ザ・トップマネジメント 令和4年新春特別編 ヨーク 大竹正人社長

2022.04.12

2022.01.07

「サテライトキッチン活用都心型モデルに手応え、22年度は個店別にもう一度マーケット調査をして品揃えを見直す」

ヨーク大竹正人社長

——2021年度を振り返るとどのような年度だったか。

大竹 一番の変わり目は9月から10月のところ。潮目が変わったような気がする。

お客さまの消費行動も、やはりどちらかというと節約志向に入ってきたのかなという感じがしている。買われ方もいままでは、まとめ買いが多かったが、必要なものを必要なだけに変わってきた。

一方で、やはり二極化の傾向はある。(セブン&アイグループのプライベートブランドの)セブンプレミアムはいま苦戦しているが、(高クオリティラインの)ゴールドは2桁以上伸びているなど非常に良い。家中で食事をする中で、「おいしいものを」という動きはやはり根強い。

全体感としては、買われ方も、お客さまの行動も変わってきたのは事実かなと思う。

それから、ここに来て競合各社含めて、価格政策が強くなってきている。いままではなかなか出なかったような値段も出てきているし、各社、価格だけでなく、あの手この手、ポイント政策であったり、ダイレクトメールであったり、以前に戻ったような変化があると思う。

4つのフォーマットのうち一番の課題となっていた「小型」タイプの早稲田店(東京・新宿、2層約198坪)を11月に改装したが、計画以上で推移している。小さいお店で、都心で、バックルームがない中で、どんな商売するのだろうということが課題になっていた店だ。

いままでは立地特性から「売れるであろう」と想定されていた商品、例えばベーカリー、ちょっと上質なお惣菜など、多分間違いなく強化すれば売れるであろう商品が展開できなかった。バックルームがなく、作る場所がないので、人を投入しても作れなかった。

今回、いろいろ工夫して、たまたま(コンフォートマーケットとしてオープンした)中延店(東京・品川)を閉鎖して調理場が残っていたので、そこから商品を導入しているが、非常に反応が良い。

今回の早稲田店で仮説を持って取り組んだところは、ほぼほぼ成果を挙げられた。仮説どおりに早稲田店は進んでいるのかなと思う。

11月20日に改装した早稲田店は閉鎖した中延店の調理場を活用する形で惣菜、ベーカリーの品揃えを強化。ベーカリー売場は改装前はなかったが、店内加工のバーガーなどと併せ供給体制がそろったため売場の設置が可能になった。サテライトキッチンのモデルとなる

(「標準型」と「プライス型」の)ハイブリッド型については、標準店からハイブリッド型にしたのは例えば川崎野川店(川崎市宮前区)など、プライスからハイブリッド型にした店にはせんげん台店(埼玉県越谷市)などがあるが、数字的には概ね予想どおりに推移している。

一方で、それぞれに違う課題があることも分かった。せんげん台店は、プライスからの転換のため、従業員の技術教育などに時間がかかった。逆に標準店からハイブリッドにした店は、生産性が上がっていかないという課題があった。これらの課題については、どちらも軌道に乗ってきている。

サテライトキッチンは増やしていく

——中延店の拠点としての位置づけは。

大竹 サテライトキッチンの位置づけだ。キャパシティはいまのところ4店舗ぐらいにしか供給できないので、基本的には都心に近いところに場所を探して(拠点を増やして)いかないと広げられない。

都心の店舗を成功させることがわれわれとしては戦略的に大事だと思っている。

実は中延店で、全社の唐揚げの味付けをタンブリングで行っている。これは次の段階のセントラルキッチンにつながっていく取り組み。非常に味が良くなったという評価を受けている。

——サテライトキッチンは幾つか設置していくのか。

大竹 それは必要になる。セントラルキッチンは全社ベース、サテライトキッチンは、今後都心に出店していく上で重要になる。

どのぐらいの規模のものが造れるか。都心への動線を考えたとき西と東に欲しいとは思う。

早稲田店は利益が出ているが、やはり都心は家賃も、人件費も高い。その中で利益の出るフォーマットをつくるためには、その物件だけでは完結できない。やはりプロセスセンター(PC)であったり、セントラルキッチン、サテライトキッチンからの納品が必要になる。

考え方としてはインストアの店内調理にこだわるが、一方で店内調理を省力化するような納品の仕方などを追求していく。

都心のマーケットには、やはりチャンスがある。

——19年7月に都市型小型店として改装し、手応えも得た中町店(東京・世田谷)の位置づけは。

大竹 中町店は2階にバックルームがあるため、比較的標準的なMD(マーチャンダイジング)ができ、そこに上質な商品も入れられたので成功したが、都心の店にはバックルームがない店も多い。そこをどう解決していくかが、今回の早稲田店での実験になる。

——今後、早稲田店のような小型店を新規出店していく予定は。

大竹 もちろんそうしたい。基本的には利益の大半は標準店で稼ぐわけだが、一方で標準店の店数を増やせるのかというと、そんなに立地がない。そうすると、攻めるのは都内かなと思っている。

ただ、われわれは全てアウトパックではなく、もっと満足感のある上質なものもそろえられるようなお店を造れたら良いなと思う。

——注力している生鮮、惣菜は差別化になると思うが、どの辺りが強みと考えているか。

大竹 強み、弱みがあるが、やはりインストア(店内調理)は強み。だが、アキレス腱でもある。だからセントラルキッチンやサテライトキッチンを整備していかなければならない。

生鮮は基本的には産地からどのように良い商品を調達するかが問題になる。ただ、商品部が調達できたとしても、一方で販売部がどんなオペレーションができるのかが大事で、これはやはり作業改善が重要になると思う。

お客さまのニーズに合った時間帯に商品が出せるような仕組みが作れるか。小型については、あれば売れるはずなのに(バックルームがないため)用意できない商品を販売できるようにすることが大事だと思う。

——店内調理の今後の見とおしは。

大竹 もちろん、セントラルキッチンなどができることによって、いかに省力化を進められるか。もしくは冷惣菜など完成品を入れるか。それによって、本来、お店で手作りすることで差別化できる商品を強化するという流れ。

あとは、お店で作るにしても、キット納品など、どれだけ省力化した形で納品できるか。省力化した部分を出来たて、作りたての部分に振り分けることで、お店の人時をいかに効果的に使うかになると思う。

セントラルキッチンはイトーヨーカ堂と共有するもので、23年度に設置予定だ。設置するに当たっては、もちろん、ライフフーズやセブン-イレブンの工場のノウハウを入れていくので、その意味ではいろんなことができるのではないか。

個店別にマーケット調査を行い、時間帯別に品揃えを検討

——22年度に向けては。

大竹 いまはインフラ整備。特にサテライトキッチンとPCと物流網。基本的にはイトーヨーカ堂と合同だが、ここをしっかり立ち上げる。そこに向けて人も抱えている。

投資で考えれば、もちろん、活性化、新店もやるが、22年はシステム投資を思い切ってやっていきたい。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)がらみ。お店の効率化になるDX、本部の仕事を効率化するDX。それからDX=CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)のように言われているが、やはりそこもわれわれとしてはちょっと遅れているところがあるため、しっかりやっていきたい。

また、コロナ禍でなかなかうまくいかなかった教育も、DXがらみでどう進められるかというところに注力したい。

ただ、インフラ整備は進めて行くが、これは他社もやっていることなので、いずれ差別化にはならなくなる。だから、最終的には差別化は「商品」と「人」になる。そこがどれだけやれるのかが最終的には重要と考えている。

また、22年度は個店別にもう1回マーケットのお客さまの調査をして、品揃えなどの見直しをすることを全社ベースでやろうと思っている。

今回、早稲田店の改装ではいままでと違って、POSデータだけではなく、nanacoデータなどいろんなデータを引っ張ってきた。結果、「都心の店は上質の商品が強い」ということは分かったものの、一方で時間帯、年代別に見ていくと別の側面も見えてきた。

早稲田店の場合、午前中に割と高齢者のお客さまが多く、この時間帯に上質の商品が売れる。一方で早稲田店は16時以降、60%の構成比があって、非常に夜が強い。その時間帯になると若い人が多く、上質の商品が売れるのではなく、ボリュームのある商品が売れる。

そうすると、いままでのように、いっしょくたに「都心は上質が強いから、上質を追いかける」ではなく、やはり、午前中の商売の仕方と午後の商売の仕方、時間帯で変えていくべきだろうとなる。

いろんな分析の仕方があって、いままで1日単位でしか考えていなかったのだが、そのように考えるようにしていく。

東京は、年代のピラミッドが割と低いところにある。だから、全社ベースでもう一回、マーケット調査をして、品揃えを見直すこと。これも22年度、一番やりたいと思っていることだ。

——小型店を含め、22年度の出店計画は。

大竹 投資の振り分けは、どちらかというとシステム投資とインフラ投資に配分する。次につなげるために、そこはしっかりやろうと思っている。特にDXがらみの省力化、攻めで使えるCRM、教育ツールはしっかりやる。

セルフレジの導入とキャッシュレス化を進める

——ネットスーパーについては。

大竹 いまのところ手掛ける予定はない。お届け便などはやるかもしれないが、同じ商圏でイトーヨーカ堂とお互いにやってもしょうがない。

——店の省力化では、早稲田店で3Dアバターがお客からの問い合わせの一部に応対する形の「デジタルサービスカウンター」を導入した。

大竹 まずは、お客さまに慣れていただけるかどうか。サービスカウンターに従業員がずっといられるかというと、いられない。いないときにでも、時間的にはすぐに対応できる仕組みにはなっているので、利便性が分かってもらえればと思う。

小型店ではサービスカウンターを大きく取るというわけにはいかない。やはり、レジもサービスカウンターもバックルームも、ある程度組織としては大部屋化していかないといけない。

早稲田店で「デジタルサービスカウンター」を設置。3Dアバターが一部応対する他、従業員が対応する場合は腕に装着したスマートウオッチに振動が入り、連携したスマホで一次応答するなど連携操作が可能。データは蓄積し、利便性向上を目指す。サービスカウンターは移設の形で、スペースは従前と比べ5分の1ほどになった

——レジについては。

大竹 特に都心部では、キャッシュレスセルフレジに対するストレスはないようだ。セルフレジと、キャッシュレスはやっていく。

——他社ではお客自身がスマホでスキャンするタイプや、カートの端末でスキャンするタイプなどを導入しているが。

大竹 スマホも次には考えたいが、(お客側のアプリのインストールや入力など)登録が大変という問題がある。カートについては、買物してみても全くストレスはなくて良いのだが、ヨークの場合、店が狭いため難しいと考えている。

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