コンビニ3社「今期の戦略」 第1回セブン-イレブン・ジャパン
2025.04.04
2025.04.03
コンビニ大手3社が今期の春夏を中心とした商品や取り組み方針の政策を発表した。それぞれ、「商品」、そして「味」が主軸である点は変わらないものの、3者3様の興味深い展開となった。
松竹梅の真ん中である「竹」について、リニューアルを含めて改めて重点を置きつつ、ワクワク感のある商品や出来たての商品も強化するセブン-イレブン(・ジャパン)、新規性のある商品、企画を次々に打ち出し、コンビニの新たな可能性を提示し続けるファミリーマート、そしてプライベートブランド(PB)を分かりやすい形に刷新しつつ、KDDIなどの資産も生かしながらさまざまな形でチャネルとしてのコンビニの可能性を追求するローソン。
個性的な企業同士がサービスの質を競う状況は、お客にとっては非常にありがたいことである。今回、短期集中シリーズとして3社の今期の戦略を紹介する。
セブン-イレブンの最大の強みといえる「竹」の磨き込みと「価値訴求」
セブン-イレブンでは2024年秋冬の商品政策において、低価格帯の商品を、訴求を含めて強化する「うれしい値! 宣言」を実施。オリジナルフレッシュフード約65アイテムを用意した他、セブンプレミアム約205アイテムについても改めて訴求を強化することで、値頃感の打ち出す方向に大きく舵を取った。
結果、開始した9月以降、売上げ、客数共に改善、特に客数前年比については上期、100%を割ってしまう月も多かったが、9月以降の下期に関しては2月まで継続的に前年比100%を上回るなど、回復傾向が続いている。
また、同宣言の商品を買ったお客は来店回数も全体と比べて多い傾向にあるということで、一定のリピート購入の効果もあるとみられる。25年1月のデータで来店回数の増減を男女別、年代別に見ると、男性も女性も30代以下の来店が他の年代と比べて多くなっていることから、同社としては、これまで減少が続いた若年層の来店回数が増加する効果があったとみている。
それを踏まえた上で、25年度の商品政策を「松竹梅の品揃えと基本商品の磨き込み」に設定。さらにその中でのボリュームゾーンである「竹」に軸足を置き、コミュニケーションも含めた形で「価値訴求」を強化する。
「一定程度、お客さまに、値頃感のある品揃えが伝わって、ご利用経験が増え、来店回数が徐々に回復してきていることが確認できているので、25年以降は、『セブン-イレブンといえば基本定番商品の基礎品質の磨き込み』と言われる部分に軸足をしっかりと置きながらお客さまに価値提供していくことに主軸に置いた商品政策とする」(羽石奈緒・執行役員商品本部長)

基本・定番商品については、売上げの土台となる商品として商品の磨き込みをしながらファンを育成し、来店頻度の向上を目指していく。加えてワクワク感と楽しさを演出し、新しい売上げをつくる商品として、新たな価値のある商品の提供にも努める。
具体的にはまず、定番商品の「赤飯おこわおむすび」「こだわりおむすび」「シュークリーム」「カップネリ」「調理麺」などを強化。
家計消費支出でも、あるいは販売面においても他の品目に比べ伸び率が高いおにぎりだが、中でもセブン-イレブンにとっては販売数でもリピート率でも上位に食い込む「赤飯おこわおむすび」は定番中の定番商品。発売開始は29年前の1996年だが、いまもなお売れ筋商品として君臨する。
今回、専門店同様の工程ということで、一次蒸し、打ち水、二次蒸しという工程を踏んでいることなどを改めて加盟店を含めしっかりアピールした上で、もち米のうま味を残す精米方法などにもこだわった商品を4月28日週から販売する。
また、23年から発売し、3年目となる八代目儀兵衛監修のこだわりおむすびについても最適なブレンドを含め、全面リニューアル。5月13日週から販売を開始する。
スイーツではシュークリームについて、ホイップクリームをたっぷり食べたいという需要を想定し、あっさり味にリニューアルした上でホイップクリームの比率を高めた商品を4月14日週から投入する。
19年の発売から6年目に入り、販売金額も19年度の4倍以上にまで成長した「カップデリ」では、「魚の負の解消」に取り組む。販売数量が伸びている練り物のちくわやカニかまぼこに注目した上で、それをおでんで積み上げてきたデイリー工場の技術を生かし、カップデリの具材として利用。
「カップネリ(練り)」というシリーズの呼称を付けた上で、例えば「玉ねぎとお魚のおつまみ揚げ」を6月23日週から発売するなど、練り物としての魚食を提案する。
麺類ではコラボレーションする中華蕎麦 とみ田と夏の定番としていくことを目指し、とみ田にはない冷たい混ぜ麺を開発。「ワシワシ&モチモチ食感の極太麺」を「パンチを効かせた豚骨醤油スープ」で食べる「冷やしブタまぜ麺」を4月14日週から販売。
また、同様にコラボレーションするらぁ麺 飯田商店監修の「飯田商店監修スパイスシンフォニー担々麺」も5月12日週から販売する。
コンビニの店内にカプセル玩具が登場
一方の、ワクワク感と楽しさを演出し、新しい売上げをつくる新たな価値のある商品群の強化。これに取り組む背景には、消費性向として節約志向はありつつも、「自分にとって価値のあるもの」については支出を増加させる傾向が「押し活」などを中心に存在することがある。それに応えるため、セブン-イレブンのコンパクトな売場ではあるが、それぞれの売場で仕掛けをしていく。
注目したいのが雑貨売場でのワクワク感、押し活の需要に応えるカプセル玩具の導入。「ある程度、売場をしっかり面でくくって、毎月毎月、更新をしていく」(羽石本部長)など注力し、繰り返し来店につなげていきたいという。セブン-イレブンのオリジナル商品をモチーフとした「セブン-イレブンカプセル」の発売も予定している。
新しさ、話題性という点では、Apple社傘下のオーディオブランド「Beats(ビーツ)」のアクセサリーの取り扱い。大谷翔平選手がアンバサダーを務めるなど世界的なスターをプロモーションに起用する話題性のあるブランドで、セブン-イレブンでは6月以降の順次先行販売を実現した。
また、インバウンド客にも人気のある菓子ブランドのシュガーバターの木とコラボレーションし、同ブランドとして初めてアイスクリームを開発、4月14日週から販売する他、国内クラフトビール最大手のヤッホーブルーイング社が初めてセブン&アイ限定のオリジナルビールを開発、カラフルなインパクトのあるパッケージの有頂天エイリアンズとして5月18日週から販売する。
また、一時期売上面で足踏みしていたが、再成長フェーズに戻りつつあるPBのセブンプレミアムではフリーズドライの果実をチョコレートでコーティングし、サクッとした食感の夏チョコや冷凍スイーツなどをラインアップに追加する他、15周年を迎えるプレミアムラインのセブンプレミアムゴールドからはバターチキンカレーや紅サケの炭火焼きなどが新商品として登場する。
セブン-イレブンの将来を占う出来たて商品の展開
また、羽石本部長が「将来への成長に向けた取り組み」とする店内製造を含むカウンターファストフードの惣菜や飲料については、セブン&アイ・ホールディングスの社長交代を発表した会見でも井阪隆一社長が、「メイドトゥゴー(店内で最終加工する惣菜)」として今後のコンビニの鍵を握る商材であることを強調した商品。
看板商品の「ななチキ」「揚げ鶏」についてはテレビCMにて再度アピールした他、4月21日週からは新商品として「若鶏のからあげ5個入り(もも・むね)」を投入。他、SIPストアや埼玉県一部店舗で実験してきたセブンカフェのティー、セブンカフェのベーカリーを拡大。
埼玉県の29店舗での実験ではティーは女性客の支持が高く、また販売時間は午後がメイン、かつスイーツや菓子との買い合わせが多いということで、朝がメインのコーヒーと「全くカニバリしない。丸々大きく上乗せになる」(羽石本部長)という。
ベーカリーの焼成機は25年上期に4000台、下期に8500台、26年に1万台を導入予定、26年度末までに合計2万2500台の導入が図られることになる。ティーについても25年下期に2500台、26年に8000台、26年度末までに合計1万台の導入と、販売構成を大きく上げるべく順次拡大していく。


店内加工が増えることで従業員の作業は増えることになるが、加工食品や雑貨などアイテム数の多いカテゴリーの一度の発注数がこれまで各500などと上限があったものを撤廃するなど、「生産性向上」につながるハード面での整備も同時並行で進める。