた加工も実施し、その中で生まれる会話などを通じて魚文化の伝承にも努めていきたいとしている。

壁面側でも丸魚を販売。販売力のある店だけに、水産にはかなり注力している

また畜産では、三軒茶屋店は同社の中でトップクラスの銘柄肉の構成比があるという性質を生かし、5等級の黒毛和牛などについて、インストア加工を生かした形で売り込みを強化。銘柄肉の売場の拡大を図った。

「三軒茶屋店のリニューアルは完成ではなく、新たなスタートだと考えている。これからもお客さまの声を大切にしながら、常にブラッシュアップを続け、店舗づくりを目指して行く。また、今回の三原茶屋店のリニューアルをモデルケースとし、他の店舗にもこのMDを展開していきたいと考えている」と大堀社長は力を込めた。

カテゴリー別SKU数、売上高構成比

カテゴリーSKU数売上構成比率(%、計画値)
青果64514.6
水産4528.5
畜産2189.4
デリカ50417.6
チルド24779.7
ドライ62888.7
ドリンク・酒10.7
デザート・菓子7.2
パン・冷食3.4(うち冷食1.5)
実用品21274.9
専門店4.9
合計1万2711100
※「ドリンク・酒」「デザート・菓子」「パン・冷食」のSKUは、「チルド」「ドライ」に含まれる

東急ストア三軒茶屋店概要

所在地/東京都世田谷区太子堂4-1-1キャロットタワー内地下1階

オープン日/1996年11月20日

改装日/2024年12月4日

営業時間/7時~24時(平日)、8時~24時(土日)

売場面積/1606㎡(486坪)

計画年商/51.3億円

店長/川瀬 崇

従業員数/129人(社員23人、パートナー社員、アルバイト96人)

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