クスリのアオキが4桁チェーン化を達成、1000店目の生鮮・フード最大展開パターンの馬立店
2025.05.07
ドラッグストアのクスリのアオキは、地盤の石川県から富山県、福井県、新潟県、長野県の北信越、さらに関東、東海、近畿、東北へと商勢圏を拡大している。また、同社の大きな特徴として、生鮮を含む食品を広範に取り扱っている点が挙げられる。
資格者が販売する医薬品は別としても、ドラッグストアの主力商品である非食品に比べて、商品管理、陳列、場合によっては加工などの面で、はるかにオペレーションコストがかかる食品をドラッグストアがどのように位置づけるかは、まさに経営戦略の問題といえる。
食品は小商圏の必需品のため売上げが上がりやすく、また、ドラッグストアの場合、粗利益率の高い医薬品などとの値入ミックスによって食品を低値入れで販売する傾向にある。結果として「売れるから」といって売上高構成比が増えていくと、「売上げが上がった一方で、粗利益は減る」といったことにつながりやすい。さらに、生鮮食品や惣菜の取り扱いになると加工やロスなどさらにオペレーション面の負荷がかかる。
現在、日本のドラッグストアでは、主に来店頻度を上げる効果を見込んで食品を取り扱う企業が多くなっているが、賞味期限が長く比較的取り扱いの難易度が低い加工食品や飲料などの常温のグロサリー、あるいは設備費がかかるものの、生鮮よりは取り扱いやすい冷蔵の日配、冷凍食品などまで取り扱いを広げる企業、さらに生鮮でもアウトパックの精肉、青果辺りまでといったところがほとんどといえる。
その点、クスリのアオキは一線を画す。店によってコンセッショナリを活用しながらではあるが、積極的に生鮮を含むスーパーマーケット(SM)の商品構成を網羅することに取り組んでいる。その姿勢はSM事業を積極的にM&A(合併・買収)し、店によっては「クスリのアオキ」の屋号ではなく、「スーパーのアオキ」の屋号としていることにも表れている。
現在、同社では中期経営計画である「Vision2026」以降の次なる成長に向け、ヘルス&ビューティの専門性だけでなく、生活用品や食品も兼ね備える利便性の高い店舗の出店を通じ、地域のお客への貢献を目指している。それを具現化したフォーマットが「クスリのアオキ」と「スーパーのアオキ」ということになる。
生鮮3品、惣菜を全て直営、同社最大パターンで展開
その同社が3月12日、千葉県市原市に馬立店をオープンしたことで1000店体制の4桁チェーン化を達成した。馬立店は「クスリのアオキ」の屋号ではあるが、もともとSMだった店舗を改装した店舗で、商品構成としては生鮮、惣菜を含む食品を全て直営し、同社としては最大パターンで展開する。

昨年、同店を含む4店のSMを「スーパーガッツ」の屋号で展開していた木村屋を親会社のクスリのアオキホールディングスが子会社化した上で事業会社のクスリのアオキと合併したことで、同社の店舗となっていた。
スーパーガッツとして今年の1月まで営業し、その後、改修をして棚などをクスリのアオキ式に変更したが、バックヤードは寿司の作業場の移設やインストアベーカリーの新設などはあったものの、生鮮食品については従前のものを主に生かしている。
馬立店は売場面積1122坪と非食品もそれなりに取り扱う大型店で、旧木村屋の4店の中でも一番店だった。「スーパーガッツのときはハードディスカウント型のスーパーだったので、集客力は高い」(生駒佑介店長)
現在、同社が主力とするフォーマットは売場面積で約400坪、商品構成的にはドラッグストアと加工食品に加え、生鮮では青果、精肉を取り扱うタイプとなっている。生鮮のうち青果は直営で、精肉は全てコンセッショナリのアウトパックを活用する。想定の商圏人口は5000人で、小商圏フォーマットを追求し、多店化しながらドミナントを構築していく方向性だ。
その意味では馬立店はかなり特殊な店となるが、食品の生鮮、惣菜、インストアベーカリーまで全て直営で展開するのはクスリのアオキとして初めてとなるということで、1000店目にかける同社の意気込みが伝わってくる。生鮮と惣菜の売上高構成比の計画は53.6%と過半に達するなど、ドラッグストアとしては異例の店となる。
買収した企業の店ということで、店舗の従業員の他、仕入れも元の企業のルートを生かしていて、特に青果については売場の従業員が直接市場に仕入れに行っていることから品揃えや売り込みに強みを持つ。
鮮魚、精肉、惣菜についてもスーパーガッツ時代のものを大幅に生かしていて、品揃えのバラエティ、売り方、売場の状態も含め、SMとしても非常に充実しているといえる。ただし、クスリのアオキとしても青果、鮮魚については直営でノウハウを蓄積しつつあることから、その2部門については両者の強みをミックスしたものとなっている。



























生鮮が主力の特殊な店であるが、その狙いについて生駒店長は、「集客の要として生鮮がある。利益は化粧品や医薬品などで確保していく。とにかく毎日来てもらうために、売価を出して生鮮を売り込んでいく。(生鮮で)集客したお客さまにいかにHBL(ヘルス、ビューティ、ライフ)の商品を買っていただけるか」とする。生鮮を含めた食品をディスカウントで販売するノウハウを築く上でも、馬立店は格好の舞台であるということができる。



取扱SKU数は約2万5000と多いが、これはSMに加え、ドラッグストアの商品構成が加わっているからだ。ただし、同店では第1類医薬品は取り扱わず、薬剤師も配置しない。一方で、敷地内に駐車場内にテナントが入っていた建物があるため、お客の要望次第ではあるが、そこに調剤薬局を設置する可能性はあるという。

店舗は五井駅と上総中野を結ぶ小湊鉄道線の光風台駅南側、徒歩10分ほどの場所に立地。周辺は住宅地ではあるが、それほど大規模なものではなく、競合店についてもSMでは南に約500mの距離で「すーぱーやまだや」、北に約1.5kmの距離に「しげのや光風台店」などローカル企業があるものの、大手チェーン不在の地になっている。
住宅地という点ではしげのやがある光風台駅北側の方が大規模で、ドラッグストアの競合店として北に約1.5kmの距離に千葉薬品が展開する「ヤックスドラッグ光風台店」、同じく北に約2kmの距離に「ウエルシア市原光風台店」、同じく北に約2.6kmの距離に富士薬品が展開する「ドラッグセイムス光風台店」があるが、これらはいずれも光風台駅北側の住宅地に集中している。
商圏内は高齢化が進んでいるとみられ、来店客も高齢者が多くなっているという。そのため、化粧品の売上高構成比は他店と比べても低くなっている。若年層の集客を強化することはもちろん重要だが、一方で高齢化が進む商圏で今後、どのように生鮮食品強化型の小商圏のフォーマットを磨き込んでいくかという点でも大きな意味を持つ店だといえる。

クスリのアオキの要素としては食品、日用品ではクスリのアオキのプライベートブランド(PB)の「A&」(エーアンド)、食品、酒ではイオングループのPBの「トップバリュ」、さらに医薬品では「ハピコム」も入り、低価格ラインと粗利益を補完している。


今回、生鮮、惣菜の売上高構成比が過半という特色あるドラッグストアの店をオープンさせたクスリのアオキ。生鮮食品のノウハウを含め、今回の馬立店の成果を全社的にも波及させたい意向だ。コンセッショナリも地域によっては出店が不安定化する中、今後、全社的にも生鮮食品のコンセッショナリを直営に切り替えながら自社比率を上げていく方向性にあることから、位置づけとしても大きなものがある。
現在では、特に生鮮、惣菜では各部門に正社員を3人ずつ配置するなど人員も多く抱えるが、今後、教育面での貢献も考えられる他、店数の増加によってよりローコストの追求も進むとみられる。生鮮、惣菜を大々的に展開する「ドラッグストア」として、クスリのアオキの今後のフォーマットの進化には大いに注目すべきだろう。
クスリのアオキ馬立店
オープン日/2025年3月12日
所在地/千葉県市原市馬立1916
営業時間/9時~22時
駐車台数/約205台
売場面積/3709.40㎡
取扱SKU数/約2万5000SKU
従業員数/正社員20人、パートタイマー24人、アルバイト34人
売上高構成比計画/HBL8.8%、フード37.6%、生鮮53.6%