フーコット昭島店の酒売場考察、ヘビーユーザーを徹底的に深掘りする品揃え
2022.04.12
2022.03.28
新宿から電車で最短33分、都心への通勤、通学の便が良い最寄り駅の東中神駅の周辺は、1967年につくられたUR東中神団地を中心に集合住宅が目立つ。この団地は老朽化に伴い、URが近くに新たに造成した土地での建て替えが始まっており、これが終われば、駅に隣接する現在の団地の跡地に新しい住宅をつくるという。
今後も周辺の人口は増加が見込める地域であることは間違いない。フーコット昭島店はこの東中神駅から徒歩10分足らずの開発地域に立地する。周りにはまだ何もないが、そばに広大な国営昭和記念公園があり、豊かな自然と都心への良好なアクセスのある地域として、これから発展が期待される。
店を訪れたのは平日の16時前で、来客の車の出入りが途切れることはなく、レジには10m近い長い列ができていた。客導線はワンウエーにコントロールされ、入口で最初に目にする青果の大量陳列はカラフルで新鮮さを感じさせると共に、要所に圧倒的な安さがあり、お客の心をつかんでいるようだ。
鮮魚、精肉、日配、加工食品も「低価格」を最大の売りにしながら、通路幅を広く取り買いやすい売場づくりを徹底している。酒売場は客導線の最後に位置し、レジ前を通過した後でアクセスする。酒ユーザーは来店客の3、4割にすぎず、また計画購買率が高いから、この位置でも立寄率が低下するリスクは少ない。
酒類消費は人口減と高齢化の進行で中長期的には減少を免れない。だが、東中神エリアのように若年人口の流入により、消費の中期的な増加を見込める地域がある。また、酒類消費は1割のヘビーユーザーが7、8割を消費しているといわれ、その層を徹底的にマークすることは、日々の酒類消費シーンをカバーするスーパーマーケットには重要なテーマだ。フーコット昭島店はまさにここに狙いを定めて、メジャーブランドのハードディスカウントを展開しているように見える。
冷蔵什器は一切なし、あくまでストック需要に特化
酒売場は60坪ほどで、棚構成はビール類とレディトゥドリンク(RTD)がそれぞれ3尺ドライゴンドラ約7本ずつ、酒売場の4分の1ほどを占める。残りのスペースを3尺9本×対面2列を基本ユニットとして、清酒、本格焼酎、ワイン、その他(甲類焼酎、ウイスキー、スピリッツ、リキュール)を均等に配分する。什器はすべてドライゴンドラで、冷蔵什器は全く使用せず即飲需要には対応しないと割り切っている。
順に売場の特長を見て行こう。まずビール類だが、販売ロットはケース、6缶パック2種(350㎖と500㎖)の3種類だ。棚割りはブランドごとのバーチカル陳列で、下段にキャスター付き台車に乗せたケース販売。中段、上段で6缶パックを置き、ばらの陳列はせずお客が自分で6缶パックをばらして購入する。品揃えは国産大手メーカーの主要商品をビール、新ジャンル共に一とおりそろえた上で、3尺ゴンドラ1本に若干の輸入ビールとクラフトビールを並べる。
ビール類についてはこれから2026年までの5年間、ビール類の酒税率の改正によってビールシフトが進み、商品単価の上昇に伴う売上増が見込まれる。市場なりに売っても売上げは伸びていくが、成長分野となるビールにウエートをかけて市場より早くビールシフトを進めるとよい。
RTDには酒ヘビーユーザー向けの需要を深掘りするフーコットらしさが端的に表れている。販売ロットと棚割りはビールと同じく、ケース、6缶パック2種類の3タイプで、棚割りも同じだ。
RTDは商品の改廃が激しくばらでの販売を抜きに考えにくかったが、フーコットはレモンフレーバーを中心に、取り扱いを有力ブランドに絞った量販戦術を採用した。その分、品揃え面では新製品の導入が遅れている。たとえば成長の兆しが見えているジン系のRTDがほとんどない。
酒ヘビーユーザー&業務用需要に応える売場
ワインは1000円以下の商品をまんべんなく集めた印象だ。普段使いのワインが並ぶが、商品選択の手掛かりが少ない。リーズナブルな商品をエンドで大陳するなど、強く売り込む部分もあるが定番化している印象でインパクトはない。そんななか目を引いたのが、スペイン産スパークリングワインCavaの安値販売である。単品でフルボトルが500円、6本まとめても3000円である。Cavaは瓶内2次発酵であることなど、表示するには細かな製造規定をクリアしなくてはならず、一定の安心感がある。この価格はワインの基礎知識のある方には少々驚きで、試し買いを促すには十分だ。ワインはNBがない分、薄利多売をしにくいが、一定の価値を保証する規格に対しての価格訴求は有効である。
和酒(清酒と本格焼酎、泡盛)は地方銘柄の一升瓶の品揃えが豊富で、圧巻である。一升瓶は2つの需要に対応する商品だ。1つは酒のヘビーユーザーで少しプレミアムの商品を求める人である。経済性と利便性が前面に出る紙パックや大容量ペットボトルの商品ではなく、本格的な質感のある一升瓶を好んで選ぶ。もう1つは料飲店の需要で、こうした食品の大ロット&ハードディスカウント業態は業務用需要もカバーするから、酒類も当然、彼らのニーズに応えることになる。
ウイスキーと甲類焼酎、スピリッツ&リキュールは対面で1ブロックとなり、ドライゴンドラにまとめられている。ウイスキーはバリエーションも出しやすい商品だが、ここでは4ℓなどのペット容器の商品が大きく面を取る。甲類焼酎も同様で、酒ヘビーユーザー&業務用需要に応えている。
フーコット昭島店の酒売場は、一般的な料飲店も含めて、酒のヘビーユーザーのニーズに応えることに徹しており、流行や高級やギフトなど起伏の大きい分野を割り切っている。冷徹に需要を見極めたリアリストがつくる酒売場となっていた。(3月25日訪店)