コンビニ3社「今期の戦略」 第3回ローソン
2025.05.02
ローソンは今年創業50周年を迎えた。商品政策についてもそれが意識され、特に大きな動きとして2020年以来、5年ぶりとなるプライベートブランド(PB)の刷新を実施することが挙げられる。

目次
前期から継続して、“2025年レコメンドNo.1”ストアを目指す
藤井 均・商品本部⻑は前年の24年度を振り返り、「商品本部としては、ローソンが全社で取り組む3つの約束に徹底的にこだわり抜くことで、“2025年レコメンドNo.1”ストアになるために取り組んだ。ローソンの商品戦略では、この3つの約束は全ての土台として取り組んでいる」とする。
「3つの約束」とは、①圧倒的な美味しさ、②人への優しさ、そして③地球(マチ)への優しさの3つを指す。
ローソンでは、定番商品とチャレンジ商品の2軸で商品開発を進めているが、24年度は「金しゃり」ブランドのおにぎりや手巻きおにぎり、生パスタなど各カテゴリーの基本商品を中心に定番商品をリニューアルした他、「ふわ濃チーズケーキ」や「ご褒美スティックケーキ」「ふるふるサラダめし」など尖った商品に積極的にチャレンジ。
加えて、競合店との大きな差別化につながる店内調理の「まちかど厨房」で季節に沿った商品を展開したり、からあげクンのアップデートも実施。さらにドライ系の食品では菓子やカップ麺の福袋展開で値上がり環境下に買い得感で応えたり、ソフトドリンクでは「レトロ」の切り口で、かつて販売されていたメローイエローを復活させたりするなどした。
「メローイエローは想定を大きく超える販売実績となった。私どものメインのお客さまである40代、50代だけではなく、この商品については10代、20代のお客さまのトライアルがすごく多く、それをまたSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に上げていただくことで話題になるなど良い循環が生まれた。ここ数年、商品のヒットの仕方が変わってきているのではないかと考えている。特にZ世代(1990年代後半から2010年前後に生まれた世代)を始めとした新しいターゲットのお客さまについては、SNSの普及に伴って『人に伝えたい』という価値観が非常に強いと思っている」(藤井本部長)
25年度も、引き続き「定番商品」「チャレンジ商品」の2軸を商品開発の基本にしながら取り組むとするが、改めて創業50周年に当たってローソンが進化していく中での中核となるのが、新PBということになる。
特にこれからの10年の日本社会を考える上では、少子高齢化や1人暮らし世帯の増加などの環境もあって、ローソンとしては「毎日を安心で快適にするだけでなく、人間的な感情や体験で、どれだけ自分を満たしていけるかが鍵に」「お客様一人一人との⻑いお付き合いが重要、トライアル拡⼤からトライアル×リピート拡⼤の為に、新PBを活用」の2つのポイントを導き出した。
「この中心になるのが新しいPB商品」(藤井本部長)というわけだ。背景には小売業をめぐる環境としても、PBの需要が高まっていることもある。
新ブランドは「3つ星ローソン」、全社で取り組む3つの約束を星で表現
新PBは「3つ星ローソン」の名称で、ロゴはローソンの頭文字を示す「L」の下に3つの星のマークがあしらわれたものとなっている。星のマークはローソンが全社で取り組む3つの約束を表している。

その上で具体的に、1つ目の「圧倒的な美味しさ」の点では、「お客様の声を具現化することを第一に、商品開発プロセスを変更」、定番商品についてはお客の声を聞くことを仕組化し常にアップデートする他、チャレンジ商品についてはおいしさだけでなく、驚きと発見の「ワクワク感」も加える。
2つ目の「人への優しさ」の点では、後述するようにパッケージの分かりやすさにこだわった他、「お客様の関心が高い添加物について独自の使用基準を設ける」とし、弁当、サンドイッチ、麺、サラダ類で運用を開始すると共に、製造工場も店内での調理も独自の衛生基準を徹底する。
3つ目の「地球(マチ)への優しさ」の点では、「2025 年度中に容器包装における環境配慮素材を使用する商品の比率を80%まで拡大する」ことを開発の指針にするという。現状は47%の商品が環境配慮素材を使用しているが、「ローソンブルーチャレンジ2050」の目標である環境配慮素材100%に向けての本格的な取り組み開始としたい意向だ。
ロゴには「ローソンの“商品への自信”」や「“チャレンジ”する姿勢」も表現したという。「3つ星」ということで、世界的に有名なミシュランガイドの最高評価を想起する人も多いだろう。その意味ではこの言葉には「高品質」といったニュアンスも込められているといえる。
ブランドコンセプトは「普段の日も、特別な日も、一日一日がいつもより良い日に感じる3つ星ローソン。」。
藤井本部長は、「創業50周年のタイミングで、これまでのローソンを、これからの進化するローソンへつなげるブランドが『3つ星ローソン』になる」と位置づける。
具体的には、「3つ星ローソンブランド」の下、まずは店内調理ラインのラインAとそれ以外で区分けをし、店内調理以外のラインBについて、「プレミアム」「スタンダード」の区分けを実施。ナチュラルローソンについては別枠として、そのまま残す形となる。
今後、10月までに従来の「L basic(エル ベーシック)」「L marche(エル マルシェ)」やデイリー系商品、店内調理商品などPBの約95%の商品を今回の「3つ星ローソン」のブランド名に統一しながら順次商品の刷新をしていく。
6月までにデイリー系商品をカテゴリー単位で順次切り替えていき、ドライ系商品ついては6月から10月にかけて順次、五月雨式に切り替えていく。

買物の「タイパ」を重視し、パッケージの分かりやすさにこだわる
さらに今回はパッケージにもこだわっている。近年の「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視するトレンドの中で、「買物にも時間をかけたくないという意識から購入商品を決定する際には、分かりやすいパッケージデザインであることが求められている」(同社)とし、商品名については見やすい大きさと濃さの文字に変更。アレルゲン表示記載に関してもパッケージ前面での記載に変更した。
さらにパッケージカラーについて、スタンダードのラインでは商品分野ごと識別しやすい色で展開するなど、分かりやすさにかなり配慮している。


「商品はパッと見て、3秒で購買が見られるといわれているが、やはり、パッと見て何なのかが分かりやすいということが、ひと昔以上に求められているのではないかと考えた」(友永伸宏・商品本部統括部⻑(デイリー担当))
20年に登場した以前のパッケージは生活に溶け込むデザインとして女性からの支持が高い傾向にあるものの、「分かりづらい」という声もあったという。また、体系をシンプルにすることには乱立しているブランドを整理する意味もあった。
スタンダードの色分けについてはまず、商品自体の外観が購⼊動機となるデイリー系は、カラーを絞り込みシンプルな運用とするが、主に加熱の有無を中心とした色分けとなる。加熱しない商品はロイヤルブルー、加熱する商品はオレンジとした他、目⽴たせるカテゴリーはイメージに合った色分けとしてサラダはライトグリーン、チルド和生菓子や冷凍デザートはシャンパンゴールド、ベーカリーはブラウンとした。
パッケージも購⼊動機となるドライ系商品は、売場映えするようにカラーバリエーション運用としたが、味の印象が多様なため、味のイメージをまとめた12色のカラーパレットを活用しながら商品ごと、イメージに合った色分けとした。




新型コロナウイルスによる影響を受けた5年間だったが、以前のパッケージのコロナ禍での効用も認めつつ、今回、PBのイメージを一新したローソン。商品のパッケージはセルフサービスの売場のイメージを構築する。この上半期、ローソンの売場のイメージが大きく変わることになる。